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キャデラックCT6 3.6L プラチナム(4WD/8AT)

ドイツ御三家をしのぐ出来 2016.02.19 試乗記 今後日本にも導入される、キャデラックの新たなフラッグシップサルーン「CT6」に試乗。新開発のV6エンジンと、ライバルを大幅にしのぐという軽量ボディーがもたらす走りを、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスから報告する。

新世代キャデラックの“最初の成果”

アメリカの自動車会社がホンキを出したら、すごいことになるんじゃないか。筆者は常々、そう思っていた。お膝元の北米市場と、趣味嗜好が割とよく似た中国市場という、ふたつのおいしい巨大市場が、日本人好み・欧州人好みのクルマ造りを妨げているだけで、その気になればホントはすごいんじゃないのか、と。空や宇宙にまで手を伸ばせる技術を持つ人たちが、せいぜい飛行機の離陸速度しか出ない地上の乗り物を、思い通りに作れないはずもない。

もっとも、ホンキの目指すものが日本のマーケットに向いているとは限らない。それは、2016年を最後に日本市場から撤退することになった、フォードの事例がよく物語っている。一方で、ジープのように、ありのままでもそれなりに受け入れられているブランドがあるのもまた、事実だ。

そこで、今後日本で評価を高めていくブランドとして、キャデラックを挙げておきたい。
高級車ブランドとしての歴史があり、名前もしっかり通っており、そして何より、近年のクルマ造りが革命的に変わった。日本人が今、高級車のスタンダードとして認める“ジャーマンプレミアム”勢と、少なくとも本質的なクルマ造りという点で互角の、いや、場合によってはそれ以上の、“成果”を上げつつあると言っていい。

今回試乗した新型ビッグサルーンのCT6は、その大きな、最初の果実である。

キャデラックの「CT6」は、従来モデル「XTS」の後継モデルとなるフラッグシップサルーン。2015年4月のニューヨーク国際オートショーで初公開された。
キャデラックの「CT6」は、従来モデル「XTS」の後継モデルとなるフラッグシップサルーン。2015年4月のニューヨーク国際オートショーで初公開された。 拡大
「キャデラックCT6」の前席。「プラチナム」と名付けられた上級仕様のものは、上質な本革仕立てとなっている。
「キャデラックCT6」の前席。「プラチナム」と名付けられた上級仕様のものは、上質な本革仕立てとなっている。 拡大
インテリアの様子。センターコンソールには10.2インチのタッチパネルモニターがレイアウトされる。アップル社のスマートフォン「iPhone」が持つ機能を車両側で使えるようになる「CarPlay」にも対応する。
インテリアの様子。センターコンソールには10.2インチのタッチパネルモニターがレイアウトされる。アップル社のスマートフォン「iPhone」が持つ機能を車両側で使えるようになる「CarPlay」にも対応する。 拡大
今回テストしたのは、3.6リッターの上級モデル「3.6L プラチナム」。日本市場には、この仕様が導入される見込み。
今回テストしたのは、3.6リッターの上級モデル「3.6L プラチナム」。日本市場には、この仕様が導入される見込み。 拡大

名前も新たに心機一転

と言ったところで、これまでの「CTS」と、どこが違うの? とおっしゃる向きもあるだろう。見た目に限らず、名前だって、似ているし。

正直に言うと筆者も、2015年のニューヨークショーで公開されたCT6の写真を初めて見たときには、「CTSの派生モデルか何かだろう」と思ってしまった。ところが、どっこい。実はこのCT6、CTSよりもひとつクラスが上。その派生でも後継でもなんでもなく、事実上「XTS」の後継というべきモデルなのだ。

キャデラックはCT6投入を機に、新しいネーミング手法を採りいれており、今後はサルーンを全て“CT+数字”の名称で呼ぶことにしたという。数字が、欧州車のようにセグメントを示すわけだ。
で、このCT6の“6”は、ドイツ車でいうところの「メルセデス・ベンツSクラス」や「BMW 7シリーズ」のショートホイールベース版に相当するモデルであることを意味する。今後はおそらく、「CTS」は「CT5」(=Eセグメント相当)に、「ATS」は「CT4」(=Dセグメント相当)に、それぞれ名前が変わるはず。ちなみに、これまで「SRX」と呼ばれていたSUVはフルモデルチェンジを機に「XT5」となってデトロイトでデビューした。SUVの車種名は、“XT+数字”になるのだ。

