走って楽しい“だけ”ではない

ごく少ない操舵量から即座にヨーが立ち上がり、ビビッドに車体が反応する。そんなステレオタイプなBMWのイメージから、新しい5シリーズは一線を画そうとしているのかもしれない。そう思ったのは、アクセルにブレーキそしてステアリングと、標準的なドライブモード設定での操作ものの初期ゲインが、やや鈍(なま)されたものとなっていたからだ。そこからの操作量に対する応答感は十分にクイックながら、従来型と比べればその推移はやや線形的になっただろうか。アクティブステアを最初に採り入れたE60系時代は性急なドライブフィールに賛否が割れたものだが、そのスイッチライクな印象はもはや忘れられるほどに穏やかになっている。あるいは機械側に操作を委ねるADASとの協調を考えると、余りに急激なゲインの立ち上がりは乗員の不安要素につながる。その辺りも走りのタッチが和らいだ一因だろうか。

そのADAS系装備の出来栄えは、これまた今までのBMWとは一線を画する見事なものだった。ACCの追従時における減速や再加速の滑らかさやタイムラグの少なさ、レーンキープや車線変更での穏やかで無駄のない動きをみるに、それらは機能の正確な作動という域を超えて乗員に作動を感じさせないというステージで調律が施されているようにうかがえる。試乗では右に曲がりながら左に車線変更するなど、随分と意地悪なことも試してみたが、そのロバストネスも非常に高いところにあるようだ。

大胆な軽量化やライバルのベンチマークたる高効率エンジン……と、それらが目指すところは、「駆けぬける歓び」をいかにサスティナブルなものとするか、だ。BMWには恐らくそういうビジョンがあるのだろう。新しい5シリーズは単にコーナーを曲がって楽しいというだけのクルマではない。特にADAS系の長足の進歩をみるに、彼らがあらゆる手を尽くしてクルマのダイナミックレンジを多面的に広げていることを実感させられた。

(文=渡辺敏史/写真=BMW/編集=堀田剛資)

新型「5シリーズ」には2種類のソリッド系、11種類のメタリック系の外装色が用意されている。オーダーメイドサービス「BMWインディビジュアル」の色も含めると、全21種類の中から外装色を選ぶことができる。
新型「5シリーズ」には2種類のソリッド系、11種類のメタリック系の外装色が用意されている。オーダーメイドサービス「BMWインディビジュアル」の色も含めると、全21種類の中から外装色を選ぶことができる。
従来モデル同様、シフトセレクターや走行モードの切り替えボタン、インフォテインメントシステムのコントローラーなどは、センターコンソールにまとめて配置されている。
従来モデル同様、シフトセレクターや走行モードの切り替えボタン、インフォテインメントシステムのコントローラーなどは、センターコンソールにまとめて配置されている。
ラゲッジルームの容量は530リッター。後席には3分割可倒機構が備えられている。
ラゲッジルームの容量は530リッター。後席には3分割可倒機構が備えられている。
「540i」の動力性能については、0-100km/h加速が5.1秒、最高速が250km/hと公称されている。
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