第10戦ドイツGP「ベッテルの大量リードの減らし方」【F1 2011 続報】

2011.07.25 自動車ニュース
第3戦中国GP以来となる今季2勝目を挙げたルイス・ハミルトン。マクラーレンのクルーとの歓喜の瞬間。(Photo=McLaren)
第10戦ドイツGP「ベッテルの大量リードの減らし方」【F1 2011 続報】

【F1 2011 続報】第10戦ドイツGP「ベッテルの大量リードの減らし方」

2011年7月24日、ドイツのニュルブルクリンクで行われたF1世界選手権第10戦ドイツGP。昨年11月から続いたセバスチャン・ベッテルの連続ポディウムが途切れ、マクラーレン、フェラーリがレッドブルを上回るパフォーマンスを示しはじめたことで、ベッテルの大量リードで冷えきったチャンピオンシップに僅かに熱が入り始めた。

金曜日、土曜日のフリー走行でタイムが振るわなかったマクラーレンだったが、予選で好転。Q3でハミルトン(写真)がポールシッターのマーク・ウェバーに肉薄する好タイムで2位につけ、レースではスタートでトップを奪い、一度ウェバーにその座を奪われるも、ピットストップのタイミングで再び首位に立ち、3カ月ぶりの勝利を飾った。なおチームメイトのジェンソン・バトンは、予選で7位と低調、スタートでも順位を落とし、挽回(ばんかい)していた最中の36周目、油圧系にトラブルが起きピットでリタイアした。(Photo=McLaren)
第10戦ドイツGP「ベッテルの大量リードの減らし方」【F1 2011 続報】
前戦イギリスGPで今季初優勝したフェルナンド・アロンソのフェラーリは、予選4位からスタートで3位に上昇。レース序盤にセバスチャン・ベッテル、中盤にはマーク・ウェバーのレッドブル勢を抜き、2位でゴールした。(Photo=Ferrari)
第10戦ドイツGP「ベッテルの大量リードの減らし方」【F1 2011 続報】

■問われたフェラーリとウェバーの真価

前戦イギリスGPを揺るがした、いわゆる“ブローディフューザー問題”は収束し、レギュレーションは2戦前のヨーロッパGP仕様(予選、決勝を通じて同じエンジン制御方法を採用)となった今回、注目されたのは、イギリスでのフェラーリのパフォーマンスは本当の姿なのか、ということだった。

冬のテストで好調が伝えられながら、シーズンが始まってみるとレッドブル、マクラーレンの後塵(こうじん)を拝してきたフェラーリ。レッドブルから遅れること1.5秒、そのスローペースに誰もが驚いた。
当初は不調の原因をつかみかねていたが、やがてスクーデリアは「フェラーリ150°イタリア」開発時の風洞に問題があったことを突き止める。5月の第5戦スペインGPではアップグレードパッケージを持ち込み、次のモナコからの4戦で2位2回、そしてイギリスでフェルナンド・アロンソが今季初優勝と、着実にパフォーマンスを上げてきていた。

しかし、初勝利を挙げたのがくだんのディフューザー問題が勃発(ぼっぱつ)したイギリスGPだったことで、本当にフェラーリがレッドブルを凌駕(りょうが)したのか、という真の実力が見えづらかったことも事実。ドイツGPは、その真価が問われる1戦となった。

さらに、ドイツでその力量が試されたドライバーがいる。レッドブルのマーク・ウェバーだ。
チームメイトのセバスチャン・ベッテルは、今年9戦して6勝、1度も表彰台から落ちることなく大量得点でチャンピオンシップをリード。いっぽうのウェバーは、2位1回を含むポディウム5回を数えるものの、ベッテルと同じマシンを与えられながら優勝はなく、ポールポジションも2回獲得しているが1周もラップリーダーになったことがないというありさまだった。

隔年で、ホッケンハイムとニュルブルクリンクがGPを開催するドイツ。今年の舞台はウェバーが得意とするニュル。2年前、132戦目にしてポールポジションから初優勝を遂げた、記憶と記録に残る場所だ。史上まれにみる大量のポイント差をつけ、2年連続のタイトルにどんどん近づいていく僚友に一泡吹かせるには、絶好のコースといえる。

実際、レースではアロンソ、ウェバーともに優勝争いに絡み、緊迫した戦いとなった。だが最後に笑ったのは、金曜日からのフリー走行でなかなか上位に食い込むことのできなかった、マクラーレンのルイス・ハミルトンだった。

得意のニュルブルクリンクで2戦連続のポールポジションを獲得したマーク・ウェバー。スタートでまたもトップの座を失い、その後今季初のラップリーダーにはなれたが、マクラーレン、フェラーリに対しレッドブルは劣勢に立たされ、結果3位。レース後に早急な改善が必要と訴えた。写真は、ゴール後にガス欠でマシンを止めたアロンソを乗せてピットへ戻る様子。(Photo=Red Bull Racing)
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■ウェバー、今季初めてラップリーダーに

予選1位の座を射止めたのはウェバー。2戦連続、自身通算9回目のポールポジションで念願の今季初勝利を目指すレッドブルの隣には、ハミルトンのマクラーレンが並んだ。両車のタイム差は僅か0.055秒。シーズン前半、特に予選でライバルに差をつけていたレッドブルの優位性は、ここにきて本格的に揺らぎ始めた。
ベッテルは予選3番手。昨年9月のイタリアGP以来となるフロントロー脱落となった。

