【F1 2016 続報】第15戦シンガポールGP「反攻のロズベルグ」

2016.09.19 自動車ニュース
F1第15戦シンガポールGPを制したメルセデスのニコ・ロズベルグ(右から2番目)、2位に入ったレッドブルのダニエル・リカルド(一番左)、3位でレースを終えたメルセデスのルイス・ハミルトン(一番右)。(Photo=Red Bull Racing)
F1第15戦シンガポールGPを制したメルセデスのニコ・ロズベルグ(右から2番目)、2位に入ったレッドブルのダニエル・リカルド(一番左)、3位でレースを終えたメルセデスのルイス・ハミルトン(一番右)。(Photo=Red Bull Racing)

2016年9月18日、シンガポールのマリーナ・ベイ市街地コースで行われたF1世界選手権第15戦シンガポールGP。シーズン後半のベルギー、イタリアを制したニコ・ロズベルグがシンガポールでも勝利し、7月末に奪われたポイントリーダーの座を奪還した。一方、同じメルセデスのルイス・ハミルトンはといえば、週末を通じて帳尻を合わせることができず、3位でゴール。ランキングでは2位に転落した。

スタート直後、6番グリッドのカルロス・サインツJr.と8番グリッドのニコ・ヒュルケンベルグが接触。ヒュルケンベルグのフォースインディアのマシンはウオールにヒットし、セーフティーカーが出動した。(Photo=Red Bull Racing)
スタート直後、6番グリッドのカルロス・サインツJr.と8番グリッドのニコ・ヒュルケンベルグが接触。ヒュルケンベルグのフォースインディアのマシンはウオールにヒットし、セーフティーカーが出動した。(Photo=Red Bull Racing)
今季7回目、通算29回、メルセデスにとっては150回目のポールポジションからスタートしたロズベルグ(写真)。レースではブレーキに不安を抱えながらもトップを快走、終盤はレッドブルのリカルドの猛追も抑え切って、シンガポール初優勝、自身200戦目のレースに花を添えた。これでチャンピオンシップでは首位の座を奪還、宿敵ハミルトンに8点の差をつけることができた。(Photo=Mercedes)
今季7回目、通算29回、メルセデスにとっては150回目のポールポジションからスタートしたロズベルグ(写真)。レースではブレーキに不安を抱えながらもトップを快走、終盤はレッドブルのリカルドの猛追も抑え切って、シンガポール初優勝、自身200戦目のレースに花を添えた。これでチャンピオンシップでは首位の座を奪還、宿敵ハミルトンに8点の差をつけることができた。(Photo=Mercedes)

■F1、開かれる新たなチャプター

シンガポールGPを前にした9月7日、“F1のオーナー”が変わることが発表された。

モータースポーツの最高峰を標榜(ひょうぼう)するF1には、れっきとした所有者が存在する。2005年以来、現在までの大株主は、欧州を拠点とする投資ファンド会社「CVCキャピタル・パートナーズ」。その下に「デルタ・トプコ」と呼ばれる統括会社があり、さらにその配下にはF1に関わるさまざまな商業活動を行う企業群(商業権や商標登録管理、コンテンツプロモーション、チームなどに向けた旅行代理店業、広告管理など)の枝葉が伸び、巨大な“F1帝国”をかたちづくっている。

いまや世界屈指のスポーツビジネスとなったF1の新たなオーナーは「リバティ・メディア」なるアメリカ企業。実業家であり富豪のジョン・マローンをトップに、メディアやコミュニケーション、エンターテインメントとさまざまな分野で活動を繰り広げており、野球のメジャーリーグ「アトランタ・ブレーブス」も傘下におさめるコングロマリットである。

今回のF1買収額は44億ドル(約4500億円)、負債などを含めると80億ドル(約8200億円)とされる。まずリバティ・メディアがデルタ・トプコの持ち分18.7%を取得し、その後条件が整い次第、出資比率を100%にまで高めるという。F1をビッグビジネスに成長させた立役者、バーニー・エクレストンは当面CEOとして残るものの、メディア王のルパード・マードック率いる「21世紀フォックス」から、チェイス・キャリーが新会長として着任することになった。

「F1でお金を増やすこと」を一番に追求していた投資ファンドのCVCは、利益の最大化以外にはあまり口出しをしないオーナーだったというが、リバティ・メディアは文字通りメディアを駆使した幅広い事業展開をもくろんでいるとみられている。具体的な施策はまだ明らかにされていないが、近年人気に陰りが見えるF1の活性化、特にアメリカ市場の開拓や、若いファンの獲得、分配金などを巡るチーム間の不均衡問題、軸足が定まらないルールメイクの問題など、F1が直面する多くの課題に解決策をもたらすのではないかという期待も高まっている。

一方で、買収そのものにもまだ越えなければならないハードルがある。各国の独占禁止法など法規制をクリアすることに加え、F1を主催するFIA(国際自動車連盟)から承諾を得る必要もある。またFIAは同時にF1の株主(1%)でもあり、利益相反の疑いも指摘されている。

