“幻のレースカー”が日産名車再生クラブの手により復活

2016.12.07 自動車ニュース
「チェリーF-IIクーペ(KF10型)TSレース仕様」
「チェリーF-IIクーペ(KF10型)TSレース仕様」

日産名車再生クラブは2016年12月3日、神奈川県厚木市の日産テクニカルセンターで、2016年度の再生車両である「チェリーF-IIクーペ(KF10型)TSレース仕様」の再生完了宣言式を行った。

「チェリーF-IIクーペ TSレース仕様」のリアビュー。
「チェリーF-IIクーペ TSレース仕様」のリアビュー。
当時の「チェリーF-IIクーペ TSレース仕様」のカタログ写真。今回のレストアベース車は、フロントスポイラーの形状こそ写真とは異なっていたものの、カタログ仕様のエアロが装着された形跡などから「撮影された個体と同一」と見て間違いなかったという。
当時の「チェリーF-IIクーペ TSレース仕様」のカタログ写真。今回のレストアベース車は、フロントスポイラーの形状こそ写真とは異なっていたものの、カタログ仕様のエアロが装着された形跡などから「撮影された個体と同一」と見て間違いなかったという。
レーシングチューンが施されて搭載されたA型エンジン。
レーシングチューンが施されて搭載されたA型エンジン。
ダッシュボードなどには、競技車両のベースとなった市販モデルの面影が残っている。
ダッシュボードなどには、競技車両のベースとなった市販モデルの面影が残っている。
「チェリーF-IIクーペ TSレース仕様」のシート。
「チェリーF-IIクーペ TSレース仕様」のシート。
レストアの仕上げとして、ボンネットにエンブレムを装着する日産名車再生クラブの木賀新一代表。
レストアの仕上げとして、ボンネットにエンブレムを装着する日産名車再生クラブの木賀新一代表。
「チェリーF-IIクーペ TSレース仕様」と、同車の再生に携わった日産名車再生クラブのメンバー。
「チェリーF-IIクーペ TSレース仕様」と、同車の再生に携わった日産名車再生クラブのメンバー。

当時の姿を忠実に再現することを重視

日産自動車と同社関連会社の有志が歴史的な日産車のレストアを行う日産名車再生クラブが、2016年度の再生車両であるチェリーF-IIクーペ TSレース仕様のレストア終了を宣言するとともに、報道陣向けに完成車を披露した。

日産名車再生クラブでは、再生車が現役だった当時のイメージを崩さぬよう忠実なレストアを心がけており、クルマを完全に分解したのち徹底的に各部の修理再生を実施。その過程で、消耗品や傷んだ部品については純正パーツや同等品を入手または作成して車両を仕上げている。ただし、同クラブでは動態保存を目指しているため、レース用の安全タンクやブレーキ関係など、安全面からアップデートが可能な部分には現在の技術や部品が取り入れられている。

5カ月の期間を経てレストアが行われたチェリーF-IIについても、同車のカタログ写真が撮影された当時の仕様を可能な限り再現することに注力。完成車はすでに富士スピードウェイにてシェイクダウンを終えており、日産名車再生クラブの代表である木賀新一氏によれば「かなり良い音を聴かせてくれた」という。

当時の資料を基にレーシングチューンを施す

今回の完成式では、6月のキックオフ式で注目されたエンジンについても話題に上った。同エンジンの仕様は最高出力145ps/8500rpmとうたわれており、OHVながら高回転と高出力を実現したA型エンジンのレース用チューニングに、エンジニアたちから注目が集まっていた。しかし、レストア開始後早速エンジンをバラしてみると、残念なことにノーマルエンジンであることが判明。何らかの理由でレースエンジンは降ろされ、ノーマルのA12型エンジンへと積み替えられていたようだ。このため、今回のレストアでは収集した当時の資料を参考に、搭載されていたノーマルエンジンにTSレース仕様に近いチューニングを施し、ドライサンプ仕様の1300ccエンジンとして載せなおしたという。

なお、市販仕様の「チェリーF-II GX-TWIN」は、本来は1400ccのA14型エンジンが標準である。これがA12型に換装された理由は、当時のTSレースのカテゴリー分けと、A12型の方がレースでのノウハウが豊富だったことが背景にあるようだ。

一方、エンジン以外のマシン各部については、ドアフレームの肉抜きや2本のスタビライザーを備えた特殊構造のフロントサスペンション、マグネシウムホイールなど、ノーマルのままの部分が多い内外装とは裏腹に、各部にさまざまな手が加えられていたことが確認できたという。

完成車はニスモフェスティバルでのデモランを予定

木賀氏は、クラブ初となるFF車のレストアについて、「ノーマルエンジンではあったが、日産の名機と呼ばれるA型エンジンにじっくり触れることができ、その素性の良さなど学ぶことは多々あった。また当時、取り組み始めたばかりのFFツーリングカー開発に携わった技術者たちの苦労を知ることができた」とコメント。再生作業に際して多くの発見や学びがあったと述べた。なお、同クラブの活動は来年も継続される予定で、今後、来年度の候補車両の選定が行われるという。

一方、今回レストアされたチェリーF-IIは、2016年12月11日に開催されるニスモフェスティバルで日産の歴代レーシングカーと共にデモンストレーションランを行い、そこで一般向けにお披露目される予定。イベント終了後は、日産自動車座間工場内にある日産ヘリテージコレクションに戻され、一般公開となる。なお、日産自動車が所有するチェリーF-IIはこのTSレース仕様。日産のレース活動だけでなく、市販車の歴史を物語るうえでも貴重な一台となっている。

(文と写真=大音安弘)
 

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