ブリヂストンの最新ランフラットタイヤを試す

2011.06.27 自動車ニュース

ブリヂストンの最新ランフラットタイヤを試す

ブリヂストンの最新ランフラットタイヤの実力を試す

ブリヂストンが2011年6月17日に発表したランフラットタイヤの新商品「ポテンザ S001 RFT」を、栃木県にある同社のテストコースで試乗。その実力を垣間見ることができた。

■パンクしたタイヤで走ってみると……

ランフラットタイヤとは、パンクして中の空気が抜けても、しばらくそのまま走行できる(80km/h以下で80km走行可能)タイヤのこと。「BMW」や「MINI」ではおなじみのタイヤだが、パンクしたらどう走るのか? 実際に体験してみることにした。

目の前にあるのは「ポテンザ S001 RFT」を装着した「ホンダCR-Z」。その左前輪の空気を抜いたうえで、タイヤのサイドウォールにドリルで穴をあけた。これでタイヤの内圧はゼロ。ふつうのタイヤならまともにグリップしないし、下手をするとタイヤがリムから外れたり、タイヤがバーストしたりする。それだけに、すこし緊張しながらクルマを発進させると……クルマの左前から変な音がする。ステアリングが少し左に取られる。しかし、ステアリングをしっかり握っていればクルマは真っすぐ走るし、コーナーでもちゃんと曲がってくれた。左前輪に荷重がかかる右コーナーではやや外に進路が膨らむが、スピードを出し過ぎなければ、不安を感じることはない。

「レクサスGS430」では、駆動輪左側、すなわち、左後ろをゼロ内圧にして走らせてみたが、タイヤの異常を知らせる警告灯がついていなければ気づかないかも?と思えるくらいに、ふつうに走ることができた。私自身、ランフラットタイヤのゼロ内圧走行は初めての経験だったが、これならパンクしても、タイヤショップやディーラーに難なくたどり着けるだろうな、と感心した。

パンクに気が付かないことを避けるため、タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)が装着される。標準で付いているクルマはそのまま使用可能。
ブリヂストンの最新ランフラットタイヤを試す
サイドウォールのレタリング内側にあるのが「クーリングフィン」。風を受けることで、サイドウォールの発熱を抑える。多少は走行抵抗になるものの、燃費に与える影響は「誤差の範囲」という。
ブリヂストンの最新ランフラットタイヤを試す
「S001 RFT」(左)と「RE050 RFT」(右)のカットモデル。「S001 RFT」のほうが薄く作られているのがわかる。
ブリヂストンの最新ランフラットタイヤを試す

■熱を制する新技術

パンクしても、その場でスペアタイヤに交換する必要がなく、タイヤショップに直行できるランフラットタイヤは、その安心感に加えて、使われずに廃棄されるスペアタイヤ(年間約5900万本といわれる)をなくすことができるということで、省資源・環境負荷の低減の点からも注目を集めている。他に先駆けて、BMWやMINIが積極的に採用しているのはご存じのとおりだ。ブリヂストンは、1987年に「ポルシェ959」用に量産を開始して以来、BMWやMINI、「フェラーリ612スカリエッティ」「日産GT-R」「スズキ・ワゴンR」など、すでに累計1860万本の納入実績を誇る。

しかし、市場全体から見ればまだまだ普及が進んでいるとはいえず、その理由のひとつに「ランフラットタイヤは乗り心地が硬い」という欠点があるのも事実だ。そこで、ブリヂストンは、従来の「ポテンザ RE050 RFT」よりも乗り心地を改良したポテンザ S001 RFTを開発。新車への標準装着に加えて、すでにランフラットタイヤが装着されるクルマのリプレイス用として、さらに、ランフラットタイヤが装着されていないクルマでも利用できるタイヤとして提供を始めることにした。ただ、ランフラットタイヤの装着を前提に足まわりをセッティングしたクルマはともかく、想定外のクルマにランフラットタイヤを履かせるには、ノーマルタイヤ並みの乗り心地が求められる。

