クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

トヨタ・プリウスE(FF/CVT)

グッドハンドリングエコカーの誕生 2016.03.07 試乗記 ちまたで大人気の新型「トヨタ・プリウス」は、自動車メディアの間でも評価が高い。そういう声が高まれば高まるほど、逆にプリウスに対する“構え”を強めていた筆者だったが、いざステアリングを握ると……。ベーシック仕様にして、モデル随一の燃費40.8km/リッター(JC08モード)を誇る「E」グレードに試乗した。

うわさは本当だった

プリウスのモデルチェンジは市井の民にとって大きな関心事だ。なにしろ日本で一番よく売れるクルマのモデルチェンジなのだから。けれども、これまではそれが必ずしもクルマ好きの大きな関心事とは限らなかった。なぜなら、プリウスはエコカーで、好きだからクルマに乗る層ではなく、必要だから乗る層のためのクルマだったから。エコカーというより、エコ“一辺倒”カーとみなされていた。

ところが、2015年末の新型発売より前の段階で「次期型はどうやらこれまでとは違うらしい」「燃費だけじゃないらしい」といううわさが自動車メディアの間に広がった。ジャーナリストもその影響力の大きさによって試乗するタイミングが異なる。発売より随分前にプロトタイプに試乗する偉い人もいるので、どうやったってそうしたうわさが流れてくるのだ。聞こえてくるのは、総じてプリウスの走りの面での高い評価だった。

だから試乗を楽しみにしていた。楽しみにするといっても、きっとよいのだろうというワクワクではなく、むしろその逆で「偉い人がよいと言ったからって僕も高評価を下すとは限らんよ」という武者震いだ。そしてほどなくその機会がやってきた。「さあ斬るぞ!」 試乗車のドアを開ける。「よいと言ったってプリウスはプリウスだろ?」 座ってシートベルトをしてプッシュボタンを押す。「3世代続けてこのクルマがドライビングファンを提供してくれたことはないんだから」 Dレンジに入れて走る。

よかった。これまでとは別モノだった。うわさは本当だった。ひと言で表現するなら「重心が低くて“曲がり”が気持ちよい」。ホント乗ってびっくりした。乗る前に見た大胆なデザインのフロントマスクにもびっくりしたが。加えて、従来のプリウスがもっていた「よい燃費を記録することの善良な市民としての素直なうれしさ」も、もちろん味わうことができた。

今回試乗したのは最廉価グレードの「E」。同時に新型「プリウス」で最も優秀な40.8km/リッターという燃費(JC08モード)がうたわれる“燃費スペシャル”グレードでもある。車両価格は242万9018円。衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」はオプションとなる。
今回試乗したのは最廉価グレードの「E」。同時に新型「プリウス」で最も優秀な40.8km/リッターという燃費(JC08モード)がうたわれる“燃費スペシャル”グレードでもある。車両価格は242万9018円。衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」はオプションとなる。 拡大
従来同様、インストゥルメントパネルはメーター(マルチインフォメーションディスプレイ)を中央に配置したデザイン。「表示系遠方・操作系手元配置」の考え方を「プリウス」のDNAとして引き継いでいる。「E」グレードではステアリングホイールがウレタンとなる。
従来同様、インストゥルメントパネルはメーター(マルチインフォメーションディスプレイ)を中央に配置したデザイン。「表示系遠方・操作系手元配置」の考え方を「プリウス」のDNAとして引き継いでいる。「E」グレードではステアリングホイールがウレタンとなる。 拡大
「E」グレードの内装色はブラックのみ。
「E」グレードの内装色はブラックのみ。 拡大

TNGAの採用でより低く

新型プリウスのフロントマスクはかなりアクが強い。好き嫌いが分かれるだろう。だが、月販目標台数1万2000台のクルマだ。ブレイクした2代目以降がそうだったように、新型も今後街角でイヤというほど見かけることになる。実際、発売後1カ月で約10万台の受注が入ったそうだ。それらを考慮し、簡単に飽きられない“強烈さ”を盛り込んだのではないだろうか。実際、初めて写真で見たときにはギョッとしたが、今では見慣れたとまでは言わないまでも、驚きはしなくなった。

リアはあるところでスパっと切り落とされた、いわゆるコーダトロンカ形状。リアコンビランプはやや複雑な形のブーメランのよう。リアのナンバープレートの上にガラス部分を設け、後方視界を確保するやり方は先々代からの伝統だ。

