ARTA HSV-010 灼熱の鈴鹿700kmを制す【SUPER GT 2010】

2010.08.23 自動車ニュース
GT500クラスの表彰式。
ARTA HSV-010、灼熱の鈴鹿700kmを制す【SUPER GT 2010】

【SUPER GT 2010】ARTA HSV-010、灼熱の鈴鹿700kmを制す

2010年8月22日、三重・鈴鹿サーキットでSUPER GT第6戦決勝レースが行われた。勝利を収めたのは、No.8 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/井出有治/小林崇志組)。予選でポールポジションを獲得し、その勢いのままタフなレースを乗り切り、待望の今季初勝利を手にした。また、GT300クラスも、No.62 R&D SPORT LEGACY B4(山野哲也/佐々木孝太組)が初優勝を遂げている。

GT500クラスのスタートシーン。
GT500クラスのスタートシーン。
ポール・ツー・フィニッシュで、今季初優勝。No.8 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/井出有治/小林崇志組) 。
ポール・ツー・フィニッシュで、今季初優勝。No.8 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/井出有治/小林崇志組) 。

■驚異の新人、現る

シリーズ後半に入った今季のSUPER GT。第6戦はシリーズ最長の700km、しかもナイトランを含むスペシャルな一戦だ。チームによってはドライバーの暑さ対策や戦略の拡張など、さまざまな点を考慮し、第3ドライバーの登録を行うこともある。トップドライバーが戦うGT500クラスでは、いわゆる“補欠要員”的な存在となるが、今回の予選は、その第3ドライバーが大ブレークすることとなった。

小林崇志、22歳。この鈴鹿でNo.8 ARTA HSV-010の第3ドライバーとしてSUPER GTデビューを果たした。これだけでも大抜てきだが、さらに大仕事をやってのけた。なんとノックダウン方式の予選で、最後のタイムアタックを担当したのだ。
ノックダウン予選とは、3度タイムアタックを行い、その都度、出走台数が少なくなるというF1でのやり方と同じもの。与えられた10分間で、小林は最速タイムをマークした。キラ星のごとく現われたルーキーの躍進に、観客はもとより、レース関係者も大興奮。デビュー戦でポールポジションを獲得したのはシリーズ史上初という快挙でもあった。

場内を大いに沸かしたこの活躍。実は、チームのあるミスから生まれたものだった。当初チームでは、ファーマン→井出→ファーマンの順でアタックを予定。ところが、事前に提出した出走ドライバーの申告用紙には、3回目のアタッカーになぜか小林の名が記されていたという。本人はもちろん、チームスタッフも小林のアタックを直前まで把握しておらず、ファーマンがアタックの準備をしていたところ、ミスが判明。まるで不意打ちにあったような状況の中、急きょアタックに向かった小林だったが、並み居る先輩を抑えてトップタイムをマーク。ニュータイヤでアタックという大役を務め上げただけでなく、チームには今季初のポールポジションまでもプレゼントするという孝行ぶりだった。

No.8 ARTA HSV-010。
No.8 ARTA HSV-010。
グランドスタンドをバックにダンロップコーナーを駆け上がる3位のNo.100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴組)。
グランドスタンドをバックにダンロップコーナーを駆け上がる3位のNo.100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴組)。

■3台のHSV-010がトップをめぐり激戦

予選、決勝を通じて厳しい暑さに見舞われた鈴鹿サーキット。決勝は午後3時、戦いの火ぶたが切って落とされ、まずはポールポジションNo.8 ARTA HSV-010の井出がレースをリードした。ところが、周回遅れの車両に追突され、車両後方下面の空力パーツを一部破損。ファーマンへと交代するルーティンワークで、不安定になっていたパーツをはぎ取ることに時間をとられ、ライバルに先行を許してしまった。
一方、このNo.8とトップ争いを演じたのは、No.32 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴組)とNo.100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴組)。3台のホンダ車がホームコースの鈴鹿で快走し、ファンに存在感をアピールした。

序盤に思わぬ痛手を負ったNo.8 HSV-010だったが、以後もハイペースは変わらず。ピットでの出遅れを挽回(ばんかい)するパフォーマンスを見せた。このとき暫定トップだったのは、No.100 HSV-010の伊沢。ライバルの猛追を尻目に周回を重ねたが、2度目のルーティンワークでトラブルに見舞われた。タイヤが外れず、作業に手間取ったのだ。30秒近いロスタイムをコース上で取り戻すのは至難の業だ。今度は、No.32 HSV-010にトップの座が巡ってきた。

