ホンダ、新型「ASIMO」などを発表

2011.11.10 自動車ニュース
高さ20mmの凹凸を乗り越えて歩き続ける新型ASIMO。障害物の位置を見極めたうえで、最適なルートを検討しながら歩行するという。
ホンダ、新型「ASIMO」と「Honda Robotics」を発表

ホンダ、新型「ASIMO」と「Honda Robotics」を発表

本田技研工業は2011年11月8日、同社和光研究所で、2足歩行ロボット「ASIMO(アシモ)」の新型を発表した。

両足ジャンプする新型ASIMO。ケンケンも後ろ向き走りもできる。
ホンダ、新型「ASIMO」と「Honda Robotics」を発表
ネジ式のフタを開け、紙コップに飲み物を注ぐ。指先や手のひらにつけられた触覚センサーにより、適切な力をかけて動作を行う。
ホンダ、新型「ASIMO」と「Honda Robotics」を発表
新型ASIMOは来客の対応にあわせて自分の行動を変更できるほか、他のASIMOと協調して作業を行うこともできる。
ホンダ、新型「ASIMO」と「Honda Robotics」を発表

■新型はケンケンもできる

新型「ASIMO」は、より速く走れ、指先の繊細な動きが可能になり、周囲の状況を見極めながら柔軟な対応ができるようになった。これにより、人の操作によって動く「自動機械」から、自分自身の知性によって行動する「自律機械」に生まれ変わったとホンダは主張する。

これまでは6km/hの“早歩き”がASIMOの限界だったが、新型は脚力をアップするとともに脚の可動範囲を広げ、より高速で緻密な姿勢制御を行うことにより、最高9km/hと“駆け足”に近い動作が可能になった。しかも、ただ前に向かって走るだけでなく、後ろ向きに走ったり、両足ジャンプや片足ジャンプ(ケンケン)までできる。
また、従来型は高さ6mmまでしか路面の凹凸に対応できなかったが、新型はそれよりも格段に大きな20mmの凹凸があっても安定性を失うことなく踏破できる。

こうした動作では、足首が柔軟に動き、膝と腰を巧みに動かして姿勢を維持するため、ロボット特有のぎこちなさが消え去り、人間に近い自然で滑らかな物腰を見せるようになった。

また、従来のASIMOも飲み物を乗せたトレーを保持したり、ワゴンを押したりするような動作は可能だったが、左右5本ずつの指に合計26の自由度が与えられ、触覚センサーを取り付けたことにより、例えばネジ式のフタを回して開け、ポットのなかに入った飲み物を反対の手で持った紙コップに注ぐといった繊細な動作もこなせるようになった。さらに、10本の指を駆使すれば手話も可能で、これによりASIMOはさらに多彩なコミュニケーションを手に入れたといえる。

知的能力の面では、ASIMO自身が何かの行動の途中であっても、相手の反応に応じて別の行動をとったり、視覚センサーと聴覚センサーを連動させることで複数の相手が同時に発した言葉をそれぞれ聞き分けるなど、人間でも難しいと思われる能力を備えるまでになった。

体重支持型歩行アシスト。脚力が低下した人のためだけでなく、脚に代わって機械が体重を支えてくれることから、中腰になって作業を行う際の疲労軽減にも役立つ。実際にホンダの生産ラインでも使用されているという。
ホンダ、新型「ASIMO」と「Honda Robotics」を発表
原発事故現場での活躍が期待される作業アームロボット。赤い部分がバルブの操作部。ここに銀色のジグをはめ込み、先端を回転させることでバルブを開閉する。バルブ手前のパイプを避けて作業を行っている点に注目。この写真はデモ用にカバーを取り去ったもの。
ホンダ、新型「ASIMO」と「Honda Robotics」を発表
こちらはカバーをつけた状態。先端の銀色の部分が、バルブ開閉用のジグ。
ホンダ、新型「ASIMO」と「Honda Robotics」を発表

■「ASIMO」から生まれた「Honda Robotics」

この新型ASIMOとともに今回初めて公開されたのが、原発事故現場での活躍が期待される「作業アームロボット」だった。
こちらはASIMOのようなヒューマノイド型ではなく、腕先のみのような形状をしているため、自動車の生産ラインなどでおなじみの工業用ロボットと同じと思われるかもしれないが、その高度な姿勢制御能力はそれとはまったくの別物といえる。

今回展示された作業アームロボットは、例えば高所作業車の荷台に固定し、高い位置に取り付けられたバルブの開閉作業を行うために開発された。ただし、高所作業車の荷台は数cmの振幅で揺れ続けているため、バルブを保持する作業アームロボットは自らの判断で各関節を動かし、バルブとの位置関係を常に一定に保たなければならない。また、バルブの手前に障害物が存在するケースも考えられるので、関節には先端ツール部を含めて10の自由度を設け、多彩な動きを可能にしている。

先の福島第一原発事故では、放射線量が高くて人が近づけない場所の作業にASIMOを使ってはどうかとの意見が多く寄せられたが、人の暮らしのなかに溶け込むことを優先して設計されたASIMOには、ガレキが山積みとなった原発事故現場で複雑な作業を行う能力は現在のところなく、このため一部のASIMOファンを落胆させたといわれる。そこでホンダは東京電力と検討を重ね、事故現場で要求される仕様にあった作業アームロボットの完成にこぎ着けたという。

なお、ロボットであればいくら放射線量が高くても長期間の作業が可能と思われるかもしれないが、高い放射線を長期間にわたって浴びるとシリコンが劣化し、絶縁性を確保できなくなるため、作業アームロボットであっても一定期間後は“交代”が必要になるそうだ。

ホンダがヒューマノイド型ロボットの研究を続けるのは、人に役立つモノ作りを行うには「人を知り、人に学ぶ“人研究”」が何よりも重要との思いが根底にあるから。また、ホンダはこの作業アームロボット以外にも歩行アシスト装置や自立式一輪車の「U3-X」など、ASIMOの技術を活用したさまざまな研究開発を行っている。
今後、ホンダはヒューマノイド型ロボット研究から生まれたロボティクス技術や、これを応用した製品を「Honda Robotics」と呼び、将来の実用に向けて積極的な研究開発を進めていくという。

(文と写真=大谷達也/Little Wing)

この記事の大きな画像を見るためには、画像ギャラリーをご覧ください。