最終戦アブダビGP「新シーズンへの決意」【F1 2015 続報】

2015.11.30 自動車ニュース
F1最終戦アブダビGPの表彰台。優勝はメルセデスのニコ・ロズベルグ(写真右から2番目)、2位はメルセデスのルイス・ハミルトン(一番左)、3位に終わったフェラーリのキミ・ライコネン(一番右)。(Photo=Mercedes)
F1最終戦アブダビGPの表彰台。優勝はメルセデスのニコ・ロズベルグ(写真右から2番目)、2位はメルセデスのルイス・ハミルトン(一番左)、3位に終わったフェラーリのキミ・ライコネン(一番右)。(Photo=Mercedes)

【F1 2015 続報】最終戦アブダビGP「新シーズンへの決意」

2015年11月29日、アブダビのヤス・マリーナ・サーキットで行われたF1世界選手権第19戦(最終戦)アブダビGP。2年連続してタイトルをチームメイトに奪われていたメルセデスのニコ・ロズベルグだったが、シーズン最後の3戦すべてでポール・トゥ・ウィンを達成し、来季へ希望をつなぐ活躍を見せた。

6戦連続となるポールポジションから絶好のスタートでトップを守ったロズベルグ(写真先頭)。ハミルトンはやや鈍い出だしで予選3位のライコネンに並ばれそうになるが2位の座をキープした。(Photo=Mercedes)
6戦連続となるポールポジションから絶好のスタートでトップを守ったロズベルグ(写真先頭)。ハミルトンはやや鈍い出だしで予選3位のライコネンに並ばれそうになるが2位の座をキープした。(Photo=Mercedes)
昨季の5勝を1つ上回る6勝目を挙げたロズベルグ。2年連続でハミルトンにタイトルを奪われたが、今季終盤の力走を来季も見せられれば、チャンピオン争いはいっそう白熱することだろう。(Photo=Mercedes)
昨季の5勝を1つ上回る6勝目を挙げたロズベルグ。2年連続でハミルトンにタイトルを奪われたが、今季終盤の力走を来季も見せられれば、チャンピオン争いはいっそう白熱することだろう。(Photo=Mercedes)
同じマシンに乗る最大のライバルに打ち勝つ難しさ。昨季から今季中盤までロズベルグが頭を悩ませた難題に、今度は王者ハミルトンがぶち当たった。コース上で抜けないならと作戦に工夫を凝らし、ロズベルグよりも長めのスティントで揺さぶりをかけるも成功せず。それでも10勝し自らのヒーロー、アイルトン・セナと肩を並べる3度目のタイトルを獲得した今季は、ハミルトンにとって最良のシーズンだったことは間違いないだろう。(Photo=Mercedes)
同じマシンに乗る最大のライバルに打ち勝つ難しさ。昨季から今季中盤までロズベルグが頭を悩ませた難題に、今度は王者ハミルトンがぶち当たった。コース上で抜けないならと作戦に工夫を凝らし、ロズベルグよりも長めのスティントで揺さぶりをかけるも成功せず。それでも10勝し自らのヒーロー、アイルトン・セナと肩を並べる3度目のタイトルを獲得した今季は、ハミルトンにとって最良のシーズンだったことは間違いないだろう。(Photo=Mercedes)

■それぞれの締めくくり

3月のオーストラリアGPで開幕した2015年シーズンのF1は、8カ月を超える激闘の末に中東アブダビで最終戦を迎えた。
昨年のヤス・マリーナでのファイナルレースは、ルイス・ハミルトン対ニコ・ロズベルグのチャンピオン決定戦だったが、今年は10月の第15戦ロシアGPでメルセデスがコンストラクターズタイトルを、続く第16戦アメリカGPでハミルトンがドライバーズタイトルを獲得しているため、リラックスした中で来季に向けた様々な調整が行われていた。

