【F1 2016 続報】第20戦ブラジルGP「タイトル決定は最終戦へ」

2016.11.14 自動車ニュース
F1第20戦ブラジルGPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(中央)、2位でゴールしたメルセデスのニコ・ロズベルグ(その左)、3位に入ったレッドブルのマックス・フェルスタッペン(同右)。(Photo=Mercedes)
F1第20戦ブラジルGPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(中央)、2位でゴールしたメルセデスのニコ・ロズベルグ(その左)、3位に入ったレッドブルのマックス・フェルスタッペン(同右)。(Photo=Mercedes)

2016年11月13日、ブラジルはサンパウロにあるアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェで行われたF1世界選手権第20戦ブラジルGP。前戦メキシコGPから続くタイトル決定戦の第2幕は、決勝日に降った大雨により大荒れの展開となった。

アメリカ、メキシコ、ブラジルとシーズン大詰めの「アメリカ大陸シリーズ」で3連勝したハミルトン(写真)。過去9年間で一度も勝てなかったブラジル、彼のヒーローであるアイルトン・セナの故郷サンパウロでの勝利は「子供の頃からの夢だった」とレース後にその喜びを語った。これでタイトルを争うロズベルグとの差を12点にまで縮め、最終戦アブダビGPでの逆転チャンピオンに望みをつなげた。なお通算60回目のポールポジションはセナの記録にあと5つで手が届く歴代3位。キャリア52勝目はアラン・プロストを抜いて歴代2位の記録となる。(Photo=Mercedes)
アメリカ、メキシコ、ブラジルとシーズン大詰めの「アメリカ大陸シリーズ」で3連勝したハミルトン(写真)。過去9年間で一度も勝てなかったブラジル、彼のヒーローであるアイルトン・セナの故郷サンパウロでの勝利は「子供の頃からの夢だった」とレース後にその喜びを語った。これでタイトルを争うロズベルグとの差を12点にまで縮め、最終戦アブダビGPでの逆転チャンピオンに望みをつなげた。なお通算60回目のポールポジションはセナの記録にあと5つで手が届く歴代3位。キャリア52勝目はアラン・プロストを抜いて歴代2位の記録となる。(Photo=Mercedes)
過去2年のブラジルGPウィナー、ロズベルグは、ハミルトンに次ぐ2位でゴール。何が起きてもおかしくない雨のレースで、タイトル獲得に必要かつ十分なポジションでゴールできたのだから及第点に値する。しかしフェルスタッペンに抜かれたり、ハーフスピンを喫したりと、途中ヒヤッとする場面もあった。2週間後の最終戦アブダビGPで初のタイトル獲得に挑戦する。(Photo=Mercedes)
過去2年のブラジルGPウィナー、ロズベルグは、ハミルトンに次ぐ2位でゴール。何が起きてもおかしくない雨のレースで、タイトル獲得に必要かつ十分なポジションでゴールできたのだから及第点に値する。しかしフェルスタッペンに抜かれたり、ハーフスピンを喫したりと、途中ヒヤッとする場面もあった。2週間後の最終戦アブダビGPで初のタイトル獲得に挑戦する。(Photo=Mercedes)

ロズベルグ、初タイトルへの条件

史上最多となる21戦で争われる2016年シーズンのF1は、20戦目のブラジルGPを迎えた。前戦メキシコGPに続くタイトル決定戦、その第2幕である。
ワールドチャンピオンに最も近いのはメルセデスのニコ・ロズベルグ。最大のライバルであるルイス・ハミルトンに19点差をつけた彼は、ブラジルで以下の条件を満たせば自身初の栄冠に手が届く計算だった。

ロズベルグ優勝
ロズベルグ2位、ハミルトン4位以下
ロズベルグ3位、ハミルトン6位以下
ロズベルグ4位、ハミルトン8位以下
ロズベルグ5位、ハミルトン9位以下
ロズベルグ6位、ハミルトン10位以下

ロズベルグは2014年2015年とブラジルGPで連勝しているが、2年前は最終戦アブダビGPでハミルトンに敗れタイトルを逃し、また昨年は既にチームメイトのチャンピオン決定後という遅きに失した優勝だった。

ようやく自らの手で「世界一」の称号をつかみ取る権利を得た彼は「チャンピオンシップではなく、1レース1レースに集中する」という、シーズン当初から貫いてきたアプローチを変えようとしなかった。今季どのドライバーよりも多い9勝を記録しているロズベルグ。その強さの裏には、1レース、1勝、1点を着実に積み上げていくという戦い方があったと見ることができるだろう。

あとがないハミルトンは、メキシコ同様に何としてもロズベルグを負かして勝利し、最終戦までタイトル争いを持ち込みたいところ。しかし今季のカレンダー中、ハミルトンが優勝したことがない2つのサーキットのうちのひとつが、ここサンパウロという興味深い事実もあった(もうひとつは今年始まったばかりのヨーロッパGPのバクー)。つまりブラジルGPは、ハミルトンの苦手なコースとも言えれば、初勝利を飾ることで逆転チャンピオンへの大きな弾みとなるレースという捉え方もできた。

