第15戦ロシアGP「残り100点、差は66点」【F1 2015 続報】

2015.10.12 自動車ニュース
ロシアGPを2年連続で制したメルセデスのルイス・ハミルトン(右から2番目)、2位に終わったフェラーリのセバスチャン・ベッテル(一番左)、そしてフォースインディアを駆り3位に入ったセルジオ・ペレス(一番右)。(Photo=Mercedes)
ロシアGPを2年連続で制したメルセデスのルイス・ハミルトン(右から2番目)、2位に終わったフェラーリのセバスチャン・ベッテル(一番左)、そしてフォースインディアを駆り3位に入ったセルジオ・ペレス(一番右)。(Photo=Mercedes)

【F1 2015 続報】第15戦ロシアGP「残り100点、差は66点」

2015年10月11日、ロシアのソチ・オートドロームで行われたF1世界選手権第15戦ロシアGP。ポールシッターのニコ・ロズベルグに起きた“不運”によって、ルイス・ハミルトンは“棚ぼた”で今季9回目の勝利を手に入れた。残り4戦、ハミルトンの2年連続3度目となるタイトル獲得の瞬間は、いよいよ近づきつつある。

スタート直後、実質的な最初のコーナーであるターン2に飛び込むF1マシン。ポールシッターのニコ・ロズベルグ(先頭左)に予選2位ハミルトン(同右)が並びかけるも、ロズベルグがトップを守ってオープニングラップを終えた。(Photo=Mercedes)
スタート直後、実質的な最初のコーナーであるターン2に飛び込むF1マシン。ポールシッターのニコ・ロズベルグ(先頭左)に予選2位ハミルトン(同右)が並びかけるも、ロズベルグがトップを守ってオープニングラップを終えた。(Photo=Mercedes)
日本GPでの「GP2エンジン発言」で物議を醸したマクラーレンのフェルナンド・アロンソ(写真)はロシアでGP出場250戦目。グリッドではクルーとともに日本風に鉢巻きを巻いてチームとの協調姿勢を示す場面も見られた。来季をにらんだ改変を行い、まずまずの手応えをつかんだホンダのパワーユニットをもって、ジェンソン・バトンは予選13位から9位入賞。各種ユニット交換のペナルティーで19番グリッドからスタートしたアロンソも10位でゴールしたが、コースカットでレースタイムに5秒加算のペナルティーを受けたため、11位に。惜しくもダブル入賞を逃した。(Photo=McLaren)
日本GPでの「GP2エンジン発言」で物議を醸したマクラーレンのフェルナンド・アロンソ(写真)はロシアでGP出場250戦目。グリッドではクルーとともに日本風に鉢巻きを巻いてチームとの協調姿勢を示す場面も見られた。来季をにらんだ改変を行い、まずまずの手応えをつかんだホンダのパワーユニットをもって、ジェンソン・バトンは予選13位から9位入賞。各種ユニット交換のペナルティーで19番グリッドからスタートしたアロンソも10位でゴールしたが、コースカットでレースタイムに5秒加算のペナルティーを受けたため、11位に。惜しくもダブル入賞を逃した。(Photo=McLaren)

■一筋縄ではいかないF1パワーユニット競争

前戦日本GPのレース中、ホンダのパワーユニットを下位カテゴリー「GP2」レベルのエンジンだと無線で叫び、その声が国際映像で世界中に流されたのだから、フェルナンド・アロンソとマクラーレンの関係に危機が訪れているのではないかと色めき立つ向きがいたとしても不思議はなかった。

八郷隆弘社長も見守るホンダのお膝元、鈴鹿サーキットで、12番グリッドから11位でレースを終えた2005&2006年チャンピオンの発言の真意はどこにあるのか? 思うように走れないいら立ちなのか、はたまたチームもしくはホンダに対する何らかのメッセージなのか?

