第12戦イタリアGP「53点リードで残り7戦へ」【F1 2015 続報】

2015.09.07 自動車ニュース
メルセデスのルイス・ハミルトンがイタリアGPで圧勝。今シーズン7勝目、自身通算40勝目をあげた。(Photo=Mercedes)

【F1 2015 続報】第12戦イタリアGP「53点リードで残り7戦へ」

2015年9月6日、イタリアのモンツァ・サーキットで行われたF1世界選手権第12戦イタリアGP。レース後に発覚した「タイヤ内圧問題」も無事に解決し、今季7勝目を確かなものにしたメルセデスのルイス・ハミルトンは、53点ものリードを築いて残り7戦のフライアウェイを迎えることに。王者に死角はあるのか?

7戦連続、今季11回目、通算49回目のポールポジションを決めたハミルトンは、スタートからゴールまで危なげないレース運びで2位セバスチャン・ベッテルを寄せ付けなかった。これでキャリア通算40勝目、歴代4位のベッテルまであと1勝と迫った。(Photo=Mercedes)
レース後「人生最良の2位」と語ったベッテル(写真手前)。トップのハミルトンにはかなわなかったが、フェラーリドライバーとして初めて迎えたイタリアGPでの表彰台、眼下に広がる赤い波を前にして素直に喜びを表していた。(Photo=Ferrari)

■F1に屋根がつく日

8月23日、アメリカはペンシルバニアのオーバル・コース、ポコノで行われたインディカー・シリーズのレースにおいて悲劇が起きてしまった。前を走るトップのマシンが単独でウォールにヒットしクラッシュ。飛び散ったパーツのうちノーズ部分が、後続のジャスティン・ウィルソンのヘルメットを直撃、彼のマシンはインサイドの壁に当たり止まった。ウィルソンはヘリで病院に緊急搬送されたが、頭部に受けたダメージが致命傷となり、翌日帰らぬ人となってしまった。

F1やインディカーのようなフォーミュラカーでは、ドライバーの頭部が外部にむき出しとなるため、いっそうの危険が伴う。元F1ドライバーのウィルソンも、また7月に亡くなったジュール・ビアンキも、2011年に事故死したインディ500ウィナー、ダン・ウェルドンも、頭部損傷により命を落とした。またF1マルシャのテストドライバーだったマリア・デ・ビロタは、2012年のテスト走行中にトラックに激突、右目を失う重傷を負った(ビロタは翌年、この事故の影響で亡くなっている)。
さらにさかのぼれば、1994年のサンマリノGP、アイルトン・セナの死因も、クラッシュで飛んだサスペンションの部品がヘルメットに突き刺さったことによるとされる。

ウィルソンの訃報を受け、F1を統括するFIA(国際自動車連盟)は、ドライバーの頭を保護するパーツをテストすることを表明した。しかし具体的なアイデアは定まっておらず、戦闘機のようにドライバーをすっぽりと覆うキャノピー(風防)もあれば、メルセデスが提案する、楕円(だえん)状のピラーで飛来物から頭を守る方法などさまざまだ。

そしてドライバーの間でも賛否が分かれている。ジェンソン・バトンのようにキャノピー導入に前向きな発言をする向きもいれば、クローズド・コックピットのマシンで今年のルマンを制したニコ・ヒュルケンベルグのように否定的な立場をとるものもいる。「視界が狭まる」あるいは「脱出に難あり」などの懸念点も聞こえてくるが、安全性追求の手を緩めるわけにはいかないのだ。

前戦ベルギーGPでは、ゴール目前でセバスチャン・ベッテルのタイヤが高速走行中にバースト、肝を冷やすシーンがあった。ベルギーではフリー走行中にニコ・ロズベルグも突然のタイヤブローに見舞われており、4冠の元王者ベッテルは「許されないことだ」とタイヤサプライヤーのピレリに激怒した。当初はタイヤの摩耗を疑っていたピレリは、レース後に詳細な調査を実施。その結果、タイヤに通常では考えられないほどの数多くのカットが発見された。サポートレースでの事故による破片がコース上に残っており、これにハイスピードで長時間走行したことが加わり、突発的なバーストにつながったとピレリは結論付けた。