ロズベルグが決めるか、ハミルトンが待ったをかけるか。今シーズンのタイトル争いは、いよいよ最終局面に突入していった。

大雨、滑る路面、水煙で前が見えない状況に尻込みするドライバーもいたが、フェルスタッペン(右)は、まるで水を得た魚のように縦横無尽に臆(おく)せず怯(ひる)まずマシンをドライブ。ロズベルグ(左)から2位の座を奪うもタイヤ交換で後退。レース終盤は16番手からオーバーテイクショーを披露し、見事3位表彰台を獲得した。(Photo=Red Bull Racing)
大雨、滑る路面、水煙で前が見えない状況に尻込みするドライバーもいたが、フェルスタッペン(右)は、まるで水を得た魚のように縦横無尽に臆(おく)せず怯(ひる)まずマシンをドライブ。ロズベルグ(左)から2位の座を奪うもタイヤ交換で後退。レース終盤は16番手からオーバーテイクショーを披露し、見事3位表彰台を獲得した。(Photo=Red Bull Racing)

ハミルトン、通算60回目のポールポジション

金曜日の2回のフリー走行でハミルトンがトップタイム、気温が下がった土曜日のプラクティスではロズベルグが最速──メルセデスの2人が静かに火花を散らしながら迎えた予選では、ハミルトンが3戦連続、今季11回目、通算60回目となるポールポジションを獲得した。ブラジルで過去2年ポールを奪っていたロズベルグだったが、最後のアタックの途中までハミルトンを凌駕(りょうが)していたものの、0.102秒届かず予選2位だった。

2列目、3列目はフェラーリとレッドブルによる激戦区に。セッション最後に3位に上がったのはフェラーリ駆るキミ・ライコネンで、レッドブルのマックス・フェルスタッペンは4位に引きずり下ろされた。予選開始後の油圧系トラブルを克服したフェラーリのセバスチャン・ベッテルが5位、レッドブルのダニエル・リカルドは6位に落ち着いた。

Q2、Q3と1アタックのみで7位の座を手に入れたのはハースのロメ・グロジャンで、このルーキーチームにとってベストタイのグリッドからスタートすることに。フォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグが8位、チームメイトのセルジオ・ペレス9位、そしてマクラーレンのフェルナンド・アロンソが10位につけた。

予選でのフェラーリはライバルのレッドブルと拮抗(きっこう)した戦いを繰り広げ、GP出走250回目のキミ・ライコネンがメルセデス勢に次ぐ3番グリッド、セバスチャン・ベッテル(写真)は5番グリッドを獲得。レースでは雨に翻弄(ほんろう)され、ライコネンはメインストレートでクラッシュ、リタイア。ベッテルはハーフスピンやフェルスタッペンに抜かれるなどしながらも5位完走。コンストラクターズランキングでフェラーリはレッドブルに次ぐ3位の座が確定した。(Photo=Ferrari)
予選でのフェラーリはライバルのレッドブルと拮抗(きっこう)した戦いを繰り広げ、GP出走250回目のキミ・ライコネンがメルセデス勢に次ぐ3番グリッド、セバスチャン・ベッテル(写真)は5番グリッドを獲得。レースでは雨に翻弄(ほんろう)され、ライコネンはメインストレートでクラッシュ、リタイア。ベッテルはハーフスピンやフェルスタッペンに抜かれるなどしながらも5位完走。コンストラクターズランキングでフェラーリはレッドブルに次ぐ3位の座が確定した。(Photo=Ferrari)

ウエットレースで赤旗中断

レースデーの日曜日は予報通りの雨。グリッドへ向かう途中にグロジャンがスピン&クラッシュし出走できなくなるなど、レース開始前から混乱を予想させた。この状況にスタートは10分遅れとなり、全車フルウエットタイヤを履き、セーフティーカー先導でスタートが切られることとなった。

水煙消えぬまま、71周レースの8周目に本格的なレースが始まると、待ってましたとばかりにフェルスタッペンがライコネンを抜き3位に。このレースを盛り上げることになる立役者は、序盤から気迫あふれるドライビングを披露するのであった。一方、5位ベッテルがアクアプレーニングを起こしスピンするなど、各車ぬれた路面に加え視界不良と格闘することになった。

13周目、マーカス・エリクソンのザウバーがクラッシュし、再びセーフティーカーに出番が回ってくると、レッドブルの2台はピットに飛び込み、溝の浅いインターミディエイトタイヤに替える賭けに出た。20周目にレースが再開するも、今度はメインストレートでフルウエットを履く3位ライコネンがクラッシュ。ここで1回目の赤旗が出され、レースはしばし中断することとなった。

