「安くてオシャレ」に言うことなし

ディーラーの説明によると、「ビアンコ・ジェラート」と名付けられたホワイトは、数カ月前からソリッドカラーのひとつとして450ユーロの追加料金が必要になったという。

なぜ白よりもベージュのほうが安いのか? 質問に対して、そのディーラーセールスマンは、「あくまで予想だが……」と断りつつも「フィアットは、国内市場における昨今のホワイトの人気を見て、“要追加料金のカラー”に入れたのだろう」と語る。

察するに、メーカーは需要を見込んでホワイトに追加料金を設定したものの、コスト感覚とカラーセンスの双方にたけたイタリア人ユーザーたちの間で「ベージュ・カプチーノもなかなかオシャレじゃないか?」という見解が広まった。路上で見かける頻度が増えれば、われもわれもとオーダーするユーザーが増加する。結果としてベージュ・カプチーノが路上にあふれてしまったに違いない。

前述のように“追加料金ゼロ”にはオレンジもあるものの、ブラック、グレーそしてホワイトといったボディーカラーが主流の今、多くのイタリア人、特にお年寄りにとっては、ちょっと気恥ずかしい。となると、ベージュ・カプチーノ一択となる。
加えて、1950~70年代にかけて生産された「フィアット500」の時代にベージュ・カプチーノに近いカラーが人気だったために、ノスタルジックな雰囲気を愛するイタリア人に受け入れられたと考えられる。

こうしたビビッドな色の「パンダ」は、実は本国では少数派である。シエナの骨董(こっとう)市にて。
こうしたビビッドな色の「パンダ」は、実は本国では少数派である。シエナの骨董(こっとう)市にて。
ベージュ・カプチーノが意外にもすんなりと受容された背景には、往年の「フィアット500」で見られた、似た色へのノスタルジーがあったのはたしかだろう。
ベージュ・カプチーノが意外にもすんなりと受容された背景には、往年の「フィアット500」で見られた、似た色へのノスタルジーがあったのはたしかだろう。
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

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