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ポルシェ911 RSR(MR/6AT)/911 GT3 R(RR/6AT)/911 GT3 Cup(RR/6AT)

この道を迷わず進め 2017.09.05 試乗記 ルマン24時間レースでは惜しくも表彰台こそ逃したものの、デビューイヤーとなる2017年からただならぬ戦闘力を見せつけている「ポルシェ911 RSR」。この新たなミドシップレーサーのポテンシャルは、一体どれほどのものなのか。レーシングドライバーにして“ポルシェ使い”の田中哲也氏が、レーシング911の走りの最前線をリポートする。

3台のレンシュポルトを試す

僕自身、今までさまざまなポルシェをドライブしてきた。「964」で鈴鹿1000kmに、「996 GT3 R」でデイトナ24時間レースに、そして「996 GT3 Cup」でスーパー耐久に参戦して数々の勝利とチャンピオンを獲得したし、2006年にはスーパー耐久で全勝優勝も成し遂げた。そして1度だけではあるが、ゲストドライバーとしてポルシェ・カレラ・カップ・ジャパン(PCCJ)にも参戦したことがある。

そんな私に今回ポルシェの最新レーシングカーに乗るチャンスが来た。場所はドイツのラウジッツリンク(ユーロスピードウェイ)というサーキットで、ベルリンとドレスデンの中間に位置する、ヨーロッパでは珍しいオーバルとインフィールドが複合されたデイトナのようなコースである。

そして今回乗るのが「991 RSR」「991 GT3 R」「991 GT3 Cup」の3台である。特にRSRについてはワークス活動しかしていないマシンであり、ミドシップレイアウトを採用している特別な存在である。

そんな素晴らしいマシンをリポートすることにしたい。

それぞれの違いがはっきりわかるように、ポルシェが考えてくれた順番、つまりその日に乗った順序でリポートしていくことにしよう。

田中哲也氏と「ポルシェ911」との関係は深い。スーパー耐久では2006年に全勝優勝を成し遂げている。
田中哲也氏と「ポルシェ911」との関係は深い。スーパー耐久では2006年に全勝優勝を成し遂げている。拡大
今回試乗した3台のレーシング911。手前から「911 RSR」「911 GT3 R」「911 GT3 Cup」。
今回試乗した3台のレーシング911。手前から「911 RSR」「911 GT3 R」「911 GT3 Cup」。拡大
ドイツツーリングカー選手権(DTM)も開催される、ドイツのラウジッツリンクが試乗の舞台だ。
ドイツツーリングカー選手権(DTM)も開催される、ドイツのラウジッツリンクが試乗の舞台だ。拡大
「991 GT3 Cup」のコックピットに収まる田中哲也氏。頭と肩のまわりが頑丈に成形されたバケットシートが採用されている。
「991 GT3 Cup」のコックピットに収まる田中哲也氏。頭と肩のまわりが頑丈に成形されたバケットシートが採用されている。拡大

より速く、より扱いやすく

まずは2018年にPCCJにも登場する新型CUPカーから。ニューモデルと現行モデルの一番の違いはエンジンが変更されることで、従来の3.8リッターから4リッターに拡大されてパワーアップしている。そしてボディーワークも少し変更されており、ダウンフォースが増加しているという。僕自身、現行のCUPカーにはテストやレッスンでよく乗っているので、その比較も行いやすい。

実際乗ってみて、現行モデルとの差は歴然としていた。マシンバランスや挙動、そしてさまざまなシステムは現行モデルと大きく変わらないが、エンジンが明らかにパワフルになっている。そして排気量が拡大されてパワフルではあるが、逆に扱いやすくなったような印象を受ける。おそらく現行モデルと同じように走ったら、タイムが1秒前後上がるというイメージではないかと想像できた。

次にGT3 Rに試乗した。このマシンはSUPER GTのGT300クラスやニュルブルクリンク24時間レースなど世界中のGT3カテゴリーに多数参戦しているマシンで、特徴としてはABSやトラクションコントロールといった電子デバイスが搭載された、ジェントルマンレーサーを意識したレーシングカーである。現在のレースシーンでは最もメジャーなカテゴリーのマシンといえる。今回はニュル24時間でドイツのマンタイ・レーシングが使ったマシンそのものをドライブすることになった。

