第11戦ベルギーGP「おなじみと久々の表彰台」【F1 2015 続報】

2015.08.24 自動車ニュース
メルセデスのルイス・ハミルトンがベルギーGP2勝目、今季6勝目、そして自身通算39勝目をあげた。(Photo=Mercedes)
メルセデスのルイス・ハミルトンがベルギーGP2勝目、今季6勝目、そして自身通算39勝目をあげた。(Photo=Mercedes)

【F1 2015 続報】第11戦ベルギーGP「おなじみと久々の表彰台」

2015年8月23日、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで行われたF1世界選手権第11戦ベルギーGP。レースはルイス・ハミルトン優勝、ニコ・ロズベルグ2位という“おなじみの結末”を迎えたものの、ロータスのロメ・グロジャンが久々の3位表彰台を獲得したことで、ポディウムに新鮮な風が吹いた。

11戦10回目のポールポジションで早くも今季最多ポールシッターとなったルイス・ハミルトン。シーズン中に6戦連続ポールを奪取したのは1999年のミカ・ハッキネン以来となる。懸念されたスタートでトップを守ると、その後はほぼ敵なし状態で完勝。チャンピオンシップにおけるリードを28点にまで広げた。(Photo=Mercedes)
11戦10回目のポールポジションで早くも今季最多ポールシッターとなったルイス・ハミルトン。シーズン中に6戦連続ポールを奪取したのは1999年のミカ・ハッキネン以来となる。懸念されたスタートでトップを守ると、その後はほぼ敵なし状態で完勝。チャンピオンシップにおけるリードを28点にまで広げた。(Photo=Mercedes)
スタート新ルールの“餌食”となったひとりが予選2番手のニコ・ロズベルグ。本人も認めるミスで一気に5位までポジションを下げ、レースの主導権を最大のライバル、ハミルトンに与えてしまった。2位フィニッシュで、また7点ハミルトンに差をつけられた。(Photo=Mercedes)
スタート新ルールの“餌食”となったひとりが予選2番手のニコ・ロズベルグ。本人も認めるミスで一気に5位までポジションを下げ、レースの主導権を最大のライバル、ハミルトンに与えてしまった。2位フィニッシュで、また7点ハミルトンに差をつけられた。(Photo=Mercedes)

■シーズン後半戦の始まりに「スタート」の新ルール

前戦ハンガリーGPから夏休みを挟んで4週間、F1は11月末までのおよそ3カ月間で9戦をこなす慌ただしい後半戦に突入した。その最初の舞台は、今年で48回目を迎えるベルギーのスパ・フランコルシャン。カレンダー最長7kmのコースが、起伏に富んだアルデンヌの丘陵地帯を這(は)うドライバーズ・サーキットだ。

ベルギーで注目を集めたのは、このレースから変更されることになったスタートの新ルールだった。ピットからの助言や指示が禁止され、スタートにおけるドライバーの責任が増すことになり、不確実性もアップ、レースがいっそう盛り上がるというのが、ルールメーカーであるFIA(国際自動車連盟)の狙いである。

スタート時にドライバーが手動で操作するクラッチの「バイト・ポイント」(動力がつながるポイント)は、これまでスタート前にピット側で最適なポイントを見つけ、無線を通じてドライバーに伝えられ、ドライバーがアジャストする方法が採られていたが、この手順は禁止されることになり、バイト・ポイントはレース前のピットオープンから変更できなくなった。

ドライバーや関係者からはこの新ルール適用に不安や疑問視する声も聞こえてきたが、中でもイギリスGP、ハンガリーGPと過去2戦のスタートで失敗しているメルセデス勢はナーバスにならざるを得なかったようだ。
イギリスではウィリアムズの2台に先を越されるも、突然の雨にも助けられ、最終的にはチャンピオンチームが1-2フィニッシュを飾ったが、続くハンガリーではフェラーリ2台に出ばなをくじかれ、セバスチャン・ベッテルに優勝を奪われたばかりか、メルセデスは表彰台にすらのぼれなかった。ポイントリーダーのルイス・ハミルトンに限ってはその前のオーストリアGPでも鈍い出だしでニコ・ロズベルグに勝利をさらわれていた。
予選ではフロントローを独占できるパフォーマンスの持ち主ゆえに、スタートこそが王者メルセデスの課題となっているのだ。

シーズン前半の10戦を終え、チャンピオンシップ首位のハミルトン、2位ロズベルグ、3位ベッテルの3人はいずれも21点差で覇権を争う展開。ここまで最多5勝のハミルトンの速さ、強さが際立つものの、残る9戦で得られるポイントは1人最大225点とまだまだある。シーズン後半戦、このスタートの新ルールはチャンピオン争いに影響を及ぼすのだろうか?