事故の原因は詳細に検証され、試行錯誤の中から最善の策を見つけなければならない。レースには終わりはあるが、安全にゴールはないのだ。

新スペックのパワーユニットが不調で、既に5レースも使っていた旧ユニットに戻さなければならなかったニコ・ロズベルグ(写真前)。予選4位からスタートで出遅れたものの、何とか表彰台圏内の3位まで挽回。徐々に2位ベッテルとの差を詰めていたが、残り2周でマシンは白煙と火を噴き痛恨の無得点。(Photo=Mercedes)

■ポールポジションのハミルトンにフェラーリが肉薄

ベルギーに続く高速コース、モンツァでの65回目のF1は、予想通り金曜日からメルセデスがけん引役を担ったのだが、予選では、地元ファンの声援で息巻く跳ね馬の一群が奮起した。

3回のフリー走行すべてでトップタイムをマークしていたメルセデスのルイス・ハミルトンが予選に入っても安定した速さを見せつけ、後続に0.234秒差をつけ7戦連続、今季11回目、通算49回目のポールポジションを奪った。メルセデスは23戦連続でポールを獲得したことになり、あとひとつで1992-1993年にウィリアムズが達成した24戦連続記録に並ぶことになる。

2位につけたのはフェラーリのキミ・ライコネン。僚友ベッテルを0.054秒の僅差で抑え今シーズン最高位からスタートすることとなった。
2台の赤いマシンに先を越され、ロズベルグのシルバーアローは4番グリッド。メルセデスはイタリアで新エンジンを投入したが、予選前ロズベルグがユニットに異変を感じたため、パワーで劣る古いバージョンに換装されていたのだった。

3列目にはウィリアムズの2台、フェリッペ・マッサ5位、バルテリ・ボッタス6位。ボッタスから0.5秒離されフォースインディアのセルジオ・ペレスが7位、前戦3位表彰台を獲得したロータスのロメ・グロジャンは8位だった。セッション中にパワーロスを訴えたフォースインディアのヒュルケンベルグは9番手。“非ワークス”フェラーリユニットながら善戦したザウバーのマーカス・エリクソンが10番手だったものの、予選中にヒュルケンベルグをブロックしたとして3グリッド降格ペナルティーを受け、代わりにパストール・マルドナドのロータスが繰り上がり10番グリッドとなった。

マクラーレンの予選はQ1までとなり、ジェンソン・バトン16位、フェルナンド・アロンソ17位。他車を含めたエンジン関連のペナルティーで最終的にバトン15位、アロンソ16位からレースに臨むこととなった。

予選で今季最高の2位に入り、フェラーリのお膝元でレースに向けて期待も高まったキミ・ライコネン。しかしスタートで大失敗し、シグナルが消えてもグリッドから動けず。ようやく持ち直した頃には最後尾に落ちていた。5位入賞にも喜べず、イタリアをあとにした。(Photo=Ferrari)

■予選2位のライコネン、スタートミスで最後尾に

過去10年のモンツァでのポールシッターの勝率は80%。直線とシケインを組み合わせたハイスピードコースで最も優位なポジションからスタートしたハミルトンは、無事に最初のターンをトップで駆け抜け、“53周の一人旅”に出た。

2番グリッドのライコネンは、シグナルが消えた瞬間にアンチストールが作動しマシンが動かず、ようやく持ち直した頃には最後尾へと落ちていた。ベッテルが2位で先頭のハミルトンを追い、マッサ、ボッタスが3、4位にそれぞれポジションを上げ、ロズベルグは6位までダウンし、オープニングラップが終わった。

10周を過ぎ1位ハミルトンと2位ベッテルの間には5.4秒、19周もすると10秒までギャップが拡大し、メルセデスとフェラーリの力量の差がレース序盤から顕在化した。

一方、4位ボッタスに近づくもブレーキの温度が上がり、なかなか抜くに至らなかったのが、5位を走っていたロズベルグ。彼はピットインのタイミングで表彰台をものにしようと、19周目にソフトからミディアムタイヤに交換した。メルセデスに先手を打たれたウィリアムズは20周目にマッサ、続いてボッタスをピットに呼んだが、時すでに遅し。ロズベルグは2台のウィリアムズの前に出ることに成功した。