CUPカーの後にこのマシンに乗ると、エンジンパワーはこちらのほうが少し大きく感じるが、それよりグリップレベルが明らかに違うことのほうが印象的である。特にフロントグリップが高く、アンダーステアが少ない。そしてCUPカーで気になった、路面が荒れていると跳ねる部分がGT3 Rではかなり抑えられている。高速コーナーでのダウンフォースも明らかに大きく、安定感の差は歴然としている。

低速コーナーの出口ではトラクションコントロールが介入してスライドをコントロールしてくれるので、安心感をもってアクセルを踏むことができる。またボディーの剛性感も高く、すべてがダイレクトに伝わってくる印象を受ける。

そしてCUPカーと比較した場合の、ドライビングの最大の違いは、ABSを介入させながらのブレーキングにある。ブレーキ踏力はCUPカーの倍以上踏んでちょうどいいくらいに感じられ、それくらい踏んでABSを介入させながらブレーキングを行えば、ブレーキングポイントを相当奥にすることが可能だった。電子制御の恩恵を最大限に利用して、ものすごくハイパフォーマンスでありながらドライバビリティーにあふれたマシン、それがGT3 Rである。

タイプ991としては2世代目になる新しい「911 GT3 Cup」は2016年9月に登場した。4リッターの直噴フラット6は485psを発生。日本には2018年に登場する予定だ。
タイプ991としては2世代目になる新しい「911 GT3 Cup」は2016年9月に登場した。4リッターの直噴フラット6は485psを発生。日本には2018年に登場する予定だ。拡大
「911 GT3 Cup」のコックピット。
「911 GT3 Cup」のコックピット。拡大
新型「911 GT3 Cup」ではフロントバンパーとリアエンドの変更により、ダウンフォースが強化されている。
新型「911 GT3 Cup」ではフロントバンパーとリアエンドの変更により、ダウンフォースが強化されている。拡大
タイプ991の「911 GT3 R」は2015年5月にデビューした。公道仕様の「911 GT3 RS」がベースになっている。
タイプ991の「911 GT3 R」は2015年5月にデビューした。公道仕様の「911 GT3 RS」がベースになっている。拡大
試乗した「911 GT3 R」はニュルブルクリンク24時間レースでマンタイ・レーシングが走らせたもの。ステアリングにニュル北コース“ノルドシュライフェ”のコース図が描かれている。
試乗した「911 GT3 R」はニュルブルクリンク24時間レースでマンタイ・レーシングが走らせたもの。ステアリングにニュル北コース“ノルドシュライフェ”のコース図が描かれている。拡大
アウターパネルにCFRPを多用するほか、フロントを含むすべてのウィンドウにポリカーボネートを使用するなど、「911 GT3 R」では徹底的な軽量化が図られている。
アウターパネルにCFRPを多用するほか、フロントを含むすべてのウィンドウにポリカーボネートを使用するなど、「911 GT3 R」では徹底的な軽量化が図られている。拡大

しなやかなハンドリングマシン

そして、いよいよRSRである。前述のとおり、エンジンがミドシップになった話題のマシンで、ポルシェがWECやルマンなどでメーカーの威信をかけて走らせているレーシングカーである。それだけに僕自身、かなりの緊張感をもってコースインした。

しかしコースに入るや否やその緊張感は一気に消え去り、その代わりに攻めようという気持ちがものすごく出てきたのである。その理由は、とにかくバランスが良くてグリップレベルも非常に高く、それでいてピーキーな雰囲気がなく、思い切って走ろうという気持ちになったからにほかならない。

ABSが装着されていないので、最初はどのようなブレーキロックが発生するのかな? と恐る恐るであった。しかし安全な場所で強いブレーキを踏んでみると、ブレーキのロック付近のインフォメーションがとても豊かで、想像していたよりはるかに思い切ってブレーキングを行えることがすぐに分かった。それに加えてブレーキングに必要な踏力もそれほど大きくなく、GT3 Rのように思い切り踏むのではなく、その3分の2くらいの雰囲気で踏めば十分減速してくれる。

