ポルシェがルマン24時間で1-2フィニッシュ

2015.06.15 自動車ニュース

トロフィーを手に勝利を喜ぶ、No.19 ポルシェ919 ハイブリッドのドライバーたち。ポルシェとしては1998年以来、久々の優勝となった。(photo=Motoko Shimamura)

ポルシェ、1-2フィニッシュでルマン24時間を制す

2015年6月13-14日、フランスのサルトサーキットで第83回ルマン24時間耐久レースが開催された。伝統のレースを制したのは、N.ヒュルケンベルグ/E.バンバー/N.タンディ組のNo.19 ポルシェ919 ハイブリッド。2010年から続いていたアウディ勢の連覇はならなかった。

昨年の覇者であるM.ファスラー/A.ロッテラー/B.トレルイエの3人が駆る、7号車のアウディR18 e-tron クワトロ。
No.19 ポルシェ919 ハイブリッド。予選では3番手のタイムをマークした。
ポルシェ919 ハイブリッドは、予選1-3位を独占。その速さを見せつけた。
ポールポジションを獲得し笑顔を見せる、No.18 ポルシェ919 ハイブリッドの面々。
トヨタ勢として最上位の7位で予選を終えた、No.2 トヨタTS040 ハイブリッド(A.ブルツ/S.サラザン/M.コンウェイ組)。
日産が最高峰クラスに送り込んだ「GT-R LM NISMO」。レーシングカーとしては珍しいFFの駆動方式が採用されている。

■予選からポルシェ勢が圧倒

アウディ、トヨタ、そしてポルシェ。2014年は三つどもえの戦いとなったルマンの最高峰クラスに、2015年は新たなチャレンジャーが加わった。16年ぶりの参戦となる日産だ。昨年の、「GT-R」という名を冠したマシンでの参戦表明には、世界中のモータースポーツファンが注目したことだろう。

そのルマン24時間、5月末にはテストデイが設けられていたのだが、当日は不安定な天候で、各チームともドライコンディションでの走行が存分にできないまま終わってしまった。その分、本番での走行初日は、予選前のフリー走行から積極的にマイレージを重ねたいところだが、午後4時からのフリー走行に前後して雨が降り、またもや予定されたメニューを消化するのが難しい状況になってしまった。
その流れも影響してか、天候が回復しドライコンディションとなった午後10時からの予選1回目は、開始直後からタイムアタックへと向かう車両が続出した。

中でも存在感を見せつけたのが、ポルシェ919 ハイブリッドの3台。まず17号車のT.ベルンハルトが、2008年にプジョーのS.サラザンがマークしたコースレコード3分18秒513を大幅に更新する3分17秒767の最速タイムを出すと、程なくして僚友18号車のN.ジャニもアタック1周目で3分16秒887という驚異的な数字で暫定トップを奪取した。残る19号車は3分18秒台後半にとどまったが、3台そろってライバルにその速さを見せつけた。この18号車のタイムはその後の予選セッションでも打ち破られることはなく、今年のポールポジションを手にすることになった。

ポルシェ3台がアタック合戦を繰り広げる一方、そのライバルであるアウディ、トヨタはまったく異なるアプローチを見せた。世界耐久選手権(WEC)のシリーズ戦や先のテストデイでも確かなものだったポルシェの速さを前に、「われ関せず」といった様子で本格的なアタックは避け、マシンのセットアップやタイヤの選択といった細かな確認作業を繰り返しつつ、粛々とメニューを消化していたのだった。

予選2日目は安定したドライコンディションに恵まれたこともあり、決勝を見据えてほとんどのマシンがマイレージを重ねた。ポルシェ勢もライバルと同じく決勝への最終準備にシフトし、ポールポジションを巡る激しい駆け引きはまったくといっていいほど見られず。今年の予選は、最速ラップの更新こそあったものの、どちらかといえば盛り上がりのない、おとなしい展開だった。

なお、日産勢は車両の実戦投入が予定よりも大幅に遅れたこともあり、セッション中もピットでの作業に多くの時間を費やすことになった。結果、ライバルたちより大幅に少ない周回数となったが、予選2日目の最後のセッションでタイムアップに成功(ベストは3分36秒995で12位)。決勝に向けて明るい兆しを見せた。
なおトヨタ勢は、No.2 トヨタTS040 ハイブリッド(A.ブルツ/S.サラザン/M.コンウェイ組)の7位(3分23秒543)が最高だった。

予選総合トップ6

1. No.18 ポルシェ919 ハイブリッド(R.デュマ/N.ジャニ/N.リーブ組)3分16秒887
2. No.17 ポルシェ919 ハイブリッド(T.ベルンハルト/M.ウエーバー/B.ハートレー組)3分17秒767
3. No.19 ポルシェ919 ハイブリッド(N.ヒュルケンベルグ/E.バンバー/N.タンディ組)3分18秒862
4. No.8 アウディR18 e-tron クワトロ(L.ディ・グラッシ/L.デュバル/O.ジャービス組)3分19秒866
5. No.7 アウディR18 e-tron クワトロ(M.ファスラー/A.ロッテラー/B.トレルイエ組)3分20秒561
6. No.9 アウディR18 e-tron クワトロ(F.アルバカーキ/M.ボナノミ/R.ラスト組)3分20秒997

 

