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【スペック】全長×全幅×全高=4855×1910×1750mm/ホイールベース=2920mm/車重=1860kg/駆動方式=FF/1.4リッター直4DOHC16バルブターボ+スーパーチャージャー(150ps/5800rpm、24.5kgm/1500-4000rpm)/価格=438万円(テスト車=483万1500円)

フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

1人でドライブ、全然アリ 2011.04.26 試乗記 フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)
……454万8000円
総合評価……★★★★★

フォルクスワーゲンの大型ミニバン「シャラン」に試乗。1.4リッターの小型エンジンがもたらす走りや燃費、使い勝手を細かくチェックした。
「シャラン」の走りに感心しきりの森慶太。
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

いまのいいモノ

こういうクルマを買う、ないしは「買おうかなーどうしようかなー」と考えを巡らせる人々は、フツーはそれなりの用途がアタマにあるからそうする。たとえば、“7人乗りのゴルフ”こと「トゥーラン」でもまだ客室および荷室のスペースが足りない。または、3列目まで使って人をのせてさらに荷物もある程度かもっと積んで出かける用事がわりと日常的にある。そういう場合に“フルサイズのミニバン”である「シャラン」が選ばれるのでありましょう。日本仕様フォルクスワーゲンのなかからは。

なのだけど、ホントにいいクルマはそういうのを超えたレベルでイイ。ほしくなる。乗りたくなる。たとえば、都内の一般道をトロトロ流してるだけでも「911GT2はサイコーだなあ!」とか。オフロード一生いかなくても「ランドローバー、これだよな!」とか。今回のクルマもそのケース。

楽々7人乗りのシャランを1人でドライブ、全然アリ。むちゃむちゃ楽しい、というか充実した時間をすごすことができる。独り暮らしでいっしょに乗る家族も友達もいないけど、遠出する機会が頻繁にあるのでシャラン。ナイスなクルマ選びだと思いますよ。疲れ知らずでラクちんで速くて、あと燃費方面の性能が優秀ということもあるし。

また他方、クルマというのは幻想コミで買われる商品でも大いにある。シャランに近いクラスの国産モノでいうと、たとえば「日産エルグランド」や「トヨタ・アルファード」。キャビンがデカいからとか天井がすごく高いからとか、そういう単純なコトであれらのクルマが買われているわけではあまりない。この先、詳しく説明しなくてもおわかりでしょう? そういう幻想。最近の言葉だと萌え、みたいな? 高速道路の追越し車線で前走車の背後にビタッとハナ先をつけるとすぐに道を譲ってもらえる……というのはあるイミ実用性能。もちろん、やっちゃダメ。

 
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

シャランの場合、見た目その他表面的な印象の部分での幻想かきたてパワーが強いタイプの商品ではあまりないと思う。同じフォルクスワーゲン製品でも「T5」というのか「マルチバン」というのか、つまり旧「ヴァナゴン」の現在形ぐらいになると、見た目だけで大いに萌えさせるものがある(そして乗るともっとイイ)。シャランはそこまでいってない。いまのフォルクスワーゲン流のスタイリング手法でこのテのクルマをスタイルするとこうなります、ということではほかの多くの日本仕様フォルクスワーゲン車とまあ同じだけれど、「ゴルフ」みたいな誰が見てもパッとそれとわかるほどのアイコン存在ではない。もちろん「パサートCC」みたいでもない。

でも運転すると、座ってみると……というところがミソ。要は乗って、使ってみて萌える。正味の性能のスゴさに(パサートCCも、実は試してビックリ物件ではある)。クルマのデキに関していうと、最近のフォルクスワーゲンはいい波にノりまくっている。勢い、ありまくり。ずっとあとになって振り返ったら、黄金時代ということになるのではないか。

そういうなかでも、新型シャランの印象はひときわ強い。いまの実用新車界におけるいいモノがどんなモノか身をもって知りたいなら、これとあと「ゴルフ1.2TSI」の試乗は欠かせない。萌えなくても。ワーゲンがキラいでも。この2台だったら、冷えきった試乗車をそのへんチョイ乗りしかできなくても「なーんかイマイチだなあ」ってことにはならないと思う。ということで、オススメ。「俺だったらガラス屋根のオプションは要らないなあ」とか「受注生産で素の仕様をいっときたいなあ」とかはありますけども。 

