第11戦ドイツGP「チームオーダーを巡る是非」【F1 2010 続報】

2010.07.26 自動車ニュース
復活の狼煙をあげたフェラーリは、開幕戦以来の1-2フィニッシュを達成。しかし今季2勝目を飾ったフェルナンド・アロンソ(左)、2位に終わったフェリッペ・マッサ(右)とも晴れやかな表情をみせず。事実上トップのマッサに優勝を諦めるよう働きかけたフェラーリに非難が集まった。(写真=Ferrari)
第11戦ドイツGP「チームオーダーを巡る是非」【F1 2010 続報】

【F1 2010 続報】第11戦ドイツGP「チームオーダーを巡る是非」

2010年7月25日、ドイツのホッケンハイム・リンクで行われた F1世界選手権第11戦ドイツGP。フェラーリが今年一番のパフォーマンスを披露し、強敵レッドブルを蹴散らして1-2フィニッシュを飾った今回、話題はその復活劇にではなく、事実上のチームオーダーを発令したフェラーリの作戦に集まった。

11戦10回目のポールポジションを0.002秒差で勝ち取ったレッドブル。だがセバスチャン・ベッテル(左から2番目)は、2番グリッドのアロンソ(一番左)を意識し過ぎ極端に幅を寄せている間に、予選3位のマッサが空いたスペースを突いてトップに立った。(写真=Red Bull Racing)
11戦10回目のポールポジションを0.002秒差で勝ち取ったレッドブル。だがセバスチャン・ベッテル(左から2番目)は、2番グリッドのアロンソ(一番左)を意識し過ぎ極端に幅を寄せている間に、予選3位のマッサが空いたスペースを突いてトップに立った。(写真=Red Bull Racing)
Fダクト、ブロウン・ディフューザーと「F10」の改善につとめてきたフェラーリがようやく覚醒。予選で2、3位につけ、決勝ではスタートから1-2フォーメーションを築き、開幕戦以来の勝利にわく、はずだった……。この1-2でチャンピオンシップポイントはマクラーレンの300点、レッドブルの272点に次ぐ208点となった。(写真=Ferrari)
Fダクト、ブロウン・ディフューザーと「F10」の改善につとめてきたフェラーリがようやく覚醒。予選で2、3位につけ、決勝ではスタートから1-2フォーメーションを築き、開幕戦以来の勝利にわく、はずだった……。この1-2でチャンピオンシップポイントはマクラーレンの300点、レッドブルの272点に次ぐ208点となった。(写真=Ferrari)

■「このメッセージの意味がわかったか?」

予選では1000分の2秒という僅差でポールポジションを逃したものの、週末を通じてフェラーリの優位性は明らかだった。決勝スタートで3番グリッドのフェリッペ・マッサがトップを奪い、フェルナンド・アロンソとともに早々に1-2フォーメーションを完成させると、この2人はともにファステストラップを更新しながら激しい攻防を繰り広げた。

いっぽう、レース終盤にかけてペースをあげはじめたのが、出だしで3位に落ちたポールシッター、セバスチャン・ベッテルのレッドブルだった。67周中の42、43、44周目と立て続けにレースの最速タイムを更新。その約6秒前方では1位マッサと2位アロンソのタイム差は1秒を切るほどになっていた。

そんな状況で、48周目、マッサに無線が飛んだ。「フェルナンドの方が君より速い。このメッセージの意味がわかったか?」
実際この前の周には、コース上の3つのセクションでアロンソがマッサを100分の5前後ずつ上回り、ファステストラップを記録していた。

49周目のヘアピン立ち上がりで、マッサはアロンソに首位の座を“譲った”。そしてアロンソの開幕戦以来となる勝利と、フェラーリ2度目の1-2が決まった。

フェラーリのこの行為が、レギュレーションで禁止されているチームオーダーではないか、と疑われても仕方がない。順位が変わった後、マッサ担当のエンジニア、ロブ・スメドリーは「よくやった……ごめん」とマッサに謝った。テレメトリー上、マッサが一瞬アクセルを戻したことも認められた。そしてレース後、マッサは表情を曇らせながら「自分は勝利に値した」と感じていると漏らした。

