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ボルボXC90 T6 AWD インスクリプション(4WD/8AT)

ワクワクするボルボ 2016.02.29 試乗記 フルモデルチェンジで2代目となった、ボルボのフラッグシップSUV「XC90」に試乗。新プラットフォームが採用された“新世代ボルボ”の走り、乗り心地、そして使い勝手を報告する。

あらゆるところが変わった

ボルボXC90がモデルチェンジした。モデルチェンジにもいろいろあって、一番大掛かりなのがプラットフォームが刷新されるやつ。その次に大事(おおごと)なのがパワートレインが置き換わるやつ。その次は骨格はそのままでスタイリングが変わるやつ。プラットフォームとパワートレインが両方とも一気に新しくなるというケースはそうそうなくて、プラットフォームが新しくなってエンジンはそのままというパターンか、プラットフォームはキャリーオーバーでエンジンが新しくなるパターンが多い。トランスミッションはそうそう新しくならない。

ボルボXC90のモデルチェンジは、全てが新しくなる最大規模のパターン。見た目はもちろん、プラットフォームも、パワートレイン(エンジン&トランスミッション)も、サイズも、そして雰囲気も、もうあらゆるものが一新された。今回、数時間、見て、触れて、運転した範囲において、先代と同じだと思ったのはドアミラーの調整スイッチだけだ。それだって自信はない。微妙に変わっているかも。

娘を心配する父親目線に例えると、数年前の「S40/V50」から「V40」への変わりっぷりを「あっ友達が変わったな」というレベルだとするなら、XC90の変わりっぷりは「完全に男ができたな」と気づくレベル。「色気づきやがって! 母さん、知ってたのか?」「ええ、あの子はとっくに女ですよ」「な、な、なんだって!?」というくらいの大ニュースだ。しかしここはひとまず冷静になって、ひとつずつお伝えしたい。

ボルボ初のSUVとして2002年にデビューした「XC90」。その2代目は、日本国内では2016年1月27日に発売された。
ボルボ初のSUVとして2002年にデビューした「XC90」。その2代目は、日本国内では2016年1月27日に発売された。 拡大
完全新設計された新型「XC90」のシート。テスト車「T6 AWD インスクリプション」のものは、表皮に上質なパーフォレーテッドファインナッパレザーがおごられており、マッサージ機能も備わっていた。
完全新設計された新型「XC90」のシート。テスト車「T6 AWD インスクリプション」のものは、表皮に上質なパーフォレーテッドファインナッパレザーがおごられており、マッサージ機能も備わっていた。 拡大
ラグジュアリー性をセリングポイントとする「T6 AWD インスクリプション」のドアパネル。ウォールナットのウッドパネルが与えられる。
ラグジュアリー性をセリングポイントとする「T6 AWD インスクリプション」のドアパネル。ウォールナットのウッドパネルが与えられる。 拡大
新型「XC90」は、全体の約90%が新規開発された部品で構成されているという。
新型「XC90」は、全体の約90%が新規開発された部品で構成されているという。 拡大

ボルボらしさもちらほら

変わりすぎて何から話そう。ルックスは大胆に変貌を遂げた。特徴的なのはヘッドランプユニット。真ん中に「T」の字を寝かせたようなポジションランプがあり、ヘッドランプを上下に分割する。北欧の神話に出てくる雷神トールが持つ武器に似ていることから、ボルボはこのモチーフを「トールハンマー」と呼ぶ。この後出てくる「S90」や「V90」もほぼ同じ顔つきであることが、すでに明らかになっている。このヘッドランプはLED。ボディーのシルエットはオーソドックスで綺麗なラインの連続によって構成される。唯一リアコンビランプに、ここのところのボルボが好むうねった造形が残っているが、全体的にはフロントグリルに例の斜め線とアイアンマークのエンブレムがなければ、ボルボとわからないほど変わった。

新型は「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)」というプラットフォームを用いて作られる。開発費約1兆3000億円。フォルクスワーゲン・グループが使う「MQB」と同じ、いわゆるモジュール可能なプラットフォーム。約束事はエンジン横置きというだけで、スケーラブルの名の通りホイールベース、オーバーハング、車重、全高を自由に設計できるという。当然、この先出てくるボルボは(コンパクトなV40系を除いて)このプラットフォームで開発される。

