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フェラーリ488GTB(MR/7AT)

目下最良のフェラーリ 2016.01.14 試乗記 エンジンを自然吸気からターボに改めた新時代のV8フェラーリ「488GTB」に試乗。670psと760Nmを生み出す3.9リッターV8ターボユニットは、ミドシップフェラーリの歴史にいかなる1ページを加えたのだろうか?

「288GTO」の思い出

488というネームは排気量を4.8リッターに増したのではなく、1気筒あたりの数字であり、これに気筒数を掛ければ総排気量が得られる。フェラーリ本来の表記法に戻されたものだ。「458イタリア」の排気量4.5リッターから、488GTBでは3.9リッターに縮小されて、パワーとトルクは4.5リッター自然吸気(NA)の570ps/540Nmから、ターボ過給により670ps/760Nmへと大幅にアップされた。ターボ化によりボア×ストロークもまったく新しくなり、ボアを少なくしてシリンダー壁の厚みを確保している。ストロークは少し伸びたものの、それでもショートストローク型であることに変わりはない。

フェラーリの8気筒ターボといえば、まず頭に浮かぶのが「288GTO」だ。これは過去に筆者が乗せてもらったことのあるフェラーリの中でもベストフェラーリである。300km/h以上の最高速度を保証するZR規格のタイヤが登場した折、そのテストでフランスのクレルモンフェランにあるミシュランのテストコース「ラドゥー」を訪れ、その時に乗せてもらったのだが、当時は実測で300km/h走行が可能な生産車が見当たらず、グループBの288GTOと「アルメラス」というチューンド・ポルシェ・ターボが用意された。288GTOは高価な希少車でもあり、F3でレース活動をしていたテストドライバー氏が個人的にオーナーから預かって、慣らしやメンテナンスを任されている車だった。

288GTOに試乗する時に、最初に申し渡されたのは3500rpmまでという制限だったが、テストドライバー氏を横に乗せていろいろ操作を教えてもらっているうちにコチラのウデを信用してくれたのか、瞬間なら5000rpmまでイイヨ……となった。もとより限界まで回す気はなかったが、288GTOのスペックなどは承知しており、当時はラリーなどにも出ていた288GTOの最大トルクは1900rpmあたりの低い回転域で発生するから、3500rpmでも筆者にとっては十分だったのだ。

車名の「488」とは1気筒あたりの排気量を示している。総排気量は3902cc。
車名の「488」とは1気筒あたりの排気量を示している。総排気量は3902cc。 拡大
エアコンの吹き出し口やセンターコンソールなど、インテリアのデザインには細かな変更が加えられているが、基本的なレイアウトは「458」シリーズのものを継承している。
エアコンの吹き出し口やセンターコンソールなど、インテリアのデザインには細かな変更が加えられているが、基本的なレイアウトは「458」シリーズのものを継承している。 拡大
従来の4.5リッター自然吸気ユニットと比べると、3.9リッターツインターボユニットはエンジン高が低い。エンジン単体の重心は5mm低められている。
従来の4.5リッター自然吸気ユニットと比べると、3.9リッターツインターボユニットはエンジン高が低い。エンジン単体の重心は5mm低められている。 拡大
テスト車のボディーカラーは「グリージョ・フェッロ・メット」と呼ばれる、深いグレーのメタリックカラー。
テスト車のボディーカラーは「グリージョ・フェッロ・メット」と呼ばれる、深いグレーのメタリックカラー。 拡大
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「F40」の強烈な一撃

ラドゥーテストコースには「アヒル」と呼ばれているハンドリングコースがあり、そこはコース幅も広く3速で遊べた。高い横Gが継続するコーナリング中に、スロットルオン/オフを加えて姿勢変化を見るテストで、ふだんは2速の上限で行うのだが、288GTOはそれがもっと上の速度帯である3速で楽しめた。

