第509回:「地下鉄ミュージシャン」をTOKYOにも!

2017.07.07 マッキナ あらモーダ!

若気の至りの路上ライブ

音大生だった22歳のとき、“ストリートミュージシャン”をしたことがある。

ロンドンを初めて訪れたボクは、地下鉄の駅構内でさまざまな演奏をしている若者たちを何人も見かけた。

にわかに「自分にだってできるぜ」とムラムラ闘志が湧いてきたボクは、ちょうど立っていたサウス・ケンジントン駅の改札前通路で、それを実行に移すことにした。旅人のボクは楽器を持っていない。アカペラの歌で勝負することにした。

まずは人通りが絶えたのを見計らって、自分の財布から出して用意した「見せ金」を前に置いた。チップが何もないと、あまりにも不人気っぽいからである。

最初は高校のとき習ったドイツリートを歌っていたが、やがて『荒城の月』『さくらさくら』『お江戸日本橋』などを歌ったほうが、お客さんがお金を置いてくれることがわかってきた。

調子にのって歌っていると、近くでフルートを吹いていた青年がやってきて、なにやら言った。どうやら縄張りのことらしい。

当時は日本の米軍基地で子供にピアノを教えてこそいたものの、初めて接する英国式アクセントは全然聞き取れない。答えずにいると、相手も「こりゃダメだ」といった顔で諦めて消えてしまったので、また歌い続けた。

今となっては若気の至り以外のなにものでもないが、良い思い出である。

大学生時代の筆者。
大学生時代の筆者。
大学2年のときの、筆者のロンドン旅行のメモから。
大学2年のときの、筆者のロンドン旅行のメモから。
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

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