まずは、第14戦から第18戦まで5戦連続でポールポジションを獲得、直近の2戦で連勝しているロズベルグ。遅すぎる復調だったが、2年連続で最大のライバルであるチームメイト、ハミルトンに負け越しているだけに、3連勝してオフシーズンに入り、2016年につなげたいところだ。もちろんタイトルを手中におさめたハミルトンとて力を抜いているわけではないだろうが、ロズベルグは昨季見られた予選での勝負強さを取り戻し、それをレース結果に結びつけることに自信を持ちつつあった。
最近の速さ、強さの要因をたずねられると「速くなったまでさ」と煙に巻くように返すロズベルグ。その理由を知っていたとしても容易に手の内を明かすようなことはしないだろうが、一説では、ベルギーGPで起きたタイヤバーストを受けてタイヤの内圧と温度管理の規定が厳しくなったことが、メルセデスのマシン開発に何らかの影響を及ぼし、結果ハミルトンとロズベルグのパフォーマンスに波及しているのではないか、という見方もあった。いずれにしろ、復調ロズベルグの戦いぶりが最終戦の見どころになっていたのは事実だろう。

復調といえば今季一番の“功労者”はフェラーリだ。表彰台の頂点に一度ものぼることのなかった2014年から一転、新加入セバスチャン・ベッテルが第2戦マレーシアGP第10戦ハンガリーGP第13戦シンガポールGPと3勝をマークしコンストラクターズランキング2位を決めた。特にシーズン後半は、レースペースで王者メルセデスに肉薄する場面もあり、ドライバーズランキング3位のベッテル、そして同郷バルテリ・ボッタスと1点差で年間4位の座を争うキミ・ライコネンにも、フェラーリとしてのシーズン4勝目の期待がかかった。

昨年の選手権2位から今年4位と苦しんだレッドブル。4年連続でダブルタイトルを勝ち取ったエンジンサプライヤー、ルノーを苦戦の原因として、シーズン途中で新たなパートナーを探したが、メルセデス、フェラーリ、ホンダにも断られ、F1撤退の可能性すらちらつかせていた。どうやら来季のパワーユニットの目処はついたらしく、アブダビGP前には高級時計メーカー、タグホイヤーとの新スポンサーシップ契約も明らかになった。姉妹チームのトロロッソを含めて当面の撤退危機は回避されそうだが、チーム再建という課題は残ったままだ。

30年来のスポンサー、タグホイヤーを失うことになったマクラーレン(およびホンダ)も再建の途上にいた。フェルナンド・アロンソとジェンソン・バトン、2人のチャンピオンを擁しながら10チーム中ランキング9位。このまま終わればチームの歴史上最低記録を更新することになるが、マクラーレンとホンダが頂点を極めた1980年代後半から90年代前半に比べ、今のF1はテストも少なければパワーユニット機構も複雑で、かつ厳しい開発制限も課されている。今季の結果より来季に向けた準備を優先させ、最終戦にも多くのパーツを持ち込んでいた。

トワイライトレースの元祖であるアブダビGPは、それぞれの一年の締めくくりが見られる最終戦となった。

今年復活ののろしを上げたフェラーリにあって、不運やトラブルなどで思うような結果が残せずにいたキミ・ライコネン。最終戦では、予選でメルセデス勢に次ぐ3番手。レースでもトップ2台に勝負を挑むことはできなかったものの3位の座を守り、今年3度目の表彰台を獲得した。ドライバーズランキングではチームメイトのセバスチャン・ベッテルに次ぐ4位。来季こそはスクーデリアでポディウムの頂点を勝ち取りたいところだ。(Photo=Ferrari)
今年復活ののろしを上げたフェラーリにあって、不運やトラブルなどで思うような結果が残せずにいたキミ・ライコネン。最終戦では、予選でメルセデス勢に次ぐ3番手。レースでもトップ2台に勝負を挑むことはできなかったものの3位の座を守り、今年3度目の表彰台を獲得した。ドライバーズランキングではチームメイトのセバスチャン・ベッテルに次ぐ4位。来季こそはスクーデリアでポディウムの頂点を勝ち取りたいところだ。(Photo=Ferrari)