そしてコーナリングのレベルも、ものすごく高い。CUPカーで気になった跳ねは、GT3 Rではかなり抑えられていたが、RSRではその跳ねをまったく感じない。サスペンションの動きがとてもしなやかなことが大きなポイントであり、それは今まで乗ったレーシングカーの中でも一番だと感じるほどだった。

4リッターのフラット6をミドシップマウントする「911 RSR」(2017年モデル)。ボディーはアルミとスチールのシャシーとCFRP製のパネルからなり、車重は約1243kgと発表されている。
4リッターのフラット6をミドシップマウントする「911 RSR」(2017年モデル)。ボディーはアルミとスチールのシャシーとCFRP製のパネルからなり、車重は約1243kgと発表されている。拡大
他の2台に比べると、がぜんレーシーな雰囲気に包まれる「911 RSR」のコックピット。ステアリングはCFRP製のマルチファンクションタイプで、中央にディスプレイが埋め込まれている。
他の2台に比べると、がぜんレーシーな雰囲気に包まれる「911 RSR」のコックピット。ステアリングはCFRP製のマルチファンクションタイプで、中央にディスプレイが埋め込まれている。拡大
「911 RSR」のステアリングを握る田中哲也氏。運転席の背後にはエンジンコンパートメントとの隔壁が迫っており、リアエンジンの「911 GT3 R」とはだいぶ趣が異なっている。
「911 RSR」のステアリングを握る田中哲也氏。運転席の背後にはエンジンコンパートメントとの隔壁が迫っており、リアエンジンの「911 GT3 R」とはだいぶ趣が異なっている。拡大
巨大なウイングと、大型のディフューザーが目を引く「911 RSR」のリアビュー。
巨大なウイングと、大型のディフューザーが目を引く「911 RSR」のリアビュー。拡大

“耐久王”は備えが違う

低速コーナーでのRSRのアンダーステアはGT3 Rより少なく、特に大きなステアリングアングルの時にフロントグリップが急に低下することもなく、追従性が素晴らしい。またコーナー出口ではトラクションコントロールの性能が素晴らしく、介入がとても繊細で、制御しすぎによるロスがなく、絶妙にコントロールしてくれる。GT3 Rではブレーキングが必要であった高速コーナーを、アクセルコントロールだけでクリアすることができた。そのイメージはまるでフォーミュラのようで、GT3 Rと比較してもその差は歴然である。

そして僕はミドシップ化の最大の成果が、このようなハイスピードコーナーではないかと感じた。ミドシップにすることで前後バランスが良くなり、コーナリングのレベルとコントロール性が良くなった。それに加えて、エンジンをミドシップにすることでリア下面のディフューザーを巨大化させることが可能になるので、ダウンフォースが格段に大きくなったことがRSRのアドバンテージになったと感じる。

エンジンの搭載位置が変わったことによる前後バランスの変化や、それによる操縦性の変化ももちろん重要ではあるが、近年のレーシングカーはダウンフォースが大きなファクターになるのだ。RRではその制限が大きく、さまざまな部分で苦労するが、MRにすることによりかなり自由度が増したことは容易に理解できた。

また、それがドライビングにはっきりと表れており、RSRは別次元とはっきり感じるし、とにかく限界が高い。

しかし、僕がRSRでもうひとつ感動したのが、とにかくドライバーが快適で疲れないように、そして安全にドライブするということが重要視されているところである。ダッシュボードに装着されている前後左右のブレーキロックや、トラクションコントロールの介入を目視できるインジケーター、バックモニターの後方衝突防止支援システム、そして片方のシフトパドルを前後させることでシフトアップとダウンが可能になることにより、ドライバーがピットインなどの時に便利な使い方ができることなど、さまざまなドライバー支援がなされていて、ドライバーがドライブに集中できるようになっていたことだ。

RSRはまさしくすべての面で最先端なマシンである。試乗して、本当に感動した。さすが耐久王ポルシェ、その一言に尽きる。

(文=田中哲也/写真=ポルシェ/編集=竹下元太郎)

