世界ツーリングカー選手権 日本ラウンド開催

2010.11.01 自動車ニュース

世界ツーリングカー選手権 日本ラウンド開催

世界ツーリングカー選手権(WTCC) 日本ラウンド開催

2010年10月30-31日、世界ツーリングカー選手権(WTCC)の第19戦と20戦が、岡山県の岡山国際サーキットで開催された。

今回の日本戦で最も多くの台数が出走した「BMW320si」は、2リッターの直4ガソリンエンジンを積む4ドアセダン。写真はアウグスト・ファルファスが駆る10号車で、この日、第20戦の決勝を制した。
世界ツーリングカー選手権 日本ラウンド開催

■「ハコ車のレース」の最高峰

“世界最高峰のツーリングカーレース”と称され、毎戦迫力あるバトルが繰り広げられている世界ツーリングカー選手権(WTCC)が創設されたのは2005年のこと。以前からヨーロッパ各国で開催されていたスーパーツーリングカー選手権を2001年に国際自動車連盟(FIA)が一本化してFIAヨーロッパ・スーパーツーリングカー・カップとすると、翌年にはFIAヨーロッパ・ツーリングカー選手権と改名、その3年後の2005年から世界選手権に昇格し、現在の形ができあがった。ちなみに、FIAが世界選手権と認定している自動車競技はF1、WRC、GT1、そしてWTCCの4カテゴリーだけで、この点からもWTCCの格式の高さがうかがえる。

レースに参加できる車両は、排気量2リッターのエンジンを積んだ量産車が基本。ただし、ルールで許された改造範囲は比較的狭く、このためレースカーの姿は、われわれが公道上で見かける車両とあまり違わない。これは、自分たちの製品を広くアピールしようとする自動車メーカーにとって好ましい規則といえる。また、改造範囲が狭ければレースカーの開発費用も圧縮でき、トータルの参戦コストも比較的安く抑えられる。これも自動車メーカーにはうれしい話だろう。

こちらはスペインの「セアト・レオン」。2009年シーズンはガソリンモデルとディーゼルモデルがそろって参戦したが、今シーズンは後者のみ。WTCCの一大勢力である。
こちらはスペインの「セアト・レオン」。2009年シーズンはガソリンモデルとディーゼルモデルがそろって参戦したが、今シーズンは後者のみ。WTCCの一大勢力である。
「セアト・レオン」の心臓部。直4のディーゼルターボユニットは、280psと45.9kgmを発生する。ギアボックスは、ヒューランド社製のシーケンシャル6段MT。
「セアト・レオン」の心臓部。直4のディーゼルターボユニットは、280psと45.9kgmを発生する。ギアボックスは、ヒューランド社製のシーケンシャル6段MT。
中国などで売られるFF車の「シボレー・クルーズLT」。WTCCには2009年から登場、今年はマニュファクチャラーズタイトルに王手をかけている。
中国などで売られるFF車の「シボレー・クルーズLT」。WTCCには2009年から登場、今年はマニュファクチャラーズタイトルに王手をかけている。

■参戦車種はさまざま

もうひとつ、WTCCのレギュレーションで特徴的なのは、ガソリンエンジンだけでなくディーゼルエンジンの参戦も認めていることだ。これまでのところ、ディーゼルエンジンでWTCCに挑んでいるのはフォルクスワーゲングループに属するスペインのセアト一社のみ。彼らは「レオンTDI」を2007年より投入、2008年と2009年に2年連続でタイトルを勝ち取った。選手権設立以来、BMWの牙城だったWTCCを、初めてセアトがディーゼルパワーで破ってみせたのである。

もっとも、ルマン24時間耐久レースと同様に、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンを同一の条件で戦わせることは容易ではない。WTCCでは、自然吸気のみとなるガソリンエンジンはレヴリミッターで最高出力が制限されるのに対し、ディーゼルエンジンはターボの装着が認められ、基本的にはエアリストリクターで最高出力を規制している。このため、ルールのさじ加減ひとつでガソリン有利にもディーゼル有利にも傾く傾向は否めず、これが常々論争の的となってきた。

ただし、セアトは2009年をもってワークスチームが撤退し、プライベートチームにその活動が委ねられることになり、今季は戦闘力が大幅に後退。また、来季からは新たに導入される1.6リッターガソリンターボエンジンが主流になると見込まれているため、ガソリン対ディーゼルの論争は影を潜めているのが現状である。

セアトのワークス撤退により、大きく躍進したのがシボレーだ。2009年、それまでの「ラセッティ」に換えて新型車「クルーズ」を投入したシボレーは、2010年シーズンを前にマシンを徹底的に改良。これが効を奏し、今季はドライバーズ選手権とマニュファクチャラーズ選手権を終始リード。2005年の初参戦以来、念願だったタイトル獲得に王手をかけている。ただし、2年連続でセアトに栄冠を奪われた“ツーリングカーレースの王者”BMWも虎視眈々(たんたん)と巻き返しを狙っており、両者の戦いがシーズン終盤戦の主軸となっていた。

激しいバトルで知られるWTCC。14周のスプリントレース×2戦で争われる日本ラウンドは、水しぶきのあがる雨のなか行われた。
激しいバトルで知られるWTCC。14周のスプリントレース×2戦で争われる日本ラウンドは、水しぶきのあがる雨のなか行われた。

世界ツーリングカー選手権 日本ラウンド開催の画像
第19戦を制したのは、シボレーのロバート・ハフ(写真右)。ポイントランキングのトップだったイヴァン・ミュラー(写真左)は3位に入り、タイトルにいっそう近づいた。
第19戦を制したのは、シボレーのロバート・ハフ(写真右)。ポイントランキングのトップだったイヴァン・ミュラー(写真左)は3位に入り、タイトルにいっそう近づいた。

■雨の日本戦を制したのは……?

