第5戦スペインGP「2011年ルールの試金石」【F1 2011 続報】

2011.05.23 自動車ニュース

【F1 2011 続報】第5戦スペインGP「2011年ルールの試金石」

2011年5月22日、スペインはバルセロナのサーキット・デ・カタルーニャで行われたF1世界選手権第5戦スペインGP。これまでほとんど追い抜きが起きないとされていたサーキットで、2011年の新機軸「DRS」「KERS」「ピレリタイヤ」はどれほど効力を発揮したのか?

■“抜けないコース”での“抜けないマシン”によるレース

空力性能を徹底的に追究した結果、前車を追い抜くというレースの基本中の基本がきわめて難しくなったという点において、バルセロナは現代のF1マシンと同じ“悩み”を抱えていた。
長いストレート、そして長く高速なコーナー(ターン3)を持つバルセロナは、エアロダイナミクスが何よりも重要視されるサーキットだが、近年オーバーテイクがほとんど不可能とされ、年によってはレース中2回しか追い抜きがないということもあった。
過去14回のGPで、ポールシッター以外のドライバーが勝ったのはたった1回だけ。スタート前からリザルトが大方予想できてしまうようなものだった。

“抜けないコース”での“抜けないマシン”によるレースは、オーバーテイクを頻発させるために今年から採用された可変リアウイング「DRS」(Drag Reduction System)、電気ブースト「KERS」(Kinetic Energy-Recovery System)、そして扱いづらい「ピレリタイヤ」によりどのように変わるのか? 今年のスペインGPは、いわば2011年ルールの効果を確認する試金石となった。

結果は、ポールシッターのマーク・ウェバーは優勝はおろか表彰台にもたどり着けず、また前戦トルコGPと比べればおとなしいものだったが、コース各所でオーバーテイクが繰り広げられた。
そしてレース終盤にはセバスチャン・ベッテル対ルイス・ハミルトンによる僅差の優勝争いも見られ、最後まで勝負の行方のわからない白熱した攻防が展開された。大本命だった、高度に洗練されたエアロマシンとして知られるレッドブルですら楽々と勝てなかったのだ。

一部からは、オーバーテイクが簡単すぎるとの批判も聞こえてくる2011年の新機軸だが、誰が勝つのかみえみえのレースと比べれば、格段におもしろく、観るに値するといえるだろう。

■ウェバー、ベッテルの連続ポールポジションを止める

金曜、土曜と、レッドブルは得意とするバルセロナでトップタイムを記録し続けた。フリー走行2回目でハミルトンが2位に入った以外、3セッションで1-2。予選ではライバルチームに1秒近くも差をつけフロントローを独占した。
今シーズンこれまで全戦でポールポジションを獲得してきたベッテルが予選2位。今回はチームメイトのウェバーが最前列からスタートすることとなった。

開幕からベッテルの陰にすっかり隠れ、4戦を終えた時点で3勝しているベッテルに38点も引き離されてしまっていたウェバー。昨年、一度もリードを譲らずポール・トゥ・ウィンを飾った験のいいここスペインで立て直し、一挙に勢いを盛り返したいところだ。
いっぽうのベッテルは、ウェバーが自らのタイムを上回ったとみるや、再度アタックを仕掛けたいといった表情でしばしコックピットにとどまっていたが、レースに向けタイヤをキープすることが最善の策だと自らに言い聞かせ、2位に甘んじた。ベッテルのマシンは、レッドブルの弱点とされるKERSに問題が起きており、思うような走りができていなかった。

打倒レッドブルの急先鋒は、マクラーレンのハミルトン。今季連続して5番グリッドを獲得していたフェラーリのフェルナンド・アロンソは最高位の4位スタート、今回の5番グリッドにはマクラーレンのジェンソン・バトンがついた。

■アロンソ、スタートで首位に立つ

このレースの最初のクライマックスは、スタート直後に訪れた。シグナルが変わると、互いにけん制し合うレッドブルの2台のインをついて、なんとアロンソがトップに立ったのだ。地元の英雄による会心のスタートに観客が沸かないはずはなかった。
オープニングラップは、アロンソ先頭、2位ベッテル、3位ウェバー、4位ハミルトン、そして5位にビタリー・ペトロフ。5番グリッドのバトンは出だしでもたつき一気に10位まで順位を落とした。

トップ4(アロンソ、ベッテル、ウェバー、ハミルトン)は2秒強内にひしめく混戦状態。ここから抜け出そうとライバルより1周早めの10周目、2位ベッテルがタイヤ交換のためピットに飛び込んだのだが、復帰したポジションがトラフィックの真ん中で首位を奪うまではいかなかった。