これを解決するためにポテンザ S001 RFTに投入されたのが「新サイド補強ゴム」と「クーリングフィン」だ。ブリヂストンのランフラットタイヤは、ゼロ内圧でも走行できるよう、サイドウォールを補強しているため、ノーマルのタイヤに比べるとそのぶんたわみにくく、乗り心地が硬くなっていた。乗り心地を改善するにはたわみやすくすればいいが、ゼロ内圧ではひずんだ補強ゴムが発熱してタイヤが破損してしまう。そこで開発陣は、サイドウォールをたわみやすくしながら、発熱を防ぐ技術によって快適な乗り心地を確保しようと考えたのだ。

ひとつは、新サイド補強ゴム。同社の「ナノプロ・テック」技術によって、カーボンを分散させたゴムをサイドウォール内側に配置。カーボンどうしが擦れて発生していた熱が、新しいゴムでは減るというのだ。もうひとつが、タイヤサイドに空冷効果をもたらす「クーリングフィン」の設置。このふたつの技術により、パンク時の熱を制するというわけだ。

ノーマルタイヤのたわみにくさを100とした場合、従来のRE050 RFTが126だったのに対し、新開発のS001 RFTは106と、ノーマルに近い硬さになっている(245/40RF18で比較した場合)。また、サイド補強ゴムが薄くできるので、従来はノーマルタイヤに対して1.3kg重かったランフラット仕様が、S001 RFTではプラス1kg、つまり300gの軽量化が図られたのだ。

■これなら積極的に装着したい!

その効果を確かめるために、「RE050 RFT」「S001 RFT」、そしてノーマルの「S001」が装着された「BMW525i」を比較試乗した。

まずは従来型のRE050 RFTを試す。さほど荒れの目立たない舗装でもタイヤの硬さを伝えるRE050 RFTは、段差を越える場面ではボディの上下動が大きく、突き上げられる感じがある。そして、ひび割れた路面や小石が埋まった舗装では振動が目立った。ところが、S001 RFTでは、別の道路を走っているような印象で、舗装の荒れが気にならなくなり、ひび割れや小石の埋まった路面でも明らかに伝わる振動が低減している。差が顕著なのが段差越えで、「ドン」というショックが「トン」に変わったといえば、印象が伝わるだろうか? 最後に乗ったノーマルのS001は走り出しが軽快で、快適さはS001 RFTに優るが、それは直接比べたからこそわかること。悪路での乗り心地もそれほど差はなく、S001 RFTの完成度は思いのほか高かった。

また、テストコースには、S001 RFTを装着した「ゴルフGTI」が用意され、試乗することができた。ご存じのとおり、ゴルフGTIにはランフラットタイヤが標準装着されないが、S001 RFTとのマッチングは悪くなく、S001 RFTだから硬いとか、乗り心地が悪いという印象はない。

というわけで、ランフラットタイヤが標準装着されるクルマのオーナーで、そろそろタイヤを交換したいと考えている人には躊躇(ちゅうちょ)なくお勧めできるし、スポーティなタイヤを求める人には新しい選択肢として提案できるポテンザ S001 RFTである。ラインナップが195/55RF16(3万6540円)、205/55RF16(3万7170円)、225/45RF17(5万2920円)、245/40RF18(7万3290円)と限られ、市販価格もノーマルの約3割アップ程度となるのが悩みのタネで、また、タイヤ空気圧モニターの装着が必須(車両に標準装着されていない場合)だったり、標準のアルミホイールでは装着できない場合があるなど、まだまだ制約は多いのだが、ランフラットタイヤのメリットを考えると、チャンスがあれば自分でも積極的に装着してみたいと思った。自動車メーカーにもランフラットタイヤの採用拡大をぜひ前向きに検討してほしい。

(文=生方聡/写真=ブリヂストン)

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