こうして迎えた第11ラウンド(第19戦と20戦)の舞台は、岡山国際サーキット。2008年にわが国で初めてWTCCレースをホストした同サーキットは、全長3703mのコンパクトな作りがテンポのいいレースを繰り広げるには好都合で、過去2年間も期待にたがわぬ熱戦が繰り広げられていた。

その予選では、逆転タイトルを狙うBMWのアンディ・プリオールがポールポジションを獲得、チームメイトのアウグスト・ファルファスは予選2位に食い込んでフロントローに並んだ。プリオールが予選を制したのは2006年のマカオ戦以来、およそ4年ぶりのこと。このレースに備え、BMWはそれまで使っていたHパターン式5段ギアボックスをシーケンシャル式6段に変更、さらにプリオールがアタックする際にはファルファスがスリップストリーム役を買って出るなど、BMWは組織力でフロントロー独占を成し遂げた。

決勝が行われた日曜日は、ドライだった前日とは打って変わって本降りの雨。こうなると、前輪駆動のシボレー勢が、がぜん、有利になる。予想どおり、第1レースでは「クルーズ」を駆るロバート・ハフがファルファスとプリオールを次々と攻略、今季2勝目を挙げた。2位はプリオール、3位は現在ポイントリーダーのイヴァン・ミューラー(シボレー)、そしてファルファスは4位に終わった。

引き続きウエットコンディションとなった第2レースは、第1レースのトップ8ドライバーが逆順でグリッドにつく「リバースグリッド」でスタート。ここで、フロントローのドライバーがいずれも雨に足元をすくわれてコースアウトを喫すると、5番グリッドからトップに立ったファルファスがそのままフィニッシュまで走りきり、BMWにうれしい栄冠をプレゼントした。2位はプライベートBMWを駆るコリン・ターキントン、3位はミュラーだった。

この結果、ポイントリーダーのミュラーは、2位プリオールとの差をそれまでの25点から37点へと広げて最終戦マカオに臨むことになった。ただし、ダブルレースで開催されるWTCCでは、1戦で最大50ポイントを獲得できるので、逆転の可能性がゼロになったわけではない。いっぽうのマニュファクチャラーズ選手権でもシボレーの優位は揺るがず、あと14ポイント獲得すれば初のタイトルを勝ち取ることができる。

ガッツポーズを決めるのは、第20戦を制したブラジル出身の若手アウグスト・ファルファス。WTCCの日本ラウンドは、3年連続岡山で開催されてきたが、2011年シーズンからは鈴鹿へと戦いの舞台を移す。
ガッツポーズを決めるのは、第20戦を制したブラジル出身の若手アウグスト・ファルファス。WTCCの日本ラウンドは、3年連続岡山で開催されてきたが、2011年シーズンからは鈴鹿へと戦いの舞台を移す。
2010年、イギリス戦と日本戦にスポット参戦した「ボルボC30」。来シーズンはフル参戦することが決まっている。
2010年、イギリス戦と日本戦にスポット参戦した「ボルボC30」。来シーズンはフル参戦することが決まっている。
世界ツーリングカー選手権 日本ラウンド開催の画像

■日本車の活躍に期待

ところで、今回のレースに先立ち、ボルボは2011年からWTCCにシリーズ参戦することを正式に発表した。これまでスウェーデン・ツーリングカー選手権などに参戦し、タイトルを勝ち取ったこともあるボルボは、その活動の場をグローバルに拡大するため、WTCC参戦の道を選んだといえる。同社の上級副社長であるマグナス・ヨンソンは「ボルボはツーリングカーレースでも長い伝統を有している。2011年は、WTCCが技術面やプロモーション面でわれわれの期待に応えてくれる選手権かどうか確認するため、シリーズに挑む」と語った。
その前哨戦として今回のレースにスポット参戦したボルボは、岡山は初走行ながら予選14位と健闘。エンジン・トラブルのため10グリッド降格となった第1レースでは10位まで挽回(ばんかい)し、第2レースでは6位でフィニッシュ、高いポテンシャルを見せつけた。

回復基調が見え始めたとはいえ、まだまだ楽観は許されない状況にある自動車産業にあって、ボルボの決定は英断と呼ぶに値する。願わくは、日本の自動車メーカーもより積極的にレース活動に取り組み、モータースポーツ界をにぎわせてほしいものだ。
折りしも、2012年からわが国で日本ツーリングカー選手権(JTCC)を復活させる動きが出てきた。新JTCCの車両レギュレーションはWTCCに準ずるとのことなので、まずはJTCC、続いてWTCCという道筋も見えてくる。日本の自動車メーカーが世界のモータースポーツの表舞台で再び活躍する日がやってくることを、強く期待せずにはいられない。

(文=大谷達也(Little Wing))

この記事の大きな画像を見るためには、画像ギャラリーをご覧ください。