魔法のようなサードシート
サードシートのダイブイン機構は、先代から受け継がれている。このクラスのミニバンにとって、サードシートの扱いは死活問題だ。3列だと荷室がミニマムになってしまうので、通常は2列にして荷室の大きい乗用車のように使う。サードシートがじゃまになったり、出し入れが面倒だったりするのでは困るのだ。
やってみると、文字通りワンタッチでシートアレンジができることに感心する。力を入れる間もなく、シートが勝手に動いてしまう感覚なのだ。サードシートは魔法を使ったように消えてしまい、そこに座席があったとはわからなくなる。唯一、サードシートを起こすときにはちょっと腰に負担がかかるのだが、そこまでワガママをいってはいけないだろう。
シートとしてのデキも、ちゃんとしていた。床の下に隠れていたとは思えない座り心地である。乗り降りはセカンドシートをタンブルさせなければならないのが面倒といえば面倒だが、旧型と比べれば開口部の幅も広がっている。シート幅も70mm拡大しているから、閉塞(へいそく)感に苦しまなくていい。
ヤングファミリーとリタイア後の夫婦だけでなく、日本人のかなりの部分がこのクルマでやりたいことを不満なくこなせるだろう。車いすだってOKだ。「ラクティス」では後でルーフを高くしたから福禄寿(ふくろくじゅ)のようになってしまったが、最初から車いすのことを考えて設計しているからそのままでリクライニング式の最新型を入れられる。恐ろしく汎用(はんよう)性の高いクルマだ。それでいて人畜無害で退屈な形をしているわけでもないのだから、オールマイティーではないか。
19歳で結婚してすでに娘のいるハメス・ロドリゲスはもっと子供を作るだろうから、シエンタは役に立ちそうだ。エアーイエローを選べば、スペインでも目立つだろう。ハメスなら、スポーツカーよりシエンタを本気で気に入るかもしれない。滝川クリステルは、たぶん乗らない。
(文=鈴木真人/写真=田村 弥)
荷室の様子。写真手前に見える3列目シートは、2列目の下に折りたたみ収納できる。(写真をクリックするとシートアレンジが見られます)
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3列目シートに腰掛けてみたところ。全ての席で良好な視界が確保できるよう、1/2/3列の着座位置は、後方にいくほど高く設定されている。
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2代目「シエンタ」では、福祉車両の開発にも力が入れられている。車いす仕様車は、複数のタイプがラインナップされており、写真のようにストレッチャーが収容可能なモデルも用意される。
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新型「シエンタ」には、単眼カメラとレーザーレーダーを使った予防安全装備「Toyota Safety Sense C」がオプションとして設定される。写真はそのセンサー部。
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