ポールポジションから3位に終わったベッテル(写真)。レッドブルとマクラーレンを中心に争われてきた覇権争いに、フェラーリという思わぬ強敵があらわれた。だがマクラーレンにはアドバンテージをキープできたことは収穫といえば収穫。マーク・ウェバーは、予選のミスで4番グリッドとなり、スタートでルイス・ハミルトン、ピットストップでジェンソン・バトンに抜かれ結果6位。(写真=Red Bull Racing)
ポールポジションから3位に終わったベッテル(写真)。レッドブルとマクラーレンを中心に争われてきた覇権争いに、フェラーリという思わぬ強敵があらわれた。だがマクラーレンにはアドバンテージをキープできたことは収穫といえば収穫。マーク・ウェバーは、予選のミスで4番グリッドとなり、スタートでルイス・ハミルトン、ピットストップでジェンソン・バトンに抜かれ結果6位。(写真=Red Bull Racing)
前戦イギリスGPでは、デビューさせたブロウン・ディフューザーを急遽取り外したマクラーレン。ドイツでは改めてこの新機軸を装着して望んだが、フェラーリ、レッドブルに対抗できずに終わった。しかし引き続き両チャンピオンシップをリードしていることに変わりはない。(写真=McLaren)
前戦イギリスGPでは、デビューさせたブロウン・ディフューザーを急遽取り外したマクラーレン。ドイツでは改めてこの新機軸を装着して望んだが、フェラーリ、レッドブルに対抗できずに終わった。しかし引き続き両チャンピオンシップをリードしていることに変わりはない。(写真=McLaren)

■フェラーリの“嘘”と、レギュレーションの課題

そもそもチームオーダーがレギュレーションで禁止されるようになったきっかけは、悪名高い2002年の第6戦オーストリアGP。当時の最速マシンであるフェラーリを駆るルーベンス・バリケロが、優勝目前でチームメイトのミハエル・シューマッハーにトップの座を(誰もがわかるように)明け渡し、観客やメディアから大ブーイングを浴びせられたことに端を発する。それまで(そして事実上その後も)当たり前のように存在していたチーム内での順位操作は、いまや違反の対象となってしまった。

今回のレース後、FIA(国際自動車連盟)は、この違反と、スポーツとしてのF1の評判を落とした行為について、フェラーリに10万ドルの罰金を科すことと、世界モータースポーツ評議会での継続審議を発表した。

フェラーリはドライバーを含め、チームオーダーがあったことを否定している。もちろんこれは詭弁であり、チームとしてアロンソを先行させたことは明明白白たる事実といっていい。問題は、このチームオーダーの意味するところにある。

F1はドライバー同士の競い合いと同時にチームスポーツでもある。マッサがアロンソのペースを抑えてしまいベッテルとの三つ巴状態になることは、チームとして避けたかった。またマッサとアロンソを自由に争わせ、トルコGPのレッドブルのように同士討ちで勝利を逃すこともしかりである。
レース前のチャンピオンシップをみれば、5位にランクされるアロンソに対し、8位マッサは31点後方。アロンソはポイントリーダーのハミルトンにおよそ2勝分、47点差をつけられたのに対し、マッサは約3勝分の78点も離されていた。シーズン半ばに、タイトルに近いドライバーに効率よくポイントを集めるという考えも理にかなっていた。

2002年のレースは、シーズン序盤で既にフェラーリ&シューマッハーが大きくポイントをリードしており、チームメイトに譲ってもらうまでもないなかでのオーダー発令だった。だが今回は、チームとしての采配にそれなりの理由もみつけられた。

観客としてみると、勝敗を操作されたことで当然後味は悪くなり、結果を素直に受け止めづらくなる。レギュレーションが真に意味するところは、こういったスポーツとしての信頼感を落とす行為は慎め、ということのはずである。