およそ35分後、セーフティーカーに導かれ再スタート。上位は1位ハミルトン、2位ロズベルグ、3位フェルスタッペン、4位ヒュルケンベルグ、5位ペレスという順位であったが、状況は好転せず、スロー走行のまま28周して2度目の赤旗中断となった。

チーム800戦目のマクラーレンは、2台そろってQ3進出&入賞を目指しブラジルにやってきた。予選では2人のドライバー間で明暗が分かれ、フェルナンド・アロンソ(左)は9月の第15戦シンガポールGP以来となるQ3進出で10番グリッドを獲得、一方のジェンソン・バトン(右)は的確なセットアップを見つけられずQ1敗退の17番グリッド。レースではアロンソがグリッドと同じ10位入賞、バトンは16位と1つしか順位を上げられずに終わった。(Photo=McLaren)
チーム800戦目のマクラーレンは、2台そろってQ3進出&入賞を目指しブラジルにやってきた。予選では2人のドライバー間で明暗が分かれ、フェルナンド・アロンソ(左)は9月の第15戦シンガポールGP以来となるQ3進出で10番グリッドを獲得、一方のジェンソン・バトン(右)は的確なセットアップを見つけられずQ1敗退の17番グリッド。レースではアロンソがグリッドと同じ10位入賞、バトンは16位と1つしか順位を上げられずに終わった。(Photo=McLaren)
今季限りで引退することを表明しているウィリアムズのフェリッペ・マッサ(右)にとっては最後の母国GP。パウリスタの期待を一身に背負って迎えたレースでは13番グリッドからスタートし上位を目指したものの、ぬれた路面に足元をすくわれスピンし、クラッシュ。故郷に錦を飾ることなくヘルメットを脱いだ。リタイアしてガレージへと戻る道すがら、目に涙をにじませながら地元ファンに別れを告げ、ライバルチームのクルーからも惜しみない拍手が送られた。(Photo=Williams)
今季限りで引退することを表明しているウィリアムズのフェリッペ・マッサ(右)にとっては最後の母国GP。パウリスタの期待を一身に背負って迎えたレースでは13番グリッドからスタートし上位を目指したものの、ぬれた路面に足元をすくわれスピンし、クラッシュ。故郷に錦を飾ることなくヘルメットを脱いだ。リタイアしてガレージへと戻る道すがら、目に涙をにじませながら地元ファンに別れを告げ、ライバルチームのクルーからも惜しみない拍手が送られた。(Photo=Williams)

フェルスタッペンのオーバーテイクショー

中断から約25分、最初のスタートから1時間50分後、29周目からリスタート。3周後にセーフティーカーが去ると、勢いに乗るフェルスタッペンが、一瞬ふらついたロズベルグを抜き2位に躍進し、雨と中断で冷え切った観客の心と体に熱を入れた。

フェルスタッペンはファステストラップをたたき出し、今度はトップのハミルトンを追撃した。ハーフスピンで肝を冷やすこともあったが、そのアグレッシブなドライビングにチームも作戦面で応えようと44周目にタイヤ交換。状況は好転すると見てインターミディエイトを装着させ、5位から再び表彰台を目指すことになった。これでロズベルグが2位に返り咲いた。

48周目、最後の母国GPで力走していたフェリッペ・マッサのウィリアムズがクラッシュ、セーフティーカーがコースに入った。この間に雨脚が強くなり、インターを履いていたレッドブルの2台はフルウエットタイヤへの交換を余儀なくされた。フェルスタッペンは一気にポイント圏外の16位まで順位を落としたのだが、ここからが最年少ウィナーの真骨頂、華麗なるオーバーテイクショーの始まりだった。

56周目にレースが再開すると、フェルスタッペンはトリッキーなコンディションもなんのその、次々と前車を抜き去り瞬く間に入賞圏内へ。5位を走っていた元チャンピオンのベッテルのインを突き、トロロッソで善戦するカルロス・サインツJr.をあっさりと抜き去り、そして残り3周の時点で粘るペレスを追い越し、何と3位表彰台まで挽回したのだった。

フェルスタッペンやレッドブルに比べれば、ハミルトンとロズベルグ、そしてメルセデスはおとなしいレースに終始した。ただ、タイトルがかかった大一番であることを考えれば、そうせざるを得なかったチャンピオンチームの事情も理解できるだろう。

ハミルトンはアメリカ、メキシコ、ブラジルと、勝たなければならないレースで3連勝し、ロズベルグはこの3戦でタイトル獲得に必要十分な2位を取り続けた。どこか予定調和の感じが拭えない3年目のメルセデス同士の頂上対決だが、最終決戦という独特の緊張感は、双方にとって相当な難敵となるに違いない。

最後まで気が抜けない2016年シーズン、そのフィナーレとなるアブダビGPは、11月27日に決勝が行われる。

(文=bg) 

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