第167回:【Movie】モデナだ祭りだ! あの伝説のスタンゲリーニが走る

2010.11.06 エッセイ

第167回:【Movie】モデナだ祭りだ!あの伝説のスタンゲリーニが走る

モデナの「メモリアル・スタンゲリーニ」にやってきた往年のモデルたち。
第167回:【Movie】モデナだ祭りだ! あの伝説のスタンゲリーニが走る

エンジンの大地

たとえ羽田空港新ターミナルに江戸風ショッピングモールができようと、東京スカイツリーが建とうと、イタリア車ファンにとって永遠の垂ぜんの地といえば「モデナ」だ。モデナ市内には今日もマセラティが本拠を構え、県単位まで範囲を広げれば、18km南下したマラネッロにはフェラーリがある。また、近年ハイパフォーマンスカーとして知名度を上げつつあるパガーニもモデナをベースとしている。

自動車史に残るブランドもモデナに本拠をおいたものが数々あった。デ・トマゾは往年「太陽の道」沿いに本社と工場を構えていた。また名門を復興させるべく1987年に設立された新生ブガッティも、モデナ郊外カンポガリアーノを本拠としていた。

イタリアの人たちは、このモデナを中心としたエミリア・ロマーニャ地方を「テッラ・ディ・モトーリ(エンジンの大地)」と呼ぶ。もともと農耕が盛んだったことから、農機具を作るかじの技術が発達し、それはやがてトラクター作りとなり、エンジンへの情熱へとつながったという。

「スタンゲリーニ・フォーミュラ・ジュニア」
第167回:【Movie】モデナだ祭りだ! あの伝説のスタンゲリーニが走る

勝たない週末はない

そのモデナに、もうひとつ忘れていけない歴史的コンストラクターがある。「スタンゲリーニ」だ。

始まりは第二次世界大戦前、ヴィットリオ・スタンゲリーニ(1910-81年)が、父の営むフィアット販売店でレーシングパーツの製造・供給を始め、自ら「スクアドラ・スタンゲリーニ」と称するレーシングチームを結成したことにさかのぼる。戦後になるとフィアットベースの軽量レーシングカー造りをさらに加速。同時に、自社製のツインカムエンジン(イタリア語でビアルベロ)も製作した。

スタンゲリーニのモデルは大排気量や大きなボディのライバルたちを相手に果敢に戦い、やがて「地方レースでスタンゲリーニが勝たない週末はない」と言われるまでになった。「ミッレミリア」「タルガ・フローリオ」など著名レースでも戦績を残し、「フォーミュラ・ジュニア」にも参戦した。
しかしレースが年々大規模になり、コンストラクターにより大きな投資が求められるようになったのを機に、1960年半ばで撤退。その後は県下最大のフィアットディーラーとしての道を歩み、今日に至っている。

1930年代の市街地サーキットを復元。
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スタンゲリーニ家集合。クルマの外にいるのがヴィットリオの息子で現フィアットディーラーのオーナーであるフランチェスコ・スタンゲリーニ氏(左)。その右奥で見守っているのがシモーナ夫人。クルマに乗っているのは彼の息子シモーネ・スタンゲリーニ氏と夫人、3歳になる息子のヴィットリオくん。
第167回:【Movie】モデナだ祭りだ! あの伝説のスタンゲリーニが走る

その日、公道サーキットが復活

2010年はそのスタンゲリーニ中興の祖ヴィットリオの生誕100周年にあたるのを記念し、モデナでは同年5月「メモリアル・スタンゲリーニ」と名づけられたイベントが市内各地で開催された。
今回動画でお届けするのは、そのフィナーレとして、5月30日に行われた往年のスタンゲリーニ車による記念ランである。

会場となったのは、1930年代の数年間に「モデナサーキット」として公道レースが行われていた市内の街路だ。そこを当日だけ封鎖し、ASI(イタリア古典自動車連盟)公認のタイムラリーが催された。
当日はレプリカを含む12台のスタンゲリーニ車が参集。ヴィットリオの子息で現在フィアットディーラーのオーナーあるフランチェスコ・スタンゲリーニ氏、そして彼の息子であるシモーネ氏もステアリングを握った。

今回の動画は、高らかな会場アナウンスや人々の話し声も味のうち、ということで、あえてBGMなしでお届けしよう。

ところでブレシアから愛車ともに参加した愛好家は、スタンゲリーニの魅力を喜々としてボクにこう話してくれた。
「小さなボディとエンジンにもかかわらず、マセラティや草創期のフェラーリをけ散らしていたんだ。それがなんとも痛快なのさ」
まさに、イタリア版一寸法師伝説なのである。

(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

【Movie】モデナだ祭りだ! あの伝説のスタンゲリーニが走る(前編)

【Movie】モデナだ祭りだ! あの伝説のスタンゲリーニが走る(後編)

(撮影・編集=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

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大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住20年という脈絡なき人生を歩んできたものの、それだけにあちこちに顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーター。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストをはじめラジオでも活躍中。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。