「Honda エコ マイレッジ チャレンジ」開催

2010.10.12 自動車ニュース
グループII(高校クラス)のレースシーン。使用コースはオーバルのスーパースピードウェイだが、メインストレートはピットロードを走行する。
「Honda エコ マイレッジ チャレンジ」開催

1リッターでどこまで行ける? 〜「Honda エコ マイレッジ チャレンジ 2010」開催

2010年10月9日、10日、栃木県のツインリンクもてぎで「本田宗一郎杯 Honda エコ マイレッジ チャレンジ 2010 第30回全国大会」が開催された。

No.504のチーム「T-ONE」は、初回から30年連続出場ということで「30th アニバーサリー賞」を受賞した。
No.504のチーム「T-ONE」は、初回から30年連続出場ということで「30th アニバーサリー賞」を受賞した。
出走台数168台という最大の激戦区だったグループII(高校クラス)で、見事優勝に輝いた「松栄高等学校EPL」。リッターあたり1654.556kmという記録は、グループIII(大学・短大・高専・専門学校クラス)の優勝記録よりわずか2kmちょっと下回るだけだった。コースコンディションが同じだったら、さらに僅差になっていたかもしれない。
出走台数168台という最大の激戦区だったグループII(高校クラス)で、見事優勝に輝いた「松栄高等学校EPL」。リッターあたり1654.556kmという記録は、グループIII(大学・短大・高専・専門学校クラス)の優勝記録よりわずか2kmちょっと下回るだけだった。コースコンディションが同じだったら、さらに僅差になっていたかもしれない。

■いまや“伝統のカーレース”

ホンダファンにとって東の聖地であるツインリンクもてぎでこのイベントが開かれた先週末、西の聖地である鈴鹿サーキットでは、ご存じのとおりF1日本グランプリが開催されていた。目下ホンダはF1に参戦しておらず、また伊東社長自ら「今後はエコ指向のモータースポーツに力を入れていく」と表明していたとはいうものの、何もF1と同じ日にやらなくてもいいだろうと思ったが、調べてみたらホンダとて好き好んでこの日を選んだわけではなかった。

本来、この大会は1週間早い10月2日、3日に予定されていた。しかし、実際にその日程で開催されたのは二輪の最高峰レース、MotoGPの日本グランプリ。4月にここツインリンクもてぎで開かれる予定だったMoto GPが、アイスランドの火山噴火による航空機関の混乱により延期された結果である。ちなみに今週末は全日本ロードレース選手権、来週末はSUPER GTの開催が予定されている。カレンダーに空きがあるのは、F1とカブるこの日程しかなかったのである。

「本田宗一郎杯 Honda エコ マイレッジ チャレンジ 2010 第30回全国大会」という長いタイトルを冠したこのイベントだが、じつはこの名を冠するようになったのは今回からで、前回までは「本田宗一郎杯 Honda エコノパワー燃費競技全国大会」と称していた。

今回で30回目、ということは、初回開催は1981年。くしくも同じ年に始まった昭和シェル石油と『CAR GRAPHIC』の共催による「マイレッジマラソン」と並んで、専用車両によるエコラン競技として成長してきた。「マイレッジマラソン」が2000年で終了して以降は日本を代表するエコラン大会となったが、近年ではタイや中国、インドやベトナムといったアジア諸国へも展開が広がっているという。そうしたグローバル化を背景に、地球環境保全の意識をより高め、国際的なイベントへの発展の願いを込めて、30周年を機に大会名を世界共通の「Honda エコ マイレッジ チャレンジ」に改めたというわけだ。

暖機運転やエンジン調整用に使用した分の燃料が、スタート前にオフィシャルによって注射器を使い慎重に給油される。主催スタッフの数は、総勢280名を数えた。
暖機運転やエンジン調整用に使用した分の燃料が、スタート前にオフィシャルによって注射器を使い慎重に給油される。主催スタッフの数は、総勢280名を数えた。
スタートはゼッケンナンバー順に1台ずつ。No.142は「千葉県立下総高等学校 自動車部B」のマシン。
スタートはゼッケンナンバー順に1台ずつ。No.142は「千葉県立下総高等学校 自動車部B」のマシン。
左が主催者から貸与される容量180ccの透明ガラス製燃料タンク。
左が主催者から貸与される容量180ccの透明ガラス製燃料タンク。

■極力燃やさぬ! 熱いバトル

競技のコンセプトは「1リッターのガソリンで何キロ走れるか?」というもので、具体的にはスーパーカブなどに使われているホンダ製の4ストローク50ccを搭載したオリジナル車両で燃費を競う。このほかにホンダ製の50cc以上150cc以下のエンジンを使用する「ニューチャレンジクラス」やホンダ製の4ストローク50ccを搭載した市販二輪車で参加可能な「市販車クラス」も存在する。

車両規定(市販車クラス除く)は、ざっと以下のようなものだ。「車輪は3輪以上で、寸法は全長3.5m以下、全幅2.5m以下、全高1.8m以下、ホイールベース1.0m以上、トレッド0.5m以上。エンジンは排気量50cc未満のホンダ製4ストローク(ニューチャレンジクラスは50cc以上150cc以下)で、自然吸気(NA)であれば改造は自由である」。

