【F1 2017 続報】第10戦イギリスGP「ハミルトン、最良の母国GP」

2017.07.17 自動車ニュース
F1第10戦イギリスGPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(写真右から2番目)、2位でゴールしたメルセデスのバルテリ・ボッタス(同左端)、3位に入ったフェラーリのキミ・ライコネン(同右端)。(Photo=Mercedes)
F1第10戦イギリスGPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(写真右から2番目)、2位でゴールしたメルセデスのバルテリ・ボッタス(同左端)、3位に入ったフェラーリのキミ・ライコネン(同右端)。(Photo=Mercedes)

2017年7月16日、イギリスのシルバーストーン・サーキットで行われたF1世界選手権第10戦イギリスGP。過去2戦、自分以外の要因で勝利から遠ざかっていたルイス・ハミルトンが、母国の大観衆の前でポール・トゥ・ウィンを達成。イギリス人によるイギリス人のためのイギリスGPとなった。

今回は、ハミルトン(写真右)によるハミルトンのためのイギリスGPだった。予選では今季6回目、イギリスで5回目、通算67回目のポールポジションを獲得し、ポール記録で歴代最多のミハエル・シューマッハーにあと1つと迫った。レースではポール・トゥ・ウィン、スタートからの全周リード、さらにファステストラップを加え「グランドスラム」を達成。ジム・クラークとアラン・プロストが持つイギリスGP最多勝記録に並ぶ「5勝目」をマークした。そして何より、今季タイトルを争うセバスチャン・ベッテルに1点差まで詰め寄ることができたのは大きな成果だった。(Photo=Mercedes)
今回は、ハミルトン(写真右)によるハミルトンのためのイギリスGPだった。予選では今季6回目、イギリスで5回目、通算67回目のポールポジションを獲得し、ポール記録で歴代最多のミハエル・シューマッハーにあと1つと迫った。レースではポール・トゥ・ウィン、スタートからの全周リード、さらにファステストラップを加え「グランドスラム」を達成。ジム・クラークとアラン・プロストが持つイギリスGP最多勝記録に並ぶ「5勝目」をマークした。そして何より、今季タイトルを争うセバスチャン・ベッテルに1点差まで詰め寄ることができたのは大きな成果だった。(Photo=Mercedes)
レース終盤の彼の猛攻が、フェラーリのタイヤトラブルを誘発したのかもしれない。ボッタス(写真)はギアボックス交換による5グリッド降格のペナルティーを受け9番手からスタート。早々に5位まで順位を上げると、ライバルとは異なるタイヤを選択して前車を駆逐していった。表彰台圏内にいたセバスチャン・ベッテル、ライコネンのタイヤトラブルで最後は2位に。メルセデスは今季2回目の1-2フィニッシュを達成した。(Photo=Mercedes)
レース終盤の彼の猛攻が、フェラーリのタイヤトラブルを誘発したのかもしれない。ボッタス(写真)はギアボックス交換による5グリッド降格のペナルティーを受け9番手からスタート。早々に5位まで順位を上げると、ライバルとは異なるタイヤを選択して前車を駆逐していった。表彰台圏内にいたセバスチャン・ベッテル、ライコネンのタイヤトラブルで最後は2位に。メルセデスは今季2回目の1-2フィニッシュを達成した。(Photo=Mercedes)
フェラーリは、今季のはじめこそメルセデスと肩を並べるパフォーマンスを披露していたが、シーズンが進むにつれて徐々に後れを取ることが多くなってきた。ライコネン(写真)はハミルトンのポールタイムに0.5秒も差をつけられての予選2位。レースではそのポジションを守り続けたが、残り3周で左フロントタイヤが破損、パンクは免れたがスロー走行と緊急ピットインを余儀なくされた。3位でゴールできたものの宿敵メルセデスに1-2を許した。(Photo=Ferrari)
フェラーリは、今季のはじめこそメルセデスと肩を並べるパフォーマンスを披露していたが、シーズンが進むにつれて徐々に後れを取ることが多くなってきた。ライコネン(写真)はハミルトンのポールタイムに0.5秒も差をつけられての予選2位。レースではそのポジションを守り続けたが、残り3周で左フロントタイヤが破損、パンクは免れたがスロー走行と緊急ピットインを余儀なくされた。3位でゴールできたものの宿敵メルセデスに1-2を許した。(Photo=Ferrari)

モータースポーツの「聖地」の決断

イギリスGPが目前に迫った7月11日、同GPが行われるシルバーストーン・サーキットのオーナー、ブリティッシュ・レーシング・ドライバーズ・クラブ(BRDC)は、2026年までのGP開催契約の破棄条項を行使すると発表した。これにより現行契約での開催は2019年までとなるが、BRDCがF1と決別したいわけではない。毎年上がっていく開催権料に、BRDCが耐えられなくなったのだ。