インテリアも変わった。明るく、あまりギラギラしていないウッドやレザーの使い方はボルボそのものだが、スイッチが極端に少なく、全体的にスッキリしている。客が少ない時間帯のIKEAのように感じられなくもない。いや、もう少し高級感が漂うか。
目を引くのは、センターパネルの、縦型の9インチのタッチパネル式モニター。カーナビ、オーディオ、車両設定など、ここでほとんどの操作をする。タブレットのようにタップやスワイプによって操作するのだが、スマートフォンやタブレットに多い静電方式ではなく赤外線方式を用いている点がユニークだ。このおかげで手袋をしていても操作が可能。その昔、寒い国で生まれたボルボは手袋をしたまま操作できるようにスイッチ類が総じて大きいのが特徴だった。そのコンセプトをデジタル技術導入不可避の現代にも取り入れたわけだ。なかなか心憎い。Apple CarPlayにも対応した。

フロントまわり。「T」の字を横にしたデザインのLEDライトは全車共通。「インスクリプション」には専用グリルが組み合わされる。
フロントまわり。「T」の字を横にしたデザインのLEDライトは全車共通。「インスクリプション」には専用グリルが組み合わされる。 拡大
サイドビュー。全長、ホイールベースともに、先代より拡大されている。
サイドビュー。全長、ホイールベースともに、先代より拡大されている。 拡大
インテリアの様子。操作スイッチの機能をタッチパネル式のセンターディスプレイに集約することで、物理的なスイッチ類を大幅に削減した。
インテリアの様子。操作スイッチの機能をタッチパネル式のセンターディスプレイに集約することで、物理的なスイッチ類を大幅に削減した。 拡大
タブレット感覚で画面の操作ができる、9インチのセンターディスプレイ。多くの静電式タッチパネルと異なり、タッチの認識には赤外線が用いられる。手袋をしたままでも操作できるのがメリット。
タブレット感覚で画面の操作ができる、9インチのセンターディスプレイ。多くの静電式タッチパネルと異なり、タッチの認識には赤外線が用いられる。手袋をしたままでも操作できるのがメリット。 拡大
3分割式の2列目シートは、リクライニング機構と、12cmの前後スライド機能付き。中央席は、写真のように座面を持ち上げることで、子どもに適したシートとしても使える。
3分割式の2列目シートは、リクライニング機構と、12cmの前後スライド機能付き。中央席は、写真のように座面を持ち上げることで、子どもに適したシートとしても使える。 拡大

飛ばすほどによくなるタイプ

続いてエンジン。数年前にフォード・グループから抜けて中国のジーリー・グループ入りしたボルボ・カーは、パワートレインを自前で開発することを決めた。とはいえ規模を考えるとそう多くのエンジンを用意するわけにはいかない。そこで「Drive-E」と銘打ち、2リッター以下、4気筒以下のエンジンのみに絞って開発することとした。小さいモデルには1.5リッター4気筒ターボ「T3」を、大きいモデルには2リッター4気筒ターボ「T5」を載せる。より大きなモデルには2リッター4気筒ターボにスーパーチャージャーを加えたツインチャージャーエンジン「T6」を載せ、一番ぜいたくなモデルにはT6に駆動用バッテリーと電気モーターを付加したプラグインハイブリッドの「T8」を載せた。

このうち、新型XC90にはT5、T6、T8を搭載する。今回試乗したのは、ラグジュアリー仕様の「Inscription(インスクリプション)」(909万円)で、T6エンジンを搭載する。全長4950mm、全幅1960mm、全高1760mm、車両重量2100kg(エアサス、サンルーフ付き)の巨体に対して、過給機ダブル掛けとはいえ2リッター4気筒エンジンはどうか? 結論から申し上げると、力強さの面ではまったく問題ない。発進直後~低回転域はスーパーチャージャー、そこから先はターボチャージャーが、たった2リッターのエンジンをドーピングする。3000rpmあたりからはアクセルワークに対してビビッドに反応するようになり、望む瞬間に望むだけの加速を得られる。踏んでしばらくたってから加速するようなもどかしさはない。軽量化されたボディーも力強く感じるのに貢献しているはずだ。

残念ながら、直噴4気筒らしいガラガラ音を打ち消すことはできていない。すごく気になるというほどではないが、競合するであろうプレミアムブランド各社のSUVは6気筒以上を搭載し、洗練された振動対策を施しているため、この点で不利であることは確かだ。といってもガラガラ音が気になったのは高速道路で高負荷をかけている時だけ。タウンスピードでは差は出ない。

