クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

マツダ・ロードスターSレザーパッケージ(FR/6AT)/ロードスターRS(FR/6MT)

冬だから楽しいオープンカー 2016.02.12 試乗記 冬の鹿児島で「マツダ・ロードスター」に試乗。穏やかな気候のもと、風光明媚なワインディングロードで走りを満喫、のはずだったのだが……。仕様の異なる2台のモデルを乗り比べ、このクルマに込められた開発陣の思いを探った。

オープンカーにチェーン!?

「デミオ」につづいて2年連続のカー・オブ・ザ・イヤー受賞というのは、マツダにとって誇るべき快挙である。しかも、ロードスターとしては先代に続いてのイヤーカーになった。お祝い気分になるのは当然だ。だからなのか、特段のトピックはないのに試乗会が開かれることになった。“冬でも楽しいオープン走行”がテーマである。会場に選ばれたのは、冬季でも気候が穏やかで快適なドライブが約束される鹿児島だ。

考えぬいた上の場所選びだったはずだが、大自然の力は恐ろしい。試乗会の前日、猛烈な寒気が九州全域を襲った。鹿児島は氷点下10度以下という記録的な寒さとなり、地域によっては積雪が10cmを超えた。高速道路は全線通行止め。羽田から鹿児島に向かう飛行機も直前まで飛ぶかどうかわからなかった。空港に着くと、南国らしさを演出するはずのソテツやパームツリーはすっかり雪に覆われていた。

ロードスターにはしっかりチェーンが装着されていた。道路にはまだ雪が残っていて、万が一を考えての対応である。考えようによっては、チェーンをつけたロードスターに乗るというのは得難い経験だ。これも意義深い機会だと思って乗ってみたが、ガタガタするばかりでハンドリングや乗り心地をうんぬんすることなどできそうにない。実際にロードスターオーナーが雪に見舞われたなら、チェーンをつけてまで走ろうとは思わないだろう。安全のための配慮には感謝しつつも、出発前に外してしまった。

初日に試乗した6段AT仕様の「ロードスターSレザーパッケージ」。レザーシートやBOSE製のサウンドシステムを装備した上級グレードにあたる。
初日に試乗した6段AT仕様の「ロードスターSレザーパッケージ」。レザーシートやBOSE製のサウンドシステムを装備した上級グレードにあたる。 拡大
「Sレザーパッケージ」のインストゥルメントパネルまわり。現行型「ロードスター」では、ダッシュボードを低く設定するために助手席のグローブボックスが省略されている。
「Sレザーパッケージ」のインストゥルメントパネルまわり。現行型「ロードスター」では、ダッシュボードを低く設定するために助手席のグローブボックスが省略されている。 拡大
雪化粧の桜島と「ロードスターSレザーパッケージ」。
雪化粧の桜島と「ロードスターSレザーパッケージ」。 拡大

ホロ全開でも暖かい

基地となったのは鹿児島市内にある城山観光ホテルで、さらに南へ向かう。指宿スカイラインを走ることが前提のコース設定だが、山の中を通るルートだから路面は凍結したままだ。晴れていれば気持ちのいい道なのに、諦めて海沿いを行くことにする。せめてもの意地で、ホロは全開だ。時折解けた雪が落ちてくるが、このクルマで屋根を閉じるという選択肢はない。

渡された資料には、“冬でも楽しいオープン走行”のために施された工夫が紹介されていた。フロントウィンドウの窓枠の形状と位置を工夫し、頭上の風を高く導いて後方に運んでいる。頭や顔に直接当たる風や後ろからの巻き込みを抑え、腕や胸付近にだけ快適な風を送るのだという。

室外温度は2度から3度という寒さだったが、エアコンの設定を25度ぐらいにしておけば確かに何の問題もない。シートヒーターも3段階中の1目盛りで十分だった。ロードスターのお手本となった1960年代のライトウェイトスポーツの運転は、荒れ狂う風との戦いだった。21世紀のオープンカー乗りは果報者である。

この日乗ったソウルレッドの「Sレザーパッケージ」はAT仕様である。不安定な路面の中ではイージーな運転なのがありがたかったが、正直言ってあまり楽しいドライブにはならなかった。オープンスポーツの快楽は、外的な条件に大きく左右される。寒さが問題なのではない。空気が乾いていることが重要で、本来ならば“冬だから楽しいオープン走行”と言うべきなのだ。しかしながら、この日はロードスターの魅力を味わいつくすことのできる状況ではなかった。