BBCなどが伝えたところによると、2009年、当時のF1の商業面を牛耳っていたバーニー・エクレストンと締結した契約では、2010年の開催権料は1200万ポンド(約17億7000万円)。これが17年間にわたって毎年5%ずつ上昇するというものだった。BRDCのジョン・グラント会長は、2015年に280万ポンド(約4億1000万円)、2016年には480万ポンド(約7億円)の損失を出しており、今年も同じくらいの損失を計上する見込みであると同クラブの実情を語った。近年F1に加わった新しいGPが政府からの支援を受けていたため、開催権料は高騰を続けていた。しかし古くからのF1ホスト国ではそうした援助に頼れず、懐具合は悪化の一途をたどっていた。

財政破綻の危機に背中を押された、今回の破棄条項の行使だったが、BRDCは新たなF1のオーナーであるリバティ・メディアと、2020年以降の開催再契約に期待を寄せている。アメリカに本拠を置くリバティ・メディアは、F1の人気を支えるヨーロッパを重要視しており、中でもシルバーストーンでのイギリスGPは、F1黎明(れいめい)期から続く伝統の一戦としても、また観客動員数からも、欠かすことはできないと考えているからだ。

1950年5月13日、記念すべきF1世界選手権の「最初の1戦」が行われたシルバーストーン。初年度開催コースで今もカレンダーに残るのはモナコ、ベルギーのスパ・フランコルシャン、イタリアのモンツァ、そしてシルバーストーンの4つだけ。また初年度から毎年開催されているのは、イタリアとイギリスの2つのGPしかない。エイントリー、ブランズハッチで行われたこともあったが、1987年以降はシルバーストーンがイギリスのモータースポーツファンの「聖地」となっており、今年も多くの観客がサーキットに集結し、今季随一のにぎわいをみせていた。

人々に求められるからこそ、伝統は受け継がれていく。イギリスGPはF1の、そしてモータースポーツの聖地でもあるのだ。リバティ・メディアもBRDCも、イギリスはもちろん世界中のレースファンも、2019年以降の開催継続を願っているはずである。

3番グリッドからスタートでマックス・フェルスタッペンのレッドブルに抜かれ4位。ベッテル(写真)のイギリスGPは、優勝争いではなく、フェルスタッペン、そしてレース後半のボッタスとのポジション争いに追われた。4位走行中、チームメイトのライコネンと同様に左フロントタイヤが破損。パンクしたタイヤでコースの大半を走らなければならず、ピットインの末7位まで順位を落としゴールを迎えた。チャンピオンシップでのポイントリードは20点から激減、わずか1点に。(Photo=Ferrari)
3番グリッドからスタートでマックス・フェルスタッペンのレッドブルに抜かれ4位。ベッテル(写真)のイギリスGPは、優勝争いではなく、フェルスタッペン、そしてレース後半のボッタスとのポジション争いに追われた。4位走行中、チームメイトのライコネンと同様に左フロントタイヤが破損。パンクしたタイヤでコースの大半を走らなければならず、ピットインの末7位まで順位を落としゴールを迎えた。チャンピオンシップでのポイントリードは20点から激減、わずか1点に。(Photo=Ferrari)
メルセデス、フェラーリに次ぐ3番手のポジションにいるレッドブルにとって待望の雨が予選で降ったものの、ダニエル・リカルド(写真中央)のマシンはQ1中にトラブルが発生してストップ。リカルドは19番グリッドスタートと大きなハンディを背負ってレースに臨み、テールエンダーを次々と追い抜きながら結果5位完走。連続表彰台は「5」で途絶えたが、見事な挽回劇を披露した。チームメイトのマックス・フェルスタッペンは4位だった。(Photo=Red Bull Racing)
メルセデス、フェラーリに次ぐ3番手のポジションにいるレッドブルにとって待望の雨が予選で降ったものの、ダニエル・リカルド(写真中央)のマシンはQ1中にトラブルが発生してストップ。リカルドは19番グリッドスタートと大きなハンディを背負ってレースに臨み、テールエンダーを次々と追い抜きながら結果5位完走。連続表彰台は「5」で途絶えたが、見事な挽回劇を披露した。チームメイトのマックス・フェルスタッペンは4位だった。(Photo=Red Bull Racing)

ハミルトン、大差をつけてポールポジション獲得

チャンピオンシップに話を移せば、前戦オーストリアGPでセバスチャン・ベッテルに20点の差をつけられ、またチームメイトのバルテリ・ボッタスには15点差まで詰め寄られたランキング2位のルイス・ハミルトンが、3連勝中の母国GPでどう反撃してくるかに注目が集まった。

