開幕戦オーストラリアGP「初戦の“予想通り”と“予想外”」【F1 2011 続報】

2011.03.28 自動車ニュース
2ストップでトップ3を勝ち取った3人。前年王者で初めてオーストラリアGPを制したセバスチャン・ベッテル(中央)、2位ルイス・ハミルトン(左)、2年目にして初表彰台を獲得したビタリー・ペトロフ(右)。(Photo=Red Bull Racing)
【F1 2011 続報】開幕戦オーストラリアGP「初戦の“予想通り”と“予想外”」

【F1 2011 続報】開幕戦オーストラリアGP「初戦の“予想通り”と“予想外”」

当初予定されていたバーレーンGPがキャンセルされたことにより、2週間遅れてオーストラリアで開幕レースを迎えた2011年のF1。フタを開けてみると、昨年終盤にみられたレッドブル&ベッテルの圧勝パターンがメルボルンでも再現され、そしてレースを面白くするであろう、と期待されていた新タイヤやレギュレーションは……。

スタートで大きくリードするベッテルのレッドブル。2位ハミルトン、3位マーク・ウェバーが続いた。
(Photo=Red Bull Racing)
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■2011年の新たな試み

大物ドライバーの移籍がなかった2011年、開幕前の話題は、テクニカルな話に集まった。
なかでも、1997年以来F1にレーシングタイヤを供給してきたブリヂストンが昨シーズン末をもってGPを去り、かわりにイタリアのピレリがソロサプライヤーとして20年ぶりに復活したことは、今年最大の変化といっていいだろう。

まったく新しいタイヤをいかに使いこなすか。各チームはマシンとのマッチングに頭を悩ませ、ドライバーは限られたウインターテストでその性格を把握することに精力を注いだ。開幕前、タイヤの消耗が早過ぎるという芳しくないドライバー評が大きく伝えられたが、ピレリは、“チームからのリクエスト”に沿って意図してそうつくられたものだ、とこの不評について不快感をあらわにした。

チームからのリクエストとは、レースをエキサイティングにするため、タイヤのライフを極端に短くし予想できない展開をつくりだすこと。たとえば昨年のカナダGPで、デリケートなソフトタイヤをどう使うかで勝敗が分かれたようなことが狙われているのだ。

タイヤに続く新機軸といえば、可変リアウイング、別名Drag Reduction System=DRSだ。ストレートでドラッグ(空気抵抗)を減らし、前車を抜きやすくするというもので、リアウイングのフラップが10-15mmから、ドライバーの操作で50mmまで開く機構である。近年のF1では、前車の乱気流で後ろのマシンの挙動が乱されオーバーテイクが困難になっているといわれており、より追い抜きをしやすくするために考え出されたのがこのDRSである。

そして、ブレーキングで得られるエネルギーをバッテリーに蓄え、オーバーテイク時に利用する“運動エネルギー回収システム”ことKERS(Kinetic Energy-Recovery System)も復活した。2009年に一部チームで導入されたこのシステムは、昨年チーム間の合意によりいったん姿を消していたが、環境イメージの求めもあってか再登場となり、今度はより多くのチームが搭載しはじめた。

これらがレースでどう働いたか。まずは短命といわれたタイヤだが、3ストップ、下手をすると4ストップになるかもという忙しい(極端な)展開にはならず、2、3ストップが大勢を占め、ザウバーのルーキー、セルジオ・ペレスは1ストップという離れ業をやってのけたりもした。

DRSやKERSも多用されたが、正直、初戦を見た限りではレースを盛り上げるシステムとしてはわかりやすさに欠けた。DRSはレース中、コースの限られた場所で、前車の1秒以内に入らないと作動できないのだが、そんな縛りを頭に入れて観戦するのには慣れも必要だろう。
そこに、1周約6.6秒の間、電動モーターが80ps分アシストしてくれるKERSが加わるとなると……盛りだくさんで観戦者を飽きさせない、ともとれれば、複雑すぎてついていけない、ともとれなくもない。