長年チームを率い、1980年代後半からの「マクラーレン・ホンダ黄金時代」を築いたロン・デニスは、アロンソの発言に「プロフェッショナリズムを欠く」と苦言を呈した。ロシアGPに入ったアロンソ自身は公式会見で「フラストレーションを口にしただけ」と説明し、来季もマクラーレンに残るつもりかとの問いには「もちろん、そして2017年も」と、契約満了までチームにとどまるつもりであることを明言した。

しかし、2007年にルノーからマクラーレンへ移籍したアロンソには、チームとの軋轢(あつれき)から1年で古巣に戻った過去もある。当代きっての名ドライバーとして知られるアロンソには、一方でなかなか胸の内が読みづらい人間という評判もある。メディアが「早期離脱か、1年休養か?」と騒ぐには、それなりの理由があるわけだ。

とはいえ、アロンソが不満を口にしたくなる理由もまた理解できた。今季14戦でマクラーレンが獲得したポイントはわずかに17点で、10チーム中9位(下には無得点のマノー・マルシャのみ)。レースでの最高位は今のところ第10戦ハンガリーGPの5位、完走率は50%にとどまる。

ホンダの弱点はハイブリッドシステムにあるといわれる。F1における「ERS」(エネルギー回生システム)は、ブレーキを使って運動エネルギーを回生する「MGU-K」と、エンジン排熱を利用する「MGU-H」の2系統がある。このうち「MGU-K」にはルール上、回生できるエネルギー量とその放出に制限があるが、「MGU-H」は無制限だ。ホンダのユニットには、この自由度が高い「MGU-H」で十分なエネルギーを利用できないという問題があり、鈴鹿のストレートでマクラーレンがやすやすと抜かれていた要因もここにあるとされる。

さらにマシンと一体化したパッケージングを目指すホンダ(&マクラーレン)は、この複雑な機構を極めてコンパクトに仕上げようとしたために、問題解決はますます難しくなった。さまざまな課題を抱えても、パワーユニットには厳しい開発規制も課されており、1.6リッターV6ターボとERSでトータルな性能を引き出さなければならない現代のF1パワーユニット競争は、一筋縄ではいかないのだ。

そんな苦境に立たされるマクラーレン・ホンダにとって、先頃明らかになったジェンソン・バトンの来季残留はいいニュースだと見るべきだろう。チームとの行き違いから一時は今季限りで引退する可能性もあったという2009年チャンピオンは、来季参戦300戦という節目を迎えることになる。難局に立ち向かうには大ベテランの知見がきっと役に立つはずである。

今年既に3勝を記録しているフェラーリが昨年1勝もできなかったことを思えば、マクラーレンとホンダの挽回も不可能ではないのだ。

予選でポールポジションを取ったまではよかった。昨年失敗したスタートも、うまくいった。しかし非情にもスロットルペダルのダンパーが不調となり、リタイアを余儀なくされた。ロズベルグはこの無得点レースでランキング3位に後退、ポイントリーダーのハミルトンとの間には73点もの大きなギャップができた。(Photo=Mercedes)
予選でポールポジションを取ったまではよかった。昨年失敗したスタートも、うまくいった。しかし非情にもスロットルペダルのダンパーが不調となり、リタイアを余儀なくされた。ロズベルグはこの無得点レースでランキング3位に後退、ポイントリーダーのハミルトンとの間には73点もの大きなギャップができた。(Photo=Mercedes)

■2戦連続でロズベルグがポールポジション獲得

ソチで行われる2回目のロシアGPは、最初のフリー走行は軽油で汚れたコースを掃除するために時間が短縮され、2回目は雨、3回目はセッション終盤にトロロッソのカルロス・サインツJr.が大クラッシュし赤旗中断のまま終了と、各車しっかりした走り込みができないまま予選を迎えた。

手探りな部分を多く残す中、好調なタイムを刻み続けたのがメルセデス勢、とりわけニコ・ロズベルグだった。Q1、Q2と最速、そしてトップ10グリッドを決めるQ3に入ると、最初のアタックでルイス・ハミルトンに0.320秒の差をつけ、暫定1位に。続く2回目のフライングラップ中にハミルトンがコースオフするミスをおかしたことで、ロズベルグの2戦連続、今季3回目、通算18回目のポールポジションが決まった。
予選2位のハミルトンは、3戦連続で予選P1をライバルに明け渡した。