■ロズベルグ、圧巻の一発で6戦連続ポールポジション

3回のフリー走行のうち、1回目こそハミルトンにトップを譲ったものの、あとの2回はロズベルグが最速。予選に入るとチャンピオンのハミルトンがQ1、Q2を1位で通過と、最終戦まで繰り広げられたメルセデス同士の熱い戦いは、トップ10グリッドを決めるQ3に突入した。

最初のアタックで、ロズベルグがハミルトンに0.278秒差をつけ首位。そして2回目のフライングラップでも王者を突き放したロズベルグが6戦連続、今季7回目のポールポジションを奪った。ハミルトンのタイムを0.377秒も上回る、圧巻の一発だった。メルセデスのフロントロー独占は19戦して15回を数えることとなった。

3位につけたのはフェラーリのライコネン。チームメイトのベッテルは、アタックを途中で切り上げる判断ミスでQ1敗退の16位。他車のペナルティーにより、15番グリッドからの追い上げとなった。
4番グリッドは、この週末絶好調だったフォースインディアのセルジオ・ペレスが獲得。僚友ニコ・ヒュルケンベルグも7番グリッドを得た。
レッドブルのダニエル・リカルドが5番手。ウィリアムズはボッタス6番手、フェリッペ・マッサ8番手と、ライバルに先を越された。
5列目に並んだのは、予選9位のレッドブル、ダニール・クビアトと、10位に終わったトロロッソの新人、カルロス・サインツJr.だった。

マクラーレンのバトンはQ1を9位で通過、Q2で12位。アロンソは不運にもパンクに見舞われQ1落ちの17位、ライバルのペナルティーで16番手スタートとなった。

レッドブルからフェラーリへの電撃移籍から1年、いまや深紅の色がすっかりなじんできたベッテルは3勝してドライバーズランキング3位でシーズンを終えた。最終戦では、予選Q1を通過できると判断してアタックを中断、結果Q1を通過できないという失態を演じてしまったが、15番グリッドから4位まで挽回してみせた。来シーズン、打倒メルセデスの旗頭になるであろうことは間違いない。(Photo=Ferrari)
レッドブルからフェラーリへの電撃移籍から1年、いまや深紅の色がすっかりなじんできたベッテルは3勝してドライバーズランキング3位でシーズンを終えた。最終戦では、予選Q1を通過できると判断してアタックを中断、結果Q1を通過できないという失態を演じてしまったが、15番グリッドから4位まで挽回してみせた。来シーズン、打倒メルセデスの旗頭になるであろうことは間違いない。(Photo=Ferrari)

■トップを守ったロズベルグに、ハミルトンが迫る

夕暮れの訪れとともにスタートが切られるおなじみのアブダビGP。西日に照らされた全20台が、55周後のチェッカードフラッグに向けて勢いよく飛び出していった。
絶好のスタートを決めたロズベルグが先頭、鈍い出だしのハミルトンは何とか2位の座を守り、その後ろにライコネン、ペレスらが続いた。

アブダビGPに割り当てられたスーパーソフトタイヤはタレが早く、多くのドライバーがスタートから数周のうちにソフトタイヤへの交換に踏み切った。最初のスティントにおけるタイヤのコンディションは、トップのロズベルグよりも2位ハミルトンの方が思わしくなく、10周もすると両者のギャップは5.2秒にまで開いていた。

11周目、首位ロズベルグと3位ライコネンがピットへ。翌周ハミルトンもタイヤを替えたことで、上位の順位は1位ロズベルグ、2位はソフトタイヤでスタートしたままタイヤを交換していないベッテル、ロズベルグから6.3秒離れて3位ハミルトン、トップから9.6秒差の4位ライコネンとなった。

1位ロズベルグ、2位に上がったハミルトン、そして3位ライコネンともしばし当初の間隔をキープしながら周回を重ねていたが、20周を過ぎたあたりからハミルトンがペースを上げ、25周目にはロズベルグの3秒後方にまで迫ってきた。

ハミルトンはファステストラップを更新しながらロズベルグのリードを少しずつ、着実に削り取っていった。31周目、すっかり暗くなったサーキットを、2台のシルバーのマシンがタンデムで走る。ギャップは1秒にまで縮まっていた。