2011年のF1、新たな試みは吉と出るのか、凶と出るのか。今後の展開を見守りたい。

予選Q3、圧倒的な速さでポールポジションを奪ったカーナンバー1の「RB7」駆るベッテルは、レースでも独走し優勝。昨シーズンは序盤戦で勝利を取りこぼし苦しい出だしだったゆえに、幸先よいスタートを切った。ちなみに20年ぶりにGPカムバックを果たしたピレリタイヤにとっては、通算43回目の勝利となる。(Photo=Red Bull Racing)
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■予想通りのレッドブルとベッテル、予想外のマクラーレンとフェラーリ

今年のチャンピオン最有力候補は、前年の覇者であるレッドブルといっていい。新型「RB7」は2009年の「RB5」から続く究極のエアロマシンの進化版で、特にリアセクションは他に類をみないほどコンパクトに絞り込まれている。洗練度を増したこのマシンで、2010年に最年少チャンプとなったセバスチャン・ベッテルと、最終戦まで頂点を争ったマーク・ウェバーが戦うのだから、タイトル防衛の可能性は十分過ぎるほどある。

そして早くも開幕戦から、ベッテルによりその高いパフォーマンスが遺憾なく発揮された。土曜日の予選Q3、カーナンバー1のマシンが叩き出したタイムはライバルを0.8秒も突き放すスーパーラップ。ベッテルは自身16回目のポールポジションをやすやすと手に入れたのだ。

この結果が開幕前からの予想通りなら、マクラーレンの躍進は予想以上といっていい。L字型のサイドポッドが特徴的な意欲作「MP4-26」は、冬の間深刻なダウンフォース不足にあえぎ、ルイス・ハミルトン、ジェンソン・バトンからは弱気な発言すら聞かれるほどだったが、アルバートパークを走り出すと一転。ハミルトン2番グリッド、バトン4番グリッドと上位に食い込むことに成功した。

予想を下回ったのはフェラーリだった。2010年最終戦での作戦ミスで目前のタイトルを逃したスクーデリアは、リベンジに燃えて「150° Italia」を生み出し、テスト中は精力的に周回を重ねてきた。シーズン前に苦しむマクラーレンを尻目に、レッドブルを打倒する最右翼と目されていたのだが、フェルナンド・アロンソは予選5位、フェリッペ・マッサは同8位と沈んだ。
そしてレッドブルのウェバーも、絶好調のチームメイトの影に隠れ苦戦。フロントローを拒まれ3位からレースに臨むこととなった。

冬のテストでは絶望的に遅かったマクラーレン「MP4-26」は、持ち前の潤沢なリソースにより最後の1、2週間で問題を克服、開幕戦ではレッドブルに次ぐ速さを披露した。ハミルトン(写真)は予選2位、レースでも2位、ジェンソン・バトンは、前を行くフェリッペ・マッサをコースオフしながら抜いたとしてドライブスルーペナルティを受けるも、6位でフィニッシュした。(Photo=McLaren)
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■ベッテルに挑むハミルトン

レースでは、ポールシッターのベッテルがスタートを危なげなくこなし1コーナーへ。その背後では3位ウェバーが一瞬2位ハミルトンに並びかけたが順位はそのまま。予選6位と好位置につけたルノーのビタリー・ペトロフが4位にジャンプアップ、マッサも8位から5位に順位を上げたいっぽうで、アロンソはバトンに競り負け5位から9位に落ちた。

序盤、ベッテルは2位ハミルトンとの間に3秒前後のマージンを築いたのだが、最初のスティントも後半に差しかかるとレッドブルのタイヤがタレはじめ、その差は1.3秒まで縮まった。14周を終えトップのベッテルがピットへと飛び込み、2周ほどハミルトンが暫定首位を走ったが、マクラーレンもタイヤを変えコースに戻ると、1位ベッテル、2位ハミルトンの間には6.2秒ものギャップが生じていた。