だがF1は、勝者には1人しかなれないという事実に、2人のドライバーを中心としたチームが取り組まなければならない複雑な競技である。そもそも「レースリザルトを損なうチームオーダーは禁止」というルール自体に、無理が生じていたのではないか。

チームオーダーはなかった、という今回のフェラーリの“嘘”は、そんなレギュレーションの課題を浮き彫りにしたように思う。

お膝元でのレース、メルセデスはマシンをブラッシュアップして上位を目指したが、予選ではニコ・ロズベルグ(写真手前)9位、ミハエル・シューマッハー(写真奥)11位と振るわず。決勝スタートでシューマッハーが8位までジャンプアップを果たしたが、ピットストップでロズベルグに先を越され順位逆転。ロズベルグ8位、シューマッハー9位。(写真=Mercedes)
お膝元でのレース、メルセデスはマシンをブラッシュアップして上位を目指したが、予選ではニコ・ロズベルグ(写真手前)9位、ミハエル・シューマッハー(写真奥)11位と振るわず。決勝スタートでシューマッハーが8位までジャンプアップを果たしたが、ピットストップでロズベルグに先を越され順位逆転。ロズベルグ8位、シューマッハー9位。(写真=Mercedes)
スイスに本拠を置くザウバーはチーム設立40周年を祝った。小林可夢偉(写真)は、予選12位から3戦連続入賞を狙ったが、順位をひとつあげただけの11位フィニッシュ。ペドロ・デ・ラ・ロサは15番グリッドから7位までポジションアップしたが、ヘイキ・コバライネンとの接触で14位完走となった。(写真=Sauber)
スイスに本拠を置くザウバーはチーム設立40周年を祝った。小林可夢偉(写真)は、予選12位から3戦連続入賞を狙ったが、順位をひとつあげただけの11位フィニッシュ。ペドロ・デ・ラ・ロサは15番グリッドから7位までポジションアップしたが、ヘイキ・コバライネンとの接触で14位完走となった。(写真=Sauber)

■第三勢力、フェラーリの攻勢

決勝レースでは、フェラーリの2台が出だし好調ないっぽうで、今年6回目のポールポジションからスタートしたベッテルは2番グリッドのアロンソを意識し過ぎ、自ら汚れた路面に足をすくわれ3位に後退した。
その後方では、4位ルイス・ハミルトン、5位マーク・ウェバー、6位ジェンソン・バトンと続いたが、この日のマクラーレンには速さがなく、マッサ、アロンソとベッテルが牽引役として周回を重ねた。

フェラーリの2人は、多少の波はあれど、互いにファステストラップを更新し合い、徐々にベッテルが遅れ出す。唯一のタイヤ交換を終え、21周目にはアロンソがヘアピンでマッサにしかけるシーンもみられたが、マッサが守り切った。
やがてマッサに件(くだん)の無線が飛び、アロンソが念願の首位へ。2位に落ちたマッサは、チームの判断に気落ちしたか、終盤にきてペースを盛り返してきた3位ベッテルに差を詰められたものの、チームのために1-2をキープし、チェッカードフラッグをくぐり抜けた。

開幕戦のバーレーンGPでは、ベッテルのリタイアにも助けられて1-2フィニッシュを達成したフェラーリだったが、その後レッドブルやマクラーレンの活躍の陰に隠れ、勝利や上位入賞に恵まれなかった。
だが第9戦ヨーロッパGPでブロウン・ディフューザーなど「F10」に大幅なアップデートを施してきてからは徐々に調子をあげ、そして11戦目にしてようやく息を吹き返した。

2回目の勝利を手にしたランキング5位のアロンソは総得点を123点とし、ポイントリーダーであるハミルトンの34点ビハインドにつけた。
残り8戦、マクラーレン、レッドブルに対抗する第三勢力の攻勢が、チャンピオンシップをさらに混沌としたものに変えようとしている。

真夏の連戦2ラウンド目は、8月1日、ハンガリーGPとなる。昨年大怪我を負ったハンガロリンクで、マッサの逆襲はなるか?

(文=bg)

この記事の大きな画像を見るためには、画像ギャラリーをご覧ください。