上海ではどんなクルマが走っている?【上海ショー2015】

2015.04.28 自動車ニュース
上海ではどんなクルマが走っている?
上海ではどんなクルマが走っている?

【上海ショー2015】上海ではどんなクルマが走っている?

世界最大の自動車市場である中国で、最も経済的に豊かな大都市・上海。その街角にはどんなクルマが走っているのか。リポーターが実際に歩いてみた。

(表)2014年の中国市場全体の車名別販売ランキング。
(表)2014年の中国市場全体の車名別販売ランキング。
「テスラ・モデルS」
「テスラ・モデルS」
「フェラーリ458イタリア」と「599GTBフィオラノ」の縦列駐車。
「フェラーリ458イタリア」と「599GTBフィオラノ」の縦列駐車。
ツートンカラーの「ポルシェ911カブリオレ」。
ツートンカラーの「ポルシェ911カブリオレ」。
信号待ちをしている「アウディA6」と「レンジローバー スポーツ」。
信号待ちをしている「アウディA6」と「レンジローバー スポーツ」。
カフェの前にたたずむ「フェラーリ458スパイダー」。
カフェの前にたたずむ「フェラーリ458スパイダー」。
ショッキングピンクの「BMW 335iカブリオレ」。
ショッキングピンクの「BMW 335iカブリオレ」。
「ポルシェ・ボクスター」と「マカン」の縦列駐車。
「ポルシェ・ボクスター」と「マカン」の縦列駐車。
「メルセデス・ベンツSLKクラス」と「マセラティ・クアトロポルテ」。
「メルセデス・ベンツSLKクラス」と「マセラティ・クアトロポルテ」。
“外地ナンバー”を付けている長城汽車の「哈弗H1」。
“外地ナンバー”を付けている長城汽車の「哈弗H1」。

■ところ変わればクルマも変わる

言うまでもないことだが中国は広い。日本列島の約25倍の国土に13億人を超す人々が暮らし、方言や生活習慣、経済の発展度合いも地方によってさまざま。当然ながら、売れ筋のクルマも地方によって結構な違いがある。裕福な東部の大都市では高級セダンやSUVが飛ぶように売れる一方、貧しい西部の農村では家族と農産物を満載できる多目的ミニバンが人気を集めるといった具合だ。

では、中国で最も豊かな大都市である上海では、一体どんなクルマが売れているのか。そんな素朴な疑問をもとにまず統計をあたってみたが、残念ながら上海に限った販売データは公表されていないようだ。そこで作戦を変更し、実際に街を歩いて路上を観察してみることにした。

歩き始める前に、比較対象として2014年の中国市場全体の車名別販売ランキングを掲げておこう(左側の表を参照)。第1位の「五菱宏光」は農村市場向けの多目的ミニバン。第7位の「哈弗H6」は地場メーカーの長城汽車の低価格SUVで、やはり地方を中心に売れている。この2台以外はいずれも外資系合弁メーカーが現地生産する小型セダン/ハッチバックである。トップ10の顔ぶれは2013年と大きく変わっていないから、詳しく知りたい向きは1年前の北京モーターショーの記事もぜひお読みいただきたい。

■テスラ、フェラーリ、ポルシェがうようよ

さて、筆者が観察コースに選んだのは上海市中心部の旧フランス租界のエリアだ。メインストリートの淮海中路には高級ブランド店がずらりと入居したショッピングセンターが立ち並び、そこから路地に入ると個人経営のしゃれたセレクトショップやカフェが点在している。豊かな上海でもダントツの高級エリアで、東京でいえば青山・麻布・六本木あたりのイメージに近い。

スタート地点は旧フランス租界の街並みを再現した観光スポットの「新天地」。そこから淮海中路に向けて歩き出すと、まず目に飛び込んできたのはテスラのEVセダン「モデルS」だった。実は筆者は、モデルSを路上で見るのは日本を含めてこれが初めて。ところが、この後1時間ほどの観察で3回も見かけたから、このあたりでは必ずしも珍しいクルマではないらしい。