大勢の観客が見守る中、グランドスタンド前を駆け抜けるGTマシン。
16年ぶりの復活を遂げた2014年は、思うような結果が得られなかったポルシェだが、2015年は着実なレース運びで優勝を手に入れた。
夜のピットから出て行く、17号車のポルシェ919 ハイブリッド。
すっかり暗くなったサルトサーキット。黄色いヘッドランプをともしたマシンが、勝利を目指して走り続ける。
“常勝軍団”の名をほしいままにしていたアウディ勢は、優勝ならず。連勝記録は5で止まった。
不完全燃焼に終わったトヨタ。最高位は2号車の6位にとどまった。
GTマシンの戦いは、今年も2つのクラスで展開された。写真手前は、LMGTEAmクラスで優勝した、V.シャイタル/A.ベルトリーニ/A.バソフ組のNo.72 フェラーリ458イタリア。

■「着実な戦いぶり」が結実

フランスのオランド大統領が来場するなど、盛り上がりを見せた今年のルマン決勝。レースは開始1時間を迎える前に、GTマシンが出火しコースサイドに止まってしまうアクシデントが発生。序盤から、セーフティーカーがコースインする慌ただしい展開となった。

だが上位を固めるポルシェ勢は、着実に自分たちのメニューをこなしつつ、決して無理をしない戦略を敢行。これが、ライバルにプレッシャーを与えることになった。
とはいうものの、予選でしのぎを削った17、18号車の2台は、時に押しの強い走りを見せて、結果的にコースアウトを伴うアクシデントやペナルティーを引き寄せてしまった。これに対し“ゴーイング・マイ・ウェイ”のレース運びを見せたのが、19号車のポルシェ919 ハイブリッドだった。N.ヒュルケンベルグ/E.バンバー/N.タンディのトリオのうち、ヒュルケンベルグとバンバーの2人はルマン24時間のルーキーであり、残るタンディも去年のルマンでGTクラスデビューを果たしたばかりの選手。まだルマンで華やかなレーシングキャリアがあるとはいえない若手の3人が、チームのミッションをキチンと遂行したことが、レースの主導権を握る結果となったのは間違いないだろう。

今回ポルシェ勢の表彰台争いに割って入ったアウディは、ルマンでの優勝経験があるNo.7 アウディR18 e-tron クワトロ(M.ファスラー/A.ロッテラー/B.トレルイエ組)を軸に、さまざまな揺さぶりをかけて勝機をうかがった。しかし昨年、16年ぶりに伝統の一戦に復帰した古豪チームは、常勝アウディの強さとトヨタが見せつけた速さをバネに、WECはもとよりルマンでの戦い方を十分に分析し、準備を進めてきたようだ。対するアウディ勢は、自ら招いたミスやピットでの作業が長引いた影響もあり、7号車が表彰台の一角(総合3位)をつかみ取るのが精いっぱいだった。

一方、去年のルマンではポールポジションを獲得、決勝では別のマシンが3位表彰台を獲得したトヨタは今季、シリーズ戦の序盤から、常に厳しい状況に向き合ってきた。チームドライバーの中嶋一貴も「ルマンでは、今の自分たちができることをやり切るだけ」と常に前向きな気持ちで挑戦を続けてきたが、自身の1号車は総合8位止まり。ハイレベルな駆け引きの中にあって、実力以上の結果は得られなかった。
チームとしての最高位は、2号車の6位。中嶋と同じ思いで戦いに挑んだトヨタの村田久武ハイブリッドプロジェクトリーダーは「レース後半には自分たちが想定したラップタイムが出せたものの、ルマンでは自分たちの知らないことがまだまだあった」などと技術面での力不足を認め、「ルマンで本当に勝ちたいのであれば、ルマンで勝てるクルマにしないといけない。すべての面で見直しを行い来年もう一度ここに帰ってきたい」と締めくくった。

「強いライバルの存在が、また自らを強くする」。ルマン最多勝利を誇るポルシェが今年久々に優勝し、その数を「17」に伸ばしたことが、それを証明したはずだ。

決勝結果(トップ6)

1. No.19 ポルシェ919 ハイブリッド(N.ヒュルケンベルグ/E.バンバー/N.タンディ組)395周
2. No.17 ポルシェ919 ハイブリッド(T.ベルンハルト/M.ウエーバー/B.ハートレー組)394周
3. No.7 アウディR18 e-tron クワトロ(M.ファスラー/A.ロッテラー/B.トレルイエ組)393周
4. No.8 アウディR18 e-tron クワトロ(L.ディ・グラッシ/L.デュバル/O.ジャービス組)392周
5. No.18 ポルシェ919 ハイブリッド(R.デュマ/N.ジャニ/N.リーブ組)391周
6. No.2 トヨタTS040 ハイブリッド(A.ブルツ/S.サラザン/M.コンウェイ組)387周

クラス別トップ

・LMP1クラス:No.19 ポルシェ919 ハイブリッド(N.ヒュルケンベルグ/E.バンバー/N.タンディ組)395周

・LMP2クラス:No.47 オレカ05 ニッサン(M.ホーソン/R.ブラッドレー/N.ラピエール組)358周

・LMGTEProクラス:No.64 シボレー・コルベットC7R(O.ギャビン/T.ミルナー/J.タイラー組)337周

・LMGTEAmクラス:No.72 フェラーリ458イタリア(V.シャイタル/A.ベルトリーニ/A.バソフ組)332周

(文=島村元子/text=Motoko Shimamura)

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