 
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
2010年にフルチェンジした、これが二代目。フォードとジョイントで開発された先代=初代が出たのは1995年。それが日本仕様のカタログモデルだったのは1997年から1999年まで。最初のロットはアッという間にハケたけどその後がサッパリだった「ヴァナゴン」の後釜という位置づけだった。で、走りのよさが一部で話題にはなったけれどあまり売れなかった(だからすぐにラインナップから落ちた)。「オデッセイ」登場の4年後とか5年後の日本。ということで、昔のコトは忘れてください。

インポーターいわく、トゥーランは「7人乗りのゴルフ」。その伝でいくと、シャランは「7人乗りのパサート」か。でもというか、売る側としては主にエルグランドやアルファードやヴェルファイアを買いそうな層にアピールしたい。いやむしろ、エルグランドや“ヴェルファード”じゃイヤな人たちにといったほうが正確か。いわく、「フルサイズのミニバン」。「家族思いの優しいお父さんに」。1.4ツインチャージャー+DSG(6段+ウェットクラッチ)のパワートレインは燃費がよくて、さらにアイドリングストップ機構つき(=ブルーモーション)だから「家族だけでなく地球にも優しい」。

センターコンソールには、左右の電動スライドドアの開閉ボタンやリアハッチを開けるボタン(ここから閉めることは不可)、電子デバイスをOFFにするボタンなどが備わる。
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

(グレード概要)
消費税込み車両本体価格379万円のTSIコンフォートラインと同じく438万円のTSIハイライン、の基本2グレード。アイドリングストップ機構つきのパワートレインに関してはどっちも同じ。受動および能動の安全装備にも違いはなし。でも、一部アルカンタラ(標準)か全部レザーのレザーシート(21.0万円のオプション=レザーシートパッケージ)じゃないとイヤな場合は要ハイライン。あと、シートヒーターがついてないとダメな場合も要ハイライン(標準)。コンフォートラインにはオプションでもナシ。さらに、テールゲートがスイッチ一発電気モーターで開閉してくれないとダメな場合も要ハイライン(左右のスライドドアはコンフォートラインも標準で電動)。ポッケに入れたままのキーフォブを探ることなしにドアをアンロックしたりエンジンを始動したりしたい場合も要ハイライン。

タイヤとアルミホイールのサイズは、コンフォートラインが215/60R15+6.5J×16。ハイラインは225/50R17+7J×17。タイヤはいずれもモビリティタイヤ、ヨリ限定的にはコンチシールつきのコンチネンタル(試乗したハイラインはプレミアムコンタクト2を履いていた)。たとえばクギがタイヤに刺さって抜けても、直径5mmまでならその穴を塞いでくれる物体が内側にべったり付着している。ということでシャラン、スペアタイヤはもちろんのことパンク修理キットも搭載されていない。ちなみに、コンチシールつきの冬タイヤというのはまだないそうです(ちゃんと裏とってはいないけど)。とすると、スタッドレス・スノータイヤを履くにあたってはパンク修理キットを別途購入して積んでおいたほうがいいのか。

試乗車を借りにいって広報部の人と雑談した際に聞いたところでは、ハイラインは売れまくっていてタマ不足で待ちが長い。また本体379万円ポッキリのホントの素の仕様は受注生産で、ご成約から納車まで3カ月か4カ月ぐらい待つ必要がある。即納のタマがあるのは、コンフォートラインにバイキセノンヘッドライトパッケージ(16.8万円)をつけたヤツ。あと、電動パノラマスライディングルーフもつけたい場合はバイキセノンとセットで+33.6万円。純正モノのGPSナビその他インフォテインメント関係のオプション=RNS510パッケージがほしい場合はやはりバイキセノンとセットで+49.35万円。パノラマも純正ナビもつけたい場合はハイラインをどうぞ、ということか。

クルマの値段をベタに安くすることよりもバリューを高めることが大事−−というのがいまのVGJ社長=ゲラシモス“ジェリー”ドリザス社長の方針で、新型シャランの売りかたもそれに沿ったものになっている。  

試乗車には、ディーラーオプションのカーナビ「AVナビ710SDCW」(26万6200円)と「ETC010」(1万9740円)が装着されていた。
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