すっきりしない天候で始まったレースウイークは、土曜日になると時折小雨に見舞われることに。予選最初のQ1セッションは浅溝のインターミディエイトタイヤでの出走となったが、コンディションはすぐに回復し、Q2からはドライタイヤ装着でのアタックとなった。

トップ10グリッドを決めるQ3で最速タイムをたたき出したのはハミルトン。今季6回目、イギリスで5回目、通算67回目のポールポジションを獲得し、歴代最多のミハエル・シューマッハーの記録にあと1つと迫った。予選2位のキミ・ライコネンは、ハミルトンに0.547秒も突き放され、3位ベッテルとともにフェラーリは一発の速さで完敗した。

4位に入ったのはメルセデスのボッタスだったが、前戦のハミルトン同様ギアボックス交換で9番グリッドに降格。その影響で、レッドブルのマックス・フェルスタッペン4番手、ルノーのニコ・ヒュルケンベルグ5番手、フォースインディアのセルジオ・ペレスとエステバン・オコンが6番手と7番手、そしてマクラーレンのストフェル・バンドールンが8番手にそれぞれ繰り上がった。トップ10の最後は、ハースを駆るロメ・グロジャンだった。

今年参戦40周年を迎えたルノーF1。チームをけん引するニコ・ヒュルケンベルグ(写真)が予選6位、ボッタスのペナルティーで5番グリッドとワークス復帰後の最高位からスタートし、今季最高位タイの6位入賞を果たした。高速コースのシルバーストーンで、メルセデス、フェラーリ、レッドブルに次ぐポジションでゴール。さらにはパワフルなメルセデス・パワーユニット勢のフォースインディアやウィリアムズを従えての見事なレースだった。ルノーは10戦を終えて26点を集め、コンストラクターズランキング8位。7位ハースとはわずか3点差、6位トロロッソとは7点差と接戦を繰り広げている。(Photo=Renault Sport)
今年参戦40周年を迎えたルノーF1。チームをけん引するニコ・ヒュルケンベルグ(写真)が予選6位、ボッタスのペナルティーで5番グリッドとワークス復帰後の最高位からスタートし、今季最高位タイの6位入賞を果たした。高速コースのシルバーストーンで、メルセデス、フェラーリ、レッドブルに次ぐポジションでゴール。さらにはパワフルなメルセデス・パワーユニット勢のフォースインディアやウィリアムズを従えての見事なレースだった。ルノーは10戦を終えて26点を集め、コンストラクターズランキング8位。7位ハースとはわずか3点差、6位トロロッソとは7点差と接戦を繰り広げている。(Photo=Renault Sport)

ベッテル対フェルスタッペンの3位争い

フォーメーションラップ中にジョリオン・パーマーのルノーがコース脇にストップしたことで、もう1周のフォーメーションラップを経て、予定より1周少ない51周レースとして始まった。ポールシッターのハミルトンがトップでターン1へ進入。2位ライコネンの後ろでは、出だしが悪かったベッテルにフェルスタッペンが襲いかかり、レッドブルが3位を奪った。

程なくしてトロロッソ同士が接触し、カルロス・サインツJr.がはじき出されてリタイア。これで2周目から4周目までセーフティーカーが出た。5周目に再開すると、1位ハミルトン、2位ライコネン、3位フェルスタッペン、4位ベッテル、5位ヒュルケンベルグという順番に。9番手スタートのボッタスはスタートで7位、再スタート後はオコンを抜き6位、そしてヒュルケンベルグをかわし、早々に5位まで上がった。

10周を過ぎ、先頭のハミルトンは2位ライコネンを3秒以上リードしてレースをコントロールしていた。その後方、3位フェルスタッペンは前の2台についていけず、やがて4位ベッテルと交戦することになる。13周目になるとレッドブルとフェラーリは横並びとなりながら丁々発止とやりあったものの、しかし順位は変わらなかった。

フェルスタッペンを抜きあぐねていたベッテルは、18周してピットに飛び込み、スーパーソフトタイヤからソフトに履き替えコースに戻った。翌周にフェルスタッペンがソフトタイヤに交換するが、レッドブルはピット作業に若干手間取り、コースに復帰するとハイペースで飛ばしていたベッテルに先を越されてしまった。