メルセデス最前列の後方には、3番グリッドにウィリアムズのバルテリ・ボッタス、続いてセバスチャン・ベッテル4位、キミ・ライコネン5位とフェラーリの2台がメルセデス追撃に備えた。予選6位にニコ・ヒュルケンベルグ、7位セルジオ・ペレスとフォースインディア勢が並び、財政難のロータスで健闘したロメ・グロジャンが8位、予選出走した唯一のトロロッソとなったマックス・フェルスタッペンが9位、そしてレッドブルのダニエル・リカルドが10位におさまった。

マクラーレンはQ2進出のバトンが13番グリッド、アロンソはQ1どまりで16番グリッド。アロンソはターボチャージャーやMGU-Hを交換したことでグリッドダウンのペナルティーを受け、最後列19番グリッドとなった。

メルセデス・パワーユニット勢が上位争いを繰り広げる中、フェラーリもこれに参戦。ベッテルはスタートでつまずき4番グリッドから5位に後退するも、ピット作戦でオーバーカットを成功させ、2位でゴール。しかしハミルトンと優勝を争うまでにはならず。メルセデスとの力量の差が、またしてもはっきり出たレースだった。(Photo=Ferrari)
メルセデス・パワーユニット勢が上位争いを繰り広げる中、フェラーリもこれに参戦。ベッテルはスタートでつまずき4番グリッドから5位に後退するも、ピット作戦でオーバーカットを成功させ、2位でゴール。しかしハミルトンと優勝を争うまでにはならず。メルセデスとの力量の差が、またしてもはっきり出たレースだった。(Photo=Ferrari)

■ロズベルグ、スロットルペダルのトラブルで痛恨のリタイア

大クラッシュ後にメディカルチェックのため病院に運ばれたトロロッソのサインツJr.は、予選こそ欠場したもののレース出場にOKが出たことで、20台フルグリッドでスタートを迎えた。

開催初年度の昨年、ロズベルグはスタート直後のターン2で痛恨のドライビングミスをおかし自滅してしまった。同じあやまちを2度繰り返さない、そう心に誓ったか、ポールシッターのロズベルグはハミルトンを従えてトップの座を守り、3位ライコネン、4位ボッタス、5位ベッテルらが続いた。
しかしその後方ではヒュルケンベルグがスピン、マーカス・エリクソンのザウバーを巻き添えにしてコースに止まったため、53周レースの1周目にしてセーフティーカーが導入された。

4周目に再スタートが切られると、4位に落ちていたボッタスがメルセデス・ユニットにむちを打ち、ライコネンからやすやすと3位の座を奪った。

せっかくトップに立ったロズベルグだったが、程なくして無線でスロットルペダルの違和感を訴え、ハミルトンに抜かれ、その後失速しながらピットに戻ってきた。タイトル争いにとどまりたいロズベルグには、痛すぎるリタイアだった。

12周目、グロジャンのロータスが長い円弧を描くターン3で挙動を乱し派手にクラッシュ。2度目のセーフティーカー登場となる。これを機にタイヤ交換に踏み切る陣営も出たものの、上位陣はコースにとどまり続け、1位ハミルトン、2位ボッタス、3位ライコネン、4位ベッテル、5位クビアトというオーダーで17周目に戦いが再開された。この直後に起こった、激しいフェラーリ同士の争いはベッテルに軍配が上がり、3位にポジションアップを果たした。

