第14戦イタリアGP「混迷の残り5戦へ」【F1 2010 続報】

2010.09.13 自動車ニュース
フェラーリ、地元イタリアで見事1-3フィニッシュ。その出来に誇らしげなウィナーのフェルナンド・アロンソ(左)、チームを率いるステファノ・ドメニカリ(中央)、そしてフェリッペ・マッサ。フェラーリは2006年以来の母国優勝で、モンツァ最多勝記録を「18」に伸ばした。(写真=Ferrari)
第14戦イタリアGP「混迷の残り5戦へ」【F1 2010 続報】

【F1 2010 続報】第14戦イタリアGP「混迷の残り5戦へ」

2010年9月12日、イタリアのモンツァ・サーキットで行われたF1世界選手権第14戦イタリアGP。フェルナンド・アロンソやジェンソン・バトンといった、前戦でのリタイアでほぼタイトル争いから脱落したかにみえたドライバーが奮闘し、チャンピオンシップはいよいよ混迷の度合いを深めてきた。

スタートでジェンソン・バトンが抜け出し、アロンソ(手前右)とマッサ(同左)が追う展開。アロンソの後ろにつけ、マッサをオーバーテイクしようとしたルイス・ハミルトンだったが、フェラーリと接触しマシンを壊してリタイアした。(写真=Ferrari)
第14戦イタリアGP「混迷の残り5戦へ」【F1 2010 続報】
開幕戦バーレーン、第11戦ドイツに次ぐ3勝目をマークしたアロンソ。チームオーダーの一件でドイツGPでの優勝はほろ苦いものになったが、ここでは実力の差を見せつけて完勝。チャンピオンシップでも5位から3位に上がり、自身3度目となるタイトルを狙えるポジションにつけた。(写真=Ferrari)
第14戦イタリアGP「混迷の残り5戦へ」【F1 2010 続報】

■スパ脱落組のリベンジ

タイトル争奪戦に加わる5人の明暗が分かれた前戦ベルギーGP。自らのミスやもらい事故により、レッドブルのセバスチャン・ベッテル、マクラーレンのジェンソン・バトン、そしてフェラーリのフェルナンド・アロンソがリタイアや無得点に終わり、いっぽうでバトンの僚友ルイス・ハミルトンは優勝し再びポイントリーダに、ベッテルのチームメイトであるマーク・ウェバーは2位フィニッシュでランキング2位となった。

イタリアGPを前にした選手権トップ5は、
1位 ハミルトン 182点
2位 ウェバー 179点
3位 ベッテル 151点
4位 バトン 147点
5位 アロンソ 141点
という関係。ハミルトンとウェバーが一歩リードする状況で、フェラーリの地元、モンツァでのレースを迎えた。

ベルギーのスパ・フランコルシャンに続き、モンツァはレッドブル「RB6」が苦手とするコースだ。3つのシケインが申し訳程度に設けられたほぼ直線だらけの超高速サーキットは、最速スピードを誇るマクラーレン「MP4-25」、ブレーキングとトラクションに優れるフェラーリ「F10」に向いており、得意の高速コーナーがなく非力なルノーエンジンで戦うレッドブルにとっては、ダメージを最小限に抑えることが最大の目標だった。

現に、ここまで13戦で12回ポールポジションを獲得してきた2010年最強のレッドブルは、イタリアでは予選でマーク・ウェバー4位、セバスチャン・ベッテル6位と、今年初めてフロントローにすらつけず。アロンソが今季初、フェラーリにとってはおよそ2年ぶりとなるポールポジション奪取に成功した。
マクラーレンは、バトンの健闘が光り2番グリッドにつけ、アロンソの僚友フェリッペ・マッサ3位、ウェバー4位、ルイス・ハミルトン5位と続いた。

ベルギーでタイトル争いから脱落しかかったアロンソやバトンがグリッド上位に食い込み、ハミルトンやウェバーを従える、という構図は、翌日のレースデイにも引き継がれた。脱落組と思われた彼らの善戦が、2010年の残り5戦を熾烈(しれつ)極まるものにしようとしている、そんなヨーロッパ最終戦となった。

超高速コースらしからぬハイダウンフォースセッティングが奏功し、予選で2番グリッドにつけたバトン。スタートを決め首位の座を奪ったが、アロンソを引き離せず、ライバルより1周早いタイミングでタイヤ交換を行うと結果的に2位にドロップしていた。優勝こそ逃したが、2位18点を加え、ポイントリーダーの22点ビハインドまで挽回。2連覇の可能性はまだある。(写真=McLaren)
第14戦イタリアGP「混迷の残り5戦へ」【F1 2010 続報】
前戦ベルギーでのクラッシュといい、今年のセバスチャン・ベッテルは若気の至りともいうべきミスや不注意が多い。そんな下降線を自らのドライビングで上向きにしようと、エンジントラブルを転機として超ロングスティントを敢行。この間十分なマージンを築いたことで4位でゴールした。最年少チャンピオンはまだ諦められない。(写真=Red Bull Racing)
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■アロンソ、今季3勝目でチャンピオンシップ3位に