大会の舞台となるのは、全長2.4kmのスーパースピードウェイ。全国、いやアジア諸国からも集まった出走車両は、全クラス合わせてなんと449台に達した。内訳はグループI(中学校クラス)が21台、グループII(高等学校クラス)が168台、グループIII(大学・短大・高専・専門学校クラス)が101台、グループIV(一般クラス)が69台、2人乗りクラスが20台で、ここまでが50ccエンジンを使用。さらにニューチャレンジクラスが10台、市販車クラスが60台となる。
ここまで出走車両が多いと、当然ながら常設のピットだけでは足りるはずもなく、パドックはエントラントが持ち込んだテントで埋め尽くされていた。

鈴鹿で9日に予定されていたF1の予選は降雨により翌日に持ち越されたが、こちらも9日の練習走行は雨に見舞われ大変だったという。10日も朝のうちこそ雨が残っていたが、幸いグループIの決勝を前にした午前9時過ぎには上がって青空が見え始め、コースコンディションもみるみるうちに回復した。

競技方法はゼッケンナンバー順に1台ずつ時間差でスタートして、平均速度25km/h以上で規定時間内に7周(2人乗りは3周)走行し、燃費を競うというもの。計測方法は主催者から貸与される容量180ccの透明ガラス製の燃料タンクを出走前に満タンにしておいて、ゴールイン後に残った燃料を計り、消費した燃料からリッターあたりの燃費に換算するという寸法である。過去の最高記録は第21回(2001年)に残された3435.325kmというもので、これの更新を目指して激しい戦いが繰り広げられた。

パンダとカブのバトル。「なぜゆえパンダ?」と思ったら、No.708「eLITE」は中国・広州から参加したチームだった。ちなみに708はニューチャレンジクラス、カブは市販車クラスだが、隣り合ったクラスは走行時間が一部カブっていたために(ダジャレじゃないよ)こうした光景が見られたのだった。
パンダとカブのバトル。「なぜゆえパンダ?」と思ったら、No.708「eLITE」は中国・広州から参加したチームだった。ちなみに708はニューチャレンジクラス、カブは市販車クラスだが、隣り合ったクラスは走行時間が一部カブっていたために(ダジャレじゃないよ)こうした光景が見られたのだった。
マシンによっては、ドライバーはこのように窮屈な姿勢を強いられる。この「昭和第一学園 自研チャレンジャーA」チームのマシンではステアリングの切れ角もわずかだから、ドライビングも難しいだろう。
マシンによっては、ドライバーはこのように窮屈な姿勢を強いられる。この「昭和第一学園 自研チャレンジャーA」チームのマシンではステアリングの切れ角もわずかだから、ドライビングも難しいだろう。
この日の最高記録であるリッターあたり3021.720kmを記録し、グループIV(一般クラス)で優勝した「ATP」とそのマシン(No.552)。ドライバーは左から2番目の優勝カップを抱えた女性。(写真=本田技研工業)
この日の最高記録であるリッターあたり3021.720kmを記録し、グループIV(一般クラス)で優勝した「ATP」とそのマシン(No.552)。ドライバーは左から2番目の優勝カップを抱えた女性。(写真=本田技研工業)

■気になる最高記録は……?

激戦とはいっても、なにしろ同じスーパースピードウェイで戦うインディカーの約1/10というスピードだから、見た目にはのどかなものである。しかし自由な発想のもとに作られた、1台として同じ姿はないユニークなマシン群は、いっこうに見る者を飽きさせない。
基本的にはそれぞれの作戦にしたがい、自分のペースで走ってはいるものの、ときとして2台から数台がバトルのような状況になることもあり、なかなか楽しませてくれた。

やはり経験値の差なのだろうか、中学から高校、大学・短大・高専・専門学校、一般とクラスが進んでいくごとに記録は伸びていき、今回の最高記録は一般クラスに参加したチーム名「ATP」が記録したリッターあたり3021.720km。惜しくも最高記録更新はならなかったものの、2位に500km近い差をつけ、大会史上3番目という好記録だった。

勝利するために、出場チームは究極の効率を求めてマシンを作り、そのポテンシャルを最大限に発揮する戦略を組み立てる。いっぽうドライバーには、窮屈な運転姿勢に耐える体力と作戦を遂行するための繊細な操縦テクニックが要求される。そういう意味においては、絶対的なスピードこそ欠けるものの、これも同日開催されたF1と同じ立派な「モータースポーツ」なのである。そうした魅力がなければ30回も続くはずがないし、こんなに多くのエントラントが集まるわけもない。

モータースポーツにも環境保全への対応が迫られる昨今、「エコ時代のモータースポーツ」として、この大会への注目度はかつてないほど高まっている。だが、古くからのエントラントからすれば「ようやく時代が追い付いた」といったところなのかもしれない。

(文と写真=沼田 亨)

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