欧州を中心に世界選手権として始まってから66年。そのうち40年もの間エクレストンがビジネス化を進め、世界的なスポーツにまで成長したF1は、これからアメリカの巨大メディアグループの一員となる。F1にとってまったく新しいチャプターが開かれようとしている。

コースの性質がモナコに近いとされるシンガポール。今年モンテカルロで優勝目前だったリカルド(写真)は、打倒メルセデスを胸に予選では2番手に入り、レースでは最後まで優勝を諦めず力走を続けた。ロズベルグの0.488秒後方、2位でフィニッシュ。あと1周あればポディウムの頂点もありえたが、その表彰台ではすがすがしい笑顔を見せていた。(Photo=Red Bull Racing)
コースの性質がモナコに近いとされるシンガポール。今年モンテカルロで優勝目前だったリカルド(写真)は、打倒メルセデスを胸に予選では2番手に入り、レースでは最後まで優勝を諦めず力走を続けた。ロズベルグの0.488秒後方、2位でフィニッシュ。あと1周あればポディウムの頂点もありえたが、その表彰台ではすがすがしい笑顔を見せていた。(Photo=Red Bull Racing)

■ロズベルグ、0.5秒差でポール奪取

史上最多の21戦が予定される今シーズンのF1は、ヨーロッパを離れ、残り3分の1のフライアウェーに入った。
全長5kmにカレンダー最多23のコーナーを持つシンガポールのマリーナ・ベイは、パンピー、ツイスティー、タイトであることに加えて、高温多湿な気候と、厳しい条件がそろったストリートコース。昨年ここで唯一の大敗を喫したメルセデス勢は対策を講じ、2年連続優勝を狙うフェラーリほかライバル勢は、1年前の活躍を再現すべく準備万端でアジアの島国に乗り込んだ。

しかしフタを開けてみれば、予選ではメルセデスのニコ・ロズベルグが他を圧倒。トップ10グリッドを決めるQ3では、最初のアタックでチームメイトのルイス・ハミルトンを0.7秒も突き放し暫定首位に。2度目のフライングラップでは双方タイムアップを果たせなかったものの、ロズベルグが今季7回目、通算29回目のポールポジションを決めた。
金曜日にハイドロリック系のトラブルで走り込めず、ブレーキング時の不安定さを解消できないままでいたハミルトンは、レッドブルのダニエル・リカルドにも抜かれ3番グリッド。ポールタイムと2番手リカルドの差は0.5秒もあった。

マックス・フェルスタッペンが4番グリッドにつけ、上位4台はメルセデスとレッドブルが占拠。フェラーリはキミ・ライコネンが5番手、セバスチャン・ベッテルはサスペンションのトラブルで最後尾スタートとなった。シーズン中盤に停滞していたトロロッソが健闘し、カルロス・サインツJr.は予選6位、同じくダニール・クビアト7位。フォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグ8位、マクラーレンのフェルナンド・アロンソ9位ときて、フォースインディアのセルジオ・ペレスが10位でセッションを終えたのだが、黄旗追い越しのペナルティーで18位に降格、バルテリ・ボッタスのウィリアムズが繰り上がった。

金曜日の2回目のフリー走行でハイドロリック系のトラブルに見舞われたハミルトン(写真)はセットアップを決め切れず、ブレーキング時に不安定さを露呈。予選ではロズベルグに0.7秒もの大差をつけられ3位。レースではブレーキを気にしながらの走行で一時は4位に落ちるも、「プランB」と呼ばれる作戦変更で何とか3位奪還に成功した。レース前にあった2点のリードは、ロズベルグ3連勝で8点のビハインドに転じた。(Photo=Mercedes)
金曜日の2回目のフリー走行でハイドロリック系のトラブルに見舞われたハミルトン(写真)はセットアップを決め切れず、ブレーキング時に不安定さを露呈。予選ではロズベルグに0.7秒もの大差をつけられ3位。レースではブレーキを気にしながらの走行で一時は4位に落ちるも、「プランB」と呼ばれる作戦変更で何とか3位奪還に成功した。レース前にあった2点のリードは、ロズベルグ3連勝で8点のビハインドに転じた。(Photo=Mercedes)

■メルセデスはブレーキに不安、ライコネンがハミルトンを抜き3位へ

元祖ナイトレース、9回目のシンガポールGPは、サインツJr.とヒュルケンベルグがスタート直後に接触、セーフティーカー出動で幕を開けた。61周レースの3周目に再開されると、上位の順位は1位ロズベルグ、2位リカルド、3位ハミルトンと、ここまではグリッドのまま、フェルスタッペンが出遅れ8位に落ち、4位のライコネンに次いでアロンソが5位に上がっていた。

トップを快走するロズベルグは2位リカルドに対し8周で3秒以上のマージンを築いたが、同時にピットから「ブレーキをいたわれ」との指示が出ていた。3位ハミルトンにも同様の無線が飛んでおり、メルセデスは早々から不安を抱えての走行となった。

