第11戦ハンガリーGP「200戦目の勝ち方」【F1 2011 続報】

2011.08.01 自動車ニュース
GP200戦目という記念すべき一戦で、ジェンソン・バトン(中央)が優勝。2006年に初めて勝利したハンガロリンクで、チームクルー、関係者とともに喜びを分かち合った。ちなみに200戦を超えたドライバーとしては歴代11人目となる。(Photo=McLaren)
第11戦ハンガリーGP「200戦目の勝ち方」【F1 2011 続報】

【F1 2011 続報】第11戦ハンガリーGP「200戦目の勝ち方」

2011年7月31日、ブダペスト近郊のハンガロリンク・サーキットで行われたF1世界選手権第11戦ハンガリーGP。レッドブルがかつての勢いを失い、マクラーレン、フェラーリを含めた三つどもえの戦いとなっているシーズン中盤、先の読めないコンディションにめっぽう強いジェンソン・バトンが、初優勝の思い出の地で、記念すべき200戦目に花を添えた。

決勝日朝に降った雨で路面は所々ウエット。全車インターミディエイトタイヤを履いてスタートした。(Photo=Red Bull Racing)
決勝日朝に降った雨で路面は所々ウエット。全車インターミディエイトタイヤを履いてスタートした。(Photo=Red Bull Racing)
予選3位のバトンは、レース序盤、ルイス・ハミルトンとともにマクラーレン1-2フォーメーションをかたちづくった。終盤に降った雨に乗じてハミルトンを抜きトップに立ち、以後難しいコンディションで踏ん張りをきかせ、カナダGPに次ぐ今季2勝目をあげた。(Photo=McLaren)
予選3位のバトンは、レース序盤、ルイス・ハミルトンとともにマクラーレン1-2フォーメーションをかたちづくった。終盤に降った雨に乗じてハミルトンを抜きトップに立ち、以後難しいコンディションで踏ん張りをきかせ、カナダGPに次ぐ今季2勝目をあげた。(Photo=McLaren)

■レッドブル包囲網

今季前半の8戦で6勝し、チャンピオンシップを席巻してきたレッドブルとセバスチャン・ベッテルの勢いが、徐々にだが衰えをみせはじめてきた。ベッテルには6月の第8戦ヨーロッパGP以来勝ちがなく、前戦ドイツでは今年初の表彰台落ちを味わっていた。

前戦ドイツでルイス・ハミルトンが優勝したマクラーレン、その前のイギリスでフェルナンド・アロンソが今季初勝利したフェラーリに、レッドブルを加えた“3強”が大差なくせめぎ合うシーズン中盤戦。GPサーカスの夏休み直前に行われたハンガリーGPでも、三つどもえの様相となった。

昨年マーク・ウェバーが圧倒的な速さで優勝したことからもわかるように、ツイスティなハンガロリンクはレッドブル向けのコースといえた。ところが今年、金曜日の最初のフリー走行がはじまると、最速タイムをマークしたのはルイス・ハミルトンで、対するベッテルは0.214秒差の2位だった。続く2回目のセッションでもハミルトンがトップ、ベッテルは僚友マーク・ウェバーにも先を越され5位。レッドブル陣営はこの夜、ルール上時間制限があるガレージでの作業を深夜まで延長し、猛追するライバルへの対策に打ち込んだ(特例として各チーム年4回まで制限を外すことが認められている)。

その結果が土曜日に花開き、3回目のフリー走行でフェルナンド・アロンソのフェラーリを抑えベッテル首位、そして予選ではこのポイントリーダーが3戦ぶり、今季8度目のポールポジションを獲得した。

しかし、ベッテルの走りにかつての圧倒的な速さはない。予選2位にハミルトン、3位ジェンソン・バトンとマクラーレンの2台が背後にピタリとつけ、タイム差も0.163秒と僅かな開きしかなかった。そしてフェリッペ・マッサ予選4位、アロンソ5位とフェラーリを挟み、ウェバーは6位に沈んだ。

狭まるレッドブル包囲網。チャンピオンシップにおけるベッテルの77点リードは早々に崩せはしないが、コンペティションが激しくなることで、F1はその魅力をがぜん増すことになった。
ここハンガリーでは、雨により微妙に変わる先の読めないコンディションで、そんな状況を大得意とするバトンが優勝。スムーズな走り、抑えのきいた我慢のドライビング、彼の真骨頂ともいうべき勝ち方だった。ドライバーの個性が前面に出された、観る価値のある1勝だった。

ライバルの激しい追い上げを前に、レッドブルは金曜日に“深夜残業”を敢行。そのかいあって、予選ではポイントリーダーのセバスチャン・ベッテルが今年8回目のポールポジションを獲得。しかしレースではマクラーレンにかなわず。スタート後早々にトップの座を奪われ、以後マクラーレンに追いつくことはできなかったが、ハミルトンの脱落により2位が転がり込んだのは不幸中の幸い。なお3戦勝利から遠ざかってはいるが、ランキング2位のウェバーとのポイント差は77点から85点に拡大している。(Photo=Red Bull Racing)
第11戦ハンガリーGP「200戦目の勝ち方」【F1 2011 続報】

■マクラーレンの1-2フォーメーション

決勝日は例年になく低温に見舞われ気温18度。そして朝に降った雨がコースの所々を濡らしていたため、全車浅い溝のインターミディエイトタイヤを履いてスタートした。
ポールシッターのベッテルを先頭に、ハミルトンとバトンが並びながら1コーナーへ。結局ハミルトンが2位のポジションを守ったが、その背後では、予選4位のマッサ、5位アロンソが、メルセデスの2台に抜かれていた。