一連の新展開を指揮したのは、キャデラックのヨハン・ダネイスンCEOだ。彼の名前を聞いてピンときた人は、かなりの自動車業界通。アウディ ジャパンで辣腕(らつわん)を振るったのち、アウディのアメリカ法人とインフィニティのトップを歴任。インフィニティでは本社機能を香港に移し、やはり英文字+数字の車名方式を採り入れていた。キャデラックでもまた、本社をニューヨークとし、車名も英文字+数字に変えた。それが、プレミアムブランドをグローバル市場で受け入れてもらうための、彼なりの方程式というわけなのだろう。

「CT6」のボディーサイズは、全長×全幅×全高=5184×1879×1472mm。「メルセデス・ベンツSクラス」や「BMW 7シリーズ」といった、ドイツ製の大型高級セダンと市場を争うことになる。
「CT6」のボディーサイズは、全長×全幅×全高=5184×1879×1472mm。「メルセデス・ベンツSクラス」や「BMW 7シリーズ」といった、ドイツ製の大型高級セダンと市場を争うことになる。 拡大
後席の様子。その左右席については、前後83mmのスライド機構やマッサージ機能などが用意される。
後席の様子。その左右席については、前後83mmのスライド機構やマッサージ機能などが用意される。 拡大
後席中央席の背もたれは、左右席のアームレストを兼ねており、それぞれの電動調節スイッチや、電子機器を接続するためのHDMI端子やUSB端子が設けられている。
後席中央席の背もたれは、左右席のアームレストを兼ねており、それぞれの電動調節スイッチや、電子機器を接続するためのHDMI端子やUSB端子が設けられている。 拡大
「CT6」を含む、キャデラック次世代戦略の指揮を執る、ヨハン・ダネイスンCEO。かつてインフィニティの責任者を務めた人物である。
「CT6」を含む、キャデラック次世代戦略の指揮を執る、ヨハン・ダネイスンCEO。かつてインフィニティの責任者を務めた人物である。 拡大

特筆すべきはその軽さ

前置きが長くなってしまったが、キャデラックが変わりつつあることは理解していただけたと思う。もちろん、肝心なのはクルマそのもの。CT6で注目すべきは、軽量なボディー骨格&パネル、新開発のパワートレイン、AWDアクティブシャシーの3点だ。

外板のボディーパネルは全てアルミニウムになっているが、もっと重要なのは中身、つまりストラクチャーのほうである。アルミ約6割+高張力スチール約4割のハイブリッドボディーで、スポット溶接やレーザー溶接などを効果的に組み合わせたという。結果、軽量かつ強靱(きょうじん)なボディーを実現したのみならず、例えばフロントフェンダー部分の高さを極力低く抑えるなど、デザイン面にも望ましい効果をもたらしている。

驚くべきことに、このホワイトボディーはSクラスや7シリーズのショートバージョンよりも軽く仕上がっている(同等グレード比)だけでなく、なんと、「Eクラス」や「5シリーズ」と比べても軽いのだ。このことだけでも、キャデラックがこのCT6に与えたキャラクターが、“最上級サルーンで自分ら積極的にドライブしたい派”向けのクルマであることが分かるだろう。

もちろん、日本導入予定の新設計直噴3.6リッターV6+8ATや、後輪操舵(そうだ)とマグネティックライドを組み合わせたAWDアクティブシャシーもまた、CT6を完璧なオーナードリブンカーへと仕立てあげることに大きく寄与するものだ。

「キャデラックCT6」のスケルトンボディー。材料の6割にアルミニウムが、4割に高張力スチールが用いられている。
「キャデラックCT6」のスケルトンボディー。材料の6割にアルミニウムが、4割に高張力スチールが用いられている。 拡大
新開発の3.6リッターV6直噴エンジン。スタート&ストップ機能や、走行状態により6気筒のうち2気筒を休止させる機能も備わる。
新開発の3.6リッターV6直噴エンジン。スタート&ストップ機能や、走行状態により6気筒のうち2気筒を休止させる機能も備わる。 拡大
3.6リッターの「CT6」には、8段ATが組み合わされる。写真は、そのシフトセレクター。
3.6リッターの「CT6」には、8段ATが組み合わされる。写真は、そのシフトセレクター。 拡大
「CT6」のV6エンジン搭載モデルは、全て4WD車となる。FRの駆動方式は、2リッター直4ターボモデルに限られる。
「CT6」のV6エンジン搭載モデルは、全て4WD車となる。FRの駆動方式は、2リッター直4ターボモデルに限られる。 拡大