【車内&荷室 その1】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★★
ミニバンということで、Aピラー基部には三角窓(もちろんガラスはハメ殺し)。その隣というか手前のダッシュ上には、ドア窓の曇り取り用の吹き出し口。ダッシュてっぺんの中央部には蓋つきのモノ入れ。

ドアミラー関係。現行フォルクスワーゲンはどれもそうなっているらしいことに、右側(正確には運転席側)ミラーの位置をリモコンのレバーでイジると左側も連動。ポジション設定が大柄なドライバーが運転したときのままになっている状態で小柄なドライバーが乗り込んだ際(またはその逆)のミラー調整の手間を減らす配慮。

計器盤。2つある丸形メーターは、向かって左がエンジン回転計。反対側が速度計。真ん中には多機能ディスプレイ。区間距離や平均速度や平均燃費や運転時間や瞬間燃費を好きに選んで表示させることができる。区間距離や平均速度や平均燃費や運転時間の表示は2系統あって(それらとはまた別にフツーのトリップカウンターもある)、1のほうはリセット=スタート後たしか2時間のお休みがあると勝手にデータがリセットされる。2のほうは、再び手動でリセットしないかぎりずっとデータが更新されつづける。

ステアリングホイールのスポーク部に備わるボタンとレバーで燃費などの車両情報を表示できる。項目の選択は、「↑」と「↓」ボタンで行う。この方式は、操作したい項目を通り過ぎてしまった場合でも、すぐに戻せるので使いやすい。
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

表示させるデータの選択はステアリングホイールのスポーク(フツーにグリップして右手の指が届くところ)にあるスイッチで。平均燃費を表示させている状態で上方向に押して瞬間燃費、その状態で下方向へ押してまた平均燃費、みたいな使いかたができる(順番逆だったかもですが)。つまり、表示の順番が隣どうしのデータをどっち方向でもいったりきたりで読むことができる。スイッチを何回も押してほかの各種データをグルッと一巡表示させて戻ってこなくてもいい。便利(たとえばハイウェイ走行中に瞬間燃費と平均燃費をいったりきたり見比べるだけでもずいぶんいろんなことがわかってくるし、ひいては運転のエコ度アップにもつながりますよ)。

そのステアリングホイール。基本骨格は同じものだと思われるけれど、リムの断面形状がゴルフ用とは違う。ゴルフ(少なくとも1.2TSI)では、カタチなりにグリップすると手首がクリッと(手首の手の甲側の筋肉が縮む方向に)返ってしまうのでそうならないよう気をつけている必要があった。シャランではその問題ナシ。リム外周部のカタチなりに手のひらを沿わせてグリップすると正しいグリップになる。パドルシフターはハイラインのみの装備。ポジション調整は、チルト(上下)およびテレスコピック(遠近)の両方アリ。

 
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

変速レバーの後ろ、カップホルダーの穴の左側にはバイ・ワイヤのパーキングブレーキのレバーというかスイッチというか。ACC=アダプティブクルーズコントロールつきだとエレクトロニック駐車ブレーキは必要だけれど、いまのところ日本仕様シャランのクルーズコントロールはアダプティブではない。エンジン始動すると勝手にONになってたりしてウザい。

そのさらに後ろ側にあるスイッチはフットブレーキのオートホールドのオンオフ用。オンにしておくと、ブレーキペダルを踏んで停止したあとブレーキペダルから足を離しても止まったままでいてくれる。ヒルホルダー機能すなわち坂道発進アシスト機能つきとカタログにはあるけれど、坂道じゃないところでも停止すると必ずホールドされちゃうので(当たり前)それがウザいときもある。ならばとオフにすると、たとえば爪先下がりの坂道でいったん止まってバックするときがちょっとコワい。レバーをRに入れてブレーキペダルから足を離した瞬間、けっこう簡単にスルッと動いてしまう。前方=坂道の下のほうへ。これは、燃費優先でウエットクラッチの締結力を(平地状態での?)必要ギリギリ最低限レベルにとどめていることによるものと思われる。なおシャラン、Dレンジでブレーキペダルを踏んで止まっているところからその踏んでいる足を離すとクルマは前方へスルッと動きだす。クリープあり。
あともういっこだけ。モノ入れの蓋兼用のアームレストは、ギコギコやると角度を調整できる。

 
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

【車内&荷室 その2】乗ってみると?

