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【スペック】全長×全幅×全高=3955×1730×1530mm/ホイールベース=2465mm/車重=1190kg/駆動方式=FF/1.6リッター直列4気筒DOHC16バルブ(120ps/6000rpm、16.3kgm/4250rpm)/価格=209万円(テスト車=同じ)

シトロエンC3(FF/4AT)【試乗記】

2010年上半期のベスト、だけど…… 2010.07.12 試乗記 シトロエンC3(FF/4AT)
……209万円

フランス車をアシにする、サトータケシが新型「C3」に試乗。その走り、乗り心地の良さに感心しながらも、やっぱり万人向けじゃないかもと感じたりもして……。

メッシとのポジション争い

5月から日本に導入された新しいコンパクトカー「シトロエンC3」で帰宅して、すぐに入れ替わりでわが愛車「ルノー・メガーヌ1.6」(前期型)を引っ張り出す。お尻に「C3」のシートの感触や乗り心地が残っているうちに比べてみたかったのだ。比べてみて、「あぁ、やっぱり」と思う。C3のほうが明らかに乗り心地がいい。そのシートとカッコにほれて購入に至った「メガーヌ」であるけれど、シートの掛け心地もC3が上だ。C3のシートは、サイズこそメガーヌのものより小ぶりだけれど、背中、腰、お尻、そして太ももにかけてをふんわり包むようにサポートする。

シトロエンC3が5月に発表された時に、「なんてタイミングの悪い、なんてかわいそうな」と思ったことを告白せねばならない。直接のライバルである「フォルクスワーゲン・ポロ TSI コンフォートライン」があまりに強力なスペックを備えているからだ。「ポロ」は、ダウンサイジングという最新トレンドにのっとった1.2リッターのTSIエンジンに7段DSGを組み合わせ、20km/リッターという10・15モード燃費を達成。一方、1.6リッターエンジン搭載のC3のトランスミッションは古色蒼然(そうぜん)とした4段ATで、10・15モード燃費は12.3km/リッター。完全にスペック負けしている。

値段を比べるとC3のベーシック仕様が209万円で「ポロ TSI コンフォートライン」が213万円。一見、価格勝負だったらC3有利にも思える。ところがどっこい、209万円のC3にはESP(横滑り防止装置)が付いていないのだ。対するポロ TSI コンフォートラインの213万円は、ESPを含んだ価格。

メーカーによって、ESPではなくVSCとかESCとかいろいろ呼び方があって紛らわしいけれど、個人的にこの安全装置が付かないクルマを買う気にはなれない。そこでC3にESPを装着しようとすると、上級グレードの「C3 エクスクルーシブ」を選ばないといけない。すると価格は、239万円にポンとハネ上がるのだ。ポロと競うということは、FCバルセロナのメッシとポジション争いをするようなもの。C3に勝ち目はないように思えた。けれども……。

 
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外観から想像するよりはるかに後席が広いことが印象的。大人4名の長距離ドライブに十分耐える。
外観から想像するよりはるかに後席が広いことが印象的。大人4名の長距離ドライブに十分耐える。 拡大
新型「シトロエンC3」は、先代「C3」より105mm長く、60mm幅広く、10mm背が低くなった。ホーイールベースが5mmだけ長くなっているが、基本骨格は先代用を熟成させたもの。
新型「シトロエンC3」は、先代「C3」より105mm長く、60mm幅広く、10mm背が低くなった。ホーイールベースが5mmだけ長くなっているが、基本骨格は先代用を熟成させたもの。 拡大
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金属なのに、油の味

実際に走り出してみると、4ATのフィーリングが心配したほど時代遅れではないことに気付く。変速はスムーズだし、変速するタイミングに違和感もない。ここで、「イマドキのクルマなんだから、そんなのあたりまえじゃないか」というツッコミが入るのはごもっともです。でも、長年にわたって多くのフランス車に使われてきたこの「AL4」というオートマチックトランスミッションは、ホントにおバカさんだった。アクセルペダルを踏み込むと忘れた頃にキックダウンするなどのかつての悪癖を知る者としては最新仕様のまともな姿にはつい感心してしまう。

