成熟への道を模索する中国メーカー【上海ショー2015】

2015.04.28 自動車ニュース
吉利(ジーリー)が初公開した小型セダンの「帝豪コンセプト」。

【上海ショー2015】成熟への道を模索する中国メーカー

4月25日*に一般公開が始まった上海モーターショーには、当然ながら地元中国のメーカーが数多く出展している。外資系メーカーのキャッチアップを目指す中国勢はどんな新型車をお披露目したのか。また、中国メーカーはどんな課題を抱え、どこへ向かおうとしているのか。

吉利の上級セダン「博瑞」。4月初めに発売されたばかり。
吉利といえば、2010年にボルボを買収したことで有名。「博瑞」のリアビューには、どことなくボルボの面影がある?

■長足の進歩も、実力はまだまだ

共産主義国である中国では、エネルギーや交通など基幹産業のほとんどが国有で、自動車産業も例外ではない。都市の街角で見かけるクルマの多くはフォルクスワーゲン(VW)やトヨタなどの“外車”だが、それを生産・販売しているのは中国の国有自動車メーカーと外資系メーカーの合弁企業。外資系単独による生産販売はいまも認められていない。

そして、外資との合弁事業を通じて技術を吸収した中国メーカーは、2000年代半ばから独自ブランドのクルマの開発に本格的に乗り出した。きっかけは当時の胡錦涛政権が大々的に打ち出した「自主創新」と呼ばれる産業政策だ。独自ブランド車の開発には国や地方政府の補助金が潤沢に投じられ、それを“商機”と見た外資系のエンジニアリング会社や部品サプライヤーもこぞって支援。その結果、この10年で中国車のデザイン、性能、品質などは自動車産業史上まれに見る長足の進歩を遂げた。

上海ショーの中国メーカーのブースを見て回っても、6~7年前までよく見かけた「コピー車」はもうほとんど姿を消した。とはいえ、見た目やカタログスペックでは外資系と遜色なくなっても、それだけでどんどんクルマが売れるほど自動車業界は甘くない。機械としての耐久性や信頼性、アフターサービス、それらを総合したブランドイメージなどの面で、中国メーカーはまだまだ外資系メーカーに遠く及ばないのが実態だ。

上海汽車の「栄威550 PLUG-IN」。

「栄威950 1.8T」
BYDの小型SUV「宋」。
「BYD元」。「宋」も「元」も市販を前提としたPHVという設定。
第一汽車の高級SUV「紅旗LS5」。
東風汽車のフラッグシップセダン「東風1号」。
長城汽車(グレートウォール)の中型SUV「哈弗H7」。
奇瑞汽車(チェリー)の小型セダン「α5」。

■上海汽車はパワートレインを地道に改良

そんな背景を頭に入れたうえで上海ショーの展示を見ると、筆者は一部の中国メーカーの戦略にある種の変化が生じているように感じた。新型車の数やデザインなど、目に見える部分で背伸びをして外資系メーカーと張り合うのではなく、見えないけれど大切な部分をもっと地道に磨く。いわば成熟への道を模索する機運が芽生えてきたようなのだ。

その象徴と思えたのが上海汽車。同社はショーの開催地である上海の地場メーカーであり、VWやゼネラルモーターズ(GM)と合弁を組む中国最大の乗用車メーカーでもある。これまでの常識で考えれば、上海ショーで誰よりも多くの新型車をお披露目しても不思議ではない。

ところが実際にブースを訪れると、中央のひな壇に展示されていたのは小型セダン「栄威550 PLUG-IN」とフラッグシップセダン「栄威950 1.8T」の2台だった。前者のベースは2008年にデビューした「栄威550」で、2013年に投入されたプラグインハイブリッド(PHV)バージョンの最新改良型。電池の性能を高めてEV(電気自動車)モードの航続距離を60kmに伸ばすなど、基本性能や信頼性を向上させる多数の改良を施したという。

一方、後者は2012年デビューの「栄威950」に、上海汽車がGMと共同で新開発した1.8リッター直噴ターボエンジンと6段デュアルクラッチトランスミッションを搭載したモデル。全長約5m、車重約1.7トンの大柄なボディーに必要十分なパワーと約13.1km/リッターの低燃費を両立したとうたう。栄威550も950もショーモデルとして見れば新味ゼロだが、あえてこの2台をメインに据えたのは「外見より中身の進化を見てほしい」というメッセージではないか。

■大人になった吉利とBYD

似たような変化を感じたのが吉利のブース。同社は国有企業ではなく民営の自動車メーカーだが、技術開発や工場の建設投資などの面でやはり政府のバックアップを受けている。上海ショーでの売り物は、初公開した小型セダンのコンセプトモデル「帝豪コンセプト」と、4月初めに発売したばかりの上級セダン「博瑞」の2台だった。

特筆すべきはその端正で奇をてらわないスタイリングだ。吉利といえば2010年にスウェーデンのボルボを買収したことで有名だが、博瑞のリアビューにはどことなく「ボルボS80」や「S60」のテイストが感じられ、デザインの完成度は相当高い。帝豪コンセプトもほぼこのまま市販できそうなレベルだ。ほんの数年前まで、モーターショーの吉利ブースには「本当に市販する気があるのか」と首をかしげるような超高級リムジンやスーパーカーのコンセプトカーがずらりと並んでいたのと様変わりである。

中国メーカーのなかでも「確信犯的」なコピーぶりで悪名高かったBYDも、今回の上海ショーでは(少なくとも外観上は)コピーを感じさせない小型SUV「宋」とコンパクトSUV「元」を出してきた。どちらも近い将来の市販が前提のPHVだ。「あのBYDもついに大人になったか」と、妙な意味で感心してしまった。

もちろん、ひとことに中国車といっても多種多様。はっきりした変化を感じられなかったメーカーも少なくない。そのなかで注目のクルマを挙げておくとすれば、第一汽車の高級SUV「紅旗LS5」、東風汽車のフラッグシップセダン「東風1号」、長城汽車の中型SUV「哈弗H7」、奇瑞汽車の小型セダン「α5」あたりだろうか。1年後の北京モーターショーでは中国車はどんな進化を見せるのか、今から楽しみだ。

(文と写真=岩村宏水)

*=編集部注:第16回上海モーターショーの開催日程は次のとおり。4月20日~21日:プレスデイ、4月22日~24日:業界関係者向け公開日、4月25日~29日:一般向け公開日。

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