大変革の世界ラリー選手権、勝つのは誰だ!?

2011.01.21 自動車ニュース
排気量縮小に伴い新規投入される、シトロエンのニューマシン「DS3WRC」。
(写真=シトロエン)
大変革の世界ラリー選手権、勝つのは誰だ!?

大変革の世界ラリー選手権、勝つのは誰だ!?

世界ラリー選手権(WRC)の2011年シーズンが、2月から始まる。規定排気量が、これまでの2000ccターボから1600ccターボに縮小され、それに合わせてシトロエン、フォードがそろってニューマシンを投入。MINIも新たに参戦を発表するなど、2011年のWRCはレギュレーション変更で新たな時代を迎える。
開幕を前に、そんな今シーズンを分析、各チームの顔ぶれから勢力争いの構図までを紹介する。

こちらは「フォード・フィエスタWRC」
(写真=フォード)
大変革の世界ラリー選手権、勝つのは誰だ!?
「MINIカントリーマン(日本名クロスオーバー)」も2012年から参戦。2011年シーズンはテストを兼ねてスポット参戦する。
(写真=プロドライブ)
大変革の世界ラリー選手権、勝つのは誰だ!?

■排気量1600cc化でMINIの参戦も

2月10〜13日のラリースウェーデンで幕を開ける、2011年のWRC。今季から大幅なレギュレーション変更が実施され、新型WRカーで争われることをご存じだろうか?

WRCは1970年代のグループ4に始まり、1982年のグループB、1987年のグループAといったように時代に即した車両規定を採用してきた。ここ十数年間は1997年スタートのWRカーを中心に争われていたのだが、FIAは数多くのマニュファクチャラーの参戦を促すべく、WRカーという名称をそのままに2011年より新たなレギュレーションを導入することを決定した。

そのレギュレーション変更の特筆すべきポイントは、エンジン排気量の縮小である。従来型WRカーには2000ccのターボエンジンが搭載されていたのだが、新型には世界ツーリングカー選手権(WTCC)と同様に、FIAのワールドエンジン構想に基づいて1600ccのターボエンジンが搭載される。それに伴い車両サイズも従来の「全長4200mm以上」から「全長3900mm以上」へとスモール化が図られている。
駆動方式は従来どおり4WDが踏襲されているものの、開発コストの上昇を抑制すべく、これまで認められていたアクティブデフやセミATの装着が禁止となっているのは大きな変化と言っていい。

かようにコンパクトでシンプルなマシンが前提とされるなかで、レギュレーション変更に合わせてシトロエンは主力モデルを「C4WRC」から「DS3WRC」に変更する。フォード陣営も「フォーカスWRC」から「フィエスタWRC」にマシンをスイッチ。さらに、このレギュレーション変更が要因となって、MINIが2012年からのWRC参戦を発表した。こちらのベースモデルは「MINIカントリーマン(日本名はMINIクロスオーバー)」。マシンの開発はかつてスバルとダッグを組んでいたプロドライブで、2011年にはテストを兼ねて6戦程度にスポット参戦する予定だ。

セバスチャン・ローブ(シトロエン)
大変革の世界ラリー選手権、勝つのは誰だ!?
ミッコ・ヒルボネン(フォード)
大変革の世界ラリー選手権、勝つのは誰だ!?
クリス・ミーク(MINI)
大変革の世界ラリー選手権、勝つのは誰だ!?

■プライベーターも多彩な顔ぶれ

このように新規参入のMINIのほか、活動を継続するシトロエン、フォードも2011年はニューマシンで臨むことになっているのだが、ドライバーに関しては目立った移籍が行われていない。

フォード陣営はこれまでどおり、ミッコ・ヒルボネン、ヤリ-マティ・ラトバラのフィンランド人コンビが残留し、シトロエンも2010年にドライバーズ部門の7連覇を成し遂げたセバスチャン・ローブが引き続きエースを担当。チームを離脱したダニエル・ソルドに代わって、シトロエン・ジュニアの一員としてポルトガルおよびジャパンを制したセバスチャン・オジェがシトロエンのワークスチームに昇格したぐらいで既存のワークスチームはほぼ同じ顔ぶれだ。
ちなみに、MINIは2009年のIRCチャンピオン、クリス・ミークを開発ドライバーに起用するほか、元シトロエンのソルドをターマック要因に抜てきする。

ワークス陣営だけでなく、ニューマシンを駆るプライベーターたちも経験豊富な強豪が名を連ねる。
まず、シトロエンのカスタマーチームから見ていくと、オランダのジェントルマンドライバー、ピーター・ヴァン-マルクシュタイン・ジュニアがカスタマーチームで「DS3」のステアリングを握るほか、昨年と同様にペター・ソルベルグも自社チーム「PSWRT(ペター・ソルベルグ・ワールドラリーチーム)」から「DS3」でエントリー。さらに元F1チャンピオン、キミ・ライコネンも「アイス1レーシング」を結成し、独自のプログラムとして「DS3」で参戦する。

対するフォード勢も、「Mスポーツ・ストバート」のマシュー・ウイルソン、ヘニング・ソルベルグらを筆頭に、「モンスター・ワールドラリーチーム」からケン・ブロック、「アダプタラリーチーム」からマッズ・オストベルグ(※開幕戦スウェーデンはMスポーツ・ストバートからの参戦)、「FERMパワーツール・ワールドラリーチーム」からデニス・カイパースらが「フィエスタWRC」で参戦。層の厚い戦いとなっている。
テスト参戦を予定するMINIもワークス勢に加えてカスタマーチームの設立を予定しており、今後もエントリー台数はさらに増えると思われる。

ペター・ソルベルグ(PSWRT)
大変革の世界ラリー選手権、勝つのは誰だ!?
キミ・ライコネン(アイス1レーシング)
大変革の世界ラリー選手権、勝つのは誰だ!?

■今年もやっぱりローブの年?

そのなかで、誰が主導権を握るのか? ニューマシンの実力が分からないだけに予想するのは困難だが、おそらく2011年もローブ+シトロエンが主導権を握ると思われる。
というのも、カスタマードライバーのウィルソンが「フィエスタWRC」の開発を行ったフォード陣営に対して、シトロエンはエースのローブが基礎開発の段階から「DS3WRC」のステアリングを握っている。さらに、今季はテスト参戦に挑むMINIを含めて全てのチームがミシュランタイヤを選択しているのだが、オフィシャルサプライヤーとしてのワンメイクコントロールではないことから、ミシュランが同郷のローブ+シトロエンにスペシャルタイヤを供給したとしても不思議ではない。
また、2011年は新型WRカーで争われることから、ラリー前後の車検でレギュレーションの解釈をめぐる攻防戦が予想されているのだが、その点に関してもシトロエンが強い政治力を武器にFIAとの交渉も有利に進めて行くことだろう。

ちなみにMINIはまだまだ開発途上にあり、テストでステアリングを握ったソルドによれば「エンジンを含めてまだまだやるべきことが多い」とのこと。2011年の上位進出はあまり現実的ではない。

以上のことから推察すると、今年もまた、ローブの躍進が予想される。ローブの対抗馬として、シトロエンのNo.2のオジェ、プライベーターのソルベルグ、フォードのラトバラあたりが挙げられるが、いずれにしても彼らが勝つためにはローブの自滅が前提の条件となるだろう。ただし、先行してフィエスタの開発を行ってきたフォード陣営が主導権を握るようなことになれば、タイトル争いはヒルボネンを加えての混戦となりうるだけに、まずは序盤戦の動向に注目したいものだ。

(文と写真=廣本泉)

この記事の大きな画像を見るためには、画像ギャラリーをご覧ください。