第126回:ヒゲもクルマもないけれど、少年には愛がある
『シング・ストリート 未来へのうた』

2016.07.08 エッセイ

音楽と映像を結びつけたMTV

『ベストヒットUSA』の放送が始まったのは1981年のこと。アメリカで音楽専門チャンネルのMTVが誕生し、ポップミュージックにとって映像は不可欠のものとなった。ビデオクリップの出来がレコードの売れ行きを左右する時代が始まったのだ。音楽好きは、小林克也がキレのいい英語でヒット曲を紹介する土曜の夜を心待ちにした。

ビジュアルを得意とするグループが人気となったのは当然だ。1981年にホール&オーツの「プライベート・アイズ」、1982年にデュラン・デュランの「リオ」、1983年にはカルチャー・クラブの「カーマは気まぐれ」が大ヒットする。ニューウエーブ、ニューロマンティックなどと呼ばれた音楽ジャンルがチャートを席巻し、趣向をこらしたミュージックビデオが次々と生み出された。

上の世代の音楽ファンからは、厳しい視線を浴びせられていたことを覚えている。衣装やメークばかり気にして見た目で売れようとするとは何事か、というのだ。ロックは骨太な音楽であり、チャラチャラした連中はニセモノである。反体制の心意気をなくした奴らの音楽など聴く価値はない。……ごもっとも。確かに軽薄ではあった。でも、カッコよかったのだから仕方がないではないか。『シング・ストリート 未来へのうた』は、あのころを舞台にした映画である。

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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。