良好な前後バランスと、より強力なダウンフォースを得た「911 RSR」のハンドリングは、RRの「911」レーサーとはもはや別物。まるでフォーミュラのようだと田中氏は語る。
良好な前後バランスと、より強力なダウンフォースを得た「911 RSR」のハンドリングは、RRの「911」レーサーとはもはや別物。まるでフォーミュラのようだと田中氏は語る。拡大
ホイールは1ピースの鍛造アロイ。タイヤサイズは前が30/68-18、後ろが31/71-18(写真)で、ミシュランのスリックを履く。
ホイールは1ピースの鍛造アロイ。タイヤサイズは前が30/68-18、後ろが31/71-18(写真)で、ミシュランのスリックを履く。拡大
リアウイングはポルシェのLMP1マシン「919ハイブリッド」譲りの“スワンネック”タイプとなる。
リアウイングはポルシェのLMP1マシン「919ハイブリッド」譲りの“スワンネック”タイプとなる。拡大
「911 RSR」には「コリジョン・アボイド・システム」と呼ばれるレーダーによる衝突警告システムが備わっている。これは他車の後方からの接近を早期に検知するものだ。
「911 RSR」には「コリジョン・アボイド・システム」と呼ばれるレーダーによる衝突警告システムが備わっている。これは他車の後方からの接近を早期に検知するものだ。拡大
ルマン24時間では惜しくも表彰台を逃した「911 RSR」だが、WEC第4戦ニュルブルクリンク6時間レース(2017年7月14~16日)では、LM-GTEプロクラスで2位と3位を獲得した。
ルマン24時間では惜しくも表彰台を逃した「911 RSR」だが、WEC第4戦ニュルブルクリンク6時間レース(2017年7月14~16日)では、LM-GTEプロクラスで2位と3位を獲得した。拡大
レーシングカーでも最新は最善。耐久レースの王者・ポルシェの仕事は、やはりひと味違う。
レーシングカーでも最新は最善。耐久レースの王者・ポルシェの仕事は、やはりひと味違う。拡大
ポルシェ911 RSR
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テスト車のデータ

ポルシェ911 RSR

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4557*1×2042*2/2048*3×--mm
ホイールベース:2516mm
車重:約1243kg*4
駆動方式:MR
エンジン:4リッター水平対向6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:6段AT(6段シーケンシャル・コンスタントメッシュ・トランスミッション)
最高出力:510ps(375kW)*5
最大トルク:--Nm
タイヤ:(前)30/68-18/(後)31/71-18
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
*1=スプリッター、リアウイング、ディフューザーを除いた数値。 *2=フロントアクスル部の全幅。 *3=リアアクスル部の全幅。*4=各レギュレーションの基本重量に合わせて調整する。 *5=リストリクターの設定によって調節する。

テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

ポルシェ911 GT3 R
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ポルシェ911 GT3 R

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4604×1975*1/2002*2×--mm
ホイールベース:2463mm
車重:約1220kg*3
駆動方式:RR
エンジン:4リッター水平対向6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:6段AT(6段シーケンシャル・コンスタントメッシュ・トランスミッション)
最高出力:500ps(368kW)*3
最大トルク:--Nm
タイヤ:(前)30/65-18/(後)31/71-18
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
*1=フロントアクスル部の全幅。 *2=リアアクスル部の全幅。 *3=各レギュレーションに合わせて調整する。

テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

ポルシェ911 GT3 Cup
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ポルシェ911 RSR/911 GT3 R/911 GT3 Cup【海外試乗記】の画像拡大

ポルシェ911 GT3 Cup

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4564×1980×1246mm
ホイールベース:2456mm
車重:約1200kg
駆動方式:RR
エンジン:4リッター水平対向6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:6段AT(6段シーケンシャル・ドッグタイプ・トランスミッション)
最高出力:485ps(357kW)/7500rpm
最大トルク:480Nm(48.9kgm)/6250rpm
タイヤ:(前)27/65-18/(後)31/71-18
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

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911ポルシェ試乗記

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