WRC「ラリージャパン」、2年ぶりに開催

2010.09.13 自動車ニュース
豪快にコーナーを駆け抜ける、シトロエンのセバスチャン・オジエ。
WRC「ラリージャパン」、2年ぶりに開幕

WRC「ラリージャパン」、2年ぶりに開催

世界ラリー選手権(WRC)が、2008年以来2年ぶりに日本上陸。2010年9月9日-12日、北海道を舞台にシリーズ第10戦となる「ラリージャパン」が開催された。
2008年を最後にスバル、スズキが撤退したことから、今大会は日本メーカー不在で争われたものの、シトロエンのホープ、セバスチャン・オジエが今季2勝目を獲得するなど次世代のスターが活躍。さらに、同じくシロトエンを駆る元スバルのワークスドライバー、ペター・ソルベルグが2位入賞を果たすなど記憶に残るイベントとなった。

WRC6連覇の偉業を成し遂げ、今年もまたタイトルに迫りつつある、セバスチャン・ローブ。
WRC6連覇の偉業を成し遂げ、今年もまたタイトルに迫りつつある、セバスチャン・ローブ。
こちらは2007年のF1チャンピオン、キミ・ライコネン。F1からWRCへ、驚きの転身で今シーズンのラリーを盛り上げるが、成績は振るわず。ただし、回を重ねるごとにスキルアップしているのは明らかだ。
こちらは2007年のF1チャンピオン、キミ・ライコネン。F1からWRCへ、驚きの転身で今シーズンのラリーを盛り上げるが、成績は振るわず。ただし、回を重ねるごとにスキルアップしているのは明らかだ。

■2010年シトロエン ライコネンも急成長

ラリージャパンの動向を紹介する前に、まず2010年シーズンの展開について触れておきたい。WRCは、昨年と同様に今季も「C4 WRC」を投入するシトロエン勢と「フォーカスWRC」のフォード勢、2メーカーの一騎打ち。ただし、シトロエンのエース、セバスチャン・ローブとフォードのエース、ミッコ・ヒルボネンが1ポイント差でタイトルを争った2009年と違って、2010年はローブの一方的なワンサイドゲームが続いている。

開幕戦のスウェーデンでこそヒルボネンが圧勝したものの、その後はローブが5勝をマークし、後続に大差をつけてポイント争いを支配。2番手には、シトロエン・ジュニアを経て後半戦のグラベル戦よりシトロエンワークスのセカンドに昇格、第6戦ポルトガルを制した、セバスチャン・オジエが続く。 
一方、次期モデルと並行して「C4 WRC」の熟成を図ってきたシトロエンに対し、次期モデルの開発にのみ専念してきたフォード勢は各ラウンドで苦しい展開。セカンドのヤリ-マティ・ラトバラが第5戦ニュージーランド、第8戦フィンランドを制し、ランキング3位につけるものの、首位ローブとの差は74ポイントに拡大。ヒルボネンに至っては第2戦メキシコよりポディウム圏外のラリーが続き、プライベーターとして「C4 WRC」を駆る元スバルのエース、ペター・ソルベルグ、シトロエンのターマックスペシャリスト、ダニエル・ソルドを挟んでのランキング6位に沈むこととなった。

シトロエン・ジュニアで「C4 WRC」を駆る元F1王者、キミ・ライコネンの存在は、2010年のWRCにおける最大のトピックスだが、開幕戦のスウェーデンは度重なるコースアウトで30位に低迷。第2戦メキシコもコースアウトを喫し、リタイアに終わったものの、第3戦ヨルダンでは8位の初入賞。第4戦のトルコでは自己ベストの5位入賞を果たした。その後はしばらく足踏み状態が続いたものの、得意なターマック戦となる第9戦ドイツでは7位に入賞。さらに市街地コースを舞台にした最終ステージでは初のSSウィンを獲得するなど確実にスキルアップを重ねている。

札幌ドームで行われた、スーパーSSの様子。マシンは、ローブの駆る「シトロエンC4 WRC」。
札幌ドームで行われた、スーパーSSの様子。マシンは、ローブの駆る「シトロエンC4 WRC」。
ヤリ-マティ・ラトバラの「フォード・フォーカスWRC」。終始、抜きつ抜かれつの激しいバトルを展開した。
ヤリ-マティ・ラトバラの「フォード・フォーカスWRC」。終始、抜きつ抜かれつの激しいバトルを展開した。