新型はトヨタの新しい前輪駆動車用プラットフォーム「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」が採用された第1号だ。エンジンやハイブリッドシステムは従来型を徹底的に磨くことによって、小型化、軽量化、高性能化が図られたのに対し、骨格はまったくの別物だ。具体的には、結合剛性を高める最新の溶接技術や構造用接着剤を採用することでボディーの高剛性化を図り、超高張力鋼板の採用拡大によって軽量化した。また、TNGAによって重量物を低い位置に集めることに成功し、同程度の室内スペースが保たれたまま車高が下がった。

取材中、テスト車を道路脇に止めて横から眺めたら、まるで地を這(は)うような低さだったので驚いたのだが、それは僕が一段高い歩道から見ていただけだった。だが同じ高さからあらためて見直しても十分に低く見えた。ルーフの最も高い部分同士を比べると、先代に比べ20mmほど低いだけなのだが、ボンネットやリアハッチ部分が先代よりもかなり低くなっているので、全体としてすごく低くなったように見える。またルーフピークが170mmも前へ移動しているので、そのシルエットは空力ボディーによって1960年代はじめのルマン24時間レースで活躍した「アルピーヌM63」(カッコいいからググッてね)を思わせる……というのは言い過ぎだが、共通の志を感じることはできる。

見る者に強烈な印象を与えるヘッドランプ。最廉価な「E」グレードにもBi-Beam LEDヘッドランプが採用されている。
見る者に強烈な印象を与えるヘッドランプ。最廉価な「E」グレードにもBi-Beam LEDヘッドランプが採用されている。 拡大
リアコンビネーションランプのデザインはブーメランのよう。従来同様、リアエンドに後方視界を確保するガラスを設けている。
リアコンビネーションランプのデザインはブーメランのよう。従来同様、リアエンドに後方視界を確保するガラスを設けている。 拡大
1.8リッター直4エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドシステムは、小型軽量化と高効率化が推し進められている。
1.8リッター直4エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドシステムは、小型軽量化と高効率化が推し進められている。 拡大
センターパネルに配置されたCVTのシフトセレクター。「E」グレードでも、この部分には話題のホワイト加飾パネルが用いられている。
センターパネルに配置されたCVTのシフトセレクター。「E」グレードでも、この部分には話題のホワイト加飾パネルが用いられている。 拡大

最廉価版であり“燃費スペシャル”でもある

低重心がもたらす走りっぷりを確かめるべく、低い着座位置のフロントシートに腰を落ち着け、まずは市街地を走らせる。目線が低くなってもエンジンフードの位置なども低くなっているので視界は良好だ。モーター駆動のみで発進し、一定の速度に達するとエンジンによる駆動に切り替わるというのがハイブリッドシステムの基本パターンだが、新型はモーター駆動の領域が長くなった。急加速でなければ40km/hくらいまでは平気でモーターのみで走る。途中で「ブルルン」とエンジンがかかるおなじみの瞬間がやってくるタイミングが遅い。その「ブルルン」という振動も軽減された。「プルルン」くらい。

先代との顕著な違いは交差点を曲がった時に顔を見せた。ステアリングを切ったら即座にクルマが向きを変え始めるのだ。従来はステアリングを切ったら一瞬ボディーがグラっと傾いてからクルマが向きを変え始めた。車線変更のほうがわかりやすいと感じる人もいるかもしれない。新型はステアリングを操作するとスライドするように遅れなくスッと車線をまたぐ。足(スプリング&ダンパー)を硬くしても似たような挙動にすることができるのだろうが、普段の乗り心地が悪くなる。プリウスの足は硬くなく、乗り心地も悪くない。初めてリアサスが独立懸架(ダブルウィッシュボーン)となったことも乗り心地向上に寄与しているはずだ。

いやはや新型プリウスはすっかりグッドハンドリングカーに生まれ変わった。「日産リーフ」や「テスラ・モデルS」など、エンジンがなく床下に重いバッテリーを積むピュアEVは総じて重心が低く、特に目指さなくても“結果としてのスポーティーさ”を手に入れることになる。反対にプリウスはスポーティーさを狙って、エンジン、モーター、バッテリー、燃料タンクをできるだけ低くレイアウトしたということだろう。

ただし正確に記すと、こうした印象は別の機会に乗った上級グレードの印象も含めたプリウス全体への評価だ。今回テストしたEグレードに限ると「すっかりグッドハンドリング」という評価を少し割り引く必要がある。

