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メルセデス・ベンツGLC220d 4MATICクーペ スポーツ(本革仕様)(4WD/9AT)

クーペがあってもいいじゃないか 2017.04.05 試乗記 「メルセデス・ベンツGLC」に優雅なルーフラインが印象的な「GLCクーペ」が登場。2.2リッターの直4ディーゼルターボエンジンを搭載した新型クロスオーバーで、春の淡雪が木々を白く染める富士の裾野を走った。

クロスオーバーに新たな選択肢

ここのところのクーペのようなSUVの元祖はなんだろう? どこからがクーペルックかという定義が曖昧なため、はっきりとこれが元祖だと決めづらいが、2008年に「BMW X6」が登場した時、その姿が新鮮で、カッコよくてうなったのを覚えている。同じ08年にランドローバーが「LRX」というコンセプトカーを出した。後に「レンジローバー イヴォーク クーペ」として市販されるわけだが、こっちは3ドアだったので、よりクーペとSUVが掛け合わせられた感が強かった。乗ってみたらほんとにクーペ並みに後席が狭かった。

その後、同じように3ドアSUVの「MINIペースマン」が登場した。10年くらい前からそうしたカテゴライズの難しいクルマを表現するのに便利な“クロスオーバー”という言葉がよく使われるようになり、いくつかのクルマの車名にも用いられた。なんでもあり時代の幕開けである。

そして、メルセデス・ベンツもクロスオーバー・ジャンルに参入した。まず16年に「GLE」ベースの「GLEクーペ」を日本導入し、17年2月に今回試乗したGLCベースのGLCクーペを日本導入した。GLEクーペが出た際、一般的に保守的とされるメルセデスもか……と思ったが、今やメルセデスは、エンジン横置きのNGCC(ニュー・ジェネレーション・コンパクト・カーズ)をずらりと展開するほか、「CLA」と「CLS」という大小のいわゆる4ドアクーペをラインナップし、さらにそのワゴン版たるシューティングブレークを追加するなど、最もバリエーション豊かなモデル構成をもつブランドであり、いわゆるクーペSUVを出したってなんの不思議もないなとすぐに思い直した。

メルセデスこそなんでもあり時代のトップランナーだ。歴史あるブランドだけにそのことで失ったファンもいるだろうが、それ以上に新しいファンを獲得する戦略を取ったということだろう。

GLCクーペのデザイン手法は他ブランドのクーペSUVと同じで、ショルダーラインより下はSUVのままで、グラスエリアがクーペルックという成り立ち。どこが? と問われると困るのだが、どことなくこなれておらず、BMWのX偶数シリーズほどにはうまくいっていないように見える。まじめな課長のカジュアルフライデーっぽい。

ただし、これは僕が“メルセデスはこうあるべきだ”という古臭いフィルターを通して見ているだけのことかもしれない。取りあえずここは、近頃の複雑な自動車デザインは初見で気に入らなくても、一定の時間がたってからあらためて見るとカッコよく見えることもよくあるので、もう少し時間をかけて評価したいと逃げておこう。真後ろから見るとストームトルーパーっぽいんだよな。

「GLCクーペ」はメルセデス・ベンツのSUVとして7番目にあたるモデル。今回のテスト車「GLC220d 4MATICクーペ スポーツ(本革仕様)」の価格はオプションを含め791万9000円。
「GLCクーペ」はメルセデス・ベンツのSUVとして7番目にあたるモデル。今回のテスト車「GLC220d 4MATICクーペ スポーツ(本革仕様)」の価格はオプションを含め791万9000円。拡大
なだらかな弧を描くルーフラインが印象的なクーペスタイル。
なだらかな弧を描くルーフラインが印象的なクーペスタイル。拡大
垂直に切り立ったダイヤモンドフロントグリルはメルセデスクーペのトレードマーク。
垂直に切り立ったダイヤモンドフロントグリルはメルセデスクーペのトレードマーク。拡大
エキゾーストエンドを一体化したバンパーラインやディフューザー形状のアンダーガードもスポーティーなイメージに仕上げられている。
エキゾーストエンドを一体化したバンパーラインやディフューザー形状のアンダーガードもスポーティーなイメージに仕上げられている。拡大
シフトレバーをリバースに入れると、リアエンブレム部に内蔵されたバックカメラが作動し、モニターに後方映像が映し出される仕組みになっている。
シフトレバーをリバースに入れると、リアエンブレム部に内蔵されたバックカメラが作動し、モニターに後方映像が映し出される仕組みになっている。拡大

