【F1 2016 続報】第10戦イギリスGP「ハミルトンのための週末」

2016.07.11 自動車ニュース
F1第10戦イギリスGPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(右から2番目)。2位でフィニッシュしたはずのメルセデスのニコ・ロズベルグ(一番左)だったが、レース後に無線の違反を取られ、リザルトに10秒加算されて3位に後退。代わって2位には、3位でチェッカードフラッグを受けたレッドブルのマックス・フェルスタッペン(一番右)が入った。(Photo=Red Bull Racing)

2016年7月10日、イギリスのシルバーストーン・サーキットで行われたF1世界選手権第10戦イギリスGP。1週間前の前戦オーストリアGPでまたも起きた「メルセデス同士打ち」を受けての今回、盤石のレースを披露したのはルイス・ハミルトンだった。

スタート直前に降った雨はすぐにやんだものの路面はウエット。全車ウエットタイヤを履き、セーフティーカー先導でレースがはじまった。(Photo=Red Bull Racing)
3回のフリー走行、予選、そして決勝とすべてトップ。この週末はハミルトンのためにあったようなものだった。ポイントリーダーのロズベルグが3位に終わったことで、両者のポイント差はわずか1点になった。(Photo=Mercedes)

■メルセデスの「最後の警告」

5月の第5戦スペイン、6月の第7戦カナダ、そして1週間前の第9戦オーストリアと、過去5レースで3回もの同士打ちを起こしたメルセデス。タイトル獲得に向けて火花を散らすルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグ両ドライバーに対し、チームは「最後の警告」としてチーム内ルールを通達、イギリスGP前に公表した。

チームオーダーは引き続き出さず、2人のドライバーは自由にレースをしてもよい。しかしまた接触するような事態になったら、最後の手段としてチームオーダーを出すこともある、というもの。いかなるチームオーダーか明言はされていないが、再発の際には金銭的なペナルティー、あるいは重い場合は出場停止といった可能性も聞こえてきた。「運命はドライバーそれぞれが握っている」(プレスリリース)と、ハミルトンとロズベルグに行き過ぎがないようクギを刺した格好だ。

メルセデスは同士打ちが起きた3戦で50点を失ったとしている。今季9戦を終えて同チームが集めたポイント数は295点と、コンストラクターズランキング2位のフェラーリを103点も上回るものの、確かに前年同時期に比べればそのリードは60点少ない。

ライバルに対するメルセデスの圧倒的な優位性が「自由にレースさせる」ポリシーの大きな支えとなっていることは想像に難くないが、同時に、2014年以来続くシルバーアロー独走のなかでシーズンが単調にならなかったのは、この「チームオーダーを出さない」という方針によるところが大きい。

今シーズン5勝のロズベルグ対3勝のハミルトン、ポイント差はわずか11点。このドイツ系チームで既に2冠を達成しているハミルトンに、2年間苦杯をなめ続けてきたロズベルグが戦いを挑むシーズンは、今ようやく、折り返し地点に到達しようとしている。

開幕戦からポイントリーダーの座を守ってきたロズベルグ。イギリスGP前に11点あったハミルトンとの差は、ハミルトンの優勝と自身の3位降格によりたった1点にまで縮小した。ギアボックストラブルが起きた時、チームから無線で解決方法を指示してもらったことが10秒加算のペナルティーの決め手となった。ルールでは、ドライバーは単独で、いかなる補助もなく走らなければならないとされている。(Photo=Mercedes)

■ハミルトン、母国の観客の前でポールポジション

今年で50回目を迎えたシルバーストーンでのイギリスGP。今季久々の高速コースで好調な滑り出しを見せたのが母国のヒーロー、ハミルトンだった。3回すべてのフリー走行でトップタイムを記録して臨んだ予選、Q3の最初のアタックでは勢い余ってコースをはみ出しせっかくの最速タイムが無効となってしまったが、続く2回目のラップを成功させ、今季6回目、通算55回目のポールポジションを獲得した。

ハミルトンとポール争いを繰り広げたロズベルグは0.319秒遅れて2番手。最前列を占拠したメルセデスの後ろにはレッドブル勢がつけ、マックス・フェルスタッペンが初めてチームメイトのダニエル・リカルドを上回り予選3位、リカルドは4位だった。
レッドブルの後塵(こうじん)を拝したフェラーリは、来季のチーム残留が決まったキミ・ライコネン5番手、セバスチャン・ベッテルは6番手タイムを記録したものの今回もギアボックス交換の5グリッドペナルティーを受け、11番グリッドに落ちた。