2014年第3戦バーレーンGP以来となる3位表彰台にわいたフォースインディアのセルジオ・ペレス。セーフティーカーラン中のタイヤ交換が奏功し、表彰台圏内までのぼりつめた。レース終盤、苦しいタイヤでバルテリ・ボッタス、キミ・ライコネンに抜かれるも、先行した2台が接触、3位奪還となった。(Photo=Force India)
2014年第3戦バーレーンGP以来となる3位表彰台にわいたフォースインディアのセルジオ・ペレス。セーフティーカーラン中のタイヤ交換が奏功し、表彰台圏内までのぼりつめた。レース終盤、苦しいタイヤでバルテリ・ボッタス、キミ・ライコネンに抜かれるも、先行した2台が接触、3位奪還となった。(Photo=Force India)
ロズベルグが不運なトラブルに見舞われ、“棚ぼた”で今季9勝目を手に入れたハミルトン。レース終盤、リアウイングまわりに異変を感じたというが、大きな問題にならなかった。この勝利でメルセデスは、昨年と同様にロシアでコンストラクターズタイトルを決めた。またハミルトンは、通算勝利数を「42」にまで積み上げ、彼にとってのヒーローであるアイルトン・セナを抜き、ベッテルと肩を並べた。自身のリードは66点となり、圧倒的に優位な立場で残り4戦に向かう。(Photo=Mercedes)
ロズベルグが不運なトラブルに見舞われ、“棚ぼた”で今季9勝目を手に入れたハミルトン。レース終盤、リアウイングまわりに異変を感じたというが、大きな問題にならなかった。この勝利でメルセデスは、昨年と同様にロシアでコンストラクターズタイトルを決めた。またハミルトンは、通算勝利数を「42」にまで積み上げ、彼にとってのヒーローであるアイルトン・セナを抜き、ベッテルと肩を並べた。自身のリードは66点となり、圧倒的に優位な立場で残り4戦に向かう。(Photo=Mercedes)

■最後の表彰台の一角をかけた劇的なフィナーレ

20周を過ぎ、1位ハミルトンと2位ボッタスの間隔が5秒以上に開く一方で、2位ボッタスと3位ベッテルの差は2.4秒から徐々に縮まってきていた。25周目には1秒を切り、真後ろにベッテルを従えていたボッタスは、27周目にたまらずピットに飛び込みスーパーソフトからソフトタイヤに交換。ボッタスが混雑したコースに戻ったことを知るやいなや、古いタイヤで走行を続けるフェラーリの2台には「飛ばしてオーバーカットを!」との指示が出された。

31周目、まずはベッテルがこの日唯一のピットストップに踏み切るとボッタスの前で復帰、3位から2位へのオーバーカットに成功した。翌周ライコネンも入ったが、こちらはキリギリ間に合わず、ボッタス前、ライコネンは後ろ。32周目、悠々とトップを走るハミルトンがタイヤを交換すると、こちらは1位のままコースに戻った。

タイヤ交換が一巡すると、1位ハミルトン、2位ベッテル、3位にはセーフティーカー中にピットストップを行ったペレス、4位に同じくセーフティーカー中に先手を打っていたリカルド、そして5位ボッタス、6位ライコネンというオーダー。同郷のボッタスとライコネンが丁々発止とやり合ううちに、長いスティントを走らなければならない前のペレス、リカルドは何とか逃げ切ろうと、タイヤの状態を見ながら慎重に周回を重ねた。

レース終盤、リカルドを抜きボッタスが4位に上がったのは45周目、ライコネンは48周目に5位に浮上した。2人のフィンランド人ドライバーが次に照準を合わせたのは、目前のメキシカン、3位のペレス。タイヤが苦しいペレスも必死に応戦し、3-4-5位の3台は数珠つなぎになりながら劇的なフィナーレに突入していった。

残り2周、ペレスの間隙(かんげき)を突きボッタスが3位に、すぐさまライコネンも続き4位に上がった。ポディウムの最後の一角をかけた同郷ドライバー対決は、勢いに乗り強引に抜こうとしたライコネンとボッタスが接触するという、後味の悪い結末に。ボッタスはコース外にはじき出され、ライコネンは手負いのマシンでよろよろと走行、その脇をペレスが通り抜けていった。

レースは、ハミルトンが優勝。ベッテル2位、そしてペレス3位の順番でチェッカードフラッグが振られた。
いわば“棚ぼた優勝”となったハミルトンにとっては今季9勝目。これまでチャンピオンシップでハミルトンを追いかけてきたロズベルグは無得点でランキング2位から3位に落ち、代わりにベッテルが2位に浮上した。
残り4戦=100点満点で、ハミルトンのリードは66点。その差はいよいよ決定的なものになりつつある。

次戦アメリカGPの決勝は、10月25日に行われる。

(文=bg)

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