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ランドローバー・レンジローバー イヴォーク コンバーチブル HSEダイナミック(4WD/9AT)

空を味方につけたSUV 2016.04.15 試乗記 あらゆる地面を手なずけたレンジローバーが、次に狙いを定めたのは空だった! トレードマークともいえるあのスマートなメタルルーフを脱ぎ去って、しかし足元は妥協なき4WDシステムで固めたトップレスSUV「イヴォーク コンバーチブル」に試乗した。

道を選ばぬオープンカー

羽田空港(東京)→シャルル・ド・ゴール空港(パリ)→サン=テグジュペリ空港(リヨン)と航空機を乗り継いでやってきたのはフランス南東部の高級スキーリゾート、クールシュベル。ひと山ふた山越えればイタリア・トリノで、反対側にはスイス・ジュネーブという国境が入り組んだところにある高い山だ。3月下旬でもまだまだ雪は十分に残っていて、オフピーク時期を狙ったスキー客がちらほら街を歩いていた。皆リッチそう。

イヴォーク コンバーチブルがどうして国際試乗会にそこを選んだかというと、このクルマのキャッチフレーズが「Convertible for All Season」だから。道を選ばないオープンカーだということを示すために、試乗は雪交じりの一般道とゲレンデに特設したクローズドコースで行われた。ただしわれわれのスケジュールはひと月以上やってる試乗会の後半だったため、もう路上には雪はなかった。

空港で受け取ったイヴォークは、ガソリンの2リッター直4ターボエンジンと9段ATのパワートレインを採用した4WDの「HSEダイナミック」というモデル。この右ハンドル版が日本仕様として輸入される予定だ。日本仕様のボディーカラーはわれわれがテストしたコリス・グレーではなく、フェニックス・オレンジ1種類で押し通す予定! だそうだ。派手なスタイリングなら地味な色、地味なスタイリングなら派手な色というのが、クルマをカッコよく見せるひとつのセオリーとしてあるが、別にこの判断がゲスの極みだとは思わない。万人に向けたモデルでないことは一目瞭然。似合う(と自分で思う)人だけが選ぶべきクルマだ。

まずは2012年3月にコンセプトモデルが世に問われ、2015年11月に量産型が公開された「イヴォーク コンバーチブル」。シリーズの最上位に位置づけられている。
まずは2012年3月にコンセプトモデルが世に問われ、2015年11月に量産型が公開された「イヴォーク コンバーチブル」。シリーズの最上位に位置づけられている。 拡大
10.2インチのタッチスクリーン式インフォテインメントシステム「InControl Touch Pro」が初めて採用された。
10.2インチのタッチスクリーン式インフォテインメントシステム「InControl Touch Pro」が初めて採用された。 拡大
乗車定員は4人。試乗車は左ハンドル仕様だが、日本には右ハンドルが導入される予定。
乗車定員は4人。試乗車は左ハンドル仕様だが、日本には右ハンドルが導入される予定。 拡大
ボディーサイズは4370×1980×1609mm。車重は1936kgと、メタルルーフの「クーペ」より150kg以上重い。写真の車体色はコリス・グレー。
ボディーサイズは4370×1980×1609mm。車重は1936kgと、メタルルーフの「クーペ」より150kg以上重い。写真の車体色はコリス・グレー。 拡大

開けても閉めてもイケている

イヴォークのスタイリング、とりわけ「クーペ」のそれは、ここ数年のうちに登場したモデルの中でダントツ、ナンバーワンの美しさだと思う。登場から数年たって見慣れてはきたものの、今でも街で見かけると見とれてしまう。メーカーが「ライジング・ウエスト・レール」と呼ぶ、フロントからリアへ向かって、上がりながらまっすぐ伸びるショルダーラインと、その下を平行に走るウエストラインこそがこのクルマのキモ。低く、幅広くなければカッコいいクルマがつくれないわけではないということを教えてくれる。これほどドライバーがブサイクだと残念なクルマはない。