ウィリアムズのバルテリ・ボッタスが繰り上がって6番グリッド、続いてトロロッソのカルロス・サインツJr.、フォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグと来て、マクラーレンのフェルナンド・アロンソが今季4度目のQ3で9番グリッドを得た。トップ10の最後にはフォースインディアのセルジオ・ペレスが入った。

レッドブルのフェルスタッペン(写真前)は2戦連続、今季(そして自身)3回目のポディウムフィニッシュ。ロズベルグの3位降格でレース終了後に2位の座が転がり込んできた。ぬれた路面で2位ロズベルグを抜き去ったドライビングは見事だった。(Photo=Red Bull Racing)

■ハミルトンがリード、フェルスタッペンが2位へ

読めない天候「ブリティッシュ・ウェザー」の本領発揮、決勝スタート20分前の通り雨のおかげで路面は突如ウエットに変わり、全車ウエットタイヤを装着し、セーフティーカー先導で52周のレースはスタートを切った。

6周目に本格的なレースが始まると、1位ハミルトン、2位ロズベルグ、3位フェルスタッペン、4位リカルドの先頭集団はそのまま、フェラーリら後続は続々とピットに飛び込みインターミディエイトタイヤに履き替える賭けに出た。
翌周、リカルドがインター組に加わる決断を下した直後、パスカル・ウェーレインのマノーがスピン、コースアウトしたことで、スロー走行を義務付けるバーチャルセーフティーカーの指示が出された。このタイミングにトップ3台もタイヤ交換に踏み切ることとなった。

全車インターミディエイトになっての上位の順位は1位ハミルトン、2位ロズベルグ、3位フェルスタッペン、4位ペレス、5位リカルド。このうちフェルスタッペンのペースは目に見えて速く、15周もすると2位ロズベルグの1秒内に迫ってきた。16周目、フラつくメルセデスの間隙(かんげき)を突いてフェルスタッペンが2位に上がった。

18周目、トップのハミルトン、ロズベルグらがピットに入りタイヤをドライのミディアムに変更。続いてフェルスタッペンもこの動きにならう。この時点でトップ3のオーダーは変わらず、各車ほぼ5秒間隔でハミルトン、フェルスタッペン、ロズベルグのままだった。

来季もフェラーリに残ることが決まったキミ・ライコネン(写真)は単独走行で5位入賞。ギアボックス交換で11番グリッドからスタートしたセバスチャン・ベッテルは9位完走。フェラーリは予選、決勝ともレッドブルの後塵を拝した。(Photo=Ferrari)
カナダでターボチャージャーを改良してきたホンダは、ここイギリスでは内燃機関部分をアップグレード。予選ではジェンソン・バトン(写真)がリアウイングのトラブルでアタックしきれずQ1敗退17番グリッドとなるも、フェルナンド・アロンソが今季4度目のQ3進出で9番グリッドを獲得した。レースではアロンソが9位フェリッペ・マッサを追っていた24周目にコースオフ、順位を落とし結果13位。バトンのマクラーレンは12位で完走と、入賞ならず。(Photo=McLaren)

■2位奪還のロズベルグにトラブル、そしてペナルティー

所々でぬれた路面が残る難しいコンディションに多くのドライバーがスピン、コースアウトを経験。優勝を争うハミルトンやフェルスタッペンも例外ではなかったが、大事なく周回を重ねた。

30周を過ぎいよいよ路面の状況が良くなると、3位ロズベルグが2位フェルスタッペンの真後ろに追いついてきた。何度もメルセデスがレッドブルの隣に並びかけるもなかなか抜くには至らなかったが、38周目、ようやくロズベルグが2位奪還に成功した。

フェルスタッペンを順調に突き放していたロズベルグだったが、突如ギアボックストラブルが襲いかかり、チームは無線で「7速を飛ばせ」などロズベルグに指示を送った。残る6周の間、迫り来るフェルスタッペンを振り切りロズベルグは無事2位でゴールするも、一連の無線でのやり取りは、禁止されているチームによるドライバー補助にあたるのではないかということで、レース後の審議対象となった。

チェッカードフラッグから3時間以上たって出た結論は、メルセデスとロズベルグは「黒」。ロズベルグには10秒加算のペナルティーが科され、これにより2位フェルスタッペン、3位ロズベルグと順位が逆転することとなった。

いずれにしても、今季4勝目を挙げたハミルトンにとってはどこ吹く風の出来事。これでポイント差は1点となり、いよいよランキングトップの座が射程距離内に入ってきたことになる。

4戦が詰め込まれた7月の3戦目はハンガリーGP。決勝は7月24日に行われる。

(文=bg) 

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