(前席)……★★★★★
着座環境というかシートのデキは、簡単にいうとイイ。マトモ。ハイラインの標準状態(とコンフォートライン)では、背もたれの角度とランバーサポートの調整のみが電動(ハイラインにレザーシートパッケージをつけると8ウェイ電動調整になる)。前後スライドと全体の高さの調整は手動。あとヘッドレストも(ここはハイラインにレザーシートパッケージをつけてもそう)。

シャランの運転席のポジション調整関係の特筆点としては、調整範囲がすごく広い。特に高さ方向。でまた、どエラく高いところへ着座位置(というかシート全体)を動かしても、その状態でメーターがちゃんと見える。ということは、ステアリングホイールのチルト調整の範囲が相応にエラく広い。あと、ダッシュを見下ろす感じもヘンじゃない(し、Aピラー基部の三角窓ごしの視界をガッツリ活用できるようにもなる)。日本のメーカーで少なくともトヨタや日産やホンダあたりは参考車両としてシャランを買ってるはずなので(そうでないとマズい)、ゼヒともこのへんの作り込みを学んでいただきたい。調整機構がついてますとカタログに書けるだけではダメだということを。またこのへん、ディーラーのセールス担当的にはゼヒともお客さんに強くアピールすべき。

 
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

(2列目シート)……★★★★★
ここもまた、着座環境というかシートのデキはマトモ。いかな全幅1.9m超でも独立3席平等横並びだといっこいっこがキングサイズとはいかないけれど、そのかわりというか座る人に対して「ちゃんとここにお尻を置いてね」というメッセージがきわめてきっちりハッキリしたものに座面の形状がなっている。シート全体として、正しい姿勢で座らせたせたうえでその姿勢が崩れにくい(安全の基本)。シートベルトは、当然のように3人ぶんすべて3点式。装着した際の乗員の体へのかかりかたも良好。中央席用はルーフから引っ張って締めるタイプで、装着手順がアンカー部分に図示されている。左右2脚用には、前席×2と同じくフォースリミッター付きのテンショナーがついている。

調整機構は3脚独立の多少の前後スライド、および同じく3段階の「ちょっとだけヨ」のリクライン(背もたれと座面が連動する)。隣の人に気兼ねせず動かせるのは、ぜいたくというか乗員の基本的人権としてカバーされてるべきところというか。特筆点として、いちばん後ろまでスライドさせていっぱいまで寝かせた状態でもシートベルトが肩から浮かない(やはり安全の基本)。それと、ヘッドレスト(レスト=ご休憩ではなくリストレイント=拘束のためのもので、むち打ち症防止の備え)の高さ調整の範囲のデカさ。ほとんどブキミなくらい長く伸びて高くまで動かせて、大柄な乗員の後頭部もきっちりカバーできる。

左右2席は、3列目へアクセスするときは背もたれの肩のところにあるレバーを引くとガサッと退いてくれる。ここで注目すべきは戻したとき。前後スライド調整がどうであったとしても、退かす前の位置へちゃんと戻せる。いわゆるメモリー機構つき。あと、左右席の前後スライド調整は座面下前方のメインのレバーのほかにドア側の座面脇のちっちゃいレバーを使ってもできる。あと、左右席の足元には床下収納あり。スライドドアの下側のレールより高いところでフロアをツライチ=掃き出しタイプにしてシートのスライドレールを埋め込んで、というふうにはシャランはしていない。

画像をクリックすると、電動パノラマスライディングルーフが開閉する様子が見られます。
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

天井を見上げると、そこには電動パノラマスライディングガラスルーフ(オプション)。パッと見誰でも思うだろうことに、ガラス部分の長方形がヤケに前後に細長い。なので、2列目左右席に座って真上を眺めても視界の大半はガラスならぬ天井内張り。あまりうれしくない。なぜこうかというと、左右のドアがスライド式だから。天井内張りとルーフの間を通っているスライドドアの上側レールが、閉まる手前のところでググッとカーブして車両中央寄りに入り込んでいる。それとカチ合わない範囲でガラス領域を長方形に確保するとこうなる。