レースはスタートでバトンがトップに立ち1コーナーのシケインへ突入した。アロンソはアウトから仕掛けようとするが抜けずバトンのマクラーレン後部に軽く接触。その影響で速度が鈍ったアロンソにマッサが並ぶ。この2台も軽く当たりはしたものの、アロンソがマッサから2位のポジションを守った。この混乱に乗じて順位を上げたいハミルトンは、続く第2シケインで不用意にマッサを抜きにかかり、フェラーリの左リアタイヤとマクラーレンの右フロントは接触、ハミルトンは走行不能状態となり決定的なミスで戦列を去った。

ハミルトンほどではないにしろ、ウェバーも出だしでつまずいた。4位から一気に9位まで後退し、その後ロバート・クビサのルノーやニコ・ヒュルケンベルグのウィリアムズと交戦しなければならなくなった。

スタートで4位につけたニコ・ロズベルグのメルセデスは、パフォーマンス的にフェラーリからおよそ0.5秒前後遅く、バトン、アロンソ、マッサのトップ3はどんどん視界から消えていった。

先頭集団の優勝争いは僅差(きんさ)の攻防戦。前述の通り、マクラーレンは直線で速いことが最大の武器だったが、バトンは驚くほどのハイダウンフォースセッティングでコーナーを重視。特に複合コーナーの「レズモ」でアロンソを引き離し、ローダウンフォースのアロンソは直線で詰める、という真逆の展開となった。

レース序盤、バトンはファステストラップで逃げようとするが、アロンソも食い下がり、両車のギャップは最大1.5秒まで開いたものの、ほぼ1秒前後で推移した。

追い抜きはないが息詰まるトップ2のレースは、35周を終えてバトンがピットへ飛び込んだ時点で大きく動いた。前方が開けたアロンソは翌周自らもピットでタイヤを交換するが、このインラップを速くまとめ、そしてフェラーリのクルーは作業をすばやく仕上げ、コースに戻るとフェラーリが先行することに成功していた。

その後は、トップのアロンソがファステストラップを更新しながらリードタイムを広げ、勝負あり。この日の最速マシン&ドライバーは、間違いなくフェラーリとアロンソだった。

開幕戦バーレーン、そして“マッサに譲ってもらった”第11戦ドイツに次ぐ3勝目は、アロンソにとって格別な勝利となったはずだ。もちろん、そこがフェラーリの聖地だったから、という理由もある。ドイツの一件で禁止されているチームオーダーについての審議会が開かれた直後、という汚名返上の絶好の機会だったこともある(結果チームオーダーは認められたものの、追加制裁はなかった)。
しかし何より、ドライバーズ選手権で5位から3位に躍進し、首位との差を41点から21点差に詰めることができた、ということが大きかった。

今年のマーク・ウェバー(左)は、よくスタートでつまずいてしまう。今回も4位から1周目で9位に落ち、そこから前を走るミハエル・シューマッハー(右)やロバート・クビサ、ニコ・ヒュルケンベルグらの相手をしなければならなくなった。ヒュルケンベルグには手こずったが、何とか6位でゴールし、5点差で再びポイントリーダーになった。(写真=Red Bull Racing)
第14戦イタリアGP「混迷の残り5戦へ」【F1 2010 続報】
スパでのすばらしい勝利で、ランキング1位に躍り出たハミルトン。勢いがあり過ぎてか、オープニングラップでマッサと接触しフロントサスペンションを破損、あってはならないリタイアをきっした。(写真=McLaren)
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■ベッテル、奇策で順位挽回

ダメージを最小限にしたいレッドブル勢。ウェバーは序盤の9位から早々にミハエル・シューマッハーを抜き、20周目にはチームメイトのベッテルがエンジントラブルに見舞われたこともあり7位まで挽回(ばんかい)するが、クビサ、ヒュルケンベルグという手ごわい相手を前にそれ以上なかなかポジションを上げられない。

それでも37周目にクビサを料理し、今度は6位を走るヒュルケンベルグに詰め寄ったが、このルーキーは時折シケインをカットしながら、しかしスチュワードによるおとがめなしで頑として道を譲らず。残り3周で何とか6位にあがりゴールし、8点を追加、合計187点で再度ランキング首位に立ったのだから、ウェバーの初期の目標は達成された、といっていいだろう。

しかし目標達成で万々歳なのは、むしろベッテルの方だ。20周目のエンジン不調で2秒落ちのタイムしか刻めず8位に後退したが、数周後に息を吹き返し、最初で最後のピットストップを53周のレースの52周目(!)まで引き延ばし、その間築いたマージンで見事4位12点を手にすることに成功したのだ。

今回の結果を受けて、トップ5人のランキングは、
1位 ウェバー 187点(↑)
2位 ハミルトン 182点(↓)
3位 アロンソ 166点(↑)
4位 バトン 165点(−)
5位 ベッテル 163点(↓)
と、1位から5位まで41点あったギャップは、一気に24点まで縮小し、一転して混戦状態に突入した。

ヨーロッパでの最後のレースを終え、残るはシンガポール、日本、韓国、ブラジル、アブダビのフライアウェイ5戦。このうちレッドブル優位が揺るがないであろう鈴鹿サーキットでの日本GP以外は、どこでもどのチームでもブレークの可能性を秘めている。
この先優勝25点×5戦=125点を、5人が争奪するビンテージイヤーとなった2010年。1勝、1回のミスが、けた違いに重みを増してくるシーズン終盤戦だ。

次戦シンガポールでのナイトレースは、9月26日に行われる。

(文=bg)

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