第105回:夜のカメラマンはスクープのためにスピードを求める
『ナイトクローラー』

2015.08.21 エッセイ

20年落ちのハッチバック

ジェイク・ギレンホールは、いわゆるイケメンの部類に入るのだろう。ナタリー・ポートマンやテイラー・スウィフトといった美女たちとの交際歴もあるし、キャリア当初は美青年キャラだった。しかし、どことなく陰がつきまとい、朗らかでお気楽なナイスガイという印象ではない。『ブロークバック・マウンテン』での鬼気迫る演技が決定的で、以降は作品ごとに別人になるカメレオン俳優の道を突き進んでいる。

『ナイトクローラー』では、約12kgの減量で撮影に臨んだそうだ。テーマは“パーフェクトな薄気味悪さ”である。イケメン性を押し隠し、ひたすら不気味さとうさんくささを前面に出した。観客は1ミリたりとも彼に共感しないだろう。アンチヒーローの爽快さもなく、ただただ不快なヤツなのだ。

ルイス(ギレンホール)は深夜を過ぎたロサンゼルスの操車場に侵入し、闇にまぎれてフェンスを切断している。盗んで業者に売るためだ。盗品を満載したハッチバック車は「トヨタ・ターセル」。20年落ちぐらいのぼろグルマだ。ルイスには定職がなく、カネに困っていることがよくわかる。せいぜい5万円ぐらいで買えるのではないかと思ってeBayを探したら、1985年モデルが305ドルで落札されていた。もしかするとその程度のカネもなく、盗んだクルマなのかもしれない。

© 2013 BOLD FILMS PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS
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「トヨタ・ターセル」
トヨタ初のFF車として、1978年に兄弟車の「コルサ」と一緒に販売を開始。エンジンは縦置きだった。映画に登場するのは2代目で、このモデルから「カローラII」も加わっている。
「トヨタ・ターセル」
    トヨタ初のFF車として、1978年に兄弟車の「コルサ」と一緒に販売を開始。エンジンは縦置きだった。映画に登場するのは2代目で、このモデルから「カローラII」も加わっている。

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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。