飛ばせば飛ばすほどフラットになって、乗り心地がよくなるタイプ。半面、街中ではオプションのエアサスの煮詰めが少々甘いのか、バタつく場面もあった。「コンフォート」(デフォルト)、「エコ」(車高が10mm下がるほか、コースティング機能がオン、アイドリングストップが強化される)、「ダイナミック」(車高が20mm下がるほか、アイドリングストップが解除され、操作系のレスポンスが向上する)、「オフロード」(20km/h以下で選択可能。デフロックされ車高が40mm上がる)、「インディビジュアル」(各要素をドライバーが選択できる)からドライブモードを選ぶことができる。いろいろやってみたが、買ってしばらくするとエコかコンフォートに入れっぱなしになるような気がする。オフロードは試せていない。

ターボとスーパーチャージャーで過給される2リッター直4エンジン。最高出力320psと最大トルク40.8kgmを発生する。
ターボとスーパーチャージャーで過給される2リッター直4エンジン。最高出力320psと最大トルク40.8kgmを発生する。 拡大
新型「ボルボXC90」のパワーユニットは、全部で3種類。タイプ別に「T5」「T6」「T8」の名称で呼ばれる。
新型「ボルボXC90」のパワーユニットは、全部で3種類。タイプ別に「T5」「T6」「T8」の名称で呼ばれる。 拡大
JC08モードの燃費値は11.7km/リッター。エアサスペンションとガラスルーフを装着するテスト車の場合、数値はやや下がり、11.4km/リッターとなる。
JC08モードの燃費値は11.7km/リッター。エアサスペンションとガラスルーフを装着するテスト車の場合、数値はやや下がり、11.4km/リッターとなる。 拡大
センターコンソールのスイッチ類。写真右上はエンジンのオン/オフスイッチで、中央は走行モードのセレクター。
センターコンソールのスイッチ類。写真右上はエンジンのオン/オフスイッチで、中央は走行モードのセレクター。 拡大

高速道路を行く「XC90 T6 AWD インスクリプション」。テスト車には、ボルボ初となるエアサスペンションが装着されていた。


	高速道路を行く「XC90 T6 AWD インスクリプション」。テスト車には、ボルボ初となるエアサスペンションが装着されていた。
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作り手の気合を感じる

メーターナセル内の速度計とエンジン回転計の間にカーナビを表示できるアウディのバーチャル・コックピットと同じような機能がXC90にも備わる。これの見やすさといったらない。視線移動が少ないと疲労も少なく、安全につながるし、他社もどんどん追従してほしい。

安全といえばボルボのお家芸。衝突回避・軽減フルオートブレーキは性能が向上し、50km/hまで完全回避可能となった。夜間を含め歩行者や自転車も検出することができ、こちらは45km/hまで完全回避可能。ミリ波レーダーを使った前方監視および全車速追従機能付きオートクルーズは、レーダーの設置場所が車両前方からフロントガラス内側のルームミラー前に移動したため、ワイパーが汚れを拭き取ることができるようになって検知能力が増すとともに、設置位置の関係で視野も広がった。

このほか、全車速追従機能付きオートクルーズを使う際、50km/h以下であればアクセル/ブレーキの自動化に加え、車線をはみ出さないようステアリングも車両がアシストしてくれる。「テスラ・モデルS」は制限速度の範囲内であれば何キロでもこれが可能で、ボルボもこの後登場するモデルからは130km/h以下までその機能を使えるようになる予定だとか。その間、ドライバーは法律上、ステアリングホイールに手を添えておかないといけない。

道路脇がすぐ建物というケースが多い日本でどれだけ有益かは未知数だが、今回、道路を完全に逸脱してしまった場合に、シートベルトが最も効果的になる角度までシートバックが修正されるなどの対策がとられるランオフロードプロテクションという機能が盛り込まれた。このほか、ブラインドスポットモニター、クロストラフィックアラート、レーンキーピングエイド、フルアクティブハイビームなど、他社が自慢する先進的な安全装備はほぼ網羅されている。右折時に対向する直進車を検知して衝突の危険性があればブレーキをかけるインターセクションサポートも設定される。

XC90は3列目シートを備える7人乗り。3列目は大人が長時間過ごすには頭上空間が足りないが、子供や小柄な女性なら大丈夫。3列目を格納すれば広大なラゲッジスペース(692リッター)が出現する。2列目のシートバックも倒せば1868リッター!

