SIM-Driveの試作EV「SIM-LEI」に同乗試乗

2011.04.04 自動車ニュース
「SIM-LEI」
SIM-Driveの試作EV「SIM-LEI」に同乗試乗

SIM-Driveの試作EV「SIM-LEI」に同乗試乗

既報のとおり、電気自動車(EV)ベンチャーのSIM-Driveは、先行開発車第1号として「SIM-LEI」を発表した。300km以上の航続距離をうたう次世代EVとは、果たしてどんなクルマだったのか。

■クルマじゃなくて新幹線?

横浜市内にある「SIM-Drive」の工場で目にした先行開発車事業第1号「SIM-LEI」は、いままで見たどのクルマとも違うカタチをしていた。Cd値0.19(!)を目標とすべく、魚にヒントを得たボディは、4700mmの全長、1550mmの全高に対して全幅が1600mmしかない。しかもサイドのシルエットはルマン24時間レース出場車のように、キャビンより前が短く後ろが長いのだ。

しかしながら、違和感は覚えなかった。旧来の美的感覚より最新の空力理論を優先したその造形が、N700系やE5系といった最新の新幹線に似ていると感じたからだ。「ジャパンオリジナルの流線型」という点では共通している。ちなみにSIM-Driveのデザインチームを率いるディレクターは元ピニンファリーナの奥山清行氏であり、その奥山氏は来年デビュー予定の新幹線E6系のデザイン監修も担当している。

■次世代を感じさせるインパネ

ドアの閉まり音は、このまま市販してもいいのでは? と思えるほど上質だった。室内は予想以上に広い。幅が狭いという印象を受けないのは、通常はドアに内蔵するサイドインパクトバーを外側に装着したおかげだろう。前後方向の余裕も問題ない。奇妙な形状のリアゲートからアクセスする荷室は縦長で、ゴルフバッグを楽に収納できる。でもいちばん印象的だったのは、やっぱりインパネだ。

SIM-DriveのEVは、角断面鋼管を溶接したプラットフォームの内側にバッテリーやインバータを収め、モーターはインホイールタイプを全輪に装着する。つまりプラットフォームの上には走行メカニズムがほとんどない。それを生かし、エアコンユニットなどをノーズ内に配置することで、低く薄く巨大なモニターを備えたインパネが実現できたのだ。
巨大なモニターは現在、バックモニターなどに活用しているが、それ以外の機能も考慮中とのこと。画面が大きいだけに、従来のモニターとはまったく違う世界を表現できそうだ。メーターも1枚の液晶にすべての情報を表示する方式で、左右のサテライトにエアコンや変速のスイッチを並べている。あらゆる部分で「次世代」を感じる眺めだ。

2004年に開発された8輪駆動の電気自動車「エリーカ」。
SIM-Driveの試作EV車「SIM-LEI」に同乗試乗

SIM-Driveの試作EV車「SIM-LEI」に同乗試乗
SIM-Driveの試作EV車「SIM-LEI」に同乗試乗

■EV航続距離、300kmが可能なワケ

距離にして1kmほどではあるが、公道で同乗走行の機会にも恵まれた。
発進の瞬間は、やや振動が出る。以前ドライブした同社開発の8輪駆動のEV「エリーカ」同様、ギアやドライブシャフトといった緩衝材になり得る部品を使わないインホイールモーターが理由だと思われる。スタッフによれば、今後改良を進めていくとのことなので、熟成に期待したい。
一方その後の加速にエリーカのような唐突感はなく、スムーズそのもの。モーター音やロードノイズもエリーカより抑えられていて、市販レベルにあった。

アクセルを床まで踏み込めば、0-100km/hの加速タイムは4.8秒という、「ポルシェ911カレラ」をしのぐ加速を披露してくれるはずだが、今回の試乗ルートではその実力を発揮することはできず。その代わり、回生ブレーキの絶妙な制御を知ることができた。

ステアリングの右側に生えたネコの肉球を思わせるシフトスイッチには、前進用として「D」「B1」「B2」の3モードがある。B1/B2は回生によってエンジンブレーキを強く効かせたいモードで、Dレンジでも減速は回生ブレーキが主体だ。なのに違和感なくスピードを落としていった。
ちなみにSIM-LEIが搭載するバッテリーは東芝製リチウムイオン電池「SCiB」で、充放電効率の高さが自慢。おかげで一度に大量の回生エネルギーを蓄電できる。「日産リーフ」とほぼ同じバッテリー容量24.9kWhでありながら、JC08モードで333kmの航続距離をマークできた理由のひとつはここにある。しかも同じ理由で、30分間の急速充電では80%ではなく、100%の充電ができるという。

■攻めの姿勢

乗り心地は、インホイールモーターに起因するバネ下重量の存在がやや気になったものの、チューニングによって解決可能なレベルに思えた。それよりも印象的だったのは、バッテリー内蔵形プラットフォームとインホイールモーターのコンビがもたらす、重心の低さと前後重量バランスの良さだ。交差点を曲がるようなシーンでも、自然な身のこなしを体感することができた。

SIM-Driveの代表取締役社長を務める清水浩氏は、特定のメーカーとの関係を持つことなく、30年間EVの研究開発を行ってきた。そのキャリアが、自動車としての基本性能を押さえつつ、既成概念にとらわれない大胆な内容に結実しているのだろう。こういう攻めのクルマ作りこそ、いまの日本に必要とされているのではないだろうか。

(文と写真=森口将之)

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