上級グレードには見た目やハンドリングに優れる215/45R17サイズのタイヤが装着されるのに対し、Eには軽量で安価な195/65R15サイズのタイヤが装着される。またリアワイパーが省かれ、室内の装備がいくつか省かれ、通常43リッターの燃料タンクが38リッターとなり、通常4.8リッターのウォッシャータンク容量が2.0リッターとなる。要するに、Eは廉価グレードなのだが、単なる廉価グレードというわけでもない。新型プリウスは仕様によって、駆動用バッテリーにニッケル水素バッテリーを積むグレードとリチウムイオンバッテリーを積むグレードがあり、基本的には上級グレードに高価なリチウムイオン、ベーシックグレードにニッケル水素が積まれるのだが、Eだけは別。高価だがより軽い重量で同じだけのバッテリー容量を得られるリチウムイオンが搭載される。

その結果、EのJC08モード燃費は全グレードのなかで最も優秀な40.8km/リッター。つまりEは廉価グレードであると同時に燃費スペシャルグレードとしての役割も担っているのだ。考えてみれば、燃料タンクやウォッシャータンクの容量を減らしたって大してコストが下がるとは思えないが、軽量化のためと思えば合点がいく。リアワイパー省略もしかり。ただ、室内を見れば、新型の新機軸といえる一部にホワイト加飾パネルを使ったセンターコンソールが味気ない黒一色となるなど、コストを抑えた部分が目立つ。

主にタイヤの違いだと思うが、Eの挙動は全体的に若干シャープさに欠ける。段差を乗り越えた際の収束にほんのわずか余計に時間がかかる。長く続くコーナーでちょっと落ち着きがない。ただしこれらは別の機会に17インチ仕様に乗った後、さかのぼって感じた印象であり、Eだけに乗った時点では不満はなかった。

新型はモーター駆動による走行領域が長くなった。40km/hぐらいまでなら平気でモーターだけで走る。
新型はモーター駆動による走行領域が長くなった。40km/hぐらいまでなら平気でモーターだけで走る。 拡大
「E」グレードのシート表皮はごくベーシックなファブリックとなる。
「E」グレードのシート表皮はごくベーシックなファブリックとなる。 拡大
後席にはセンターアームレストは付かないが、6:4の分割可倒機構は備わる。また、従来型では後席の背後(ラゲッジルーム下)に搭載されていた駆動用バッテリー(「E」グレードにはリチウムイオンが搭載されている)は、この新型では後席の下に移動されている。
後席にはセンターアームレストは付かないが、6:4の分割可倒機構は備わる。また、従来型では後席の背後(ラゲッジルーム下)に搭載されていた駆動用バッテリー(「E」グレードにはリチウムイオンが搭載されている)は、この新型では後席の下に移動されている。 拡大
ベーシックな「E」グレードであることが、おそらく最もはっきりと表現されているのがこのセンターコンソールではないだろうか。新型の室内のアイキャッチになっているホワイト加飾パネルは用いられず、黒一色のシンプルな作りになっている。
ベーシックな「E」グレードであることが、おそらく最もはっきりと表現されているのがこのセンターコンソールではないだろうか。新型の室内のアイキャッチになっているホワイト加飾パネルは用いられず、黒一色のシンプルな作りになっている。 拡大
マルチインフォメーションディスプレイは、右側に速度計や燃料計など基本情報を表示する「メインディスプレイ」、左側をステアリングスイッチで切り替えられる「マルチディスプレイ」(写真はエネルギーモニター)という構成をとる。
マルチインフォメーションディスプレイは、右側に速度計や燃料計など基本情報を表示する「メインディスプレイ」、左側をステアリングスイッチで切り替えられる「マルチディスプレイ」(写真はエネルギーモニター)という構成をとる。 拡大
「E」グレードのタイヤサイズは195/65R15。ホイールキャップが付いているために一瞬、スチールホイールか? と疑うが、アルミホイールが標準で装着される。
「E」グレードのタイヤサイズは195/65R15。ホイールキャップが付いているために一瞬、スチールホイールか? と疑うが、アルミホイールが標準で装着される。 拡大