続いて交差点の向かいにあるホテルに目をやると、玄関脇の駐車スペースに黄色と赤色の背の低いクルマが見えた。近づいてみると、それは「フェラーリ458イタリア」と「599GTBフィオラノ」の縦列駐車だった。さらに度肝を抜かれたのが、すぐ隣に止まっていた「ポルシェ911カブリオレ」だ。何とボディーがメタリックピンクとシルバーのツートンカラー。こんなど派手な911は日本の路上ではまずお目にかかれない。

気を取り直して淮海中路を西へ向かう。交差点で信号待ちをしていると、向かい側には「アウディA6」と「レンジローバー スポーツ」が停車していた。しかし、もはや大して高級には見えない気がするから不思議である。さらに西へ足を進めると、淮海中路に面した小じゃれたカフェの前にまたもやフェラーリ458が止まっていた。なかなか絵になる光景だが、はっきり言って交通の邪魔である。

このあたりから路地に入り、戦前のフランス租界の雰囲気を色濃く残す住宅街をぶらついてみる。するとあるわあるわ……。ショッキングピンクの「BMW 335iカブリオレ」の脇をロールス・ロイスが通り過ぎ、住宅を改造したカフェの前の駐車スペースには真っ白な「ポルシェ・ボクスター」と「マカン」が縦列駐車。いくらクルマ好きの筆者も、さすがにもうおなかいっぱいである。地下鉄の駅へ向かうため淮海中路に戻ると、路肩に停車中の「メルセデス・ベンツSLKクラス」の横を「マセラティ・クアトロポルテ」がさっそうと駆け抜けていった。

■ナンバーを取得するだけで155万円!

いくら上海一の高級エリアとはいえ、なぜこれほど豪華なクルマばかり集まっているのか。日本とは比べものにならない中国の貧富格差の大きさや、見えっ張りな国民性など複数の理由が考えられる。さらに上海独特の要因といえそうなのが、入札制によるナンバーの発給制限だ。上海市政府は市街地の交通渋滞を緩和するため、1990年代から毎月新規に発給するナンバーの枚数に上限を設けている。新車の購入希望者は入札を通じてナンバーを取得しなければならないが、経済発展とモータリゼーションに伴って落札価格が高騰。最近では平均落札価格が何と8万元(約155万円)前後に達している。

要するに、新車を買うためには車両価格に加えて8万元のナンバー代を支払わなければならない。これほどのプレミアムを負担してまで10万元以下の大衆車を買いたいと考える消費者は少ないだろう。そもそも購入希望者数よりナンバーの発行枚数が大幅に少ないこともあり、新車を買えるのは8万元をポンと払える富裕層ばかりといういびつな実態になっているのだ。

とはいえ旧フランス租界のエリアはさすがに極端で、そこから少し離れればもっと普通のクルマもたくさん走っている。今回、筆者が滞在した安宿は繁華街からやや外れたエリア(東京でいえば板橋あたりのイメージ)だったが、最後にその近くで見かけた一台を紹介しよう。長城汽車のコンパクトSUV「哈弗H1」で、実売価格は7万元(約135万円)前後。よく見ると、そのナンバーには「川」という漢字が入っている。

これは「四川省」を表す記号で、上海市以外の地方で登録されたクルマということだ。8万元のプレミアムなんてとても払えないという庶民の中には、地方の親戚などを頼って安いクルマを購入し、上海で乗り回す人が少なくないのである。ただし、市政府は地方ナンバーのクルマが増えすぎないよう、朝夕の通勤時間帯に市街地の高速道路への乗り入れを禁止するなど厳しい規制を課している。クルマ好きの一般庶民には冷たい街、それが今日の上海の現実なのである。

(文と写真=岩村宏水)

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