16周目に2位リカルド、3位ハミルトンが同時ピットイン。翌周1位ロズベルグもタイヤを交換するもトップ集団の順位は変わらなかった。しかし、やがてハミルトンが遅れだし、4位ライコネンに追われることになる。そして33周目、虎視眈々(たんたん)とポディウムを狙っていたライコネンがハミルトンをオーバーテイクし、3位の座を奪うことに成功した。

昨年シンガポールでメルセデスを打ち負かし勝利したフェラーリは、予選でセバスチャン・ベッテルのマシンのサスペンションが壊れるという不運に見舞われた。ベッテルは最後尾スタートから見事5位入賞を果たすも、予選5番手から3位まで上昇したキミ・ライコネン(写真)は、メルセデスの術中に陥りハミルトンに抜かれ4位に終わった。今季まったくいいところがないフェラーリは、コンストラクターズランキングで2位レッドブルに15点差をつけられ3位に甘んじている。(Photo=Ferrari)
昨年シンガポールでメルセデスを打ち負かし勝利したフェラーリは、予選でセバスチャン・ベッテルのマシンのサスペンションが壊れるという不運に見舞われた。ベッテルは最後尾スタートから見事5位入賞を果たすも、予選5番手から3位まで上昇したキミ・ライコネン(写真)は、メルセデスの術中に陥りハミルトンに抜かれ4位に終わった。今季まったくいいところがないフェラーリは、コンストラクターズランキングで2位レッドブルに15点差をつけられ3位に甘んじている。(Photo=Ferrari)
ライバルのトロロッソが2台そろって予選トップ10入りしたのに対し、マクラーレンはフェルナンド・アロンソ(写真)9番グリッド、ジェンソン・バトンはQ2でウオールにヒットし13位(他車ペナルティーで12番グリッド)と中位に。レースではスタートの混乱でアロンソは5位まで上がるも、出遅れたマックス・フェルスタッペンのレッドブルらに抜かれ、最終的に7位入賞。バトンはスタートで壊れたフロントウイングを交換し大きく順位を落とした後、リタイアした。コンストラクターズランキング6位のマクラーレンはこれまで54点を集め、7位トロロッソに7点差をつけている。(Photo=McLaren)
ライバルのトロロッソが2台そろって予選トップ10入りしたのに対し、マクラーレンはフェルナンド・アロンソ(写真)9番グリッド、ジェンソン・バトンはQ2でウオールにヒットし13位(他車ペナルティーで12番グリッド)と中位に。レースではスタートの混乱でアロンソは5位まで上がるも、出遅れたマックス・フェルスタッペンのレッドブルらに抜かれ、最終的に7位入賞。バトンはスタートで壊れたフロントウイングを交換し大きく順位を落とした後、リタイアした。コンストラクターズランキング6位のマクラーレンはこれまで54点を集め、7位トロロッソに7点差をつけている。(Photo=McLaren)

■ハミルトン、「プランB」で3位を取り戻す

33周目に2位リカルド、翌周1位ロズベルグと3位ライコネン、続いて4位ハミルトンが次々とタイヤ交換を済ませた。これが最後のストップかと思われたが、その後メルセデスとハミルトンが採った作戦が各陣営に影響を与えることになった。

レース中、しきりに前車を抜く作戦を無線でたずねていたハミルトンに対し、メルセデスは「プランB」を提案。タイヤを使い切るまで飛ばし、もう1回タイヤを替える方法を伝えた。4秒、3秒、2秒と徐々に3位のフェラーリに接近していくメルセデスは、45周して3度目のピットイン。慌ててライコネンもこれに反応し、翌周フレッシュなタイヤを求めピットへ飛び込んだのだが、深紅のマシンがコースに戻るとシルバーのマシンに前を取られていた。判断を遅くしたフェラーリは、メルセデスにアンダーカットを許し、ハミルトンは3位の座を取り戻した。

ハミルトンの動きは2位リカルドにも影響し、レッドブルは3度目のタイヤ交換に踏み切った。しかし首位ロズベルグは、古いタイヤのまま周回を続けることに賭けた。ロズベルグは20秒以上リードしていたが、もしセーフティーカーが出たなら、その貯金が帳消しになるばかりか優勝を逃すリスクを抱えていた。心配なのはセーフティーカーだけではない。リカルドは2秒も速いペースで猛追を仕掛け、残り5周でトップに5秒差まで詰め寄ってきた。

レースは上限の2時間まで間近。酷暑の長期戦の最後に、ロズベルグは残していた力でしっかりとレースをまとめあげ、2位リカルドを0.4秒の僅差で抑え切った。夏休み明けのシーズン後半戦3連勝で、7月の第11戦ハンガリーGPで失ったポイントリーダーの地位を奪い返した。
このレースを3位で終え、ランキングで2位に落ちたハミルトンとのポイント差は8点。今シーズン残るは6戦。メルセデス同士のタイトル争奪戦は、ロズベルグの反攻により白熱した展開を迎えている。

次戦は春から秋開催となったマレーシアGP。決勝は10月2日に行われる。

(文=bg) 

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