オープニングラップの順位は、1位ベッテル、2位ハミルトン、3位バトン、4位ニコ・ロズベルグ、最終コーナーでオーバーテイクに成功した5位アロンソ、6位ミハエル・シューマッハー、7位マッサ、そして8位にウェバー。この日速さで勝ったハミルトンはベッテルを追い回し、70周のレースの5周目、ラインが膨らんだベッテルをオーバーテイクしトップに立つ。そしてファステストラップを更新して瞬く間に差を広げ、9周目には5.4秒ものギャップを築いた。

やがてコースが乾きはじめ、10周を境に各車ドライタイヤへと交換をはじめる。11周目にはウェバーとマッサ、12周目バトン、13周目ハミルトン、ベッテル、アロンソが続々とピットイン。14周目には、1周早くタイヤをあたためることができたバトンがベッテルを抜いたことで、マクラーレン1−2フォーメーションができあがった。

スローコーナーが続くハンガロリンクは、フェラーリにとって苦手なコース。さらに低い気温も、タイヤに熱が入りづらいスクーデリアに不利に働いた。それでも、フェルナンド・アロンソは予選5位から3位フィニッシュ、4戦連続となる表彰台を獲得しており、調子は悪くない。(Photo=Ferrari)
第11戦ハンガリーGP「200戦目の勝ち方」【F1 2011 続報】

■ハミルトンのギャンブル

1回目のピットストップを終え、トップ5の順位は、1位ハミルトン、2位バトン、3位ベッテル、4位ウェバー、5位アロンソ。その後しばらく、この位置関係のまま数秒間隔で周回を重ね、2回目のタイヤ交換を終えるのだが、レース半ばを過ぎる頃から、各ドライバーの戦略の違いが顕在化する。

37周目、5位アロンソが3度目のピットイン。ソフトタイヤを選んだことでもう1ストップすることが確実となった。40周目には4位ウェバーがハードタイヤを選択。つまりウェバーはこのまま70周のゴールまで走り切るつもりなのだ。マクラーレンは2台で違う作戦をとった。41周目、トップのハミルトンはソフト、2周遅れでバトンはハードタイヤを履きノンストップ走行を目指した。

そんななか、再びコースの一部で雨が落ちてくる。47周目、首位ハミルトンはシケイン通過後にスピン、マシンを一瞬止めその間にバトンにトップの座を奪われた。50周目、1位バトン、2位ハミルトン、3位ベッテルが3秒のなかにひしめく状態。翌周には、ただでさえグリップ力に劣るハードタイヤでスリッピーな路面を走るバトンがたまらずコースオフ、ハミルトンが1位に返り咲く。この2台はその後抜きつ抜かれつを繰り返したが、ハミルトンは「雨が降り続く」と読んでインターミディエイトに交換する賭けに出る。同様にウェバー、ロズベルグらがインターを選択したが、あいにく雨はすぐにあがりコースはウエットタイヤに不向きとなり、これらギャンブラーは再度ドライを履くためポジションを落とした。

優勝を争ったハミルトンは、スピン時に他車をコースオフに追いやった責任をとらされ、ドライブスルーペナルティが科され脱落。ハードタイヤで何とか踏みとどまったトップのバトンは、2位にあがったベッテルの追い上げを抑え切り、難しいレースで今シーズン2勝目をあげた。

フォースインディアのルーキー、ポール・ディ・レスタ(左)は、予選11位から自身最高位となる7位完走。3回目の入賞を果たした。(Photo=Force India)
フォースインディアのルーキー、ポール・ディ・レスタ(左)は、予選11位から自身最高位となる7位完走。3回目の入賞を果たした。(Photo=Force India)
ザウバーの小林可夢偉(前)は、予選13位からポイント圏内に入り、一時は6位まで順位をあげたが、チームがとった2ストップという作戦はやや無謀だった。レース終盤、古いタイヤに足を引っ張られてズルズルと後退、結局3回目のピットストップを行い、11位完走。惜しくもポイント獲得ならず。(Photo=Sauber)
ザウバーの小林可夢偉(前)は、予選13位からポイント圏内に入り、一時は6位まで順位をあげたが、チームがとった2ストップという作戦はやや無謀だった。レース終盤、古いタイヤに足を引っ張られてズルズルと後退、結局3回目のピットストップを行い、11位完走。惜しくもポイント獲得ならず。(Photo=Sauber)

■バトン、200戦目の美酒

2000年にウィリアムズでデビューしたバトン。ルーキーイヤーに12点を獲得、シーズンを8位で終えたシンデレラ・ボーイは、GP初優勝までに実に6年間、113戦もかかった苦労人でもあった。
2006年、ホンダのクルーとともに勝利の美酒に酔った思い出の地が、ここハンガリー。あの時も雨だった。

「なぜだかは聞かないでほしいんだけど、こういうコンディションが好きなんだよね」とはレース後のウィナーズコメント。「チームにはとにかく感謝したい。みんなハードワークしてこのマシンをつくってくれたんだ。これで夏休みを上々に過ごせるだろうね。(次のレース)スパのことを思いながら」。

キャリア後半、ずば抜けた速さはライバルに引けを取るが、しぶとい走りで困難に打ち勝つ能力は天下一品だ。2000年に20歳だった青年は、200戦目には31歳。いぶし銀のドライビングを披露するワールドチャンピオンになっていた。

これからファクトリーは強制的に休みに入る。次のベルギーGPは8月28日に行われる。

(文=bg)

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