【スペック】全長×全幅×全高=4915×1860×1490mm/ホイールベース=2970mm/車重=1910kg/駆動方式=FR/2.5リッター直6DOHC24バルブ(204ps/6300rpm、25.5kgm/2750-3000rpm)/価格=640万円(テスト車=771万4000円)

BMW523iツーリング(FR/8AT)【ブリーフテスト】

BMW523iツーリング(FR/8AT) 2010.12.08 試乗記 ……771万4000円
総合評価……★★★★★

ドライバーズサルーンとして名高い「BMW5シリーズ」。ワゴンボディで余裕も増した「523iツーリング」の走りをチェックした。

駆け抜けても、駆け抜けなくても

正直言って、最初は「随分落ち着いちゃったね」と思った新型「5シリーズ」。一見おとなしくなった外見にしても、快適性の高まった走りにしても、先代のエッジの立った感覚が恋しく思えてしまったのだ。
しかし路上を走る姿を頻繁に見かけるようになり、そして自分でもステアリングを握る機会を得るにつれて、評価は180度と言ってもいいくらい変わった。ディテールはたしかに落ち着いた外観だが、しかし実は長さが強調されたノーズ、ゆるやかなウェッジの効いたサイドビューなどによってフォルムは大きく変わっている。ディテールのインパクトが強かった先代から一転、本質的な美しさとスポーティさをそこには感じる。セダンだけじゃなく今回試乗したツーリングも印象はまったく同様である。
走りについてもそう。先代の、特に初期型ではアクティブステアリングの鋭い切れ味にビックリさせられたものだが、新型はハイテクデバイスを多用しつつも、そうした刺激で圧倒するのではなく、先々代以前のBMWが持っていた、たおやかでかつ奥深いスポーツ性を感じさせる味わいへと回帰している。鋭いレスポンスがそうなのではなくて、どこまで攻めても正確な応答性を失うことなく、乗り手の意思に100%応えてくれることこそ、スポーティ。そんな走りっぷりを、しかし従来よりも圧倒的に高い次元にて実現しているのだ。
要するに5シリーズは落ち着いてなどいなかったということ。むしろ見方によっては、よりラジカルになったと言ってもいいかもしれない。

そんな5シリーズの恐ろしいのは、「駆け抜ける歓び」だけでなく「駆け抜けなくても歓び」まで手に入れてしまったことだ。ゆっくり走らせていても、極上の癒やし感すら味わえるのである、BMWなのに!
「523iツーリング」は、新型5シリーズのそうした側面をもっとも濃厚に味わえるモデルと言える。回す楽しさもあるが、速く走らなくたって気持ちいい。そんなテイストゆえに、こけおどしは必要ないし、急ぐ人には先を行ってもらっても全然構わないという寛大な気持ちになれる。ツーリングであることも、そんな余裕を醸し出す重要なポイント。使い勝手に優れるだけでなく、そういう意味ではライフスタイル演出の道具としても、これほど憎い存在感のクルマは無い。
じわじわと染み出すその魅力には脱帽。「もっと乗っていたい」「一緒に暮らしたらどうなるだろう?」 試乗していて、久々にそんな気持ちにさせられてしまった。

 
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