小雨がやみコンディションが回復していた予選Q1の終盤、最後のアタッカー、マクラーレンのフェルナンド・アロンソ(写真)がたたき出したタイムは全車中最速。サーキットに詰めかけた多くの観客から歓声があがった。Q1とはいえ久々のP1獲得のアロンソだったが、実はホンダの最新型「スペック3」ユニットの交換で30グリッド降格が決まっていた。チームのホームGPにおける、元王者の意地と矜持(きょうじ)の表れだった。Q2で13番手だったアロンソはペナルティーで最後尾からスタート。ポイント圏内を目指したが、レース半ばにメカニカルトラブルでリタイア。(Photo=McLaren)
小雨がやみコンディションが回復していた予選Q1の終盤、最後のアタッカー、マクラーレンのフェルナンド・アロンソ(写真)がたたき出したタイムは全車中最速。サーキットに詰めかけた多くの観客から歓声があがった。Q1とはいえ久々のP1獲得のアロンソだったが、実はホンダの最新型「スペック3」ユニットの交換で30グリッド降格が決まっていた。チームのホームGPにおける、元王者の意地と矜持(きょうじ)の表れだった。Q2で13番手だったアロンソはペナルティーで最後尾からスタート。ポイント圏内を目指したが、レース半ばにメカニカルトラブルでリタイア。(Photo=McLaren)
F1ドライバーとして初のフルシーズンを戦っているマクラーレンのストフェル・バンドールン(写真)は、予選でチームメイトのアロンソを初めて上回り9位。ボッタスのペナルティーでひとつ繰り上がり、自身最高位の8番グリッドからレースに臨んだ。スタートからポイント圏内の9位を走行するも、11位完走で今季初得点はならず。(Photo=McLaren)
F1ドライバーとして初のフルシーズンを戦っているマクラーレンのストフェル・バンドールン(写真)は、予選でチームメイトのアロンソを初めて上回り9位。ボッタスのペナルティーでひとつ繰り上がり、自身最高位の8番グリッドからレースに臨んだ。スタートからポイント圏内の9位を走行するも、11位完走で今季初得点はならず。(Photo=McLaren)
ドライバーを守ることを目的としたコックピット前の「シールド」が、今回試験的にセバスチャン・ベッテルのフェラーリに装着された。ベッテルの評価は芳しくないものだったが、昨年の「Halo(ヘイロー)」に続き、安全性向上のための試行錯誤が繰り返されている。(Photo=Ferrari)
ドライバーを守ることを目的としたコックピット前の「シールド」が、今回試験的にセバスチャン・ベッテルのフェラーリに装着された。ベッテルの評価は芳しくないものだったが、昨年の「Halo(ヘイロー)」に続き、安全性向上のための試行錯誤が繰り返されている。(Photo=Ferrari)

不運に見舞われたフェラーリ、完勝のハミルトン

25周目に2位ライコネンがようやくピットへ入り、続いてトップのハミルトンもソフトに換装。この時点で1位ハミルトン、2位ボッタスとメルセデスが1-2となるものの、まだピットストップを行っていないボッタスはスタートタイヤにソフトを選択しており、ファーストスティントを32周目まで引っ張ることになった。

ライバルより速いスーパーソフトを装着したボッタスのメルセデスは、2位ライコネン、3位ベッテルに次ぐ4位から表彰台を目指し猛追を開始。40周を過ぎてベッテルを射程内にとらえ、42周目にオーバーテイクを仕掛けたが、ここではベッテルがタイヤスモークをあげて行く手を阻んだ。しかし翌周になるとフェラーリのタイヤに力は残っておらず、ボッタスがやすやすと3位の座を奪った。

余勢を駆って2位ライコネンに照準を合わせたボッタスは、ファステストラップを更新し飛ばし続けた。49周目、目の前まで迫っていたライコネンの左フロントタイヤが突如壊れ、フェラーリは緊急ピットイン。ボッタスは労せずして2位の座を手にし、ライコネンは3位でゴールを迎えることになった。フェラーリの不運は続き、残り2周の時点でベッテルの左フロントタイヤも音を上げてパンク、4位から7位へと後退した。

このレース、ハミルトンは誰からも脅かされずに完勝を遂げた。そして9番手スタートのハンディをはねのけたボッタスは2位でゴールした。メルセデスの速さと強さが際立った一方で、フェラーリはそのいずれをも欠き、しまいには不運に足を引っ張られた。

そして開幕戦以来ポイントリーダーの座を守ってきたベッテルは、ハミルトンにわずか1点差まで迫られた。しかも、全20戦の2017年シーズンも半分を消化したところで、当初は互角の戦いを繰り広げていたメルセデスとフェラーリの間に、決して小さくはないギャップができつつある。

夏休み前の最後のレース、第11戦ハンガリーGPは、7月30日に決勝が行われる。

(文=bg)

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