なお、電動パノラマスライディングルーフは運転席から左手を天井へ伸ばしたところにある円筒形のジョイスティックでシェードの開閉(筒の先端に開と閉のスイッチあり)とガラス前半部のチルト(全体を車両前方方向へ傾ける)およびスライド(筒を回す角度によって開ける量を何段階か選べる)の操作ができる。逆にいうと、2列目に座っている人はイジれない。その一方、エアコンに関しては2列目にいながらにしてイジれるよう操作パネルが設けられている。

 
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

(3列目シート)……★★★★
やっぱりここもマトモ。ただし再びやっぱり、背もたれは2列目のより小さい。頭上の空間の余裕もやや少ない。座ってみて頭髪または頭頂部が天井に触れるのが気になる場合は、背もたれを起こしてやるといい(寝かせ気味か起こし気味かの2段階で調整可)。頭の位置がきもち前寄りになって、そこは天井が少しだけ高いから。

画像をクリックすると、シートアレンジが見られます。
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

(荷室)……★★★
スペアタイヤもパンク修理キットも積んでなくてさらにFF、つまりリア駆動系もない(あるとこのへんの床下にマフラーのタイコがきたりする)ので、7人乗車可の状態ではこのようにボコッと深い穴が。荷室を拡大すべく3列め席を畳むと、背もたれがこの穴に蓋をするようなカタチになる(つまり、畳んだ状態でも穴のなかへ荷物を入れておける)。

3列目席のフォールディング機構をアンロックすると、まず座面がパタンと前方へひっくり返る。そこへ背もたれが倒れ込む。で、ひっくり帰った座面(の裏側)の上に背もたれ背後についている(普段は折り返された状態でマグネットでひっついている)カバーをパタン。特筆点として、3列目席は2列目席がどこにあろうと関係なく畳める。3列目席を畳もうとしたら2列目席が後ろすぎてジャマになって前へ戻って前方へスライドさせて……という手間がかかることがない設計。2列目席は、3列目席を畳む際ジャマにならないところまでしか後方へスライドさせられないようになっている。

「TSIハイライン」に標準装備のパワーテールゲートは、ハッチに備わるボタンで閉められる。なお開く操作は、コクピットのボタンからもできる。
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

荷室フロアをさらに拡大したい場合は、2列め席の背もたれヒンジ部のレバーを引っ張ってバタン、を1脚ずつ。背もたれが倒れるのといっしょに座面が沈む。トノーカバーのケースの装着場所は、3列目席背もたれのすぐ後ろか2列目席背もたれの後ろ。ケースの右端がバネで伸縮する。まず左端を壁の凹みにハメこんで、次は右端を縮めながら壁の凹みにガチャリ(左右逆だったかもですが)。

マックス拡大した荷室フロアは、写真でおわかりのとおりパサート・ヴァリアントが涙目になるくらい広い。空間もデカい。それでも足りない場合は、さらに助手席の背もたれをパタンと倒すことも(ハイラインにオプションでレザーシートをつけてないのであれば)できる。ただし、本寸法のステーションワゴンに欠かせない安全ネット、荷室と客室とをガッチリ隔てるアレの用意は、シャランにはない。

残念……と一瞬思ったけれど、考えてみたらちょっとムリ。難しい。なぜなら、安全ネットを使えるようにするには背もたれの背後にトノーカバー(と安全ネット)のケースをガチャッと固定しておけないといけないから。でもってそれは、独立スライドや独立リクラインの機構とかなり背反する。

 
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
排気量1.4リッターのTSIツインチャージャー150ps+6段DSGで車重は1.8トン超、というのが実にバランスがイイ。過給エンジンは常に負荷高めで使ったほうが……とは主にディーゼルに関していわれることだけど、それがガソリンにも当てはまるケース。もちろん、これだけのクルマを動かすのに同じような減速比設定ではマズいのでゴルフと比べるとエンジン回転数は常に高め。

たとえば、6速の100km/hは2400rpm(ゴルフだと2000rpmぐらい)。でそれもまた、ちょうどよくかつ気持ちいいドライバビリティの一因になっている。うっかり焦って踏んで急発進とか、巡航やコースティングの状態から加速要求を出したら一瞬困ったあとギアを落としてギューンと加速とか、そういうことがホントにない。またはほとんどない。前進用のギアが6段しかないぶんシフトが忙しくない、というのもイイ。乗っていて、気に障るかフと気になる瞬間がほぼゼロ。そういえば今回、タコメーターの針の動きを眺める頻度がすごく低かった(瞬間燃費計の表示をチェックするのに忙しかったということもあるけど)。