■好走のEPSONを襲ったハプニング

今季デビューしたHSV-010の中で、唯一ダンロップタイヤを装着するNo.32。走行データをライバルチームと共有することがないため、試行錯誤が続いた。また序盤はクルマのトラブルなどもあり苦戦していたが、今回は、ピットでの混雑を避けるため、早めのタイミングでルーティンワークを実施。タイヤのパフォーマンスを最大限に引き出そうと、ライバルよりも1度ピットインの回数を増やし、確実な上位入賞をもくろんだ。この作戦が奏功した。
ところが、最後のタイヤ装着作業でミスが発生。コース復帰直前のピット前でタイヤが外れるというハプニングで万事休す。7位入賞にとどまった。

2位のNo.23 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ブノワ・トレルイエ組)。
ARTA HSV-010、灼熱の鈴鹿700kmを制す【SUPER GT 2010】

■逃げるARTA、追うRAYBRIG、そしてGT-R

序盤のハプニングを乗り越え、再びNo.8がトップに立ったのはレース後半。すでに日が落ち、車両はライトを点灯してナイトランへと突入していた。磐石の態勢を作り上げていったNo.8に対し、2位のNo.100は追い上げてきたNo.23 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ブノワ・トレルイエ組)の存在をより強く感じる状態におかれていた。
そんな中、121周のチェッカーを前に、残り25〜30周の間で主なトップチームが最後のルーティンワークを完了。No.8 ファーマンはNo.100 山本に対し、15秒以上の差をつけ、ほぼひとり旅。だが、山本はNo.23 トレルイエに詰め寄られ、暗闇の中で好走するも、試合巧者のトレルイエに逆転を許してしまった。結果、No.8 HSV-010が今季初優勝を果たし、2位にNo.23 GT-R、3位にNo.100 HSV-010が続き、熱く、長い戦いの幕を下ろした。

GT300クラスの表彰式。
GT300クラスの表彰式。
GT300クラス優勝のNo.62 R&D SPORT LEGACY B4(山野哲也/佐々木孝太組)。
GT300クラス優勝のNo.62 R&D SPORT LEGACY B4(山野哲也/佐々木孝太組)。

■GT300は大混乱。レガシィB4が大奮闘

予選でダントツの速さを見せたNo.26 ポルシェだが、決勝日の朝、フリー走行でクラッシュを喫し、突貫作業で修復したマシンはレース中も接触などのトラブルに見舞われるなど、精彩を欠いた。代わってレースをけん引したのがNo.74 COROLLA Axio apr GT(井口卓人/国本雄資組)。そして、その後方から着実にポジションを上げてきたのが、No.62 LEGACY B4だった。
車両のデビューは去年。スポット参戦ゆえに思うような結果を残せないでいたが、山野、佐々木の両選手は過去にもコンビを組んで数多くの車両に優勝をもたらしている、いわば“優勝請負人”。今回は予選で11番手に甘んじたものの、長距離レースの特性を十分に利用した戦略が実を結び、初優勝をもぎとった。

続く2位にはNo.43 ARTA Garaiya(新田守男/高木真一/峰尾恭輔組)がつけた。予選3位スタートながら、途中、ガマンの走行を続け、終盤は2番手のNo.74と大バトルを展開。ベテラン新田が、若手ドライバーの国本にプレッシャーをかけ続けた結果、国本はたまらずオーバーラン。2位でチェッカーを受け、シリーズランキングではトップに立つこととなった。

日が沈み、メインストレート、1-2コーナーからS字へとコース上に光の帯が疾走する。真夏の耐久レースPokka GT サマースペシャルならではの光景。
日が沈み、メインストレート、1-2コーナーからS字へとコース上に光の帯が疾走する。真夏の耐久レースPokka GT サマースペシャルならではの光景。
恒例の花火が夏の暑い暑い一日と熱戦の幕を閉じる。
恒例の花火が夏の暑い暑い一日と熱戦の幕を閉じる。

■タイトルを巡る争いはさらに激化

第7戦の舞台は、高速サーキットの富士スピードウェイ。この戦いから各車が搭載するウェイトが見直される。全戦出場しているチームにおいては、これまで獲得したポイントをそのまま1kgに換算するウェイトとなり、ほぼ今回の半分の軽さに変わる。ストレートスピードを駆使できるクルマ作りができるため、さらに高速バトルが楽しめそうだ。

僅差でシリーズタイトル争いが続く今シーズン。今季2度目の富士で笑うのは、果たしてどのチームか。その決勝は9月12日に開催される。

(文=島村元子/写真=オフィスワキタ KLM Photographics J)

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