多彩なラインナップから選択可能

GLCシリーズのパワートレインはAMGのすごいのを除くと4種類。ガソリンの2リッター直4ターボエンジンを積む「GLC200」、同じエンジンのハイチューン版たる「GLC250」、さらにGLC250をベースにプラグイン・ハイブリッド化した「GLC350e」、それからディーゼルの2.2リッター直4ターボエンジンを積む「GLC220d」。「GLC350e」のみ7段ATと、それ以外は9段ATとの組み合わせとなる。

テストしたのは「GLC220d 4MATICクーペ スポーツ(本革仕様)」。ボディーカラーはメルセデスといえばこの色といっても過言ではないイリジウムシルバーだ。その昔メルセデス・ベンツのレーシングカーはシルバーに塗られ、シルバーアローの異名をとった。

こうしたバックグラウンドもメルセデスの市販車がどれもシルバーが似合う理由のひとつだろう。ただし、イリジウムシルバーは意外にもオプションカラーで、GLCの場合8万8000円。テスト車には他にディーラーオプションのプレミアムフロアマット(8万1000円。確かにフカフカだが高っ!)が備わり、本体価格775万円に16万9000円が上乗せされて計791万9000円の仕様。乗り出し850万円前後か。

クーペじゃない「GLC220d 4MATICスポーツ」は745万円なので、クーペは30万円の上乗せ。ちなみに、迷う人が少なくないであろう「C220dステーションワゴン スポーツ(本革仕様)」は673万円なので、GLC220dよりも72万円安、同クーペよりも102万円安となる。ただしワゴンはRWD。

最高出力170ps、最大トルク400Nmを発生する2.2リッター直4ディーゼルターボエンジン。トルコン式の9段AT「9Gトロニック」が組み合わされる。
最高出力170ps、最大トルク400Nmを発生する2.2リッター直4ディーゼルターボエンジン。トルコン式の9段AT「9Gトロニック」が組み合わされる。拡大
シンプルなデザインの2眼式メーター。中央にはマルチファンクションディスプレイが備わる。
シンプルなデザインの2眼式メーター。中央にはマルチファンクションディスプレイが備わる。拡大
試乗車には235/55R19サイズの「ハンコック・ヴェンタスS1エヴォ2 SUV」が装着されていた。
試乗車には235/55R19サイズの「ハンコック・ヴェンタスS1エヴォ2 SUV」が装着されていた。拡大
JC08モードの燃費値は、16.2km/リッター。
JC08モードの燃費値は、16.2km/リッター。拡大

使い勝手は良好

インテリアのデザインや質感はほぼ「Cクラス」シリーズに準じる。ATセレクターはステアリングコラム右側から生えていて、センターコンソールの1等地には、さまざまな機能を操作するコマンドコントローラーが鎮座する。独立したディスプレイがセンターパネル上部の見やすい位置にある。

どれもここのところのメルセデスが共通して採用する配置で、とても使いやすい。クーペとなってフロントウィンドウは多少寝かされたが、相変わらず前方から側方にかけての視界は良好だ。ただし、リアガラスはかなり寝ているので、後方、後側方の視界は多少デザインの犠牲になっている。

ただし、後席の空間は外から想像するよりしっかりと確保されている。GLCやCクラスステーションワゴン並みとは言わないが、同クラスのクーペルックのSUV、例えばレンジローバー イヴォークや「BMW X4」より天地方向の余裕がある。前述したそこはかとないデザインのやぼったさは居住性確保とのトレードオフなのかもしれない。クーペSUV選びは、用途とデザイン優先度と好みを総合して選ぶことになるのだろう。

「本革仕様」のコックピット。中央には「コマンドシステム」を搭載した、8.4インチワイドディスプレイが収まる。
「本革仕様」のコックピット。中央には「コマンドシステム」を搭載した、8.4インチワイドディスプレイが収まる。拡大
センターコンソールには指でのタッチ操作が可能なCOMANDコントローラーが備わる。
センターコンソールには指でのタッチ操作が可能なCOMANDコントローラーが備わる。拡大
「本革仕様」の前席。シートヒーターも含まれる。
「本革仕様」の前席。シートヒーターも含まれる。拡大
身長170cmの筆者が後席に座った様子。頭上には拳半分程度の余裕があった。
身長170cmの筆者が後席に座った様子。頭上には拳半分程度の余裕があった。拡大
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しっかり“メルセデス・ベンツ品質”