マクラーレン・ホンダにとっての厳しい2015年シーズンが終わった。アブダビGPではジェンソン・バトンが12位完走、フェルナンド・アロンソはスタートでパストール・マルドナドと接触、緊急ピットインに加えてペナルティーも受けて17位でレースを終えた。2人の元チャンピオンが獲得したポイントは計27点でチームはランキング9位。この苦しい一年で得たものを来シーズンに生かし、浮上することを期待したい。(Photo=McLaren)
マクラーレン・ホンダにとっての厳しい2015年シーズンが終わった。アブダビGPではジェンソン・バトンが12位完走、フェルナンド・アロンソはスタートでパストール・マルドナドと接触、緊急ピットインに加えてペナルティーも受けて17位でレースを終えた。2人の元チャンピオンが獲得したポイントは計27点でチームはランキング9位。この苦しい一年で得たものを来シーズンに生かし、浮上することを期待したい。(Photo=McLaren)

グラフは、2015年のF1ドライバーズランキングトップ6の推移。戦況は、ハミルトン対ロズベルグのメルセデス勢にフェラーリのベッテルを加えての“先頭集団”と、ウィリアムズの2人(ボッタス&マッサ)にフェラーリのライコネンが絡む“第2集団”に二極化した。シーズン中盤以降のハミルトンのスパートが顕著だ。


	グラフは、2015年のF1ドライバーズランキングトップ6の推移。戦況は、ハミルトン対ロズベルグのメルセデス勢にフェラーリのベッテルを加えての“先頭集団”と、ウィリアムズの2人(ボッタス&マッサ)にフェラーリのライコネンが絡む“第2集団”に二極化した。シーズン中盤以降のハミルトンのスパートが顕著だ。

■今年12回目のメルセデス1-2フィニッシュ

32周目、タイヤの性能低下に苦しんでいたロズベルグが2度目のピットストップに踏み切る。その直後からハミルトンは猛プッシュを仕掛け、さらにタイヤ交換のタイミングを引き延ばしてトップに居座った。

前戦ブラジルGPでもロズベルグの後塵(こうじん)を拝し2位に終わっていたハミルトンは、「2人に同じ作戦を課しては後ろのドライバーは勝てない」とチームに苦言を呈していた。チャンピオンは、いったいどんな戦略を考えていたのか?

「もう止まらないでこのタイヤで走り切れないのか?」と、ロズベルグに対し9秒リードしていたハミルトンは無線でチームに問いかけた。メルセデス首脳陣の答えは「ノー」。比較的ロングライフのソフトタイヤとはいえ、このままゴールまで走り切ろうとするのはあまりにも無謀だという判断だった。

42周目、ハミルトンが2度目にして最後のピットストップで再びソフトタイヤを履き、ロズベルグが首位の座に返り咲いた。この時点で2台のメルセデスのタイム差は12秒。それでもハミルトンは戦闘態勢を崩さずハイペースで隙をうかがったが、チームからのコントロールが入り、最終的に8.2秒差で今年12回目のメルセデス1-2フィニッシュとなった。

自身初の3連続ポール・トゥ・ウィンを達成したロズベルグは、もちろん表彰台でも上機嫌。「オフシーズンなんていらない、明日から新シーズンでもいいさ」と笑顔でインタビューに答えていた。勝負所での弱さが度々指摘されていたが、宿敵ハミルトンを負かし続けたシーズン終盤で、きっと自信をつかんだことだろう。
一方の王者ハミルトンは、負けたくない相手に負け続けやや不本意なフィナーレとなったが、「メルセデスが世界一だということを示せた」とこちらも笑顔を見せていた。

年間最多1-2フィニッシュ記録に加え、ポイント数でも、最終戦ダブルポイントだった昨年を2点上回り記録更新となったメルセデス。今年もシルバーアローが席巻したシーズンだったが、最終戦でもライコネンが3位に入ったように、フェラーリが力をつけてきていることは当のメルセデスが一番よく分かっていることだ。
「赤い連中(フェラーリ)からの脅威に負けないよう、冬の間も力を抜かないよ」 ロズベルグはそう語り、新シーズンへの決意を新たにした。

(文=bg)

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