4ATの働きに不満を感じなかった理由はもうひとつある。低回転域からモリモリ力を出す1.6リッター直4エンジンのおかげで、変速する機会が減ったのだ。BMWの影響を受けたこのエンジンは、連続可変バルブ機構などのハイテクの力を借りて扱いやすい特性となっている。上まで回しても特にドラマは起こらないけれど、低回転域でのレスポンスのよさや、常用する2000−3000rpm付近のリッチなトルク感など、フツーの道をフツーに走らせるのが楽しいエンジンだ。

パワートレインの出来もまずまずだけれど、このクルマのハイライトはなんといっても乗り心地だ。かっちりしたボディ、ゆるゆると伸び縮みするサスペンション、そして外して家に持って帰りたくなるようなシートが三位一体となって、独特のグルーブ感を生む。
サスペンション形式は特に凝ったものではなく、前がマクファーソンストラット、後がトーションビーム。コンパクトカーの王道だ。もちろん金属バネで、それなのに油圧サスの「ハイドラクティブIIIプラス」搭載の「C5」や「C6」に似たフィーリングがあるのが面白い。

先代から大幅にクオリティが上がったインテリア。試乗車は「C3」なのでダッシュボードがツヤ消しのマットシルバーになるが、「C3 エクスクルーシブ」ではツヤツヤのチタンシルバーになる。
先代から大幅にクオリティが上がったインテリア。試乗車は「C3」なのでダッシュボードがツヤ消しのマットシルバーになるが、「C3 エクスクルーシブ」ではツヤツヤのチタンシルバーになる。 拡大
 
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ベーシック仕様では、オプションでもESPは装着できない。タイヤサイズは前後195/55R16。試乗車は、ミシュランのENERGYを履いていた。
ベーシック仕様では、オプションでもESPは装着できない。タイヤサイズは前後195/55R16。試乗車は、ミシュランのENERGYを履いていた。 拡大

個人的には直球ど真ん中だけど……

ワインディングロードでのC3は、遅くはないけど速くもない。ペターっと深くロールして路面をつかんで放さないから決して遅くはないけれど、エンジンパワーはそこそこなので速く走っているわけでもない。短い区間を駆け抜けてカタルシスを得るというよりも、長距離・長時間のドライブでじわじわとだしがでてくるタイプだ。このあたり、やはりシトロエン一家の兄さんたちに通じるものがある。

ドライバーの頭上にまで延びるフロントウィンドウは、室内からだと見晴らしがよくて開放的、外から見ると“ハゲヅラ”みたいでかわいい。ほかにも、メーター類を覆う部分が光を透かすタイプだったり、メーターの数字のレタリングがしゃれていたり、細かいところまで気が利いている。そうしたしゃれた部分と、後席や荷室の広さなどの合理性が共存しているところがポイント高し。使いたくないけれど、“フランスのエスプリ”という言葉が頭をよぎる。

個人的には、2010年上半期に乗ったクルマのなかでは一番気に入った。フランス車好き、シトロエン愛好家に限らず、クルマ好きなら「VWポロ」のハンコを押す前に試乗してみる価値はあると思う。ただしクルマにそんなに興味がない人にとっては、VWポロとの燃費の差は埋めがたいかもしれない。「プジョー3008」にはフランス車ファン念願の6ATが積まれたけれど、C3にもあと一歩、パワートレインの新機軸がほしい。よくできているし、個人的な好みでは直球ど真ん中であるけれど、いまのところはマニア用物件と言わざるを得ない。

(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)

ドライバーの頭頂部付近まで届かんとする長大なフロントウィンドウ。サンバイザーを移動することで、日差しの量を調整する。写真をクリックするとサンバイザーのスライド移動が見られます。
ドライバーの頭頂部付近まで届かんとする長大なフロントウィンドウ。サンバイザーを移動することで、日差しの量を調整する。写真をクリックするとサンバイザーのスライド移動が見られます。 拡大
サイズのわりに、荷室も広い。深さがしっかり確保されているので、かさばるものも収納できる。
サイズのわりに、荷室も広い。深さがしっかり確保されているので、かさばるものも収納できる。 拡大
日本仕様のC3のラインナップは、ベーシックグレードの「シトロエンC3」(209万円)と「シトロエンC3 エクスクルーシブ」の2種類。どちらも1.6リッターエンジンに4ATを組み合わせる。
日本仕様のC3のラインナップは、ベーシックグレードの「シトロエンC3」(209万円)と「シトロエンC3 エクスクルーシブ」の2種類。どちらも1.6リッターエンジンに4ATを組み合わせる。 拡大

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