その乗り手を選ぶ伊達(だて)グルマのルーフをぶった切ったのが、イヴォーク コンバーチブルだ。「よりエレガントだから」という理由でリトラクタブルハードトップではなくソフトトップが選ばれた。Z形に折りたたまれる5層のファブリックのルーフで、当然全自動。開口部が大きいにもかかわらず、20秒前後で開閉が完了する(開けるのに18秒、閉じるのに21秒)。特筆すべきは作動音の静かさ。モーターを4つ使っているそうだが、大げさではなくほとんど音がしない。ベバスト製。48km/hまでなら走行中でも開閉が可能だ。

トップを下ろすと、フロントガラスとヘッドレストを除いてショルダーラインより上には何もない。ひと目見ただけで強く印象に残るスタイリングだ。その姿もイケているが、トップを上げたクローズド状態のシルエットが端正で、よくまとまっている。閉じているほうがカッコいいといっても過言ではない。オープンカーを買っても、閉じている時間のほうが圧倒的に長いであろう日本では、とりわけ閉じた時のスタイリングのよいことが重要だ。

ルーフがなくなって頭上がやけにさっぱりしたが、「イヴォーク」のデザインのキモ、肩と腰の「ライジング・ウエスト・レール」は生きている。
ルーフがなくなって頭上がやけにさっぱりしたが、「イヴォーク」のデザインのキモ、肩と腰の「ライジング・ウエスト・レール」は生きている。 拡大
リアシートには“プラス2”以上の居住性が確保されている。またそれぞれのヘッドレストの背後に、万一の横転時に90ミリ秒で展開するアルミニウムバーが格納されている。
リアシートには“プラス2”以上の居住性が確保されている。またそれぞれのヘッドレストの背後に、万一の横転時に90ミリ秒で展開するアルミニウムバーが格納されている。 拡大
トランク容量は251リッター。ソフトトップを開けても閉めても、この容量に変化なし。中央にスキーのような長尺物を積載する時のためのトランクスルーが用意されている。
トランク容量は251リッター。ソフトトップを開けても閉めても、この容量に変化なし。中央にスキーのような長尺物を積載する時のためのトランクスルーが用意されている。 拡大
5層構造の電動ソフトトップは、開けるのに18秒、閉じるのに21秒を要する。
5層構造の電動ソフトトップは、開けるのに18秒、閉じるのに21秒を要する。 拡大

2+2ではなくフル4シーター

イヴォークは2012年に日本に導入され、翌13年末にマイナーチェンジし、ATが6段から9段へと進化した。そのタイミングで足まわりにも手が入り、その印象はガラリと変わった。よりソフトライドとなって、乗り心地が劇的にというと大げさだが、それに近いほど向上したのだ。イヴォーク コンバーチブルでも、最新のイヴォークと変わらぬ乗り心地のよさを味わうことができた。

また官能性はないものの、必要十分な力強さを発揮するエンジンと、エンジンの効率が高い部分をキープすべく多段を利用してきめ細かく変速しながらも、ほとんどそのショックを感じさせないATの組み合わせは、よくできているがゆえに逆にパワートレインの存在を感じさせず、常に望むペースで走らせることができた。クローズド状態で走行している限り、静粛性もイヴォークとほぼ変わらなかったのには感心した。

もっと感心したのは、後席の居住空間の広さ。ルーフを閉じた状態での後席の頭上空間はイヴォーク クーペどころか5ドアのイヴォークよりも広い。開けても閉じても2+2ではなくフル4シーターとして使うことができるのだ。閉塞(へいそく)感もない。さすがにリアの風の巻き込みは激しく、40~50km/hでもルームミラーに映る後席の女性の髪は逆立っていた。次に見たらニット帽をかぶっていた。