当時のターボは一度スロットルを戻してしまうと、次に踏んだ時には過給圧が即座に立ち上がらずモタモタする例も多かった。それが288GTOは微妙なスロットル開度の操作にも素直に追従してくれて、ノーズやテールが面白いように横に流れて姿勢のコントロールが容易だった。タイヤのスリップとグリップの限界付近の感触がじかに伝わってきて、あんなに面白い体験はその後もなかったから強烈な印象として残っている。だから288GTOが筆者にとってのベストフェラーリなのだ。

その次に面白かった8気筒ターボといえば「F40」であるが、あれはJARI(日本自動車研究所)のテストコースで行った200km/hクルーズの慣らしをしている時に、バンク進入前にちょっとスロットルを戻したところ、強烈なトルクステアに見舞われ、直進していたにもかかわらずスピンしかかった経験がある。F40にはその後、10台くらい別の車にも乗せてもらったが、最初の広報車が一番強烈だった。

ヘッドレスト一体型のスポーティーなシートが備わる。インテリアカラーは「クオイオ」。
ヘッドレスト一体型のスポーティーなシートが備わる。インテリアカラーは「クオイオ」。 拡大
レッドゾーンは8000rpmから。目盛りは1万rpmまで振られている。
レッドゾーンは8000rpmから。目盛りは1万rpmまで振られている。 拡大
センターコンソールにはトランスミッションの「R」(後退)やオートモードのボタンを配した“ブリッジ”が設けられている。
センターコンソールにはトランスミッションの「R」(後退)やオートモードのボタンを配した“ブリッジ”が設けられている。 拡大

敏感で従順なターボユニット

そして488GTBであるが、あれからの技術革新は目覚ましいものがあり、特にターボに関しての洗練度は隔世の感がある。電子制御技術は特にそうで、今ではスイッチひとつでトルクカーブの違いをいくつか選べる。しかし公道で試せる限度は知れたもので、快楽的な加速もそう長く続けられるものではない。それよりも感心すべきは、そのスロットル操作に敏感かつ従順な特性であり、微妙な踏み込み速度の違いやスロットル開度にもよく追従し、繊細な踏み分けが可能なことだ。つまりターボ圧特性のスイッチ操作をするまでもなく、ノーマルのままでも十分にドライバーの意思を伝えられる。

例えば、街乗り用のソフトな特性にしても、自分の足で踏み込み加減をコントロールできる。スロットルの扱い方しだいで、緩急自在に乗り方を変えられるという点では288GTOも似た感覚であったから、慣性の小さなターボユニットを使うなど、基本的なパーツのメカチューンだけで、あそこまでレスポンスを詰めて仕上げた手腕にいまさらながら感心する。

また、他のメーカーも同じような説明こそするけれども、実際には押し付けがましく、余計なお世話的なものが多いのが、ギアポジションの選定に関してだ。488GTBのものは「しょせんATだから……」と2ペダルを馬鹿にできないレベルにまで煮詰められている。この辺のシフトアップ/ダウンに関しても、右足操作の微妙な動きに即応して意思通りに反応し、文字通りまさに絶妙な設定といえる。

これにはクロスレシオのギア比ももちろん貢献しており、ステップアップ比が均等に近い小さな値こそフェラーリが長年培ってきた経験値であると実感する。

「458イタリア」と比較すると、ヘッドランプの形状とノーズのデザインが大きく変わった。ノーズ中央のセンタースロット(ライセンスプレートによってふさがれてしまっているが……)は気流をアンダーボディーに導くようになっている。
「458イタリア」と比較すると、ヘッドランプの形状とノーズのデザインが大きく変わった。ノーズ中央のセンタースロット(ライセンスプレートによってふさがれてしまっているが……)は気流をアンダーボディーに導くようになっている。 拡大
走行モード切り替える「マネッティーノ」。ステアリングの右下に備わる。
走行モード切り替える「マネッティーノ」。ステアリングの右下に備わる。 拡大
タコメーターの左脇にあるインフォメーションディスプレイには、ブースト計などターボユニットならではの情報も表示される。
タコメーターの左脇にあるインフォメーションディスプレイには、ブースト計などターボユニットならではの情報も表示される。 拡大