ほかにも細かい新機能を挙げればキリがないほど。ともあれ、新型XC90はそれ自体がまったく新しいモデルであると同時に、この先何年も使うプラットフォーム採用例の第1号ということで、気合が入っているのをあちこちに感じる。乗り心地や音・振動対策をはじめ荒削りな部分もあるが、それらを補ってあまりある魅力があった。高い運動性能しかり、高い静粛性しかり、使いやすい操作系、そして充実した安全装備による安心感しかり。昔からボルボは人にオススメしやすいブランドの代表格だが、これまでは「無難だから」というのがその理由だった。けれど、新型XC90は無難だからではなく、ほかより新しく、ユニークで、なんかワクワクするという理由でオススメしたい。

(文=塩見 智/写真=田村 弥)

メーターは、12.3インチの液晶ディスプレイになっている。中央には、カーナビゲーションを含むさまざまな情報が表示される。


	メーターは、12.3インチの液晶ディスプレイになっている。中央には、カーナビゲーションを含むさまざまな情報が表示される。
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「ボルボXC90」には、全車速追従機能付きのクルーズコントロール機能や、車線の逸脱を防止するシステムが標準で備わる。
「ボルボXC90」には、全車速追従機能付きのクルーズコントロール機能や、車線の逸脱を防止するシステムが標準で備わる。 拡大
「XC90 T6 AWD インスクリプション」には、専用の20インチアルミホイールが装着される。テスト車には「コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5」が組み合わされていた。
「XC90 T6 AWD インスクリプション」には、専用の20インチアルミホイールが装着される。テスト車には「コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5」が組み合わされていた。 拡大
定員2人の3列目シートに腰かけてみる。「身長170cmまでであれば快適にすごせる」とアピールされるが……。
定員2人の3列目シートに腰かけてみる。「身長170cmまでであれば快適にすごせる」とアピールされるが……。 拡大
荷室の容量は、3列目シート使用時で314リッター。3列目収納時は692リッターで、2列目もたためば最大1868リッターにまで拡大できる。エアサスペンション装着車には、積載時の車高調節機能も備わる。(写真をクリックすると、荷室のアレンジが見られます)
荷室の容量は、3列目シート使用時で314リッター。3列目収納時は692リッターで、2列目もたためば最大1868リッターにまで拡大できる。エアサスペンション装着車には、積載時の車高調節機能も備わる。(写真をクリックすると、荷室のアレンジが見られます) 拡大
 
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テスト車のデータ

ボルボXC90 T6 AWD インスクリプション

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4950×1960×1760mm
ホイールベース:2985mm
車重:2100kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ+スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
最高出力:320ps(235kW)/5700rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/2200-5400rpm
タイヤ:(前)275/45R20 110V/(後)275/45R20 110V(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:11.4km/リッター(JC08モード)
価格:909万円/テスト車=1004万6000円
オプション装備:チルトアップ機構付き電動パノラマガラスサンルーフ(20万6000円)/Bowers&Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム<1400W、19スピーカー>サブウーハー付き(45万円)/電子制御式4輪エアサスペンション+ドライビングモード選択式FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシー(30万円)

テスト車の年式:2016年型
テスト車の走行距離:1721km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

ボルボXC90 T6 AWD インスクリプション
ボルボXC90 T6 AWD インスクリプション 拡大
「XC90 T6 AWD インスクリプション」には、シートと同じ色(テスト車はアンバー)の本革を使ったリモコンキーが与えられる。
「XC90 T6 AWD インスクリプション」には、シートと同じ色(テスト車はアンバー)の本革を使ったリモコンキーが与えられる。 拡大
「ボルボXC90」には、イエーテボリのコンサートホールの音響を再現したという、Bowers&Wilkinsのオーディオシステムが用意される。写真はダッシュボード上のツイーター。19個あるスピーカーのひとつだ。
「ボルボXC90」には、イエーテボリのコンサートホールの音響を再現したという、Bowers&Wilkinsのオーディオシステムが用意される。写真はダッシュボード上のツイーター。19個あるスピーカーのひとつだ。 拡大
テスト車は、前半分にチルトアップ機構が付いた電動パノラマガラスサンルーフを装備していた。このため、車重は標準車に比べて20kg重くなっている。
テスト車は、前半分にチルトアップ機構が付いた電動パノラマガラスサンルーフを装備していた。このため、車重は標準車に比べて20kg重くなっている。 拡大
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