気持ちよく乗れる日本仕様

今回は、日本導入予定の3.6リッターV6自然吸気の4WD車に加えて、3リッターV6ツインターボ(最高出力405ps、最大トルク55.4kgm)の4WD車と、2リッター直4ターボ(269ps、40.8kgm)のFR車にも試乗することができたが、自分がキャデラックブランドに最も似合っていると思えたのは、日本仕様の組み合わせだった。

心地よいエキゾーストノートをごく控えめに響かせながら、必要にして十分なトルクフィールを伴いつつ、非常にスムーズで軽快な加速をみせる。とにかく、クルマの軽さは、乗り込む前から伝わる車体サイズのストレス(つまりはデカいということ)から考えると、にわかには信じられないほど。確かに、BMW 5シリーズ級へとステップしたのだ。

最新世代のマグネティックライドの制御も素晴らしい。ツアーモードでクルージングすれば、乗り心地に不満はまるでなく、それでいて、コーナーでちょっと頑張って走らせると、見事な踏ん張りをみせた。実をいうと、タイヤが19インチの仕様よりも20インチ仕様のほうが、何かとライドフィールは良く感じられたのだが、それは頑丈なボディーと賢いシャシーのたまものなのだろう。
20インチ仕様なら、スポーツモードがいい。乗りはじめこそややソリッドに感じられたが、微細な振動が抑制されるぶん、19インチよりドライブしていて気持ちがよかった。

4WDながらハンドリングが素直である点も特筆したい。リアステアもごく自然で、よく曲がるが違和感なく、現行型BMW 7シリーズのショートボディーほどの過敏さもない。各ドライブモード間のメリハリもはっきりしており、積極的にいろいろモードを変えて乗りたくなる。

参考までに記すと、3リッターツインターボの印象は「骨格の硬さを存分に味わえる豪快なハンドリングサルーン」、2リッターターボのほうは「軽さの恩恵を十二分に感じられるお買い得モデル」というものだった。

メルセデスやBMWと伍(ご)する存在になったと言われて久しいキャデラック。このCT6は、とうとう真剣にドイツ勢を抜き去る意気込みをもって造った、と言っていい出来栄えであった。

(文=西川 淳/写真=ゼネラルモーターズ)

「キャデラックCT6」には、コーナリング性能を高めるための後輪操舵(そうだ)システムが用意されている。


	「キャデラックCT6」には、コーナリング性能を高めるための後輪操舵(そうだ)システムが用意されている。
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「CT6」の計器盤は、全面が液晶表示になっている。中央は速度計で、左右のメーターの中心部分には、インフォテインメントシステムや運転支援システムなどの情報が表示される。
「CT6」の計器盤は、全面が液晶表示になっている。中央は速度計で、左右のメーターの中心部分には、インフォテインメントシステムや運転支援システムなどの情報が表示される。 拡大
アルミホイールのサイズは、20インチ(写真)のほかに、19インチと18インチが設定されている。
アルミホイールのサイズは、20インチ(写真)のほかに、19インチと18インチが設定されている。 拡大
テスト車に備わっていた、後席用のエンターテインメントシステム。10インチサイズの液晶モニターが組み合わされる。
テスト車に備わっていた、後席用のエンターテインメントシステム。10インチサイズの液晶モニターが組み合わされる。 拡大
 
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テスト車のデータ

キャデラックCT6 3.6L プラチナム

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5184×1879×1472mm
ホイールベース:3109mm
車重:1781kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:340ps(250kW)/6800rpm
最大トルク:39.3kgm(385Nm)/5300rpm
タイヤ:(前)245/40ZR20 99Y/(後)245/40ZR20 99Y(ピレリPゼロ)
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は北米仕様のもの。

テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

キャデラックCT6 3.6L プラチナム
キャデラックCT6 3.6L プラチナム 拡大
車両後方の様子を確認するための「リアカメラモニター」。鏡のルームミラーに比べて、およそ3倍の視野が得られるという。
車両後方の様子を確認するための「リアカメラモニター」。鏡のルームミラーに比べて、およそ3倍の視野が得られるという。 拡大
 
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