フェラーリは「一般道性能」が違う

フィオラーノのテストコースはサーキットの実戦的な限界走行を試す場所であるが、それ以上にフェラーリのテストドライバーはモデナ近郊の一般道である、山道でのテストにいそしむ傾向もあるようだ。「360モデナ」のプレス発表試乗会でも走ったし、昨年6月にも近隣の山々を駆け巡ったが、1速まで落とすタイトなヘアピンから、4速上限に至るような中高速域までの加減速を伴うコーナーが連続しており、そこに突然トラクターのような超低速車が現れたり、千変万化するステージがヨーロッパアルプスに連なるモデナの周辺にはたくさんある。

その美しい景色の中で磨かれるフェラーリに乗ってみれば、ロードカーの最高峰に君臨するバックグラウンドとして、最高の環境が整っていることがわかる。経験者が机の上で考えたものや、サーキットなど各種データを精査して組み立てたスポーツカーもそれなりに面白いけれども、フェラーリがそうした車たちと一味以上違うのは、実は乗り心地をはじめとする一般道での走行性が洗練されている点であり、それはとりも直さず彼ら開発スタッフがデータや数字だけに頼って仕上げていないことを雄弁に物語っている。やはり自分で乗って確認することが大事で、細かな点まで改良して煮詰めていくプロセスが伝わってくる。

F40の時代にはややラフな仕上がりを感じた部分もあったが、この488GTBは重箱の隅をつついても残り物がないほど熟成されている。これが最近のフェラーリ水準なのだろう。

動力性能は0-100km/hが3.0秒で、0-400mが10.45秒。最高速は330km/h以上と発表されている。
動力性能は0-100km/hが3.0秒で、0-400mが10.45秒。最高速は330km/h以上と発表されている。 拡大
ノーズの下部には、F1マシンに似た形状のダブルスポイラーが装着されている。
ノーズの下部には、F1マシンに似た形状のダブルスポイラーが装着されている。 拡大
サイドインテークはフラップで上下2段に分割されている。ちょこっと立っているウイングレットのようなものはドア開閉用のノブ。
サイドインテークはフラップで上下2段に分割されている。ちょこっと立っているウイングレットのようなものはドア開閉用のノブ。 拡大
リアウィンドウの基部に開いたスロット状のインテークはブロウンスポイラーと呼ばれる。気流は車両の後方に排出され、ドラッグを軽減するよう工夫されている。
リアウィンドウの基部に開いたスロット状のインテークはブロウンスポイラーと呼ばれる。気流は車両の後方に排出され、ドラッグを軽減するよう工夫されている。 拡大

究極に洗練されたベストフェラーリ

シフトパドルがステアリングと一緒に動いてしまう例が多い中、車体側にパドルを固定して操舵(そうだ)中いつでも同じ位置にある、という安心感が得られるのもフェラーリの特徴だ。

カップカーの試乗でフィオラーノを訪れた時、標準のパドルにさらに溶接で数cm伸ばして、ステアリングを握ったままシフトを可能にするべく改良を加えているところを目撃したが、そうまでしてこだわるところがイタリア人の仕事らしい。2ペダルといえどもダイレクトな変速感覚があるし、MTにはあるクラッチがない代わりに左右パドルを同時に引けばN(ニュートラル)になる。この瞬時に動力を断ってスピンした時にエンジンを止めない工夫だって、「F355」の時代に確立されていたし、単なるATの安易さだけを求めた結果ではないことがわかる。

ポルシェは最近になってココに気がついたが、フェラーリは「911 GT3/GT3 RS」のように引いている間だけNになるのでなく、そのままNを維持するので、もちろん惰行させることも可能。フェラーリはドライバーの心理をよくつかんでいる。というか、いろいろなケーススタディーが行き届いている。もちろん左足でブレーキを踏んでもエンジンが停滞するようなことはなく、初心者対応の限度も心得ている。