正面突破に拍手

Eの40.8km/リッターという燃費に対し、他の2WD車は37.2km/リッター、初めて追加された4WD車は34.0km/リッター。ちなみに先代は燃費優先グレードで32.6km/リッターだった。今回、Eで300km弱走行し、車載燃費計の数値は24.2km/リッターだった。JC08モードがモンスター級の数字なので達成率は6割弱にとどまるが、絶対値は立派というべきだろう。周囲に迷惑をかけるようなひとりよがりの燃費走行ではなく、交通の流れに乗った走行によるものだ。

短時間ながら、人に運転してもらって後席にも座ってみたが、快適だった。後席の着座位置も低い。頭上空間もフロントほどではないが、もじゃもじゃの僕の髪の毛も天井に触れない程度のスペースが確保されている。フロアの足元部分もまずまずフラット。いったい電気仕掛けの臓物はどこへ入っているのかと思わせる。座面長が十分なので長時間座ってもつらくない。

ラゲッジスペースが広いのにも感心した。スクエアなスペースが広がり、それに加えて左右部分が丁寧にえぐられているので、試してないけどキャディーバッグも複数積載OKのはずだ。テスト車には巻き取り式のトノカバーが備わっていなかったが、ラゲッジフロアのマットをめくるとジャッキなどに加え、トノカバーの形がかたどられたスペースが用意されている。荷物が多くてトノカバーを外した場合にここにぴったり収めればよいわけだ。芸が細かい。細部に宿る神が次々見つかる。神社だらけの神田・日本橋かいわいのようだ。

芸能人でもスポーツ選手でも、売れすぎたり活躍しすぎたりすると、良いか悪いか、正しいか正しくないかは関係なく、やっかまれるようになる。これまでのプリウスが「燃費はいいけど、楽しくない」と言われがちだったのも、売れすぎたからというのもあるだろう。楽しくないクルマなんて山ほどあるのに、プリウスばかりがそう言われる。トヨタは開き直ることなく、4代目の開発に際して、燃費をさらに向上させたうえで運転の楽しさも盛り込んでやろうと正面突破してきた。「“楽しさ=グッドハンドリング”という思考が短絡的で、若者には通じないんじゃないか」と、平日23時からのNHK総合に出てくる意識高い系コメンテーターみたいなことを書こうかとも思ったがやめた。素直にグッドハンドリングエコカーの誕生に拍手を送りたい。

(文=塩見 智/写真=高橋信宏)

今回は約300km試乗し、燃費は満タン法で22.0km/リッター、車載燃費計表示で24.2km/リッターとなった。
今回は約300km試乗し、燃費は満タン法で22.0km/リッター、車載燃費計表示で24.2km/リッターとなった。 拡大
後席はクッションの長さが十分なので長時間座ってもつらくない。
後席はクッションの長さが十分なので長時間座ってもつらくない。 拡大
ラゲッジルームの容量は502リッター。「E」グレードではトノカバーは備わらない。
ラゲッジルームの容量は502リッター。「E」グレードではトノカバーは備わらない。 拡大
フロアマットをめくるとデッキアンダートレイ(写真はスペアタイヤなしの小型タイプ)が現れる。「E」グレードにはトノカバーは付かないが、それを収納するスペースは用意されている。
フロアマットをめくるとデッキアンダートレイ(写真はスペアタイヤなしの小型タイプ)が現れる。「E」グレードにはトノカバーは付かないが、それを収納するスペースは用意されている。 拡大

テスト車のデータ

トヨタ・プリウスE

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4540×1760×1470mm
ホイールベース:2700mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:98ps(72kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:14.5kgm(142Nm)/3600rpm
モーター最高出力:72ps(53kW)
モーター最大トルク:16.6kgm(163Nm)
タイヤ:(前)195/65R15 91S/(後)195/65R15 91S(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:39.0km/リッター(JC08モード)※
価格:242万9018円/テスト車=281万1878円
オプション装備:Toyota Safety Sense P<プリクラッシュセーフティシステム+レーンディパーチャーアラート+オートマチックハイビーム+レーダークルーズコントロール>(8万6400円)/ITS Connect(2万7000円)/プリウス専用T-Connectナビ 9インチモデル+マルチビューバックガイドモニター(26万9460円)
※=試乗車はToyota Safety Sense Pが装着され、車重が10kg増加の1320kgとなるため、JC08モード燃費は39.0km/リッターとなる。

テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:3412km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:299.2km
使用燃料:13.6リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:22.0km/リッター(満タン法)/24.2km/リッター(車載燃費計計測値)

トヨタ・プリウスE
トヨタ・プリウスE 拡大