その後ハミルトンは、マシンのアンダートレイ部分を破損したことでダウンフォースが著しく失われながらの走行を強いられた。この時点でベッテルを脅かすのは、昨年のオーストラリアGPのようなマシントラブルのみ。58周の末、ハミルトンに22秒もの大差をつけ、昨シーズンから続く連勝回数を3に伸ばした。

黒塗りのマシンで文字通りダークホースとなったのはルノーのペトロフ。予選6位からスタートで4位にジャンプアップ、その後3位に上がると、レース終盤にはフェルナンド・アロンソからのプレッシャーをはねのけポジションを守り切った。(Photo=Lotus Renault)
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■ルノーのペトロフ、初表彰台

ピレリ・ワンメイクレースの初戦、タイヤを巡っては2ストップ派、3ストップ派に分かれた。
ベッテルのチームメイト、ウェバーは序盤3位を走行しながらペースを上げられず、12周目にタイヤ交換。合計3度のピットインで上位挽回(ばんかい)を狙ったが、アロンソとの4位争いには自身のミスでコースをはらみ、僚友の活躍に隠れて5位でフィニッシュした。フェラーリの2台も3ストップを採用したが、2回止まることを選んだベッテル、ハミルトン、ペトロフがポディウムにのぼったのに対し、アロンソは4位、マッサは7位。
マシンの力量の差もあるだろうが、今回は2ストップが正解だったようだ。

3位に入ったペトロフにとってはうれしい自身初の表彰台となった。トップ2台に勝負を挑むことはなかったが、好スタートと安定したペース、終盤には昨年の最終戦のように背後に迫るアロンソからの脅威に屈しなかったなど、成長をうかがわせる評価すべき内容だった。
シーズンオフ、エースドライバーのロバート・クビサがラリー出場中に大事故に見舞われ重傷を負い、急きょ代役のニック・ハイドフェルドを立てたルノー。精神的支柱を失ったかにみえたが、2年目のロシア人ドライバーが幸先よいスタートを切ってくれたことは不幸中の幸いだったといえよう。

東日本大震災で被害にあわれた方々に対する「ガンバレ!日本」という応援メッセージを付けたフェラーリの新型「150° Italia」。ほかにも数多くのドライバーやチームが日本へのエールを送ってくれた。 そのフェラーリは、レッドブルに加え、不調と思われていたマクラーレンにも先を越され、アロンソ4位、マッサ7位という残念な結果を残しオーストラリアを後にした。今後の巻き返しに期待がかかる。(Photo=Ferrari)
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■KERS非搭載だったレッドブル

タイトル防衛の第一歩を圧勝で飾ったレッドブルとベッテル。理想的なシーズン開幕戦にもみえるが、今後に不安要素がないわけでもない。

レース後、チーム代表のクリスチャン・ホーナーは、土曜日からレッドブルがKERSを搭載していなかったことを初めて公にした。RB7のKERSを巡っては、予選でまったく利用されていなかったことから不審に思われていた経緯があった。
非搭載の理由は、信頼性が疑わしかったから。レッドブルの成功を支える名デザイナー、エイドリアン・ニューウェイの厳しい空力への要求にあわせるため、KERSにも高いハードルが設定されているゆえの不安だという。

今後、ライバルがKERS開発を深化させていくことを考えれば、出遅れは命取りになりかねない。しかし、KERSがなくてもあの速さでぶっちぎれるということもまた事実。レッドブルの素性のよさが再確認されたレースでもあった。

全19戦、もしキャンセルされたバーレーンGPがカレンダーに復活すると史上最多の20戦で争われる2011年のF1。次戦は2週間後の4月10日、灼熱(しゃくねつ)のセパンで開かれるマレーシアGPとなる。

(文=bg)

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