第122回:ラリーを戦う、東大の授業!? これが「ラリー・モンテカルロ・ヒストリック2011参戦プロジェクト」だ!

2011.05.27 エッセイ

第122回:ラリーを戦う、東大の授業!? これが「ラリー・モンテカルロ・ヒストリック2011参戦プロジェクト」だ!

2011年5月22日、東京・文京区の東京大学で「ラリー・モンテカルロ・ヒストリック2011参戦プロジェクト 成果報告会」が開かれた。
東大とラリーの関係は? そこでリポーターが見聞したものは……?

安田講堂をバックに従えた東大/関東工大校チームの1973年式「トヨタ・スプリンタートレノ」(右)。左はゲストとして招かれた、やはり今年のヒストリック・モンテに日本から参戦した池内敏正/森川オサム組の1972年式「ダットサン240Z」。
第122回:「人間力」を鍛える授業 〜ラリー・モンテカルロ・ヒストリック2011参戦プロジェクト〜
「スプリンタートレノ」は、双子車である「カローラレビン」とともに1972年にデビュー。2代目カローラ/スプリンターのクーペボディに、「セリカ/カリーナ1600GT」用の1.6リッター・ツインカムユニットを移植したホットモデルで、愛好家の間では「TE27」の型式名で呼ばれる。トレノとレビンでは、フロントマスクほか細部が異なるのみで、中身は同一。オーバーフェンダーは標準装備である。
第122回:「人間力」を鍛える授業 〜ラリー・モンテカルロ・ヒストリック2011参戦プロジェクト〜
走行中に子鹿に当たり、凹んでしまったノーズ。幸いラジエターにダメージはなく、狂ってしまったライトの光軸を直すだけで無事に復活した。これが今回の最大のアクシデントだったという。
第122回:「人間力」を鍛える授業 〜ラリー・モンテカルロ・ヒストリック2011参戦プロジェクト〜

教授はベテラン・ラリースト

国内トップレベルの大学として、知らぬ者のない存在である東京大学。その象徴である安田講堂をバックに並んだ、2台の往年のラリーカー。とても絵になる光景ではあるが、これらのクルマはいったい……? 自動車部の部車? そうではない。じつはこのうちの1台は、正規の単位が取得できる東大の「授業」に使われた、言うなれば“教材”なのである。

東京大学工学部および大学院工学系研究科では、ものづくり大国ニッポンを背負って立つ学生を育成するための共通科目として、学部生向けの「創造的ものづくりプロジェクト」と、大学院学生向けの「創造性工学プロジェクト」を開講している。プロジェクトのテーマはロボットもあればインターネットもあり、「学生フォーミュラ」や「EVフォーミュラ」といったクルマ関連のテーマも存在している。

そうしたテーマのひとつして、昨年春に立ち上げられたのが、「ラリー・モンテカルロ・ヒストリック参戦プロジェクト」。なぜラリーかといえば、これを企画し、指導した工学系研究科特任教授の草加浩平氏によるところが大きい。というか、草加教授の存在なくしてこのプロジェクトはあり得なかった。

東大工学部のOBである草加教授は、在学中に自動車部でラリー参戦を開始。以後今日までの約40年間にコ・ドライバーとして参戦した国内ラリーは300戦以上、WRCを含む国際ラリーは30戦以上を数え、1990年には全日本ラリーでナビゲーターチャンピオンを獲得したこともあるという、生粋のラリーストなのだ。

とはいえ、もちろん自分の趣味だけでラリーをテーマに選んだわけではない。その理由について教授はこう語っている。

「部品の入手がままならない古いクルマをレストアして競技に参加することは、創意工夫が必要とされ、ものづくり教育としての価値が高い。また長丁場の戦いとなるため、予期せぬ状況変化への対応能力が問われ、チームワークの重要性を身をもって知ることができる。さらに海外ラリーということで、ものづくり教育と国際化教育を融合させるという大学の方針にも合致している」

さすがに理路整然として説得力のある言葉だが、平たく言えば「今どきの弱い学生を鍛えるのに、筋書きのないドラマが展開する国際ラリーはかっこうの場」ということらしい。


OHVの「2T」型エンジンをベースに、ヤマハ発動機がDOHCにモディファイした「2T-G」型エンジン。ソレックスのツインチョークキャブレターを2基備え、1.6リッターから最高出力115ps/6400rpm、最大トルク14.5kgm/5200rpm(いずれもグロス値)を発生した。この個体は、エキゾーストマニホールドを通称「タコ足」に替えたほかはほぼノーマルという。
第122回:「人間力」を鍛える授業 〜ラリー・モンテカルロ・ヒストリック2011参戦プロジェクト〜

このプロジェクトにはもうひとつ、他校とのコラボレーションという新たな試みもあった。車両のレストア、競技車両への改造そして整備を、自動車整備士養成校である関東工業自動車大学校(関東工大校)の学生が担当したのだ。対して東大生の担当は、計画の立案、スポンサー獲得、予算管理などラリー出場にまつわるすべてのマネジメントである。

「普段の生活では、あまり接点がない総合大学と専門学校の学生。だが双方が社会に出て、たとえば自動車メーカーに勤めたとしたら、仕事で出会う可能性はある。そういうときに、教育背景の垣根を越えたプロジェクトで協力した経験は役立つはず」というのが、コラボレーションの意図するところである。

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