なお今回の燃費、この試乗記の最後のページに出ている数字は、シャランを買った家族思いのオトーサン(東京都内在住)が一人で御殿場や河口湖や西湖のほうへドライブして「よく走るなあ」とかいいながら楽しんだ結果のものだと思ってください。もっといい額面を出すことも簡単にできます。

 
フォルクスワーゲン・シャランTSIハイライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】

(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
まずイイのはステアリング。電動パワステの「違和感が……」というレベルはとっくの昔に超えていて、ナンというかインターフェイスとしてのステアリング系の手応えとはどうあるべきかというかなり本質的なところまでつっこんで考えて作ったモノになっていると思われるフシがある。フォルクスワーゲンの電動パワステ(スペックとしてはダブルピニオン式でサプライヤーはZFレンクシステム)のデキがすごくイイというのは俺らの世界では半ば当たり前のコトになっていて、でもこれ、そのなかでもさらに最新フェイズっぽい。

ハンドルの手応えは、動き出した瞬間から重い軽いでいうと重い。ないしは重め。重たくて重心高も高いクルマを操らせるにあたってドライバーを慎重にさせるための配慮、ということもたぶんある。最初から重めなぶん、速度の上昇に伴ってどんどん重たくなって「おいおいおい」ということにならない。ますます。あと、巡航領域の速度になると中立付近でガチッと止めてしまう制御、ギョーカイでいうところの“壁を作る”制御が入ってこないのもイイ。タイヤというのは真っすぐ転がっている状態がもっともストレスフリーな状態なわけで、そのときにハンドルの手応えがガチッと壁に当たっているのはリクツからしておかしい(し実際運転しづらい)。操舵(そうだ)して角度がついてから初めて本格的に手応え=反力が出てくるのだから。シャランの電動パワステは、そのへんをちゃんと作り込んである。

シャランはホイールベースが長い。プラットフォーム的にはおそらく初モノにして最長の長さ。それにくわえて、マックス状態の後軸荷重がものすごくデカくなる(ことを想定してリアサスの設定を決めておかないといけない)クルマということもある。あるのだけど、それゆえの不慣れっぽさが感じられない。 

具体的には、カーブでハンドルをいっぱいきって前輪に無理をさせながらでないと曲がれないみたいな感じがない。ごく自然体。おっとりとよく曲がる。やたらと低重心な感じは別にないけれど、4輪のフットプリント(トレッドとホイールベースの寸法で決まる四辺)の面積がいかにもデカいヨユーな気持ちよさがメイン。もちろん、真っすぐもすごく得意。ターンインではクルマが向き変える動きをジャマせず、その後いつの間にかガッチリ踏ん張りモードに……というふうにしつけることができるのが利点の一つであるタイプのリアサスを使っているとはいえ、最初からこのレベルに仕上げてきているのはうまい(ヴィークルダイナミクスの仕上げを担当したドライバーがよかったのかもしれない)。あと、空荷の状態で走っても、後車軸あたりを下からカルく蹴飛ばされるようなピッチングが出ていない。少なくとも、運転席にいるかぎりはわからなかった(走行中の後ろの席は体験してませんゴメンナサイ)。やはり、おっとりと快適。

いわゆるドライビングプレジャー方面の商品力を重視して作られたクルマではシャランはない。でも実際には、そこらのスポーティーカーよりよっぽど安心して気持ちよくトばせるクルマでもある。休日一人で箱根あたりへ出かけちゃって、山道を走っていて、気がついたらタイヤが鳴いていた……みたいなことになったとしても別に不思議ではない。

(写真=小河原認)

【テストデータ】

報告者:森慶太
テスト日:2011年4月19日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年
テスト車の走行距離:7470km
タイヤ:(前)225/50R17(後)同じ(いずれも、コンチネンタル・プレミアムコンタクト2 コンチシール)
オプション装備:電動パノラマスライディングルーフ(16万8000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(9):山岳路(0)
テスト距離:236.5km
使用燃料:18.9リッター
参考燃費:12.5km/リッター

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