488GTBの3.9リッターターボで670psというスペックを聞くと、相当に荒々しい汗馬(かんば)を予想しがちである。だが、もちろん速さの点で期待や予想が外れることはなかったが、その実体は究極の洗練された乗り物であり、普通に市中を流れる交通に溶け込んで生活できるところが意外といえば意外だった。6リッターNAに匹敵する自然なトルク感を持ち、この手の車の半分程度に感じられる重さのボディーを運ぶような、身軽さを実現しているところがすごみである。あらゆる部分の慣性によるイナーシャや作動の遅れ感を排し、スッと動き出す「軽さ」、そしてその後の圧倒的な速度上昇率は、大きな12気筒フェラーリを上回り、とにかくドライバーがしたいように感応する。

フェラーリは全車、手造り的に丁寧に作られており、488GTBはフェラーリの中では「量産車」に属する車かもしれない。それでも走行性能の内容としては、一般道の実用性まで含めて最良である。458イタリアの時代でも素晴らしいと思っていたが、488GTBになって一段と魅力を増した。

(文=笹目二朗/写真=小林俊樹)

箱根のワインディングロードを行く「488GTB」。
箱根のワインディングロードを行く「488GTB」。 拡大
シフトパドルがステアリングホイールと一緒に動かず、車体側に固定されているのはフェラーリの特徴。
シフトパドルがステアリングホイールと一緒に動かず、車体側に固定されているのはフェラーリの特徴。 拡大
タイヤサイズは前が245/35ZR20(写真)、後ろが305/30ZR20。
タイヤサイズは前が245/35ZR20(写真)、後ろが305/30ZR20。 拡大
リアビューをスポーティーに引き締める、本格的なデザインのリアディフューザー。フロントバンパーやアンダーボディーなどとの相乗効果により、250km/h走行時のダウンフォースは325kgに達するという。
リアビューをスポーティーに引き締める、本格的なデザインのリアディフューザー。フロントバンパーやアンダーボディーなどとの相乗効果により、250km/h走行時のダウンフォースは325kgに達するという。 拡大
 
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テスト車のデータ

フェラーリ488GTB

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4568×1952×1213mm
ホイールベース:2650mm
車重:1475kg(空車重量)
駆動方式:MR
エンジン:3.9リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:670ps(492kW)/8000rpm
最大トルク:77.5kgm(760Nm)/3000rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20 95Y/(後)305/30ZR20 103Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:11.4リッター/100km(約8.8km/リッター ECE+EUDC複合サイクル)
価格:3070万円/テスト車=3823万2000円
オプション装備:Telemetry Kit(84万円)/Ferrari Historical Colors<Grigio Ferro Met>(103万6000円)/20 inch Glossy Chromed Silver Forged Wheel(51万8000円)/Wheel Center Caps in Carbon(7万円)/Carbon Fibre Sill Cover(71万4000円)/Carbon Fibre Rear Diffuser(79万8000円)/Colour upon Request for Upper Dashboard<Cuoio>(9万8000円)/Colour upon Request for Steering Wheel<Cuoio>(6万3000円)/Colour upon Request for Leather Rear Wall<Nero>(14万円)/Rear Upper Trim in Interior Colour<Nero>(26万6000円)/Carbon Fibre Dashboard Trim(56万円)/Carbon Fibre Driver Zone + Leds(63万円)/Carbon Fibre Sill Kick(16万8000円)/Carbon Fibre Tunnel Bridge(23万8000円)/Colour upon Request for Special Stitching<Charcoal>(6万3000円)/Embroidered Horse on Headrest<Charcoal>(10万5000円)/Three Points Coloured Safety Belts<Beige Cocos>(7万7000円)/HiFi Premium System(51万8000円)/Adaptive Frontlight System(21万円)/Front Lifter(42万円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:3213km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:343.8km
使用燃料:63.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:5.4km/リッター(満タン法)

フェラーリ488GTB
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