イッシーの潜む池田湖畔で撮影し、指宿方面に向かう。夕日に照らされて路面は乾き始めており、やっと心置きなくアクセルを踏むことができる。頭頂部を風が過ぎていくのを感じながら走っていったが、下り坂に入ると様相が一変した。道の両側に森が広がり、まったく日が当たらない。シャーベット状の雪が残っているから、そろそろと降りていくしかなかった。こんな状況では、たとえチェーンをつけていたとしても効果は限定的だっただろう。

現行型「ロードスター」はフロントウィンドウの位置や形状を工夫することで、乗車スペースへの不快な風の吹き込みを抑制。ウインドリフレクターを立てれば、さらに空気の流入を抑えることができる。
現行型「ロードスター」はフロントウィンドウの位置や形状を工夫することで、乗車スペースへの不快な風の吹き込みを抑制。ウインドリフレクターを立てれば、さらに空気の流入を抑えることができる。 拡大
「Sレザーパッケージ」のシート。同グレードと「RS」には、シートヒーターが標準装備となる。
「Sレザーパッケージ」のシート。同グレードと「RS」には、シートヒーターが標準装備となる。 拡大
6段ATのシフトセレクター。手前のスイッチで「SPORT」モードを選択すると、より低いギアを選択するよう変速制御が切り替わる。
6段ATのシフトセレクター。手前のスイッチで「SPORT」モードを選択すると、より低いギアを選択するよう変速制御が切り替わる。 拡大
池田湖畔から指宿方面へ向かうワインディングロードを“そろそろ”行く。
池田湖畔から指宿方面へ向かうワインディングロードを“そろそろ”行く。 拡大

クラッチ担当は熱血ラリー女子

ディナーではエンジニアの方々と同席した。詳しく話をうかがったのは、ドライブトレイン開発部の石川美代子さん。クラッチを担当している。まだATにしか乗っていないと言うと、ぜひともMTモデルでフィールを確かめてほしいと力説する。クラッチの出来の良しあしで、運転感覚はまるで変わるんだそうだ。理想の設計を実現するために、何度も上司と口論し、設計部門とバトルを繰り広げた。プライベートではデミオでラリーに参戦する熱血女子である。

ほかのエンジニアも、話を聞くと総じてMT推しだ。エンジン担当の佐々木健二さんによると、現在のモデル開発はATモデルをベースにすることが多いが、ロードスターは例外的にMTをメインに作られている。以前はMT優先だったディーゼルモデルも、今では変わってしまった。MTで乗るために生まれたロードスターは、昨今ではレアなクルマなのだ。

トランスミッション担当の延河克明さんは、幅の制約のある横置きよりも縦置きのほうが自由度があったと話す。ロードスターはスポーツカーだからダイレクトなフィールに仕立てることができ、エンジニアにとっても楽しい仕事だったようだ。奥さまを説得し、自分でもソウルレッドのロードスターを購入したそうである。

マツダはSKYACTIVを掲げて技術的優位をアピールしているだけでなく、デザイン面でも徐々にアドバンテージを築きつつある。エンジニアとしてはカタチで選ばれることに複雑な思いがあるのかと心配したが、邪推だった。サスペンション設計の友貞賢二さんは、デザインで買ってくれるお客さまが増えたのはうれしいと言う。まずカタチを気に入って買うのは当然のことで、その上で走りを気に入ってくれればいいのだ。

現行型「ロードスター」のボディーカラーは全7色。最初に試乗した「Sレザーパッケージ」のそれは、有償色の「ソウルレッドプレミアムメタリック」。


	現行型「ロードスター」のボディーカラーは全7色。最初に試乗した「Sレザーパッケージ」のそれは、有償色の「ソウルレッドプレミアムメタリック」。
	拡大
すべてのグレードに設定のある6段MTは「ロードスター」専用に開発されたもの。エントリーグレードの「S」を除き、MT仕様の車両にはトルセン式LSDが装備される。
すべてのグレードに設定のある6段MTは「ロードスター」専用に開発されたもの。エントリーグレードの「S」を除き、MT仕様の車両にはトルセン式LSDが装備される。 拡大
8スポークのアルミホイール。従来モデルでは5本だったハブボルトが、現行型では4本となったのに合わせてデザインされたという。
8スポークのアルミホイール。従来モデルでは5本だったハブボルトが、現行型では4本となったのに合わせてデザインされたという。 拡大
試乗会場に並べられた「マツダ・ロードスター」。
試乗会場に並べられた「マツダ・ロードスター」。 拡大