ハミルトンに18秒も逃げられた2位ベッテルは26周目にソフトからミディアムへスイッチ。翌周首位ハミルトンもピットへ駆け込み、トップの座をキープしてコースに復帰した。
レース中盤にタイヤ交換が一巡すると、1位ハミルトン、2位に19秒差でベッテル、ベッテルから4秒遅れて3位ロズベルグ。いつもの顔ぶれが、ほぼこの間隔を維持したままレースは膠着(こうちゃく)した。

マクラーレン・ホンダにとって、ベルギー、イタリアの高速コース2連戦は特に屈辱的な週末に。エンジン関連のグリッドペナルティーもあったが、それを抜きにしても予選順位は下の方で、ジェンソン・バトン(写真)16位、フェルナンド・アロンソ17位。他のドライバーの降格もありそれぞれ1つ上のグリッドからレースに臨んだ。スタートに成功したバトンは一時入賞圏内の9位を走るもズルズルと後退。アロンソとタンデムで後方集団を形成した。結局、バトン14位完走、アロンソはゴール前に戦列を去るも18位完走扱い。(Photo=McLaren)

■ロズベルグ痛恨のノーポイント、そしてメルセデスのタイヤに……

落ち着いたレース展開に動きがではじめたのは終盤に入ってから。40周を前に、2位ベッテルと3位ロズベルグの差が縮まりだし、40周目には3.6秒あったのが50周目には1.1秒と、赤いマシンのテールにシルバーのマシンが追いついてきた。

地元イタリアでフェラーリが王者メルセデスに抜かれる瞬間は、しかし訪れなかった。残り2周、ロズベルグのマシンから白煙と火が上がり、コース脇にストップ。6レース酷使し続けてきた古いエンジンがついに音を上げたのだった。ロズベルグは17位完走扱いとなったものの、メルセデスにとって今季初のメカニカルトラブルでのリタイア。ランキング2位のロズベルグにとっては、痛恨のノーポイントとなった。

一方トップ快走のハミルトンには、48周目にチームから「後続とのギャップを広げろ、質問はするな、あとで説明する」という不可解な無線が飛んでいた。この時点でリードタイムは23秒。最終的にハミルトンは25秒差で真っ先にチェッカードフラッグを受けるのだが、このチームの指示の意味することはレース後に明らかになる。

レース前、FIA(国際自動車連盟)が各車のタイヤの内圧をチェックした際、メルセデスの2台がピレリの指針である数値を下回っていたことが分かった。規定が「19.5psiかそれ以上」なのに対し、ハミルトンの左リアは0.3psi、ロズベルグも同じタイヤで1.1psi少なかったというのだ。
メルセデスがその情報を知ったのはゴール前のことで、チームは万一のペナルティーに備え、ハミルトンにできるだけリードタイムを稼いでおくようにと指示したわけだった。

失格という最悪のシナリオも想定されたが、レース後の事情聴取の結果、問題なしとされた。レーススチュワードの結論は、メルセデスは当初から適正な内圧としていたが、FIAが計測したタイミングではタイヤウオーマーのスイッチが切られており、タイヤ自体が冷えて内圧も下がっていた、というものだった。

優勝を確かなものにしたハミルトンは、無得点に終わったランキング2位ロズベルグに53点という2勝分以上の大差をつけた。
2年連続3度目のタイトルを徐々に自らの元に手繰り寄せているように見えるハミルトン。予選、決勝いずれでも非の打ち所がない王者に死角があるとすれば、今のところは、ロズベルグに起きたようなトラブルぐらいしか思い当たらない。

今年のヨーロッパ戦を終えたF1は、後半7戦のフライアウェイへと旅立つ。次戦シンガポールGP決勝は9月20日に行われる。

(文=bg)

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