第15回:「システム・パナール」という発明<1891年>
自動車の進化を加速させた駆動方式革命

2018.01.12 自動車ヒストリー 前にエンジンを置き、その後ろに人が乗るスペースを設ける。今日でも自動車の主流となっているこの構造を、最初に発明したのはフランス人のエミール・ルヴァソールだった。“システム・パナール”と呼ばれるフロントエンジンレイアウト誕生の経緯を紹介する。

リアにエンジンを置いた初期の自動車

自動車にとって、駆動方式はその性能を左右する大きな要素だ。最大の重量物であるエンジンの搭載位置は、運動性能に決定的な影響を与える。大きく分けて駆動方式は5つ。現代のクルマで最も多く採用されているFF(フロントエンジン・フロントドライブ)は、車体の前方にエンジンを置き、前輪を駆動する方式だ。主要な機構がボディー前部のスペースに収まるので、室内スペースを広くとれるメリットがある。

以前は主流だったFR(フロントエンジン・リアドライブ)は、エンジンは前方にあるものの駆動輪は後輪で、間をプロペラシャフトでつなぐ。駆動輪と操舵輪が分かれることでハンドリングがよく、今も高級車やスポーツカーに多く採用されている。大きなトラクションを得られるRR(リアエンジン・リアドライブ)は、かつてよく見られた方式である。現在では少なくなったが、「ポルシェ911」はこの方式を守り続けている。

MR(ミドシップエンジン・リアドライブ)は重量物を中心に持ってくるために高い運動性能を得ることができ、レーシングカーや高性能スポーツカーに採用されている。ただ、どうしても室内のスペースが犠牲にされることになる。4WD(四輪駆動)は、前輪と後輪のすべてを駆動する方式だ。以前はオフロードカーによく用いられた方式だが、最近では乗用車でも多く採用されている。

自動車が誕生した時から、技術者にとってエンジンの搭載位置は悩みの種だった。1886年にカール・ベンツが世界初の特許を得た三輪自動車の「パテント・モートルヴァーゲン」は、車両重量自体はわずか263kgである。しかし、その3分の1以上にあたる96kgがエンジンの重さだった。ベンツは座席の後ろに単気筒エンジンを置き、ベルトやローラーチェーンを介して後輪に動力を伝達した。

1895年に開催されたパリ‐ボルドー往復レースに、自前のクルマで出場するエミール・ルヴァソールとルネ・パナール。
1895年に開催されたパリ‐ボルドー往復レースに、自前のクルマで出場するエミール・ルヴァソールとルネ・パナール。拡大
世界初のガソリン自動車であるカール・ベンツの「パテント・モートルヴァーゲン」(1886年)。エンジンは乗員の後ろ、後軸の上に搭載されていた。
世界初のガソリン自動車であるカール・ベンツの「パテント・モートルヴァーゲン」(1886年)。エンジンは乗員の後ろ、後軸の上に搭載されていた。拡大
「パテント・モートルヴァーゲン」に搭載された単気筒水冷4ストロークエンジン。ボア×ストロークは90×150mm。排気量は950ccほどで、最高出力は0.7kW程度だった。
「パテント・モートルヴァーゲン」に搭載された単気筒水冷4ストロークエンジン。ボア×ストロークは90×150mm。排気量は950ccほどで、最高出力は0.7kW程度だった。拡大
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