自然なハンドリング

高速領域でのダイナミクスは主にサーキットで試すこととなったが、懸念される四駆化によるアンダーステアの増加、もしくは人工的な曲がり込みといった癖のようなものはほとんど見受けられなかった。駆動配分をつぶさに追う術(すべ)はないが、前輪側への駆動配分は操舵感や挙動変化に極力影響が出ないようにしつけられているとみえて、実際のマス感を抹殺しない程度にきっちりニュートラルにコーナーのインを突いていく。E63がクラシックな機械式LSDを用いるのに対してE63 Sは電子制御LSDで左右輪の回転差をリニアにコントロールしているが、このシステムが本性をあらわにするのは先述のドリフトモードくらいだろう。

持てる技術を自然につなげることは以前からAMGの是とされてきたが、E63 Sは世界最速サルーンのスペックを持ちながら、その全てが自然で優しい。アクセルを踏み込んでの速さたるや説明するまでもないが、それを日常域での上質感とシームレスにつなぐ術にこそ、AMGの核心がみてとれる。そのダイナミックレンジの広さは、他社にはなかなかまねできるものではない。だからこそ、彼らの手がけるサルーンは強力な支持を得られるのだろう。

(文=渡辺敏史/写真=ダイムラー/編集=竹下元太郎)

国際試乗会の舞台はポルトガル。試乗は公道のほか、アルガルヴェ国際サーキットでも行われた。
国際試乗会の舞台はポルトガル。試乗は公道のほか、アルガルヴェ国際サーキットでも行われた。
アルガルヴェ・サーキットを行く「E63 S 4MATIC+」。
アルガルヴェ・サーキットを行く「E63 S 4MATIC+」。
新しい「AMG E63」シリーズは4WDのみ。「E63」には機械式LSD、「E63 S」には電子制御LSDが備わる。
新しい「AMG E63」シリーズは4WDのみ。「E63」には機械式LSD、「E63 S」には電子制御LSDが備わる。

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