乗ってみると、エンジンは4気筒ディーゼルとしてはよく音と振動が抑えられている。最高出力170ps/3000-4200rpm、最大トルク400Nm/1400-2800rpmというスペックは2リッター級4気筒ディーゼルとしては標準的だが、フル装備でディーゼルで4WDということもあり、車両重量は1970kgと重い。だいたい同じ装備のガソリン車に比べ90kg増し。その結果、加減速を繰り返す街中での動きは、ややもっさりしていると感じる人もいるだろう。パワー不足というわけではないが、瞬発力があるほうではない。

ただし、例えば40km/hから60km/hへの加速、80km/hから100km/hへの加速といった場面では、豊かな低速トルクによってアクセルペダルをわずかに踏み増すだけでクルマがスッと前へ出て、目的の速度に達する。9段ATはビジーに変速しているはずだが、ショックがほとんどないので、良くも悪くも印象に残らない。

そしてクルマの性格によって多少の硬い柔らかいはあれど、メルセデスの乗用車に共通する乗り心地がこのクルマにも備わっている。その辺のクルマなら尻にドカンと衝撃がくるような道路の不整も、堅牢(けんろう)なボディーと高そうなショックアブソーバーによって、ドンッと短く角の取れた衝撃に抑えてくれる。

それでいて、日常的な乗り心地が昔のドイツ車のように硬すぎるということもない。SUVの腰高感もない。装着されていたハッコック製タイヤは静粛性が高く、その日朝降った雪がところどころに残る路面でも安定したグリップを見せた。セダンと同じ感覚で乗ることができ、視線もやや高いので取り回しも悪くない。ラゲッジスペースは容量が500~1400リッター(VDA)と十分確保され、形状もほぼスクエアで使いやすい。ただしフロアが高いので、旅行帰り、お土産満載のスーツケースを持ち上げるのには多少苦労するかもしれない。

メルセデス・ベンツは、どういうコンセプトであれ、メルセデス・ベンツになるんだなというのがGLC220dクーペに乗って出した結論だ。メルセデスはクーペSUVだからといって、後席やラゲッジルームの広さを犠牲にしてまでスタイリングを優先させることはなかった。それを中途半端と見るか、バランスがとれていると見るかでこのクルマの評価は変わってくるのだろう。

これなら普通のGLCでいいじゃないかという意見には反対しないが、別にクーペがあってもいいじゃないかという意見にも反対しない。単純に生産技術的に必要最小限のコストアップで多彩なラインナップが可能になったということ。それなら売る側にとっても買う側にとっても選択肢は多いほうがいいという判断だろう。だれかの魂を揺さぶるような存在ではないと思うが、気に入ったというなら止める理由はない。

(文=塩見 智/写真=尾形和美/編集=大久保史子)

「GLC」シリーズにはレーダーセーフティパッケージや360°カメラシステムが共通で標準装備される。
「GLC」シリーズにはレーダーセーフティパッケージや360°カメラシステムが共通で標準装備される。拡大
「本革仕様」にはガラススライディングルーフが装備される。
「本革仕様」にはガラススライディングルーフが装備される。拡大
ブルメスター社のサラウンドサウンドシステムを搭載。「本革仕様」には合計13個のスピーカーが備わる。

 

ブルメスター社のサラウンドサウンドシステムを搭載。「本革仕様」には合計13個のスピーカーが備わる。
	 
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後席は4:2:4の分割可倒式。荷室は定員乗車時で500リッターを確保している。バックレストをすべて倒せば最大で1400リッターの空間が生まれる。
後席は4:2:4の分割可倒式。荷室は定員乗車時で500リッターを確保している。バックレストをすべて倒せば最大で1400リッターの空間が生まれる。拡大
キーを身につけていれば、片足をリアバンパーの下部にかざすだけでテールゲートの開閉ができる。
キーを身につけていれば、片足をリアバンパーの下部にかざすだけでテールゲートの開閉ができる。拡大

テスト車のデータ

メルセデス・ベンツGLC220d 4MATICクーペ スポーツ(本革仕様)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4735×1930×1605mm
ホイールベース:2875mm
車重:1960kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:9AT
最高出力:170ps(125kW)/3000-4200rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1400-2800rpm
タイヤ:(前)235/55R19 101Y/(後)235/55R19 101Y(ハンコック・ヴェンタスS1エヴォ2 SUV)
燃費:16.2km/リッター(JC08モード)
価格:775万円/テスト車:791万9000円
オプション装備:メタリックペイント<イリジウムシルバー>(8万8000円) ※以下、販売店オプション フロアマットプレミアム(8万1000円)

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2565km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:326.2km
使用燃料:27.7リッター(軽油)
参考燃費:11.8km/リッター(満タン法)/12.9km/リッター(車載燃費計計測値)
 

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