最古参チームのフェラーリは、世界選手権が始まった1950年の第2戦モナコGPデビューから数えて900戦目、セバスチャン・ベッテルは2007年第7戦アメリカGPから150戦目を迎えた。それぞれにとって節目となるレースは、しかし苦い後味に。ベッテルは予選で上位に食い込めず8番グリッドからスタート。大勢が2ストップを選ぶなか1ストップのギャンブルに出たが、3位を守り切ろうとしていた残り2周でタイヤがバースト、12位完走扱いに終わった。
スパ現役最多4勝のキミ・ライコネンは、またしてもトラブルに見舞われ予選Q2でストップ、16番グリッドから7位入賞。来季フェラーリ残留も決まり、心機一転、得意のスパで最良のリザルトを目指したがかなわず。(Photo=Ferrari)
最古参チームのフェラーリは、世界選手権が始まった1950年の第2戦モナコGPデビューから数えて900戦目、セバスチャン・ベッテルは2007年第7戦アメリカGPから150戦目を迎えた。それぞれにとって節目となるレースは、しかし苦い後味に。ベッテルは予選で上位に食い込めず8番グリッドからスタート。大勢が2ストップを選ぶなか1ストップのギャンブルに出たが、3位を守り切ろうとしていた残り2周でタイヤがバースト、12位完走扱いに終わった。
    スパ現役最多4勝のキミ・ライコネンは、またしてもトラブルに見舞われ予選Q2でストップ、16番グリッドから7位入賞。来季フェラーリ残留も決まり、心機一転、得意のスパで最良のリザルトを目指したがかなわず。(Photo=Ferrari)

■ハミルトン、早くも今季最多ポールシッターに

エンジン全開率約70%ともいわれるスパ・フランコルシャン。予選では強心臓メルセデス・ユニット勢がグリッド上位を占めた。
予想通りフロントローには“ワークス”メルセデスの2人が並んだが、今回もハミルトンが前。チャンピオンは今季11戦で10回目、6戦連続となるポールポジションを獲得し、シーズン半ばにして早くも年間最多ポールシッターに送られるトロフィーを手にした。ハミルトンに肉薄する場面があったものの、ロズベルグは最終的に0.458秒も差をつけられ2位に甘んじた。

ウィリアムズのバルテリ・ボッタスが3番グリッドからワークスチームに挑戦。チームの資金難や身売り話と苦境に立たされているロータスはロメ・グロジャンが4番手と健闘したものの、ギアボックス交換のペナルティーで5グリッド降格、惜しくも9番グリッドとなってしまった。
フォースインディアのセルジオ・ペレスが繰り上がり4位。非メルセデス陣営の先鋒(せんぽう)は、前年のウィナーであるレッドブルのダニエル・リカルドで、5番グリッドからレースに臨むこととなった。

続いてフェリッペ・マッサのウィリアムズ、パストール・マルドナドのロータスときて、フェラーリのベッテルはなんと8番グリッド(9番手タイム)に。ハンガリー優勝の勢いに乗りたかったスクーデリアだったが、キミ・ライコネンはトラブルによりQ2でマシンが止まり14位、ギアボックス交換で16番グリッドに沈むなど予選からつまずいてしまった。
トップ10グリッドの最後には、新人カルロス・サインツJr.のトロロッソが収まった。

マクラーレンの2人は、ジェンソン・バトン17番手、フェルナンド・アロンソ18番手。ホンダ・ユニットのコンポーネント変更によるペナルティーで最後方から追い上げることになった。

前戦ハンガリーGPで初表彰台を味わったレッドブルのダニール・クビアト(写真)は12番グリッドからスタート。最後のスティントでソフトタイヤを選び、ミディアムを履く前車を次々と追い抜くことに成功、結果4位でフィニッシュした。チームメイトで前年ベルギーGPの覇者、ダニエル・リカルドは5番グリッドから出走、マシントラブルでリタイアを喫した。(Photo=Red Bull Racing)
前戦ハンガリーGPで初表彰台を味わったレッドブルのダニール・クビアト(写真)は12番グリッドからスタート。最後のスティントでソフトタイヤを選び、ミディアムを履く前車を次々と追い抜くことに成功、結果4位でフィニッシュした。チームメイトで前年ベルギーGPの覇者、ダニエル・リカルドは5番グリッドから出走、マシントラブルでリタイアを喫した。(Photo=Red Bull Racing)

■ハミルトン盤石のスタート、ロズベルグは失敗し5位

注目の決勝スタートを前に、予選11位のニコ・ヒュルケンベルグがパワーロスを訴えスタートやり直し。レースは1周減の43周で行われることとなった。

シグナルが消えると、ハミルトンが順当にトップを守るも、鈍足なロズベルグは5位までドロップ。ペレスは4位から2位にジャンプアップを果たし、リカルドは5位から3位、ボッタスは3位から4位、そしてベッテルは8位から6位と、スターティンググリッドでの隊列は一瞬にして変わった。結果的にFIAの狙いはどんぴしゃりと当たったようだ。ロズベルグはオープニングラップ終了間際にボッタスを抜き4位、程なくしてベッテルも5位に上がった。

