第269回:いよいよトヨタも本気モード
最新の予防安全システムと自動運転技術の現状を探る

2014.12.11 エッセイ
高速道路での自動運転の研究に用いられるトヨタの新しい実験車。
高速道路での自動運転の研究に用いられるトヨタの新しい実験車。

トヨタがいよいよプリクラッシュブレーキを含めた予防安全システムの普及を宣言。東京・台場で開催された技術説明会の会場から、その取り組みと自動運転への道筋をリポートする。

説明会では予防安全システム「トヨタ・セーフティセンス」のほかにも、さまざまな先進技術の解説が行われた。こちらは「シースルー機能付きパノラミックビューモニター」のデモンストレーション。
説明会では予防安全システム「トヨタ・セーフティセンス」のほかにも、さまざまな先進技術の解説が行われた。こちらは「シースルー機能付きパノラミックビューモニター」のデモンストレーション。
モニターには、車体を透過したように見えるよう画像処理された映像が表示される。運転席からは見えない位置にいる子供や自転車などの存在を、より分かりやすくドライバーに知らせることができるという。
モニターには、車体を透過したように見えるよう画像処理された映像が表示される。運転席からは見えない位置にいる子供や自転車などの存在を、より分かりやすくドライバーに知らせることができるという。
ペダルの踏み間違えなどによる事故を予防、もしくは被害を軽減する誤発進抑制制御のデモ。これまでにもあった技術だが、新型はクリープによる前進でも作動するよう、改良されている。
ペダルの踏み間違えなどによる事故を予防、もしくは被害を軽減する誤発進抑制制御のデモ。これまでにもあった技術だが、新型はクリープによる前進でも作動するよう、改良されている。
ITS専用の通信回線を利用した、協調型運転支援システムのデモ。交差点に備えられたセンサーが歩行者を検知。情報を受信した車両がモニター表示などでドライバーに注意を促すというものだ。
ITS専用の通信回線を利用した、協調型運転支援システムのデモ。交差点に備えられたセンサーが歩行者を検知。情報を受信した車両がモニター表示などでドライバーに注意を促すというものだ。
自動操舵(そうだ)技術を用いたパーキングアシスト機能も、駐車スペースの選択を可能としたり、切り返し時の前進操作も自動でできるようになったりと、進化を遂げていた。
自動操舵(そうだ)技術を用いたパーキングアシスト機能も、駐車スペースの選択を可能としたり、切り返し時の前進操作も自動でできるようになったりと、進化を遂げていた。

トヨタが腰を上げなかった理由

トヨタが初めてレーダークルーズコントロールを市販車に載せたのは今から17年前、1997年のこと。F20系(2代目)「セルシオ」のマイナーチェンジ時にメーカーオプションとして設定したレーザー式のそれは、三菱やメルセデス・ベンツと並び、世界に先駆けての実用化だった。くしくも「プリウス」の発売とも重なったわけで、クルマの未来はトヨタからやってくるのか……という思いを強くした覚えがある。

が、その後のトヨタをみるに、ハイブリッドをきっちり根付かせた勢いに対すれば、先進安全技術にまつわる進捗(しんちょく)は消極的にうかがえた。その間に他社の開発は進み、現在は軽自動車にも衝突被害軽減ブレーキが実装される状況であるのはご存じの通り。前方対象との速度差を検知し、加速や制動を行うという要の技術を早期に確立していながらのこの出遅れ感は一体どういうことなのか。

その理由は容易に想像できる。万一の誤動作やシステムダウン、その際に一体どのような告知や回避を行い、それでも避けられない事故に対して一体誰が責任を追うのか。製造者と使用者とのボーダーラインに関して、世論とのコンセンサスがクリアになっているとは言い切れないことが要因だろう。現在、そのシステムが搭載されている車両には100ページ以上に及ぶ専用の取扱説明書が添付され、その大半は使用上の注意に費やされているわけだが、ここまでやっても後々システム依存による事故の責任が問題化することは考えられる。もちろんその白黒を判定する法規も判例もなければ、国際的な合意もない。それらの検討は内閣府が中心となって行われてはいるものの、トヨタほどの大規模なメーカーとなれば、そこに大風呂敷を広げて参入するには時期尚早という判断もあっただろう。

今回発表された「セーフティセンス」は、そんなトヨタが普及を前提として展開する予防安全技術のパッケージ商品だ。「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」と呼ばれる次世代アーキテクチャーが始動する2015年以降、小型車も含めたほぼあらかたの乗用車に標準もしくはオプションで装着され、2017年中には米国や欧州でも全車採用を目指すという。もちろんその先に見据えるのは自動運転だろう。セーフティセンスはそのための基本技術の確立という意味合いも強い。

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