1回目のタイヤ交換を終え、アロンソが1位、ベッテル2位、ハミルトン3位、ウェバー4位。そしてバトンが、タイヤ無交換のまま走行し5位にあがった。バトンはスタートの出遅れをリカバーするため作戦を変え、お得意のタイヤをいたわった走行で上位より1回少ない3ストップとしたのだ。

2回目のピットストップ、先陣を切ったのはまたしてもベッテルだった。19周目にニュータイヤを装着すると、今度はクリアな場所に戻ることができ、フレッシュなタイヤの威力を遺憾なく発揮したベッテルが、翌周ピットインしたアロンソ攻略に成功し首位の座を奪取した。
いっぽうでハミルトンはしばらくコースに残り、20周目にはファステストラップを更新。22周目にハミルトンがタイヤを替えると、アロンソの前で復帰することに成功した。

■ベッテル対ハミルトン、終盤のつばぜり合い

2度目のタイヤ交換を終えた24周目、1位ベッテル、2位ハミルトンと、3位アロンソの間に溝ができはじめ、優勝争いは徐々に2人に絞られた。

つかず離れずのトップ2。4回目のタイヤ交換を終えた51周目、1位ベッテルは2位ハミルトンに対し2.4秒のマージンを持っていたが、ハミルトンはファステストラップを更新しながら攻勢を強めた。53周目にはDRSが作動できる1秒差に詰め寄り、DRSとKERSをフルに使いながらレッドブルの背後に迫ったが、抜くには至らない。

防戦いっぽうのベッテルは、レッドブルのアキレスけんであるKERSに問題が起きており、使える機会が限られていた。それでもコーナーの速さを武器にマクラーレンを抑えることに成功。中国GPのような最終局面での逆転を阻止し、66周のレースをトップでフィニッシュした。

そして予選まで好調だったウェバー、レース序盤までトップを走ったアロンソは、3ストッパーのバトンに作戦負けを喫し、表彰台の一角を手放さざるを得なかった。

■KERSトラブルの克服

5戦して4勝、ドライバーズ/コンストラクターズ両チャンピオンシップをリードするベッテルとレッドブルにとっては、完璧に近いシーズンすべり出しとなった。しかし、“レッドブル・サーキット”と目されていたバルセロナでは思わぬ苦戦を強いられ、そしてKERSトラブルはたびたび発生してはドライバーたちの足を引っ張っている。
デザイナー、エイドリアン・ニューウェイの強い要望で、レッドブルのKERSはタイトなスペースに搭載されているため、十分な冷却ができていないといわれている。

レッドブルが予選でみせたようなマシンの絶対的な速さが、必ずしも圧倒的な勝利につながらないのが今シーズンだ。ベッテルが大量のポイントリードを拡大しているいっぽうで、レッドブルは喫緊のKERSトラブル克服に取り組まなければならない。

次戦は5月29日、モナコGPだ。

(文=bg)


レッドブルのセバスチャン・ベッテル(写真)は、レース終盤のルイス・ハミルトンからの激しい突き上げにも屈せず、今シーズン4勝目を飾った。(Photo=Red Bull Racing)
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ポールシッターのマーク・ウェバー、予選2番手のベッテルを追い抜き、トップに立ったフェルナンド・アロンソ(先頭)。(Photo=Ferrari)
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中国GPの再現か、と思わせるベッテル(前)、ハミルトン(後ろ)による熾烈(しれつ)な優勝争い。ベッテルはKERSの不調に見舞われながらも首位の座を守り切った。(Photo=Red Bull Racing)
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レース前、「レッドブルにはかなわない」と公言していたハミルトン。予選では3位、決勝では終盤にベッテルと僅差の優勝争いを繰り広げ、最後までレッドブルを苦しめた。(Photo=McLaren)
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スタートダッシュで4番グリッドから一気にトップに立ったのは、この週末にフェラーリとの契約を2016年まで延長したアロンソ。だがその後ずるずると後退、レース終盤のハードタイヤでの走行では見た目にも明らかに遅いペースで5位フィニッシュとなった。レース後、「トップになったからといって優勝できるとは思っていなかったよ」とコメント。現状のフェラーリのパフォーマンスでは、元王者の力量をもってしても勝利は遠いということか。(Photo=Ferrari)
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終始ポジション争いを繰り広げたミハエル・シューマッハー(前)とニコ・ロズベルグ(後ろ)のメルセデス勢。復帰後、若き同郷のドライバーにやられっぱなしだったシューマッハーは、自身の黄金期に6勝したスペインで6位入賞、ロズベルグは7位だった。(写真=Mercedes)
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予選Q2で前車に引っかかり14位どまりだった小林可夢偉(写真)のザウバー。スタートでいきなりパンクにあい予定していなかったピットストップを強いられたが、その後の追い上げで10位完走、4戦連続入賞を果たした。チームメイトでルーキーのセルジオ・ペレスは初入賞9位。(Photo=Sauber)
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