■出走順が勝敗を左右

そんな2010年のWRCは、北海道札幌市をメインステージに日本ラウンドを迎えた。札幌ドームのスーパーSS、デイ1、デイ2の苫小牧エリアをそのままに、デイ3に美唄・砂川エリアを加えた新たなフォーマットでラリーが開催された。

9日、札幌ドームのターマックを舞台にしたスーパーSSで好タイムをマークしたのは、“ポスト・ローブ”との呼び声が高いオジエ。SS1、SS2を連取し、デイ1のファーストループをトップでフィニッシュする。
しかし、翌10日、林道ステージを舞台に本格的な競技が始まると出走順がリザルトを左右した。他のラウンドと同様に出走順が早ければ早いほど、“路面の掃除役”を強いられることになり、逆に出走順が遅ければ遅いほど、日本のグラベルは路面が柔らかいため轍(わだち)に悩まされることとなる。ラリージャパンは3番手から5番手あたりのスタートが理想といわれるとおり、デイ1のセカンドパートで5番手スタートという有利な出走順を生かしたペターが「C4 WRC」で堅実な走りを見せ、デイ1をトップでフィニッシュする。

同じく3番手スタートという有利な出走順でアタックしたヒルボネンが9.4秒差の2番手につけ、以下、トップから21.3秒差の3番手にオジエ、同22.4秒差の4番手にラトバラ……といったように接近戦が展開された。注目のライコネンは「今までに経験のないステージ。とにかくフィニッシュすることだけを考えて走っていた」と語るように、ナローでソフトな特殊ステージに苦戦し、トップから約4分遅れの10番手でデイ1をフィニッシュした。

おなじみ、元スバルのペター・ソルベルグは、総合2位でフィニッシュ。「優勝争いができて楽しいラリーだった」とのコメントを残した。
おなじみ、元スバルのペター・ソルベルグは、総合2位でフィニッシュ。「優勝争いができて楽しいラリーだった」とのコメントを残した。
残念ながら、リタイアに終ったライコネンのマシン。次戦以降の走りが期待される。
残念ながら、リタイアに終ったライコネンのマシン。次戦以降の走りが期待される。
優勝を喜ぶ、オジエとシトロエンのチームスタッフ。
優勝を喜ぶ、オジエとシトロエンのチームスタッフ。

■最後まで激しいバトル

明けた11日のデイ2は3番手スタートのラトバラ、4番手のオジエらが激しい追い上げを披露。砂利かき役でペースの上がらないペター、ヒルボネンらを尻目に午前中のループでラトバラがトップ、オジエが2番手に浮上する。しかし、SS16で首位のラトバラがドライブシャフトのトラブルにたたられて5番手に後退。2番手オジエもデイ3で有利な出走順を確保すべく、意図的にペースダウンした。その結果、再びペターが首位、ヒルボネンが2番手に浮上し、オジエが3番手、ソルドが4番手でデイ2をフィニッシュ。一方、ライコネンは脱落者が続出するサバイバルラリーが展開されるなか、安定した走りを披露し、ふたつポジションを上げた8番手で2日目を走り終えた。

結局、デイ3では出走順を巡る戦略が的中したオジエが好タイムを連発し、あっさりとトップを奪還、今季2勝目を獲得した。5年ぶりの優勝に向けて必死の追走を披露したペターだったが、午後のループでダンパーのトラブルにたたられて2位でフィニッシュ。油圧系のトラブルで6位に後退したヒルボネンに代わってラトバラが3位で表彰台を獲得し、注目のライコネンはデイ3のファーストステージ、SS19でコースアウトを喫し、そのままリタイアとなった。

なお、自身が優勝しオジエが6位以下なら7度目のタイトルを獲得することになっていたローブは、今大会でも優勝候補の筆頭と目されていたのが、「なぜタイムが出ないのか分からない」と漏らしつつ5位入賞にとどまった。しかし、ローブとしては「次戦の母国イベント、ラリーフランスでチャンピオンを決めたい」のが本音だろう。チーム代表のオリビエ・ケネルが欠場しているところをみると、もともとローブの不調とオジエの上位入賞は、シトロエン勢にとって“予定されたこと”だったのかもしれない。

とはいえ、熱心なライコネンファンの来場も手伝って、サービスパーク、リエゾンともに今季のラリージャパンには数多くのギャラリーが来場した。「3日間にわたってトップ争いができたので楽しかった」とペターもコメントしたとおり、近年では珍しく最後まで激しいバトルが展開された今季のラリージャパン。リザルト以上に、記憶に残るイベントになったのではないだろうか。

(文と写真=廣本泉)

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