正念場に直面する日本メーカー【上海ショー2015】

2015.04.28 自動車ニュース
日産が初公開した小型セダン「ラニア」。今秋に中国で発売される。

【上海ショー2015】正念場に直面する日本メーカー

中国市場に前のめりのドイツ勢と比較すると、上海ショーにおける日本メーカーの展示ブースはやや勢いを欠く印象が否めなかった。トヨタ、日産、ホンダの3大メーカーがそれぞれ世界初公開車を発表するなど、もちろん決して手を抜いているわけではない。しかし地元メディアでにぎわうドイツメーカーのブースに比べると人が少なく、何となく影が薄いのだ。

「ラニア」は北京のデザインセンターの若手中国人デザイナーが中心となって仕上げた。

■販売目標に届かず

日本車の勢い不足は統計にも表れている。2014年、中国市場では約1970万台の乗用車が売れ、前年比の増加率は9.9%だった。そんななか、日本メーカーで首位を走る日産の販売台数は約122万台と、前年比わずか0.5%の伸びにとどまったのである。トヨタの販売台数は約103万台と初めて100万台の大台を超え、伸び率も12.5%と市場平均を上回ったが、昨年初めに掲げた110万台の販売目標には届かなかった。ホンダは当初90万台としていた販売目標を80万台に引き下げたものの、結果は約79万台(前年比4.1%増)に終わった。

日産の高級SUV「ムラーノ ハイブリッド」。
「日産ムラーノ ハイブリッド」
「トヨタ・カローラ ハイブリッド」
「トヨタ・レビン ハイブリッド」
「レクサスES」
「ホンダ・コンセプトD」
「スズキiK-2」
「スズキiM-4」
「三菱コンセプト XR-PHEV II」
「スバルWRX STI」
「マツダCX-5」

■日産は「ラニア」と「ムラーノ」で巻き返し

2012年9月、日本政府が尖閣諸島を国有化したのをきっかけに起きた激しい反日デモの影響で、日本メーカーの中国販売が一時大幅に落ち込んだのは記憶に新しい。しかし中国の消費者の間でデモの記憶が薄れるとともに、2013年後半から販売は急回復に転じ、日本車の「高品質神話」が健在であることを証明した。それだけに、各社は2014年に強気の販売目標を立てていたのだが、結果はそろって未達。反日デモの影響が消えた今、勢い不足の原因はクルマそのものの魅力が足りないか、市場ニーズとマッチしていない可能性がある。

果たして日本車は再び巻き返せるのか。今年はまさに正念場といえる。その意味でひとつのベンチマークになりそうなのが、上海ショーで日産が初公開した小型セダン「ラニア」と高級SUV「ムラーノ ハイブリッド」だ。

ラニアは1年前の北京ショーで登場した「ラニア コンセプト」の市販モデルで、今秋に中国で発売する。そのアグレッシブな外観は、北京のデザインセンターの若手中国人デザイナーが中心となり、中国の若い世代の心をつかむことを意識して仕上げたものだという。ムラーノ ハイブリッドは、1年前のニューヨークショーでデビューした3代目「ムラーノ」のハイブリッド(HV)版で、活況を呈する中国のSUV市場に今夏にも投入される。

実は昨年の日産の販売が伸び悩んだ背景には、モデルチェンジの端境期で新型車の投入が小型SUV「エクストレイル」1車種だけだったことに加え、小型大衆車の「サニー」や「ティーダ」の販売が競争激化で失速したことがあった。そんななか、エクストレイルはSUVブームの波をとらえて月1万台以上を売るヒット車となり、販売全体の前年割れを防ぐ下支えになった。そこにムラーノが援軍として加わり、さらにラニアで新たな市場を開拓できれば、日産が再び成長軌道に乗るのも夢ではないはずだ。

■現地開発HVに将来を賭けるトヨタ

日産が中国市場の「今」に挑戦しようとしているとすれば、さらに「未来」を見据えて勝負をかけてきたのがトヨタだ。上海ショーでは主力小型セダン「カローラ」と「レビン」のHVバージョンをお披露目。その売り物は、中国でゼロから現地開発に取り組んだHVシステムである。

トヨタは2005年に中国で先代「プリウス」の現地組み立てを開始し、高級ブランドのレクサスでもHVモデルの導入を積極的に進めるなど、中国市場でのHV普及に一貫して努めてきた。しかしガソリン車と比べた高価格がネックになり、販売実績は芳しいとはいえなかった。

そこで2013年、トヨタは江蘇省常熟市に新たな研究開発センターを設立し、それまで門外不出だったHVシステムの現地開発に乗り出す。日本で設計された既存のHVシステムの生産を単に中国に移すのではなく、例えばモーターに使う磁石の材料レベルから現地化を徹底。それに最適化した設計を行うことで、性能や品質を犠牲にすることなくコストを引き下げたという。

「HVシステムの現地開発は、初代プリウスの開発に匹敵するイノベーション。ぜひご期待ください」――。初代プリウスの開発責任者として知られ、上海ショーのプレス発表会で演壇に立ったトヨタの内山田竹志会長はそう胸を張った。「カローラ ハイブリッド」と「レビン ハイブリッド」は年内に中国で発売される予定だが、価格水準はまだ公表されていない。しかしトヨタがこれだけ自信を見せる以上、相当競争力のある価格で投入するのは間違いないだろう。果たして日本のようなHV旋風を中国でも起こせるか、大いに注目したい。

■ホンダと下位メーカーは埋没感の払拭が課題

中国市場で日本メーカー3位のホンダは、上海ショーでは日産やトヨタに比べて方向感がはっきりしない印象だった。中国市場向けSUVのコンセプトモデル「コンセプトD」を初公開したものの、ホンダならではの個性はあまり感じられず、埋没感が否めなかった。

また、気になったのは1年前の北京ショーでお披露目したコンパクトハッチバックのコンセプトモデル「コンセプトB」の市販モデルが登場しなかったことだ。同じ北京ショーで日産はラニア コンセプトを、トヨタはカローラとレビンのガソリン車を発表し、上海ショーでその進化形をしっかり出してきたのと対照的である。

ホンダは2000年代初めには上級セダン「アコード」のヒットで、中国市場で日本メーカー首位に立った時期もある。しかし2014年の販売実績は日産に40万台以上、トヨタに20万台以上もの大差をつけられてしまった。このままではジリ貧に陥りかねない正念場であり、奮起を期待したい。

3大メーカー以外のスズキ、マツダ、スバル、三菱からは上海ショーでワールドプレミアの発表が1台もなく、プレスデイのブースもいささか閑散としてホンダ以上に寂しい印象だった。それでも、スズキは3月のジュネーブショーで初公開したばかりのコンセプトカー「iK-2」と「iM-4」を、三菱は同じく「コンセプト XR-PHEV II」を、スバルは若者の注目度が高い「WRX STI」を展示し、地元メディアの目を引こうと頑張っていた。

そんななか、異色の選択をしたのがマツダだ。日本では、マツダといえば新型「ロードスター」や小型SUV「CX-3」が今や注目の的。ところが、上海ショーのマツダブースのひな壇を飾っていたのは、お世辞にも新味があるとはいえない「CX-5」と「アテンザ」だった。この2台はマツダの中国販売を担う基幹車種であり、中国仕様は2015年モデルで大規模なマイナーチェンジを施したばかり。大手メーカーが話題作りを競うモーターショーで無理に目立とうとせず、中国市場で実際に売れる(売りたい)クルマをアピールしようという現実的な判断なのかもしれない。

(文と写真=岩村宏水)

この記事の大きな画像を見るためには、画像ギャラリーをご覧ください。