フェラーリは予選ではやや低調で、アロンソ4番手、フェリッペ・マッサ5番手。しかし「レッドブルとのギャップには驚いていない」とアロンソは涼しい顔で言ってのけた。

雨が降りやすい地域にあるニュルブルクリンク。今回もレースデイの空模様が心配されたが、時折小雨がぱらつく程度で大きな崩れはなかった。だが天候は持ちこたえたものの、気温14度という夏とは思えない低温に見舞われた。

スタートでは、ポールシッターのウェバーが鈍い出だしでハミルトンにトップの座を奪われる。4番グリッドのアロンソは前のベッテルを抜き3位にポジションアップを果たすが、2周目にはベッテルが前に出て3位の座を奪還、その6周後には再びアロンソが3位と、目まぐるしく順位が変わった。

ベッテルが上位争いに絡んだのはこれまで。60周のレースの10周目、ベッテルのレッドブルは濡れたホワイトラインに乗りスピン、コースオフ。幸いダメージを負わず順位も4位のままコースに戻れたのだが、優勝争いからは事実上姿を消した。

1位ハミルトン、2位ウェバー、3位アロンソのトップ3はほぼ互角の戦いで周回を重ねるが、最初に動いたのがウェバーだった。タイヤがタレはじめたレッドブルは、15周目にピットへ飛び込み、ソフトから同じソフトへタイヤを交換、6位でコースに復帰した。この際トラフィックに一瞬行く手を邪魔されるが、それがクリアになるとニュータイヤで本領発揮。17周目にハミルトン、アロンソが同時にタイヤ交換をすると、ウェバーが今年初めてトップに立っていた。

ポイントリーダーのセバスチャン・ベッテルにとっては今季ワーストGP。予選では昨年9月のイタリアGP以来となるフロントロー脱落で3位。レースではスピン、コースオフ、またブレーキトラブルなどに泣かされ、4位でフィニッシュ。トップに立つと強いが、追い上げが苦手、というベッテルの欠点が垣間見えたレースだった。(Photo=Red Bull Racing)
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■ハミルトン、ファステストラップ連続更新で逃げる

次のピットストップでも、ウェバーがまず動いた。31周目、レッドブルのピットクルーはウェバーのマシンに新しいソフトタイヤを装着する。しかし今回のこの決断は吉とは出なかった。
翌周ハミルトンがピットインすると、ウェバーの前でコースに復帰。そして33周目にアロンソがタイヤを替えると、ハミルトン、ウェバーの前に戻ったのだが、温まったタイヤでハミルトンが早々にアロンソをオーバーテイク。トップ3は、1位ハミルトン、2位アロンソ、3位ウェバーというオーダーとなった。

ここで首位ハミルトンは、ファステストラップを連続更新。2位アロンソに対するギャップを1.7秒から35周目には3.1秒まで拡大し、逃げ切りをはかった。事実上、ここでの踏ん張りがハミルトンの勝因となった。

上位陣が3ストップ作戦をとった今回、3回目のピットストップは可能な限り遅らせたいのが各チームの思惑だった。ハード側のタイヤはソフトに比べ1.5秒程度遅いといわれており、このタイヤでの周回数は極力抑えたかったのだ。

1位ハミルトンのソフトタイヤは51周目に音を上げハードへ交換。この間、2位アロンソは優勝への最後の望みをかけてソフトで2周飛ばしピットへと飛び込んだのだが、フェラーリのこの作戦は失敗に終わった。

ウェバーは、57周目までくたびれたソフトタイヤを酷使したが順位変わらず。ハミルトンは残り2周でレース最速タイムを更新し、3カ月ぶりの勝利を手中に収めた。

メルセデスのミハエル・シューマッハーは、故郷のファンの前で予選10位、決勝8位というリザルトを残す。ただ、自らのミスでスピンを喫するなど、錦を飾るには至らなかった。(Photo=Mercedes)
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ザウバーの小林可夢偉(写真前)は、予選17位と苦戦。しかしスタートで一気に12位までポジションを上げ、思うようにコントロールできないマシンを必死に操りながら9位入賞を果たした。(Photo=Sauber)
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■アロンソ「マクラーレンの助けが必要」

今回のレースで4位に終わったとはいえ、ポイントリーダーのベッテルは、ランキング2位のウェバーに対し77点、3位ハミルトンに82点、4位アロンソに86点もの差をつけている。今後ウェバーが3連勝し、ベッテルが3連続リタイアをしてもまだ覆らないほどの余裕だ。

観るものが半ば興味を失いかけた、2011年シーズンのタイトルの行方は、しかしここにきて僅かながら変化の兆しをみせている。

今季の前半であれだけ他を圧倒していたレッドブルに、マクラーレン、フェラーリが追いついてきている。レース後、ウェバーからもベッテルからも、「レッドブルはこの事態に早急に対応しなければならない」というコメントが聞かれた。

そして追う立場のアロンソは、「タイトル獲得は困難を極める」としながらも、「僅かなチャンスがあるなら、マクラーレンの“助け”が必要だ」と語っている。つまりベッテルの前により多くのライバルがフィニッシュすることで、可能な限りベッテルの獲得ポイントを抑え、その間に自分たちがより多くのポイントを集めること以外に方法はない、ということなのだろう。

次戦は1週間後の7月31日に決勝が行われるハンガリーGP。サマーブレイク前に、今後勢力図がどう変化していくのかを見極める、注目の一戦である。

(文=bg)

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