このレース、ハミルトンに唯一のピンチが訪れたとすれば、オープニングラップの「ケメル・ストレート」で2位ペレスに並ばれた時ぐらい。その後チャンピオンはトップを快走しレースをコントロール、今季6勝目に向けてまい進する。

その後方では、ストレートスピードが速いフォースインディアをドライブする2位ペレスに、非力なルノーを積むレッドブルのリカルドが1秒以下で迫っていた。
8周してリカルドはタイヤ交換のためにピットへ飛び込み、翌周ペレスもライバルの動きに倣った。結果、リカルドはペレスの前に出ることができアンダーカットに成功したものの、リカルドがソフトからミディアムに履き替えたのに対し、ペレスはソフトからソフトへと速い方のタイヤでつないできたため、コース上でフォースインディアが再び前に出た。

13周して2位ロズベルグ、翌周1位ハミルトンがピットインを行い、ロズベルグはペレスの前で、ハミルトンはトップのままコースに復帰。最初のタイヤ交換が一巡すると、1位ハミルトン、2位ロズベルグ、3位ペレス、4位リカルド、5位グロジャン、6位ベッテルとなり、またしてもスタートでばたついたメルセデスは無事に1-2を奪還したのだった。

サマーブレークを経て、進化型ホンダ・ユニット「MkIII」を持ち込んだマクラーレン。さまざまなコンポーネントを交換したことで2人合計105グリッド(!)降格ペナルティーとなったが、グリッドの数は20まで。予選17位のジェンソン・バトン、18位フェルナンド・アロンソ(写真)は最後尾からスタートした。レースでは、後ろにマノー・マルシャの2台を従えてアロンソ13位、バトン14位。2台とも周回遅れでチェッカードフラッグを受けた。(Photo=McLaren)
サマーブレークを経て、進化型ホンダ・ユニット「MkIII」を持ち込んだマクラーレン。さまざまなコンポーネントを交換したことで2人合計105グリッド(!)降格ペナルティーとなったが、グリッドの数は20まで。予選17位のジェンソン・バトン、18位フェルナンド・アロンソ(写真)は最後尾からスタートした。レースでは、後ろにマノー・マルシャの2台を従えてアロンソ13位、バトン14位。2台とも周回遅れでチェッカードフラッグを受けた。(Photo=McLaren)

■ベッテル対グロジャン、白熱の3位争いはグロジャンに軍配

レースを通じて元気だったのがロータスのグロジャンだった。19周目にリカルド、21周目にペレスを抜き表彰台圏内の3位に。そんな折、リカルドのレッドブルがトラブルでコース上にストップしたことで、バーチャル・セーフティーカーの指示が出ることになった。

グロジャンはこのスロー走行中にピットに入ったことで4位に、ベッテルが繰り上がって3位になり、レースは再開した。
レース半ばには、ハミルトン、ロズベルグ、ベッテルの“いつもの3人”がレースをけん引。ただこの時点でもロータスはポディウムを虎視眈々(たんたん)と狙っていた。

31周して首位ハミルトン、続いて2位ロズベルグが2度目にして最後のタイヤ交換を完了。メルセデスの1-2フィニッシュはほぼ間違いなかったが、3位ベッテルは1ストップでこのポジションを守り切るギャンブルに出た。
ベッテルと既にタイヤを替えている4位グロジャンのギャップは3秒半ば。それが34周で3秒を切り、37周では1秒台、38周目にはDRS作動圏内の1秒内に突入した。

使い古しのタイヤで何とか3位を守り続けてきたベッテルだったが、残り2周、名物コーナー「オー・ルージュ」の急坂を登り切った直後にフェラーリの右リアタイヤはついにバーストを起こした。フェラーリは900戦目、ベッテルにとっては150戦目となるレースを、ポディウムで飾ることはできなかった。

メルセデスは今年7回目の1-2、ハミルトンは6回目の勝利と、ベルギーGPはいってみれば“おなじみの結末”を迎えたが、一方でグロジャン&ロータスの2013年11月のアメリカGP以来となるポディウムは、久しぶりのことだった。
資金難はこの中堅チームでは珍しいことではないのだが、ここにきてルノーによるロータス買収話も協議進行中という。先行きがはっきりしない状況で、グロジャンの走りがチームの戦意に火をつけ、素晴らしい戦術で3位の座を勝ち取ったのだった。

今シーズンは早くも次のイタリアGPでヨーロッパ戦を終えることになる。決勝は9月6日に行われる。

(文=bg)

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