2リッターのガソリンターボエンジン搭載モデルの動力性能は、0-100km/h加速が8.6秒で、最高速は209km/hと発表されている(欧州仕様の場合)。
2リッターのガソリンターボエンジン搭載モデルの動力性能は、0-100km/h加速が8.6秒で、最高速は209km/hと発表されている(欧州仕様の場合)。 拡大
2リッターのガソリンターボエンジンは240psと34.7kgmを発生する。なおヨーロッパでは180psの2リッター直4ディーゼルターボ搭載車も設定されている。
2リッターのガソリンターボエンジンは240psと34.7kgmを発生する。なおヨーロッパでは180psの2リッター直4ディーゼルターボ搭載車も設定されている。 拡大
ウインドディフレクターを取り付けたところ。リアシートを覆うかたちで装着する。
ウインドディフレクターを取り付けたところ。リアシートを覆うかたちで装着する。 拡大
写真の車体色はフェニックス・オレンジ。日本にはこの色のみが導入される予定。
写真の車体色はフェニックス・オレンジ。日本にはこの色のみが導入される予定。 拡大
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走破性に抜かりなし

ボディー剛性によほど自信があったのだろう、メーカーは試乗コースにモーグル状の凸凹路を組み込み、その途中の、車体が一番ねじれるであろう状態で停車させ「その状態でトップを閉じてみてください」と提案してきた。やってみると、なるほどフロントウィンドウ上端とルーフの前端がガッチリとかみ合って、難なく閉じることができた。オープン化によるボディー剛性低下は、高張力鋼板の割合を増やしたほか、アンダーボディーとサイドシルの部分にブレースを追加することで防いだという。

雪上特設コースでオープンにして走らせてみた。装着されていたピレリの「スコーピオン ウインター」というオールシーズンタイヤは、雪上でなかなか頼もしくグリップしてくれ、安心してペースを上げられた。イヴォーク コンバーチブルの4WDは通常FWD(前輪駆動)で走行するオンデマンドタイプだが、おなじみのテレインレスポンスを「スナ/ジャリ/ユキ」モードにするだけで前後トルク配分が最適化され、トラクションはバッチリ。末っ子といえどもレンジローバーを名乗るだけの悪路走破性を見せた。

イヴォーク コンバーチブルは、ルーフを開ければ非日常的ドライブを楽しむことができ、閉じればフル4シーターのSUVとして日常の足になるという多様性、万能性をもつ。華やかなスタイリングを真面目なエンジニアリングで下支えする心憎いモデルだ。アルプスの山道をオープンにして走らせていると、優雅にリゾートを楽しんでいる(多分)富裕層が「あのクルマはなんだ?」と注目しているのをひしひしと感じた。日本で乗ればもっと注目を集め、どんな人が運転しているのかとのぞき込まれることだろう。それを厭(いと)わない人、むしろ見られることはウエルカムだという人にとっては非常に満足度が高いはずだ。日本導入は秋。

(文=塩見 智/写真=ジャガー・ランドローバー)

雪上コースを行く。最低地上高は208mm。ちなみに渡河は水深500mmまで可能とのこと。
雪上コースを行く。最低地上高は208mm。ちなみに渡河は水深500mmまで可能とのこと。 拡大
特設コースに挑む。レンジローバー一族として走破性に一切の妥協はない。
特設コースに挑む。レンジローバー一族として走破性に一切の妥協はない。 拡大
ボディー剛性に不足なし。この状態でもソフトトップはきっちり閉まる。
ボディー剛性に不足なし。この状態でもソフトトップはきっちり閉まる。 拡大
生産工場は5ドアモデルやクーペモデルと同じ、ランドローバーの英国ヘイルウッド工場。世界170以上の市場で販売される予定。
生産工場は5ドアモデルやクーペモデルと同じ、ランドローバーの英国ヘイルウッド工場。世界170以上の市場で販売される予定。 拡大

テスト車のデータ

ランドローバー・レンジローバー イヴォーク コンバーチブル HSEダイナミック

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4370×1980×1609mm
ホイールベース:2660mm
車重:1936kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:240ps(177kW)/5800rpm
最大トルク:34.7kgm(340Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)245/45R20 103V/(後)245/45R20 103V(ピレリ・スコーピオン ウインター)
燃費:8.6リッター/100km(約11.6km/リッター、EU複合モード)
価格:--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

ランドローバー・レンジローバー イヴォーク コンバーチブル HSEダイナミック
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