速くはないけど爽快

翌日は路面が再凍結することもなく、天気もまずまず。乗るのはもちろんMTモデルで、ビルシュタイン製ダンパーとフロントサスタワーバーを備えた最上級グレードの「RS」だ。ブルーリフレックスマイカのボディーカラーは、情熱的なソウルレッドとは対照的に落ち着いたたたずまいを見せる。

除雪が間に合わなかったようで、指宿スカイラインは通行止めのまま。前日と同様に海沿いの道を行く。状況はさほど変わっていないのだが、しばらく乗っていると爽快感が押し寄せてきた。わずかな違いが、オープンスポーツには劇的な違いをもたらす。足まわりの差を感じ取ったわけではない。何より、自らギアを選びながら走らせていることで快感が生まれるのだ。シフトするたびに、走りにリズムが出てくる。

レッドゾーンまで引っ張ったところで、びっくりするほどのスピードが得られるわけではない。1トンそこそこの軽量ではあってもエンジンは1.5リッターという歴代最小で、パワーそのものは知れている。サーキットでもラップタイムは先代より遅くなっているとエンジニアも話していた。ただし、セッティングを詰めていけば必ず速くなると主張していたが。

公道で乗る限り、オープンスポーツに絶対的な速さを求めるのは筋違いだ。目をつり上げて限界を極めるクルマではない。軽量なオープンボディーに小気味よく決まるシフトという組み合わせは、お決まりの文法である。後は、適度な寒さと降り注ぐ日の光があればいい。

クラッチのことを書くのを忘れていた。実のところ、取り立てて言い及ぶほどのことは感じなかった。当然である。クラッチが意識の上にのぼってくるようではダメなのだ。テンポよくスムーズに操作できているから、クラッチがどうこうとわざわざ考えずに運転を楽しめる。石川美代子さん、とってもいいクラッチに仕上がっていると思いますよ。

(文=鈴木真人/写真=田村 弥)

2日目に試乗した「ロードスターRS」。足まわりに専用のチューニングが施された最上級グレードで、トランスミッションは6段MTのみが用意される。
2日目に試乗した「ロードスターRS」。足まわりに専用のチューニングが施された最上級グレードで、トランスミッションは6段MTのみが用意される。 拡大
「RS」にはシートヒーターを備えたレカロ製のスポーツシートが装備される。
「RS」にはシートヒーターを備えたレカロ製のスポーツシートが装備される。 拡大
「RS」のエンジンルーム。ボディー剛性を高めるため、ストラットタワーとバルクヘッドをつなぐサスタワーバーが備えられている。
「RS」のエンジンルーム。ボディー剛性を高めるため、ストラットタワーとバルクヘッドをつなぐサスタワーバーが備えられている。 拡大
薩摩伝承館を背景にたたずむ「ロードスターRS」。ボディーカラーは「ブルーリフレックスマイカ」。
薩摩伝承館を背景にたたずむ「ロードスターRS」。ボディーカラーは「ブルーリフレックスマイカ」。 拡大
マツダ・ロードスターSレザーパッケージ
マツダ・ロードスターSレザーパッケージ 拡大

テスト車のデータ

マツダ・ロードスターSレザーパッケージ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3915×1735×1235mm
ホイールベース:2310mm
車重:1060kg
駆動方式:FR
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:131ps(96kW)/7000rpm
最大トルク:15.3kgm(150Nm)/4800rpm
タイヤ:(前)195/50R16 84V/(後)195/50R16 84V(ヨコハマ・アドバンスポーツV105)
燃費:18.6km/リッター(JC08モード)
価格:314万2800円/テスト車=379万6800円
オプション装備:特別塗装色<ソウルレッドプレミアムメタリック>(5万4000円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1万2353km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

マツダ・ロードスターRS
マツダ・ロードスターRS 拡大

マツダ・ロードスターRS

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3915×1735×1235mm
ホイールベース:2310mm
車重:1040kg
駆動方式:FR
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:131ps(96kW)/7000rpm
最大トルク:15.3kgm(150Nm)/4800rpm
タイヤ:(前)195/50R16 84V/(後)195/50R16 84V(ヨコハマ・アドバンスポーツV105)
燃費:18.8km/リッター(JC08モード)
価格:319万6800円/テスト車=328万3200円
オプション装備:i-ELOOP<アイ・イーループ>+i-stop<アイ・ストップ>(8万6400円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:5207km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター