第9戦イギリスGP「レギュレーション変更をめぐる騒動」【F1 2011 続報】

2011.07.11 自動車ニュース

【F1 2011 続報】第9戦イギリスGP「レギュレーション変更をめぐる騒動」

2011年7月10日、イギリスのシルバーストーン・サーキットで行われたF1世界選手権第9戦イギリスGP。フェラーリのフェルナンド・アロンソが今季初優勝を飾った伝統の一戦は、「ブローディフューザー禁止」に大きく揺れ、各チームはコースの外で利害を激突させた。

■ブローディフューザ禁止をめぐる異論反論

世界選手権の記念すべき第1回レース(1950年5月)が開かれたシルバーストーン。2010年にドニントンパークでのF1開催が流れ、結果的に2026年まで長期にわたりイギリスGPの舞台となることが決まった伝統のコースは、今年、ピットそのほかの施設が最新鋭のものにかわり、スタート・フィニッシュラインも「クラブ」コーナー後のストレートに大きく移動した。
そんな様変わりしたパドックでは、今回から本格発動となる「ブローディフューザー禁止」のレギュレーションをめぐり議論が白熱した。

このブローディフューザーとは、マシン後端底のディフューザーに排ガスをうまく流しダウンフォースを得ようという空力上のテクニックで、ドライバーがブレーキングしている間も一定量のガスが放出されるよう、エンジンマッピングによる制御が行われていた。

F1を統括するFIA(国際自動車連盟)は、まず前戦ヨーロッパGPで、予選、決勝を通じ同じエンジン制御方法を採用することを義務付けた。そして次のイギリスGPでは全面禁止とし、アクセルペダルを踏んでいない状況でのスロットルオープンを10%に制限した。

しかし、信頼性維持を理由にエンジンメーカーがFIAに特例を認めさせたことで、異なるエンジンを使うチーム間で論争が巻き起こった。特にルノーエンジン勢のレッドブルと、メルセデスエンジンを使うマクラーレンは、チーム代表が記者会見の場で議論し合うなど騒動は激化。チーム首脳や技術担当者が集まっての緊急ミーティングが重ねられる事態となった。

当初ルノーエンジンが申請していた「50%」という特例は、ライバルからの抗議の結果土曜日には白紙扱いとなり、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は納得いかないとしながらも“不利な状況下でのレース”を受け入れた。

FIAはこの混乱ぶりを考慮し、全チームの合意が得られればレギュレーションをイギリスGP以前に戻す、というスタンスを表明。これを受けてチームは決勝日朝にミーティングを開いたが、合意には至らなかった。レギュレーション変更が一番ポジティブに働いたエンジン、つまりフェラーリと、フェラーリエンジンユーザーのザウバーが反対の立場についたといわれている。

たしかに、フェラーリはこのレースで見違えるようなパフォーマンスを披露した。予選では“不利な”レッドブルがフロントローを独占したものの、3位につけたフェルナンド・アロンソはポールポジションタイムに0.117秒差と肉薄。決勝ではタイヤに熱を入れる際にペースを落としたものの、レッドブルのピット作業手間取りでトップに立ってからは圧倒的な速さで後続を引き離し、今季初優勝を飾った。
だが今回のフェラーリ/アロンソの走りが素晴らしかったとはいえ、その背景に一連の政治的な混乱を意識せずにはいられなかった。

レース後、フェラーリとザウバーは、FIAが示したブローディフューザー禁止の撤回案に同意。これにより次のドイツGPからは、ヨーロッパGP同様に予選・決勝共通エンジンマッピングの義務化だけで済むことになった。

これにより騒動は落ち着くことになったのだが、今回のシーズン半ばのレギュレーション変更は、いったい何を狙ったものなのだろうかとあらためて考えると、実は明確な答えが見つけられない。
もちろん、建前上は「空力上の可動パーツと認められることから、ルールに抵触している」ということなのだが、安全面での問題といった喫緊の対策でもない。今後の開発激化によるコスト高騰をにらんで、という考えはわからなくもないが、これほどの混乱と混迷を招くぐらいなら、議論を重ねて来年から導入してもよかったのでは、といわれても仕方ないだろう。

今年、FIAには、社会情勢が安定せず中止となった開幕戦バーレーンGPに、年内レース開催のゴーサインを出しておきながら、各方面から批判を受け再開を断念したという“前科”がある。これ以上の政治的な混乱は、F1の評判悪化を招きかねないのではないだろうか。

■予選2位のベッテル、スタートでトップを奪取

過去2年、シルバーストーンで圧勝しているレッドブルの2人が、“不利な状況下”でフロントローに並んだ。昨年のウィナー、マーク・ウェバーがポールポジションを獲得、2009年勝者のセバスチャン・ベッテルが2位につけた。予選3位にアロンソ、4位にはフェリッペ・マッサとフェラーリが復調ぶりをアピール。いっぽうレギュレーション変更が(本当に)不利に働いたといわれるマクラーレン勢は、5位ジェンソン・バトン、またセッション中の小雨も災いし好タイムを出せなかったルイス・ハミルトンは10位と後方グリッドに沈んだ。

決勝日は、スタート前に降った雨により、旧メインストレートがあるコース中盤はウエット、ほかはほぼドライという難しいコンディション。全車インターミディエイトタイヤを履いてグリッドをあとにした。

シグナルが変わると同時にベッテルが好発進を決めトップを奪取。オープニングラップは、2位ウェバー、3位アロンソ、4位バトン、5位マッサ、そしてハミルトンが一気に6位までジャンプアップし、翌周にはチームメイトのバトンをも抜き5位に上がった。
1位ベッテルは2位ウェバーとのギャップを毎ラップ広げ、52周レースの10周を過ぎる頃には8秒ものマージンを築いた。
路面が乾きはじめた10周目、小林可夢偉と接触しノーズ交換のためピットに入ったミハエル・シューマッハーのメルセデスはドライタイヤに履き替えた。その後シューマッハーがファステストラップを連続更新したことで、インターミディエイトの役割が終わったことが誰の目にも明らかになった。

これを受けて各車もドライにチェンジ。12周目にバトン、13周目にはウェバー、アロンソ、ハミルトン、そして14周目には首位ベッテルが続々とピットに入り、ドライタイヤを装着して出て行った。
最初のストップを終えてのトップ5は、1位ベッテル、2位ウェバー、3位ハミルトン、4位アロンソ、5位バトン。当初ベッテルとウェバーのタイム差は1.6秒だったが、ベッテルはいつものコマンディングポジションからレースをコントロールし、23周目までに4.4秒までギャップを拡大した。

■アロンソ、首位に立つ

交換後のタイヤの温まりが悪く、一時ペースが鈍ったフェラーリのアロンソは、ピレリタイヤに熱が入りはじめると本領を発揮し出す。24周目にはDRSを使いハミルトンをオーバーテイクし3位に上昇すると、ハイペースで先行するレッドブルを追いかけはじめた。

27周目、2位ウェバーがピットイン。そして28周目には1位ベッテルとともにアロンソがタイヤ交換に踏み切る。ここでレッドブルのピットクルーは、左リアタイヤの交換に手間取りベッテルは貴重なタイムを失ってしまう。コースに戻ると、1位にアロンソ、2位ハミルトン、3位ベッテル、4位ウェバーというオーダーになっていた。

前が開けたアロンソはファステストラップを更新。その後ハミルトンとベッテルが2位争いに徹したことで、フェラーリは着実にリードタイムを広げ、アロンソは35周目までに9.4秒も先行した。

僅差の2位争いは、37周目、ハミルトンを抜きあぐねていたベッテルが先に3度目のタイヤ交換へ飛び込み、レッドブルが先手を打った。翌周にハミルトンがタイヤ交換を終えると、フレッシュタイヤで1周したベッテルが前に出ることに成功。だがアロンソは既に手の届かない場所にいた。

3位に落ちたハミルトンは、チームから燃料セーブを言い渡されペースを抑えなければならず、46周目にはウェバーにオーバーテイクを許した。表彰台から脱落したハミルトンだったが、追い上げる5位マッサとファイナルラップで接触するほどの接戦を制し、4位の座は何とか守り切った。

■揺るがないベッテルの優位

レース後、2位に終わったポイントリーダーのベッテルは、フェラーリの速さにかなわなかったことを認めた。レース後半のフェラーリのペースが他を圧倒していたことは明白だった。

しかし、チャンピオンシップの話をすれば、ランキング3位に上昇したアロンソとて、フェラーリ復活とタイトル獲得は別と考えており、これからは「毎レースをエンジョイするまで」とまで言い切っている。2位ウェバーに80点、3位アロンソには92点もの大差をつけるベッテルの優位は、そう簡単に揺るぐものでもないのだ。

2011年シーズンもいよいよ後半に突入する。ブローディフューザーの一件は着地点をうまく見つけられたようだが、ベッテルとレッドブルを止める真のライバルは、なかなか見つからないでいる。

次戦は7月24日、今年はニュルブルクリンクが舞台のドイツGPとなる。

(文=bg)

フェラーリのフェルナンド・アロンソが9戦目にして2011年初優勝。昨年10月の韓国GP以来となる勝利で、チャンピオンシップではランキング5位から3位に躍進した。なお最古参チーム、フェラーリの初勝利はちょうど60年前のここシルバーストーンで記録されたもの。スクーデリアはGP出走821戦目にして216回目の勝利を刻んだ。(Photo=Ferrari)
フェラーリのフェルナンド・アロンソが9戦目にして2011年初優勝。昨年10月の韓国GP以来となる勝利で、チャンピオンシップではランキング5位から3位に躍進した。なお最古参チーム、フェラーリの初勝利はちょうど60年前のここシルバーストーンで記録されたもの。スクーデリアはGP出走821戦目にして216回目の勝利を刻んだ。(Photo=Ferrari)
「ブローディフューザー禁止」をめぐり紛糾したイギリスGP。ルノーエンジン勢のレッドブル、クリスチャン・ホーナー代表(左)と、メルセデスエンジンを使うマクラーレンのマーティン・ウィットマーシュ代表(右)は、記者会見の場で各々の考えを戦わせた。(Photo=Red Bull Racing)
「ブローディフューザー禁止」をめぐり紛糾したイギリスGP。ルノーエンジン勢のレッドブル、クリスチャン・ホーナー代表(左)と、メルセデスエンジンを使うマクラーレンのマーティン・ウィットマーシュ代表(右)は、記者会見の場で各々の考えを戦わせた。(Photo=Red Bull Racing)
今回のレギュレーション変更がもっともポジティブに働いたとされるフェラーリ。アロンソは予選3位から2回目のタイヤ交換時にトップにのぼりつめ、以降はハイペースで飛ばしチェッカードフラッグまで走り抜けた。(Photo=Ferrari)
今回のレギュレーション変更がもっともポジティブに働いたとされるフェラーリ。アロンソは予選3位から2回目のタイヤ交換時にトップにのぼりつめ、以降はハイペースで飛ばしチェッカードフラッグまで走り抜けた。(Photo=Ferrari)
予選2位からスタートでトップに立ったセバスチャン・ベッテル(写真)。レース前半はトップを快走するが、2回目のタイヤ交換で作業に手間取り、アロンソに優勝をさらわれた。終盤タイヤがタレて、チームメイトのマーク・ウェバーから激しく攻められたが2位の座は守った。ウェバーにはチーム無線で「ポジションキープ」が言い渡されたが、ウェバーは無視してレースを続行したと後に語り、(またも)物議をかもしている。(Photo=Red Bull Racing)
予選2位からスタートでトップに立ったセバスチャン・ベッテル(写真)。レース前半はトップを快走するが、2回目のタイヤ交換で作業に手間取り、アロンソに優勝をさらわれた。終盤タイヤがタレて、チームメイトのマーク・ウェバーから激しく攻められたが2位の座は守った。ウェバーにはチーム無線で「ポジションキープ」が言い渡されたが、ウェバーは無視してレースを続行したと後に語り、(またも)物議をかもしている。(Photo=Red Bull Racing)
マクラーレンは予選でジェンソン・バトン5位、ルイス・ハミルトン(写真)10位と苦戦。決勝ではライバルをオーバーテイクするシーンも見られたが、ハミルトンは燃料セーブのため3位をあきらめ、最後はフェリッペ・マッサの激しいチャージをしのぎ4位フィニッシュ。バトンはタイヤ交換時にナットが締まり切っていないまま走ってしまったことでタイヤが外れリタイアした。(Photo=McLaren)
マクラーレンは予選でジェンソン・バトン5位、ルイス・ハミルトン(写真)10位と苦戦。決勝ではライバルをオーバーテイクするシーンも見られたが、ハミルトンは燃料セーブのため3位をあきらめ、最後はフェリッペ・マッサの激しいチャージをしのぎ4位フィニッシュ。バトンはタイヤ交換時にナットが締まり切っていないまま走ってしまったことでタイヤが外れリタイアした。(Photo=McLaren)
フォースインディアのルーキー、ポール・ディ・レスタは、初の地元GPで奮起し予選で6位につけ、レースでも好走を披露するが、ピットインの際、チームメイトのエイドリアン・スーティルのタイヤが用意されていた、というトラブルに見舞われタイムを失ってしまう。追い上げ途中で、今度はトロロッソと接触しフロントウイングを交換、結局15位でレースを終えた。(Photo=Force India)
フォースインディアのルーキー、ポール・ディ・レスタは、初の地元GPで奮起し予選で6位につけ、レースでも好走を披露するが、ピットインの際、チームメイトのエイドリアン・スーティルのタイヤが用意されていた、というトラブルに見舞われタイムを失ってしまう。追い上げ途中で、今度はトロロッソと接触しフロントウイングを交換、結局15位でレースを終えた。(Photo=Force India)
小林可夢偉(写真)は、予選で自身最高位の8位につけたが、レース8周目にミハエル・シューマッハーに追突され、さらにピットから出る際に前のチームの機材に接触したことでペナルティを受け、最後はオイル漏れで今年初のリタイアを喫した。チームメイトのルーキー、セルジオ・ペレスは自身最高位の7位でレースを終えた。(Photo=Sauber)
小林可夢偉(写真)は、予選で自身最高位の8位につけたが、レース8周目にミハエル・シューマッハーに追突され、さらにピットから出る際に前のチームの機材に接触したことでペナルティを受け、最後はオイル漏れで今年初のリタイアを喫した。チームメイトのルーキー、セルジオ・ペレスは自身最高位の7位でレースを終えた。(Photo=Sauber)

この記事の大きな画像を見るためには、画像ギャラリーをご覧ください。